イルとダイの大冒険   作:NBRK

83 / 83
第24話 さようなら

 

 放たれた拒絶の言葉を受けて、その場の空気が凍りついた。イルを支える手を震わせつつ、ダイは搾り出すように問いかける。

 

 

「ごめんねって・・・どうして?イルにだって故郷があるのはわかるよ。でも、イルは戻ってきたじゃないか。ずっとじゃなくても、一緒にいてくれたって・・・。」

 

「ちがうよ。わたしは別に、マルタに帰りたくて断ったわけじゃないんだ。・・・もう無理なんだよ、こっちの世界に来るのは。」

 

「っ!だからどうして!」

 

 

 必死な表情をしたダイを見て、イルは困ったように微笑んだ。そして、ことの真相が告げられる。

 

 

「こっちの世界に来るために、これでも相当無茶したんだよ。わたしの配合した『狭間の闇の王』の力は、オリジナルには及ばない。次また世界を渡れるのは当分先になるんだ。・・・それに、その頃には協力してくれなくなってそうだしね。」

 

「そんな・・・でもそれなら、せめてもう少しこっちの世界に・・・!」

 

「そうしたかったんだけどね・・・。好き放題しすぎたツケを払わなくちゃ。ダイくん、わたしを見て何か気付かない?」

 

「何かって・・・!?」

 

 

 ダイは改めて腕の中のイルを見て、目を見開いた。艶やかな赤い髪が、細く小さな指先が、少しくたびれた服の布地が、きらきらとした光の粒子に変わっていく。そこで初めて、ダイは腕の中の重みが少しずつ減っていくのに気が付いた。

 

 

「イル・・・知ってたの?」

 

「あはは、まあね。『邪配合』に手を出して、それで得た力も魔界のモンスターを従えるのにフル活用してたから。・・・もうわたしの体はボロボロなんだ。」

 

「っ・・・。」

 

「もう、そんな顔しないでよ。急に飛ばされた前回とは違って、今回はもし死んでもマルタで生き返れるように、ワルぼうとミラクレアが準備してくれてるから。だから、このお別れはそのままの意味のお別れだよ。」

 

 

 ダイ達の泣きそうな表情は収まったが、永遠の別れになることに変わりはない。辛気臭い空気を嫌うかのように、ヴェルザーが疑問を投げかける。

 

 

「そういえば、お前が魔界から連れていったモンスター共はどこに行ったんだ?今瀕死になってるのも、半分くらいはそのせいだったんだろ?あれは何のためだったんだ?」

 

「あれは、人とどうやっても仲良くなれなさそうな魔物をわたしが引きとったんだよ。ヴェルザーの下にいた魔物も居たよね。それで、どこに行ったかだけど・・・ごめん、みんな『配合』しちゃった。」

 

「はぁ!?数千体は居ただろ!?てめぇどんな化け物を生み出しやがった!?」

 

「・・・ま、それはそのうちわかるよ。大丈夫、化け物ではないし、悪い子にも絶対ならないから。」

 

 

 イルは意味深な言葉を残し、それ以上答えることはなかった。そしてその体から溢れる光が強さを増し、終わりの訪れを示す。

 

 体の輪郭がぼやけていく中で、イルは別れの言葉を告げていった。

 

 

「ポップ。デルムリン島で会った時とは見違えたね。ポップとお喋りするのは本当に楽しかったなぁ。ダイくんをよろしくね。」

 

「見違えたは余計だよ!・・・俺も楽しかったぜ。ダイのことは任せとけ、向こうで元気でな。」

 

 

「マァム。いつも優しくしてくれてありがとね。マァムは可愛いんだから、これからはオシャレもしなきゃダメだよ?」

 

「わたしこそ、イルがいてくれて楽しかったわ。オシャレ・・・うん、頑張ってみるわ。いつか、また会いましょう。」

 

 

「ヒュンケル。バルトスはこっちに残すよ。お父さんと仲良くね。」

 

「・・・お前に俺は救われた。この恩は絶対に忘れない。達者でな。」

 

 

「レオナさま。わたしの存在はちょっと複雑だったかもしれないけど、本当に何もなかったから!ダイくんと仲良くね!」

 

「なっ!べ、別に気にしてなかったわよ!・・・あなたはパプニカの恩人よ。改めてお礼を言うわ、本当にありがとう。またいつか、わたしの国に来てちょうだい。」

 

 

「アバン先生。わたしを一人前として見てくれてありがとうございました。ペンダントを贈りたいくらいって言ってもらえて本当に嬉しかったです。」

 

「私こそ、あなたの姿に学ばされました。人と魔族、私には片方しか選べなかったものを、あなたは2つとも掴んでみせた。この希望を全力で繋いでいくことを誓います。」

 

 

「ダイくん。」

 

「・・・うん。」

 

 

 そして最後に、イルはダイの名前を呼んだ。

 

 

「モンスターマスターって、かっこいいでしょ?」

 

「・・・うん。本当にそう思うよ。」

 

「にしし。勇者より?」

 

「うん。イルはかっこよかった。おれの憧れだよ。」

 

「・・・冗談。ダイくんもかっこよかったよ。もうきっと、『竜の騎士』の運命なんて関係ない。もし辛くなった時は、周りを見てね。人も魔族も竜も、きっとみんなが助けてくれるからさ。」

 

 

 ダイの腕の中から金色の光が立ち上り、銀色の雫がぽたりと落ちる。

 

 そして蛍が飛び去るように、光がぱあっと飛び散った。

 

 

「(ありがとう、みんな。さようなら!)」

 

 

 最後にそんな言葉が、頭の中に響き渡る。

 

 それからしばらくして、宿主を失った『ヘルクラウド』は地面に着地し、すうっとその姿を消した。

 

 暖かな光。広がる草原。そびえ立つ山々。遠くに見える街並み。純粋なる『この世界』の日常が戻ってくる。

 

 ダイは2本の足でしっかりと地面を踏み締め、青い空を見上げた。立ち尽くす彼の周りを、人が、魔族が、竜が、支えるようにして囲っている。

 

 『竜の騎士』の運命は変わった。母なる竜の願いに応えた、ひとりのモンスターマスターの手によって。

 

 きっと、その物語の題目はこうだろう。

 

 

 『竜の願いごと(ドラゴンクエスト)

 




次回、エピローグです。
金曜が土曜日に投稿します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【完結】夢見る癒して(作者:万歳!)(原作:ドラゴンクエスト)

マスタードラゴンが生まれる以前から、人間になることを夢見てきたホイミスライム、ホイミン。▼だがその願いは叶わず、時を超えて彼は、まだ何者でもない幼い魔物使い、リュカと出会う。▼勇者たちと共に戦い、勇者の背中を知るホイミンが選んだのは、運命を導く者ではなく、リュカの「友達」として生きる道だった。▼pixivとマルチ投稿中▼※本作は▼・原作死亡キャラの救済あり▼…


総合評価:615/評価:8.82/完結:37話/更新日時:2026年02月10日(火) 19:19 小説情報

転生大賢者の冒険(作者:怪盗218)(原作:ダイの大冒険)

現代日本から転生した先は、なんと【ダイの大冒険】の世界だった。▼その世界で俺はダイの相棒ポップとして生きていく。▼もう日本に戻る手段はない。俺はこの世界で生き延びるために、必死に修行を行う。▼はたして、俺は魔王軍との戦いを生き延び、その先の人生を掴み取ることができるのか。


総合評価:12507/評価:8.5/完結:223話/更新日時:2025年09月06日(土) 21:00 小説情報

転生したら大魔王の娘だった(作者:残月)(原作:ダイの大冒険)

目覚めたら、大魔王の娘になってました!?これはダイの大冒険の世界で大魔王バーンの娘に転生した少年の話。▼※以前、投稿していた物を再編集した物です。


総合評価:8342/評価:8.18/連載:77話/更新日時:2026年06月03日(水) 17:00 小説情報

ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ(作者:ポップ)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ドラクエ3で勇者一行の一員だった女賢者さんが、大魔王ゾーマを倒した後に遊び人になって、お酒を飲んでいたらダンまち世界に転移してきた話。


総合評価:4373/評価:7.94/連載:52話/更新日時:2026年06月23日(火) 13:19 小説情報

この狩猟生活に祝福を!(作者:how-kyou)(原作:この素晴らしい世界に祝福を!)

このすば×モンハン2ndG。このすばらしい世界に祝福を!のカズマさんの転生先がモンスターハンター2ndGのポッケ村だったら?と妄想して書いてます。ストーリーも2ndG準拠ですが、進行上同シリーズ別作品の要素が出てくると思います。多少キャラ変(カズマさんに男気プラス)。pixivにも出してます。


総合評価:858/評価:8.81/連載:20話/更新日時:2026年06月18日(木) 20:40 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>