イルとダイの大冒険   作:NBRK

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第10話 次なる戦いへ

 

 オルゴ・デミーラとダイ達の戦いから幾らか時間が経った。アルキードの上空に浮かぶヘルクラウド城の中では、玉座に座るイルの前に3体の大魔王が並び、報告を行なっていた。

 

 

「重なった世界の安定化は順調だ。今の調子ならば、じきに我の干渉無しでも世界が自壊することはなくなるだろう。」

 

「うん。ありがとう、オルゴ・デミーラ。ダイくんへの襲撃についても改めてお礼を言うよ。負け役なんて嫌だったと思うけど、完璧にこなしてくれたね。」

 

「いや、力の半分を世界の維持に使っていたとはいえ、あれは今の我の全力だった。故に謝る必要はない。中々悪くない戦いだった。」

 

 

 イルの予想に反し、オルゴ・デミーラは機嫌良くそう答えた。結果の決まっていた戦いとはいえ、久々に全力で力を振るうことが出来たことに満足しているらしい。それに不満を見せたのは、残る2体の大魔王たちだった。

 

 

「ううむ。負け役など気に入らんと拒否したのは早計であったか。のうイルよ、儂もそのダイとやらにぶつけてはみないか?」

 

「むっ、抜け駆けは禁止じゃぞ、ゾーマ。イル、どうせならわしにせい。すぐにあの小僧のはらわたを食い尽くして、首を持ってきてやろう。」

 

「いや殺しちゃダメだって言ったよね?・・・だからふたりには頼まなかったんだよ。手加減できなそうだから。」

 

 

 慌てた様子でその言動を嗜めるイルを見て、ゾーマとデスタムーアはけらけらと笑い声を上げる。揶揄われたことに気付いたイルは、もうっ、と頬を膨らませて椅子に背中を預けた。

 

 ふたりの大魔王はその様子を見て、ニヤリとしつつも笑い声を止めた。そして、デスタムーアがイルに問いかける。

 

 

「ところで、イルよ。殺すなと言っているが・・・夢の中では話は別じゃろうな?」

 

 

 その言葉を聞いて、不機嫌そうにぷらぷらと揺れていたイルの足がピタリ、と止まった。そして、表情を消して口を開いた。

 

 

「当然だよ。そのためにキミを選んだんだからね。」

 

「ならばよい。悪いな、ゾーマ。ひと足先に楽しませてもらうぞ。」

 

「クックックッ、いいだろう。それでは我は、『勇者』が熟すのを待つとしようぞ。」

 

 

 大魔王達は不敵に笑い合うと、フッと姿を消した。残されたイルは、ふぅっ、と息を吐いて目を閉じ、うたた寝をした。

 

 そして次にイルが目を覚ました時、目の前にはフレイザードとザムザの姿があった。口の端からよだれを垂らしたイルの姿を見て、氷炎の魔人が呆れた声を漏らす。

 

 

「だらしねぇな、『大魔王』サマよ。そんなに疲れるならこんな茶番やめちまえよ。」

 

「ふぁ。・・・茶番ってひどいなぁ。これでも結構いろいろ考えて頑張ってるつもりなんだけど。」

 

「それでやる事がこれじゃあなァ。神でもなったつもりかよ。」

 

 

 イルの行為を皮肉るフレイザード。イルの眉が困ったように下がるのを見て、隣のザムザが注意を入れる。

 

 

「言葉が過ぎるぞ。それだけのことが出来る力があるのだから、それをどう振るおうが勝手だろう。」

 

「だからって、誰も殺さねぇなんてのは甘すぎんだろ。勘のいいやつには気づかれるぜ?」

 

 

 ザムザの言葉に、フレイザードがそう反論する。ピリついた空気が流れ、場が沈黙に包まれた。そんな中、イルが静かに口を開く。

 

 

「・・・そうかもしれない。でも、命だけは簡単に扱わないっていうのは守りたいから。それをなくしたら、バーンとやってる事が変わらなくなっちゃう。」

 

「・・・。」

 

「安心してよ。別に殺しだけが恐怖を与えるわけじゃない。命を奪わずとも、ちゃんと危機感を持ってもらえるようにしたつもりだから。」

 

 

 イルはそう言って玉座から降り、とことことその場を後にした。

 

 フレイザードとザムザは顔を見合わせ、そしてばつの悪い様子でその後を追うのであった。

 

 

 

 一方その頃、ダイ達はデルムリン島を出発し、ロモス王国へと向かっていた。

 

 『ルーラ』で海を渡る道中、ダイは隣を行くバランに尋ねた。

 

 

「バランはロモスのあたりで目覚めたんだよね?向こうはどうなってたの?王様は無事だった?」

 

「・・・ああ、無事ではあった。命だけはな。」

 

「おいおい、随分と物騒な言い方じゃねえか。詳しく聞かせろよ。」

 

 

 バランの返答に、頭上を行くヴェルザーが突っ込みを入れる。バランは再度口を開いたが、その顔には煮え切らない表情が浮かんでいた。

 

 

「何と言えばよいのか、私にもわからないのだ。明らかに異常ではあるのだが、実害は今のところないように感じる。どう動くべきか悩んでいたところで、お前達の存在に気が付いたのだ。」

 

「何だよ、結局何もわからねえってことじゃねえか。ダイ、こりゃあ直接見てみるしかなさそうだな。」

 

「うん。・・・あっ、見えてきたよ!」

 

 

 こうしてラインリバー大陸の上空に辿り着いたダイ達は、真っ直ぐにロモス王国へと向かった。ネイル村の様子も気になるところではあったが、まずはバランの言う異変を確認することが最優先であった。

 

 そして、ダイとヴェルザーは、バランの言葉の意味を思い知ることとなる。

 

 

「ヨウコソ、タビノカタ。ココハ、ロモスノクニ、デス。」

 

「えっと、あなたは・・・?」

 

「ナノルホドノモノデハ アリマセン。ドウゾ、オハイリクダサイ。」

 

 

 街の門に辿り着いたダイを出迎えたのは、『がいこつ』の兵士だった。まさか既にこの国は、と身構えたダイは、門の中の世界を見て口をぽかん、と開けた。

 

 

「どういう、こと・・・?」

 

「こりゃ驚いた。前代未聞だぜ。」

 

 

 そこにあったのは、かつての人間の国でも、魔物に支配された国でもなかった。そこでは魔物と人、それらが入り混じり、当たり前のように生活を営んでいたのだ。

 

 恐る恐る街中を進むダイ。ぞわぞわとした感覚に苦しめられつつも、目指したのはかつてアバン達と泊まった宿屋だった。

 

 

「いらっしゃい。おや、いつぞやの『勇者』様じゃないか。また来てくれたんだね。」

 

「う、うん。あの、いつからロモスはこんな感じに?魔物がたくさん居たんですけど・・・。」

 

「何を言ってるんですか?ロモスに魔物がいるなんてずっと前からのことでしょうに。勇者様はお疲れのようだ。早くお休みになってください。」

 

 

 宿の店主はダイのことを覚えていたらしく、暖かく迎え入れてくれた。しかし、ダイが街について尋ねると、焦点の合わない目をして話を逸らされてしまう。

 

 結局ダイ達は、半ば強引に部屋へと押し込まれた。まだ出発からそう時間は経っていなかったが、気疲れからか眠気を感じていた一行はそこで一休みすることにした。

 

 頭がぼんやりとするのを感じつつ、ダイはベッドに横になり目を閉じた。そしてすぐに、すうすうと寝息を立て始める。

 

 

「・・・ククク。ようこそ、我が『夢の世界へ』。」

 

 

 自分が、次なる戦いに踏み込んだことに気付かずに。




いつも応援ありがとうございます。
4月以降の更新について、活動報告にて少しお話しさせてもらってます。

よろしくお願いします。
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