イルとダイの大冒険   作:NBRK

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第9話 勇者

 

 父と並び立ち、天魔王に挑むダイ。睨み合いが続く中、口を開いたのはオルゴ・デミーラだった。

 

 

「成る程。ヴェルザーが無駄な足掻きをしていたのは時間稼ぎのためだけではなかったか。我に呪文を乱発させる事で、そこの戦士にこの場所を知らせようとしていたわけだ。」

 

「ハッ、誰がお前の力なんぞに呼び寄せられるかよ。こいつが来たのはオレの魔力に反応してだ。そうだろう?」

 

「・・・素直に頷くのは癪ではあるが、貴様の言う通りだ、ヴェルザー。」

 

 

 ヴェルザーの言葉に、しぶしぶといった様子で頷くバラン。そしてそのままの表情で、オルゴ・デミーラに向けて語りかけた。

 

 

「確かに強大なオーラは感じるが、かつてのヴェルザーには及ばん。貴様の目的は知らないが、世界の秩序を保つのが『竜の騎士』の役目だ。討たせてもらうぞ。」

 

「ほう、我を愚弄するか。その言葉、後悔させてやろう!」

 

 

 『竜魔人』と『天魔王』がぶつかり合い、あたりに衝撃波が撒き散らされた。そして、目にも止まらぬ攻防が幕を開ける。

 

 『真魔剛竜剣』の振り下ろしを、巨大な爪が受け止める。間髪なく振るわれた尾による一撃をバランが左手で受け流す。

 

 勢いを利用して間合いを取ったバランが、両手を体の前に組み、『竜闘気』を圧縮する。それに応じて、オルゴ・デミーラも即座に魔力を解き放った。

 

 

「『ドルオーラ』!!!」

 

「『マダンテ』!!!」

 

 

 巨大なエネルギーが全てを飲み込み、周囲の地形を消し飛ばした。土煙の中バランが警戒を深めていると、突如として目の前が真っ赤に染まった。バランは咄嗟に『竜闘気』を全身から放出して迎え撃つ。

 

 

「ハァァァァ!!」

 

「ほう、『煉獄火炎』を受け切るか。だが、今の隙で我の魔力も回復した。仕切り直しだな。」

 

 

 再び、音速の戦いが幕を開ける。それをダイは、地面に伏せて見守ることしかできなかった。背後のヴェルザーが痺れを切らし、ダイに向かって叫ぶ。

 

 

「おい、いつまで見てんだ!加勢しろ!」

 

「わかってるけど、これじゃあ割って入ろうにも・・・。」

 

「何でもいい!お前も『竜の騎士』だろ!バランみたいに『竜魔人』になったりは出来ねえのか!」

 

 

 ヴェルザーの言葉に、ダイははっ、とした表情を見せる。もしそれであの圧倒的な力が得られるならば、試してみる価値はある。

 

 見よう見まねで全身に力を込めるダイ。しかしそれを止めたのは、オルゴ・デミーラと激しく打ち合いを続けるバランだった。

 

 

「止めろ、ダイ!『竜魔人』化は私でさえ負担が大きい!半分人間のお前では体が耐えきれん!」

 

「そんな!どうしたら・・・!」

 

「・・・お前がかつて私に勝てたのは何故か考えてみろ。答えはそこに・・・くっ!」

 

 

 ダイに何かを伝えようとするバランだったが、その言葉はオルゴデミーラの攻撃によって遮られた。

 

 ダイは頭を回し、バランの言葉の意味を考える。思い出されるのはあの日のテランの戦い。

 

 数日前に敗れたバランに勝利できたのは何故か。それを考えて、ダイは再び肩を落とした。

 

 

「やっぱり駄目だ・・・、あの日勝てたのは、イルやポップ達が一緒に戦ってくれたからだよ。でもそのイルが相手じゃ・・・。」

 

「・・・おい、その時の戦いについて聞かせろ。簡潔にだ。」

 

 

 真剣な声色で促すヴェルザーの声にやや萎縮しつつも、ダイはテランでの戦いについて語った。黙ってそれを聞いていたヴェルザーは、おもむろにダイに向かって手を翳した。

 

 その瞬間、ダイの体が白い光に包まれる。

 

 

「力が漲ってくる・・・ワルぼうの『ほしのきせき』みたいだ。」

 

「たかが妖精にできることが、このオレに出来ないわけがないだろう?バランの野郎、素直にオレに頼れと言えばいいものを。」

 

 

 ヴェルザーがダイに与えたのは、彼が認めた者の証でもある『竜の加護』だった。ワルぼうのものと比べても効果は遜色ない。久しぶりに体が軽くなったのを感じて、ダイの瞳に希望が宿る。

 

 

「ありがとう、ヴェルザー。」

 

「おう。・・・ダイ、お前はもっと周りを頼れ。相手が言い出すのを待つんじゃなくて、自分からな。仲間を頼って、代わりに仲間の期待を背負って戦う。『竜の騎士』と『勇者』の違いはそこだぜ。」

 

「・・・わかった。助けてくれる?ヴェルザー!」

 

「まあこの状況じゃ仕方ねえな。任せろ、ダイ!」

 

 

 『竜の加護』を受けた勇者が駆け出し、そして激闘の中に割って入った。突然力を増したダイに、オルゴ・デミーラが感心した様子を見せる。

 

 

「ほう、あのトカゲの力を借りたか。我の速度に追いつくとはな。だが、バランにまで加護を渡す余裕はないらしい。」

 

「ケッ、バランに渡してねえのはただそいつが気に食わねえだけだ!勘違いしてんじゃねえ!」

 

「・・・その姿でも強がりだけは一丁前だな。ダイ、よくぞここまで来た。次で決めるぞ。」

 

「うん・・・『ギガデイン』!!」

 

 

 ダイが呪文を唱えると、オルゴ・デミーラとの間に巨大な雷が降り注いだ。そうして生まれた隙に、ダイとバランはもう一度同じ呪文を唱え、剣を空に掲げた。落ちた雷が、二振りの黄金の剣へと姿を変える。

 

 

「くっ、『マダンテ』!!」

 

 

 慌ててオルゴ・デミーラが迎撃せんと魔力を解き放つ。これまでで最大威力の『マダンテ』が迫り来る中、親子は上段から、同時にその剣を振り下ろした。

 

 

「『ギガクロスブレイク』!!!」

 

「何っ!?・・・ぐぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 交差する二つの斬撃が、『マダンテ』を切り裂きオルゴ・デミーラに直撃する。バチバチとその体を電撃が食い破り、そして遂にはバラバラに切り裂いた。

 

 あたりに静寂が訪れ、ダイとバランの荒い息遣いと、オルゴ・デミーラの呻き声だけが響き渡る。

 

 するとオルゴ・デミーラの体が少しずつ、青い光に変わっていった。悔しげに顔を歪め、天魔王は口を開く。

 

 

「見事だ・・・。我も万全ではないとはいえ、ここまでやられたのは久しぶりだ。誇るがいい。」

 

「待て!お前は・・・イルは何が目的なんだ!答えろ!」

 

「・・・それは、お前が直接イルに聞くといい。我もそこで待っている。再戦を楽しみにしているぞ。」

 

 

 そう言い残し、オルゴ・デミーラの体は光となって消えていった。

 

 そして、その光がアルキードの方向へ向かっていくのを、ダイ達は黙って見送った。

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