ロモス城を後にしたダイ達は、襲撃の元凶を叩くために、クロコダインらを加えて『魔の森』へと向かった。
もとよりそこは魔物が活発な地域であったが、今回は以前を超える魔物の量と苛烈さを持ってダイ達を待ち構えていた。
通常であれば、いかにダイやバランといえど突破には相応の消耗を伴うはずであった。しかし、実際にはそうはならなかった。ロモスから同行してきた人類、魔族の連合部隊が露払いを買って出たためである。
その後ろについて駆けるダイに、クロコダインが振り返って叫んだ。
「どうだダイ!なかなかやるだろう!」
「うん!頼もしいや!でも、どうしてこんなに協力できてるの?」
「むっ。どうして、か?」
「それにはオレが答えてやるよ。」
言葉に詰まったクロコダインに代わって口を開いたのは、ダイの頭上を飛ぶヴェルザーだった。
「あいつらは別に、何か心変わりして協力を始めたわけじゃねえ。この世界じゃあ、そもそも魔物と人が争う、っていう概念がねえんだ。」
「んー、というと?」
「あのクロコダインも、そもそも人間と魔物で協力することが難しい、って認識が消えてるんだよ。この世界では、人間と魔物の間にある差別の概念が強制的に消されてるらしいな。」
ダイはその話を聞いて不思議に思った。強制的に、というのは眉を顰める部分だが、それによって作られる状況は一言に悪、と呼べるものではないように感じたからだ。
なぜイルはわざわざこんな大掛かりな仕掛けをしてまで、この世界を創り出したのか。消えない疑問に頭を悩ませつつ、ダイは森の中を黙々と駆け抜けた。
そして、ダイはかつての冒険のはじまりの地である、ネイル村のある場所へと辿り着いた。
「これは・・・!?」
そこでダイが目の当たりにしたのは、のどかな村の景色ではなかった。かつての姿のかけらも見えないほど荒廃した村と、その真ん中に位置する不気味な建物が、この村を襲った悲劇を想像させる。
呆然とするダイを横目に、バランがあたりの様子を伺って呟いた。
「人の気配はない・・・いや、微かに感じるか。地下だ。」
「地下・・・あの建物が入り口だよね。」
「おそらくな。それにこの気配には覚えがある。おそらくお前の仲間の、マァムという少女だろう。」
「っ、マァムがここに!?」
仲間の少女の名前が出て、ダイの目の色が明らかに変わる。それと同時に、『魔の森』が一層強く騒ぎ出した。
「ダイ、先に行け!ここは私に任せろ!」
「・・・わかった!お願い!」
「オレも同行するぞ!バラン、あとは任せた!」
ダイはクロコダインを連れて、不気味な建物の中へと突入した。中では地下深くへと続く螺旋状の階段が待ち構えている。
階段を駆け降り、現れた扉の先へと進んでいく。地下施設は広く入り組んでいて、ホルキア大陸の『地底魔城』を彷彿とさせた。
暫く探索していると、ダイの頭に乗っていたヴェルザーが何かに気づいて声を上げた。
「おっ、オレも気づいたぜ。確かにこの先に人間の気配がするな。」
「本当!?」
「おう、多分こっちだ。」
ヴェルザーの誘導に従って、ダイは更に下へ下へと進んでいく。
そして、遂にその場所へと辿り着いた。目の前の光景を見て、クロコダインが痛ましい表情で呟いた。
「これは・・・生きているのか・・・?」
マァムは確かにそこにいた。しかし、その体は透き通った水晶の中に閉じ込められている。安らかに目を閉じたその姿は、見るものに不吉な印象を与えた。
もちろん、ダイも例外ではない。呆然とした表情でマァムに歩み寄り、そしてそっと水晶に手を当てた。
その瞬間、ダイの額の紋章が光を発した。手が触れた場所から、水晶にピシピシと亀裂が入っていく。やがて水晶は音を立てて崩れ去り、解放されたマァムをダイは慌てて抱きとめた。
「・・・ダイ?」
「マァム!よかった・・・!」
目を覚ましたマァムは、とろんとした目でダイの名を呟いた。その声を聞いて、ダイは大きく胸を撫で下ろすのであった。
少し書けたので投稿しました。
暫くはこのペースになりそうです。