1話は短めです。
第1話 大魔王バーン
イルが『黒の核晶』の爆発によりこの世を去ってから2日が経った。あの後仕切り直しとなっていたバーンとの戦いは、いよいよ最終決戦を残すのみとなっていた。
あの日、大魔王バーンは核晶の爆発に備え、『死の大地』の外周部を切り捨て『バーンパレス』を空へと浮上させていた。
イルの働きによりそれは結果的に不必要な行為になったが、一方でダイやバランから一度距離を取るという副次的な効果をもたらした。
加えて結界によりダイ達の侵入を防いだバーンは、世界各地に『ピラァ・オブ・バーン』を投下した。天空から落下する巨塔はまるで隕石のように着弾地点を大きく吹き飛ばし、イルを失ったダイ達に立て直す隙を与えなかった。この時、戦いの主導権は魔王軍に移っていた。
しかし、人類側も黙ってはいなかった。『バーンパレス』の結界を破るために、アバンが大破邪呪文『ミナカトール』を発動させたのだ。
『破邪の洞窟』でアバンが習得していたその呪文は、『マホカトール』を超える強力な破邪の力を持つ。そしてこの呪文は、強き心を持つ仲間と共に発動させることでその真の力を発揮する。
アバンが選んだのは当然、共に魔王軍との戦いを乗り越えてきた4人の弟子達だった。しかしポップが己の『ゆうき』と向き合うのに苦戦したり、目の前で再びイルを失ったダイが、怒りのあまり『純真』の心を忘れかけるなど簡単には行かなかった。それでも、最終的にはそれぞれが己と向き合うことに成功し、呪文を発動するに至った。
アバンが4人の弟子と共に放ったその呪文により結界は消滅。その後の魔王軍による襲撃も人類連合軍の援護により突破し、ダイ達は『バーンパレス』への侵入を果たしたのだった。
ハドラーが亡くなり、『親衛騎団』の面々も魔王軍から離れた今、『バーンパレス』の守りはダイ達の想像以上に薄かった。キルバーン及び『マキシマム』を中心としたオリハルコンの騎士が迎撃に当たったが、アバンの頭脳とバランの武力を味方につけたダイ達に隙はなかった。破竹の勢いでバーンのもとへと進んでいく。
そして、遂にダイ達はバーンの待つ最上部へと辿り着いた。バーンはミストバーンを背後に従え、『光魔の杖』を持ち威風堂々と構えている。
その大魔王の前に、勇者達が並び立つ。瞳に勇気を携えたその姿を見て、バーンが口を開いた。
「よくぞ来た。数々の試練を乗り越え、大魔王たる余の前に立ったこと。まずはそれを称賛しよう。・・・あの者がこの場に居ないことだけが残念だがな。」
「何だって・・・!『黒の核晶』を発動させたのはお前達じゃないか!イルを殺したお前達がそれを残念だなんて、馬鹿にするのもいい加減にしろ!!」
バーンの言葉に、ダイが声を荒げて反論した。しかし、バーンは心外だ、といった表情をして、ダイの言葉を否定した。
「馬鹿になどしていない。余としてもあの場で核晶が起動したのは想定外であった。そうであろう?ミストよ。」
「・・・申し訳ありません。ですが、これも全て御身を案じたが故のこと。この戦いに勝利した暁には、いかなる処罰をも受ける所存です。」
「わかっておる。客観的に見れば、あれを生かすのは余の油断と捉えられても仕方あるまい。他ならぬお前の判断だ、甘んじて受け入れよう。」
バーンに話を振られたミストバーンは、苦い表情で己の判断を謝罪した。それを受け入れたバーンは、再度ダイ達に向かって語りかけた。
「余は奴の出す答えを知りたかった。だが、それももう叶わぬこと。さらに言えば、奴はあの場で死んで幸運だったのかもしれん。」
「何だって・・・?」
「何故なら貴様らは此処で死ぬ・・・!それも一瞬の死ではない、地獄の苦しみの果てに散るのだからな!!」
そう言って、バーンは全身に力を込めた。金色の闘気が立ち上り、空気をビリビリと震わせる。闘気の余波だけで周囲の地面を吹き飛ばしてみせたその力に、ダイ達はごくりと息を呑んだ。
「ミスト。『竜の騎士』は余が相手をする。お前は横槍を入れられんよう他の者を引きつけておけ。」
「・・・バーン様、しかし。」
「良いのだ。物事には順序というものがある。全てを見せるにはまだ早い。」
「・・・はっ。畏まりました。」
ミストバーンにそう指示したバーンは、『光魔の杖』を両手で構え魔力を込めた。杖の先端から魔力が噴出し、まるで槍のような形を取る。それに応じて、ダイ達も武器を抜き構える。
「まずは小手調べといこう。『カラミティウォール』!」
「!!」
バーンが地面を薙ぎ払うと、黒い衝撃波が巻き起こり、勢いを増しながらダイ達に向けて襲いかかる。
最後の戦いの火蓋が切られた。
しばらくイルの出番はないかもしれません。