「おれは・・・諦めない!そのためにおれはここに来たんだ!」
「・・・そっか。なら、遠慮はいらないね!スラッシュ、『ジゴデイン』!!」
少し弾んだ少女の声に合わせて、スラッシュが黒い雷を呼び寄せる。ダイはそれを、逆手に持った剣の一振りで切り裂いた。
そして間髪入れずに飛び込んできたのは、口の中に炎と冷気を蓄えたヴェルザーだった。
「よく言ったぜダイ!喰らいやがれ!!」
「イル!危ねえ!!」
「きゃっ!・・・ありがとうスラッシュ。今のは、『オーロラブレス』・・・!?」
スラッシュによって庇われたイルは、目の前の光景に対して驚きの表情を見せた。間違いなく『オーロラブレス』はこの世に存在しないはずの技である。それを魔力切れ寸前の魔物が、一度見ただけでコピーしたというのだ。
目を見開いたイルの顔を見て、ヴェルザーがニヤリと笑って言った。
「ケッ、舐められたもんだぜ。竜の王たるオレ様に放てないブレスなんてあるもんかよ。」
「うん、素直に認めるよ。すごい。やっぱりキミの力を削いでおいたのは正解だった。」
「そういえば聞いてなかったな。なんでお前はオレを殺すでもなく、こんなチンケな姿にすることを選んだ?少なくともあの時、お前はオレを生かすも殺すも自由に選べたはずだぜ。」
「そんなに深い理由はないよ。ただ・・・元のまま放置してても、キミを殺しても、今の光景は見られない、と思ったからかな。」
なんじゃそりゃ?とヴェルザーは首を傾げる。分からないならそれでいい、とばかりに、イルは首を振って答えた。
「(うん、それにしてもヴェルザーは随分と回復してる・・・やっぱりダイくん、モンスターマスターの才能あるよ。)」
モンスターマスターと組んだ魔物は、野生では得られない力を得る。そしてその力の幅は、マスターの才能と、魔物とどれだけ心を通わせたかによって決まる。
もともと心優しいダイは、デルムリン島の魔物たちと心を通わせることには成功していた。しかし、モンスターマスターとしての強さには優しさだけでは不十分。さらに必要なのが、魔物たちが共感する目的意識、あるいは野望や思想、欲望の存在である。
ダイはこれまで、運命に流されるように旅を続けてきた。無理もない。ダイはほんの2〜3ヶ月前までは何も知らない少年だったのだ。それが今、『竜の騎士』、『勇者』という重い使命を背負って戦っている。
そんな中で、ダイが『勇者』でも『竜の騎士』でもない、己自身の思想を育むことは難しかった。しかし今、ダイは選んでいる。世界の『良い』流れに逆らい、ひとりの親友を連れ戻す戦いを。
魔物も人も関係ない。そんな色のある思いを受けて、燃えない仲間がいるだろうか。ダイの抱いた心の炎が、ヴェルザーの心をも奮い立たせ、秘めたる力を解放させていた。
「『ギガブレイク』!!」
「ぐっ!なんと、『闇の衣』を・・・!」
「バラン!?大丈夫なの!?」
「ほっとけダイ!大方オレの活躍を見て寝ぼけてらんねぇとでも思ったんだろ!」
燃えたのはヴェルザーだけではない。息子の頼もしい姿を見て、黙っていられる父親など居ようか。『竜魔人』と化したバランの放った『ギガブレイク』は、不意打ち気味にゾーマへと直撃し、バリン、という音とともにゾーマの纏っていたバリアを破壊した。
堪らずゾーマも後方へ跳び、戦況は再び距離をとった3対3の構図へと戻った。
「ようやく五分以上ってとこだな。ガンガンいこうぜ、ダイ!」
「そうしたいけど・・・まだイルにはフレイザードがいる。もし『
「なんだそりゃ?どんな技だ?」
ダイはフレイザードの究極奥義について、簡潔にヴェルザーに伝えた。ヴェルザーの石の竜眼が驚きで見開かれる。
「またそりゃとんでもねえもんを・・・。それじゃつまり、イルはまだ手を抜いてるってことかよ。」
「いや、恐らく撃てなかったのだろう。イルはダイと向き合うことを望んでいた。だからこそ、早々に決着が付きかねないあの技を避けたのだろう。」
「なら、今は・・・。」
ヴェルザーが冷や汗と共にフレイザードへと視線を移す。ちょうどその時、フレイザードがパン、と手を体の前に合わせた。そして、左右の体から熱気と冷気を溢れ出る。
合わさった指先のひとつひとつから、黄金の光が溢れ出した。そしてそれを指示した少女が、身構えるダイ達に向かって口を開く。
「手は抜かないよ。ダイくんが示してくれたその意思に、全力で応えたいから。それこそが、戦う者たちへの最大の礼儀だから・・・!だから、わたしに勝ってみせろ、ダイくん!!!」
「いくぜェ!『
5本の黄金の光が、真っ直ぐにダイ達に向かって襲いかかる。防御は無効、回避も望み薄であることは、ハドラーとの戦いで見せた追尾性から明らか。
それでも、今は出来ることをやるしかない。各々が回避のため、その足に決意を込めたその瞬間。
「そうはさせねぇ!いくぜ、師匠!」
「ケッ、しくるんじゃねえぞ、バカ弟子が!」
「「『
二筋の光が、ダイの前に立ち塞がった。