イルとダイの大冒険   作:NBRK

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イルの世界での一幕です。


マルタにて、王子と兄の旅の始まり

 イルにカギを託してからというもの、カメハは父の執務室で椅子に縛り付けられて勉強する日々を送っていた。

 

 流石のカメハも厳しい父の前では日頃のわんぱくさを抑え、不満そうながらも教師の指示に従っていた。

 

 そしてある日、そんなカメハらのもとへ来客があった。わるぼうの後輩であるプチぼうである。そしてその要件を聞いて、マルタ王とカメハは血相を変えた。

 

 

「えっ、あいつらまだ戻ってないのかよ!」

 

 

 扉の間での出来事があってから既に3日が過ぎた。これくらいならイルが戻ってないこともよくあるが、問題はマルタの精霊たるプチぼうでも彼女らを呼び戻せないどころか、どこの世界にいるかもわからないという点である。

 

 かすかに存在は感じるので生きてはいる、だが何かに邪魔されて帰れない状況だろう、というプチぼうの知らせに、マルタ王は頭が痛いとばかりに片手で顔を覆った。

 

 

「カメハ!またお前は厄介ごとを持ち込みおって・・・。イル達が戻ったら覚悟しておけ!騎士団長、何か手がかりがないか兵士を使って調べさせろ!星降りの大会も近い、何としてもマルタの英雄と精霊を連れ戻せ!」

 

「ハッ!」

 

「ち、父上。オレも行かせてください。」

 

「ならん!お前は大人しくしていろ、これ以上事態を混乱させるな!」

 

「イ、イルはオレのその、友達、です。オレのせいみたいなものだし、何かさせてください。」

 

 

 そう絞り出すように言って、カメハは珍しく頭を深く下げた。その姿を見たマルタ王は内心驚いた。イルやルカとの出会いは、いつの間にかわがままな息子を成長させていたらしい。

 

 彼らに礼をせねばな、と思ったマルタ王は、その感情を隠すように厳しい表情で息子に告げた。

 

 

「いいだろう。ただし、いかなる結果になろうとお前への罰は変わらん、わかったか?」

 

「と、当然だ!・・・です。」

 

「ならば行け!王子として、必ずイル達を連れて帰ってこい!」

 

「はい!」

 

 

 そうして、カメハはプチぼうを連れて父の執務室から駆け出した。プチぼうがカメハに尋ねる。

 

 

「それで、まずはどうするの?」

 

「牧場に行く、まずはそこでルカと合流するぞ。」

 

 

 長い大通りを駆け抜け、カメハはイルの実家であるモンスター牧場へ辿り着いた。息を切らすカメハに、魔物の世話をしていたルカが駆け寄った。

 

 

「カメハ王子?どうしたのそんなに急いで?」

 

「はあ、はあ。実は・・・。」

 

 

 カメハはカギを巡っての一幕と、プチぼうから知らされたことについてルカに伝えた。妹の状況を知ったルカは顔を青ざめた。

 

 

「そんな・・・。でもどうしよう、プチぼうでも居場所がわからないなんて。」

 

「だからここに来たんだ。イルが蘇らせたあの人なら何かわかるんじゃないかって。」

 

「あの人?あっ、なるほど!よかった、ちょうどうちに来てるよ!人の姿で母さんとお茶してる!」

 

「よし!」

 

 

 目当ての人物が居ることに安心したカメハは、ルカの家へと踏み入った。その物音に、テーブルで向かい合っていた2人の女性が顔を向けた。

 

 その内の1人、美しい黒髪が特徴的な、賢者らしく荘厳な法衣を纏った女性が口を開く。

 

 

「おや、確かイルとルカの友人のカメハであったか。どうしたそんなに慌てて。」

 

「ミラクレア!頼む、あんたの力を貸してくれ!」

 

「なんだというのだ急に。無礼なやつだのう。」

 

「ミラクレア様、僕からもお願い、カメハの話を聞いてあげて。」

 

「ルカまでか。はぁ、そこへ座れ。まずは何があったか話せ。」

 

 

 聖竜ミラクレア、300年前仲間と共に狭間の闇の王を撃退し、封印せしめた古の大賢者が彼女の正体である。彼女が寿命で死ぬのを待つと言った闇の王に対抗するため、ミラクレアは自らの身体を竜と化すことで生き永らえていた。そして先日イルともについに宿敵を撃ち倒し、その生涯を全うした・・・はずだった。

 

 配合を極めたイルによって再び現世に呼び戻された際は流石の彼女も動揺したものだった。しかし大恩あるイルの為したことである上に、モシャスを覚えたことで人の姿を取れるようになったこともあり、彼女は二度目の生を楽しんでいた。

 

 そんな彼女はその強大な力ゆえ、なるべく人間社会には関わらないようにすると決めていた。しかし、それがイルの事となれば話は別である。カメハ達の話を聞いたミラクレアはカップに注がれた紅茶を飲み干し立ち上がった。

 

 

「わかった。イルの事であればわしも力を貸そう。まずは現場へ行くぞ、『ルーラ』!」

 

「うわっ!」「いてっ!」

 

 

 ミラクレアが呪文を唱えた瞬間、カメハ達は一瞬でふしぎな扉の目の前に移動していた。突然のことに驚き地面に転がったカメハ達を気にもせず、ミラクレアは扉に手を置き何かを念じるようにした。

 

 そしてしばらくして、ミラクレアは振り向いて首を振った。

 

 

「駄目だな。確かにわしもイル達の存在は感じるが、呼び戻すことは出来そうにない。より大きな力が必要だ。」

 

「そんな、何とかならないのかよ!」

 

「まあ焦るでない。力が足りぬなら集めればよいこと。わしはもう少しここでイル達のいる世界を探る。カメハとルカよ。お前たちはカギの世界に行き、オリハルゴン、リバイア、マンモデウスをマルタへ連れてきてくれ。」

 

「えっ、それってカギの世界のヌシって呼ばれてるモンスター達ですよね。僕たちに出来ますか?」

 

「イルはやったぞ?男子たるものこれくらいはやってみせよ。」

 

 

 有無を言わせぬミラクレアの物言いに、カメハとルカはうっ、とした表情をした。自信はなくとも、そのように言われては頷くほかない。

 

 

「仕方ねえ、行くぞルカ!プチぼう、頼む!」

 

「え、もう?わかったよ、まずはオアシスのカギの世界からだね。行ってらっしゃい、カメハ、ルカ。気をつけて!」

 

 

 プチぼうによって、ふしぎな扉が開かれる。その奥に向かって駆け出したカメハとルカ。イルを救い出す彼らの冒険が始まった。




イルさんは配合を極めた結果、かの聖竜を呼び戻すことに成功しています。他にも多くの強大なモンスターを生み出したことで、実家の牧場はカオスな様相を見せているとの噂です。

なお、ワルぼう不在の間はプチぼうがマルタの国を支えています。しかし代理がいるとはいえ、島の主が不在の期間が伸びればいずれマルタは衰退するので、国家的な危機であることに変わりはありません。

次の更新から、2章を始めます。
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