「バーンと覇を競った・・・?そんな風には見えないけど・・・。」
「ええい、余計なお世話だ!これも全てあのイルとかいう小娘のせいで・・・!」
「! イルの事を知ってるの?」
「当たり前だ!あの小娘は突然魔界に現れて大暴れしていきおった!そしてオレの配下を根こそぎ奪い取ったかと思えば、『配合』とか言ってオレをこんな姿に・・・。封印を解いたことだけは感謝してやっても良いが。」
ヴェルザーはイルに対する怒りをこれでもかと語って聞かせた。どうやらイルはバーンとの戦いに介入する前に、ヴェルザーのもとを訪れていたらしい。
そして何を思ったのか、バランと天界の神々によって封印されていたヴェルザーを解き放ったのだという。力を大きく削いだ上で、ではあるが。
「あの小娘は1日にして魔界を支配した。そして伝言を残して、再びオレを封印した。」
「伝言?イルはなんて言ってたの?」
「『全てを束ねて、わたしに会いに来て。』だそうだ。何を言っているのか、誰に言っているのかもわからなかったが・・・確信したぜ、これはお前に向けた言葉だ。」
ヴェルザーはひとり納得した様子でそう頷いた。置いてけぼりにされたダイは、少しむっとした表情で尋ねた。
「もう少し説明してよ。イルはおれに何をさせたいの?結局、この世界でなにが起きてるの?」
「ん?まあ、伝言については難しく考える必要はないだろう。いきなり本拠地に乗り込んで来るな、といったところだ。それで異変についてだが・・・今この世界は、地上と魔界のふたつが重なった状態だ。」
「重なった状態・・・?」
ますます疑問が増えた、といった顔をするダイ。ヴェルザーは少し悩む素振りをした後、言葉を噛み砕いて説明した。
「まず、あの小娘の連れている魔物、『狭間の闇の王』について話そう。奴は世界の境界層を意味する、『狭間』を操る魔物でな、簡単な話世界を切り離したり繋げたりを自在にできる魔物なのだ。」
「???」
「つまりだな、この世界の国をひとつずつ切り取って、互いに行き来出来なくしたりすることが奴には可能なのだ。ちょうど、地上と魔界のようにな。」
ここでようやく理解が追いつき、それと同時にダイは表情を固くした。その能力の恐ろしさに気付いたためである。
「そうだ。神々にも匹敵するその能力を使って、小娘は地上と魔界を無理矢理統合させたのだ。その結果が、お前も見た地形の変化だ。オレがこの島に居たのは、たまたま魔界でオレの居た場所が重なったのがここだったから、という訳だ。」
「そうなんだ・・・。でも、何のためにそんな事を?」
「さあな。だが、放置しておくと碌なことがなさそうだぞ?現に今、奴は3体の刺客を放って世界の管理を進めているらしい。・・・それ、早速のお出ましだ。」
ヴェルザーがそう言った瞬間、その場の空気が変わった。呼吸が苦しくなるほどに濃密な魔力が空間を満たし、ダイの隣にいたブラスが苦しげに膝をついた。
「じいちゃん!しっかりして!」
「魔力酔いだ。死にはしないだろうが、元凶を倒さない限り治ることはない。」
「元凶を倒せばいいんだね、わかった!」
ブラスを救うため、ダイは一目散に駆け出した。その後ろをヴェルザーがぱたぱたと追いかけていく。
洞窟を出ると、空を覆う雲らは渦巻き、赤い稲妻がゴロゴロと音を鳴らしていた。そして海の果てから、一体の魔族が姿を現した。
竜の様な姿をしたその魔族は、肥大化した脳を見せつけながらダイ達の前へ着地した。
「待ちくたびれたぞ、そなたらの目覚めをな。」
「オレの目覚めを待っていただと・・・?お前があの小娘からの最初の刺客ってわけか。」
「我が名はオルゴ・デミーラ。万物の王にして天地を束ねる者。さあ行くぞ。我が名をそなたらの骸に永遠に刻み込んでやろう!」
「問答無用かよ・・・。来るぞ、ダイ!」
オルゴ・デミーラは名乗りを上げると、全ての魔力を解き放った。
「この呪文は・・・!」
「ほう、知っていたか。だがもう遅い。」
その呪文に見覚えがあったダイはすぐにその場を離れようとした。しかし、いつの間にか背後に現れていた『プロブロス』と『ドゴロク』の攻撃により、動きを封じ込められてしまう。
そして、暴走した魔力が、爆発を起こした。
「『マダンテ』」