イルとダイの大冒険   作:NBRK

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第13話 筋書き

 

「助けてくれてありがとう。情けないところを見せちゃったわね。」

 

「ううん、無事でよかったよ!でも、どうしてマァムが捕まってたの?」

 

「私もよく覚えてないのよね。あの日ダイ達と別れて・・・多分そこからずっと閉じ込められてたんだと思うわ。」

 

 

 マァムはどこか他人事のようにそう言った。記憶がない分、特に苦しんだ覚えもないが故の態度であった。むしろその言葉を聞いて、ダイの方が痛ましい表情を浮かべることとなった。

 

 

「ごめん、もっと早く助けてあげられれば・・・。」

 

「いや、ダイが気にすることはないわよ!?そっ、それにしても、どうして私が狙われたのかしら。ダイやクロコダインは無事だったのに・・・。」

 

「んー。嬢ちゃん、その首飾りを見せてみな。」

 

 

 石像が喋ったことに驚きつつ、マァムは胸元から首飾りを取り出してヴェルザーに見せた。それをしげしげと見つめたヴェルザーは、納得したように頷いた。

 

 

「輝聖石か。それも中々の上物だ。こいつにゃ色々効能があるが、今回は邪を払う力だったり心の力を増幅する部分が効いたんだろ。」

 

「そう・・・また先生が守ってくれていたのね。でも、それがどうして狙われる理由になるの?」

 

「お前、正しく(・・・)記憶を保持してるだろ?それがあいつらにとって不都合だったんだろうぜ。」

 

「正しく・・・?詳しく聞かせてほしいわ。」

 

 

 マァムがそう尋ねると、ヴェルザーは得意げに説明を始めた。ふんふん、とマァムが頷きながら聞く一方で、ダイは複雑な表情を見せた。

 

 

「なるほどね。つまり、私がいると違和感に気付いて、この世界のあり方を元に戻そうとしてしまうから、ってことね。」

 

「そうだ。あの魔族の頭領も気付いていたが、あいつはこの企みを邪魔しようとはしていない様子だったからな・・・だから見逃したんだろ。」

 

「・・・じゃあおれはどうして大丈夫なのさ?」

 

「決まってんだろ。あの小娘の狙いはこの世界を壊させないことじゃねえ。お前が来るまでこの世界を維持するのが真の狙いだったってことだよ。」

 

 

 ヴェルザーの言葉を聞いて、ダイはますます表情を曇らせた。見かねたクロコダインが、ダイが感じているだろうモヤモヤを代弁するようにして尋ねた。

 

 

「どうやらこのオレも、イルによって記憶や認識に手を加えられているということらしいな。しかし、ダイが無事な理由がそれでは・・・まるで出来レースではないか?」

 

「ああ、その通りだ。今俺達は、ご丁寧に敷かれたレールの上を走ってるってわけだよ。」

 

「しかし、何のためにそんなことを?」

 

「・・・もういいよ、クロコダイン。多分おれ、イルの考えてることがわかったから。」

 

 

 ダイはぱしん、と頬を両手で叩き、きりりと表情を引き締めた。その姿をマァムとクロコダインは心配そうに見つめる。その視線に気付きつつも、ダイは行こう、と言って歩みを進めた。

 

 危うさはある。しかし、『勇者』として使命を果たさんとするその姿を止めることはできなかった。

 

 

「(イル・・・あなたは私達の、ダイの親友でしょう?ならどうしてこんなことを?今のダイの姿は、本当にあなたが望んだ姿なの?お願い・・・どうかふたりが、前と同じように戻れますように・・・。)」

 

 

 マァムはダイの後ろを歩きつつ、胸の前に手を組んでそう祈った。また、祈ることしか出来ない自分を悔いた。

 

 そして、ダイを先頭に一行はその場所へと辿り着いた。重厚感あふれる扉を開くと、そこには不思議な空間が広がっていた。

 

 道はある。幅も狭くはない。だがその周囲は、ゆらゆらと不気味に光る怪しげな光に覆われている。

 

 もし足を踏み外せば、ただ落ちるだけで済むようには思えない。息を飲むダイ達に、ヴェルザーが声をかける。

 

 

「しっかりしろ。躊躇ったって進むほかねえだろ?」

 

「わかってる・・・でも、ここは一体?」

 

「ここは『狭間の世界』だ。もっとも、『狭間の闇の王』が扱ってるのとは少し種類が違うがな。あいつが扱ってるのとは違って、元の世界とこの世界を繋ぐだけの場所だよ。つまり・・・ここを叩けば、この気味の悪い世界をぶっ壊せるってわけだ。」

 

 

 ヴェルザーがつらつらとそう語ると、ダイの瞳に迷いが宿った。そしてヴェルザーに、その言葉の意味を尋ねた。

 

 

「ぶっ壊すって・・・大丈夫なの?」

 

「心配はねえよ。この世界はあくまでも精神世界・・・生き物が見る『夢』みたいなもんだ。目が覚めちまえば、いつかは忘れ去られる記憶だよ。」

 

『ほう、流石は『冥竜王』を名乗るだけはある。大した推理だな。』

 

 

 その会話に割り込む声があった。魂を削るような恐ろしい声に、ダイ達は顔を歪めてきょろきょろと辺りを見渡した。不気味な声はそれを笑い、ダイ達に語りかけた。

 

 

『心配せずとも、お前達程度に不意打ちなどする気はない。その道を進め。あまり待たせてくれるでないぞ。』

 

「・・・行こう。」

 

 

 誘われるままに前へ進み、そしてついに道が途切れた。ダイが背中から剣を抜くと、それに応じるようにして目の前の狭間が歪み、禍々しい魔力を放ちつつその存在が姿を現す。

 

 

「フフフ、待ちわびたぞ、虫ケラども。お前達がどれほど非力で、不完全なものなのかを、イヤというほど思い知らせてやろうぞ!」

 

 

 巨大な左手が巨大な火球を握り、右手が拳を握る。ふわふわと浮かぶその両手に挟まれて、悍ましい魔族の顔がダイの正面に浮かび上がった。

 

 

「このデスタムーアこそが、生きとし生ける者どもの王たる存在であるということをなっ!!」

 

 

 デスタムーア が あらわれた!!

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