「ハァァッ!今だ、ダイ!」
「『アバンストラッシュ
「ぐっ。・・・凄まじいな、わかっていたことだが。」
『竜の騎士』2人がかりの攻撃に、バーンは防戦を余儀なくされていた。一方でダイとバランも、まだ決定打となりうる攻撃は放てていない。一度バーンと距離を取ったバランは、呪文を唱え雷雲を呼び寄せ、ダイに向かって叫んだ。
「ダイ、次は私が『ギガブレイク』を放つ!隙を作れ!」
「わかった!」
バランの声に応じ、ダイが剣を構えてバーンを睨みつける。協力しあう2人の姿を見て、バーンがくくくっ、と笑い声を上げた。
「随分と丸くなったものだな、バランよ。お前が再び人間の味方をする日が来るとはな。まさか、アルキードでの出来事を忘れたわけではあるまい。」
「・・・私は人間の味方をしているつもりはない。私を打ち負かしたダイとその仲間達に義理を果たしているにすぎん。」
「実に惜しいことだ。ダイ、お前はどうだ?それだけの力を持ちながら、何故人間などに力を貸している?」
バランの答えを聞いたバーンは、続けてダイにそう問いかけた。ダイは何を言っているのかわからない、と言った表情で叫びを返す。
「何でって・・・おれには人間の友達が沢山いる!何より、罪のない人を傷つけるお前達を許すことはできない!だから戦うんだ!」
「青いな。人間はお前が思っているようなものではない。お前がいくら奴らのために戦おうと、奴らが心から人ではないお前のことを受け入れる日は来ない。人間は弱さに胡座をかき、強き者を嫉み、迫害する。お前は奴らに罪がないと言ったが・・・『弱さ』は『罪』なのだ。」
バーンはダイに向けて淡々と語った。ダイが言葉に窮していると、ミストバーンと戦うポップからそんなことはない、という反論が上がった。
「俺達はそんなことは絶対にしねえぞ、ダイ!お前を1人になんてしてやるもんか!」
「それはお前が・・・いや、お前達がダイと個人的な繋がりを持っているからに過ぎん。想像してみろ、ダイ。お前を庇った仲間達が、『化け物の仲間』として同じ人間に虐げられる姿を。これはお前を惑わす嘘ではない。歴代の『竜の騎士』が辿ってきた運命だ。」
「おれの存在が・・・みんなを・・・。」
しかしバーンの言葉を聞き、ダイは顔を伏せ弱々しくそう呟いた。迷いを見せたダイに、バーンが追撃とばかりに言葉を投げかける。
「お前が余の部下となるならば、この場に居るお前の仲間達は保護することを約束しよう。余は力ある者が好きだ。この場に立っている者にはその資格がある。」
「惑わされるな、ダイよ。こちらが優勢な状況である以上、奴の言葉は苦し紛れの戯言と言っていい。一気に決めるぞ。」
「う、うん。・・・バーン、お前の誘いには乗らないぞ。お前が何を言おうと、おれは人間が好きなんだ。だから、それを滅ぼそうとするお前達を絶対に止めて見せる!」
バランの言葉により、ダイは迷いを振り払った。その様子を見て、バーンがため息をついて呟いた。
「聞く耳持たずか。やはりあ奴の時のようにはいかんな。殺してしまったのが実に惜しい。」
その呟きを聞いたダイ達の頭に疑問符が浮かぶ。殺してしまった、という言葉から連想される人物は共通している。だがバーンの口振りでは、まるでその人物がバーンの意見に同意した、とでも言うかのようである。
しかし、彼らはすぐにその考えを頭から消した。あの心優しい少女がバーンの誘いに乗るなどあり得ない。それに彼女はバーンを止める戦いで散ったのだ。裏切る気持ちがあったとは考えられない。
不可解な言葉を漏らした張本人であるバーンは、『光魔の杖』をカシャン、と地面に突き、ミストバーンを呼び寄せた。アバン達を圧倒していたミストバーンの姿がかき消え、バーンのすぐ隣に現れる。
「様子見は終わりだ。バランはもとより、ダイも以前に比べ格段に成長している。お前に預けていたものを返してもらう時が来たようだ。」
「ハッ、承知しました。」
ミストバーンが返事をした瞬間、ドクン、と何かが揺れ動いた。バーンとミストバーンの姿が歪み、重なっていく。そして凄まじい光の中から、1体の魔族が姿を現した。
「一体、何が・・・!?」
「・・・この姿になるのも数千年ぶりだ。アバン、貴様ならば余が何をしたかわかるだろう。」
「『凍れる時の秘法』・・・!まさか・・・!」
「そうだ。余は全盛期の肉体を保存しミストに預け、来たるべき戦いの日に備え続けてきたのだ。今、それを解放する。」
全盛期の肉体を取り戻したバーンは、ふと思いついたかの様にダイ達に向かって腕を一振りする。その直後、凄まじい速度の衝撃波がダイ達の間を駆け抜け、背後の壁を吹き飛ばした。バーンはふむ、と考える素振りをして拳を握った。
「久々ゆえに制御が効かんな。暫く慣らしが必要そうだ。・・・もっとも、馴染む前に終わってしまうかもしれんが。」
「何つー威力だ・・・!今までは手を抜いてたって言うのかよ!」
「いえ、『凍れる時の秘法』は皆既日食のタイミングでしか発動できない秘法です。次に発動できるのは約500年後・・・それだけの寿命を消費するのはバーンにとっても望ましくなかったのでしょう。」
「その通り。だがそれも今や些細な問題だ。ここで『竜の騎士』を滅ぼし、そしてすぐに地上を滅ぼす。余の理想が叶う瞬間はもうすぐそこなのだからな。」
アバンの推測に感心した様子を見せたバーン。しかしバーンはそれを些細な問題と言い放ち、ニヤリと不敵に笑った。息を飲むダイ達の姿を見て、バーンはふむ、と呟く。
「そろそろ始めようと言いたいところだが・・・少々数が多いな。まずは余の前に立つ資格がある者を選ぶとしよう。」
バーンはそう言って額にある第三の目、『鬼眼』から光を放った。ダイは眩しさに腕で顔を覆う。その時、背後からゴトン、という音がした。光が収まりダイが振り返ると、そこには数を減らした仲間達と、赤い掌大の球体が転がっていた。
「マァム、クロコダイン、みんな・・・!何をしたんだ、バーン!!」
「案ずるな、死んだわけではない。余の前に立つ資格がない者、つまり力が足らん者を『瞳』に変えてその魂を閉じ込めただけだ。余を倒すことができれば、そ奴らもまた肉体を取り戻すことができる。」
バーンは愉快そうな表情でダイにそう告げた。資格があるとされたダイ、バラン、アバン、ポップ、ヒュンケル、ラーハルトの6人は怒りを宿した目でバーンに武器を向ける。
「そうでなくてはな。では再開するとしよう。」
「舐めやがって・・・!『メドローア』!!」
真っ先に動いたのはポップだった。両手に炎と氷の魔力を宿し、それを合成して金色の矢を作り出す。真っ直ぐに放たれた矢を前にして、バーンそれを躱わす素振りすら見せない。誰もが直撃を確信した、まさにその時だった。
「『フェニックスウイング』!」
バーンが目にも止まらぬ速さで右手を振り上げ、『メドローア』を弾き返した。跳ね返された必殺の呪文が、術者であるポップに向かって襲いかかる。
ポップは咄嗟にもう一度『メドローア』を発動させ、迫り来る消滅の光を相殺した。しかし一瞬で魔力の大半を消費してしまったポップは、息を荒げて地面に膝をつく。
「冗談・・・よせって。」
「フン、これで終わりとは言わせんぞ。まだまだ余を楽しませろ・・・!」
真の力を解放したバーンとの戦い。その決着は、まだ遥かに遠い。