【速報】ブルマ寝取ったったwww【悲報?】   作:粗品もんすたー

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がんばった!褒めて!


善の偉人は報われるべき

 

 

 

 

 

 自然豊かと言えば聞こえはいいが、実態を見ると本当に自然()()ない秘境の地。

 湖に映る満月は風雅な景色を演出するのに忙しく、自らの美が生み落とす魔力に無頓着だ。

 

 魔力。そう、魔力である。

 

 古今『月』というのは狂気と隣合わせ。嫉妬深い女神の象徴として、愛する者を狂わせる。

 ただのおとぎ話、神話でしか語られない因襲であったなら、どれほどよかったことやら。

 根も葉もない創作ではない。火のないところに煙は立たない。たちが悪いことに、月は殊更に一つの種を愛してしまっていた。よりにもよってサイヤという、この宇宙で悪名高い悪魔達を。

 

 月は狂気と祝福を抱き合わせ、サイヤという種に特別な加護を与えるのだ。猿のものによく似た尾を持つ者へ狂気を与えて、対価として力を授ける。悪魔さながらの醜い大猿へ変貌させてまで。

 

 地球という辺境の惑星で、月にまつわる狂気が語られていたのはただの偶然。だがサイヤをはじめとする宇宙の脅威を知らなかった星は、運命に導かれるようにして一体の悪魔を受け入れてしまった。

 悪魔の名はカカロット。月の満ちた夜に本領を発揮する災厄の使者。地球に落ちてきた時は赤子に過ぎなかったが、長じたなら悪魔的な本性を露わにして、この星を地獄に変えていただろう。

 

 だが、一つの偶然が悪魔を生まれ変わらせた。

 

 高い所から落ちて頭を打った。文字に起こしてみればただそれだけ。それだけで赤子の自分を拾い世話してくれていた老人にも懐かず、暴れていた赤子は無邪気な子供に変貌してしまったのだ。

 

 やがて赤子はすくすく育って少年になり、養育してくれた老人と共に平和に暮らすようになる。

 老人が高名な武人だった上に、聖人のように優しかったのは幸いという他にない。

 月の魔力によって狂い少年が大猿と化しても、必死になって打ち倒して被害を出させなかった。

 そして大猿に変身する化け物である少年に、変わらず愛情を注いで育てていたのだ。

 老人、孫悟飯は間違いなく偉大な人だった。

 

 しかし地球でも屈指の強さを持つ武人でも、大猿を倒すのは困難を極めたのだろう。再戦の機会がもう一度巡ってきた時に、少年を殺さずに制圧するどころか、自分も無事に済むとは到底思えなかった。故に少年、孫悟空を育てた悟飯は、孫とも息子とも言える幼い子供に言い含めた。

 満月の夜には大猿の化け物が出て危ないから、決して外に出てはいけないと。無邪気な悟空は疑いもせずに言いつけを守り、満月の日はすぐに眠って、満月の夜をやり過ごす日々を送っていた。

 

 だが悟空は子供だった。素直な良い子でも、我慢は利かない。

 満月の夜のことだ。晩御飯が美味しくて、いっぱい食べて、いっぱい飲んで、悟空は早くに眠った。悟飯にも油断はあったのだろう、悟空が尿意を感じ夜更けに起きたのに気づかなかったのだ。

 悟空も言いつけを破る気はなかったが、尿意を覚えてしまったのだから仕方ない。おまけに悟空と悟飯が暮らす家は簡素に過ぎてトイレがなく、ちょっと外に出てすっきりするしか方法はなかった。だから悟空は悪気もなく外に出て、用を足したらすぐ家に入ればいいと思ってしまった。

 

 悲劇だった。

 

 綺麗な満月を、生まれて初めて目にした悟空は感慨に耽るも、すぐ異変に襲われて我を見失う。

 些細な不運は連鎖した。

 この日悟飯は熟睡してしまい、悟空が大猿に変身してしまっても目を醒まさなかったのである。

 果たして大猿と化した悟空は正気を失くし、本能に突き動かされるまま暴れ出して、近くにあった家ごと、寝ていた悟飯を踏み潰そうとしてしまう。斯くして悟空は親同然の老人を、自らの手に掛けて。

 

 ⸺⸺手に掛けて、しまうことはなかった。

 

 

「っっっ!? な、何事じゃ……!?」

 

 

 一帯が激しく揺れ、すわ大地震かと錯覚するほどの振動が起こったのだ。

 これには寝入っていた悟飯も飛び起きて、慌てて近くで寝ているはずの悟空の安否を確かめる。

 咄嗟に子供の心配をする悟飯は真の人格者だ。だがそれだけに、いるはずの悟空がいないと気づいた悟飯の慌て様は酷かった。酷い揺れで目を覚ました老人は、大きな氣と気配を感じていたからである。

 

 

「ご、悟空か………こりゃ、わしも年貢の納め時かのう………」

 

 

 冷や汗。

 

 悟空の氣が、10倍も大きくなっている。即ち悟飯が最も恐れていた事態が起こっている証拠。

 

 武人の顔になった悟飯は、瞬時に覚悟を決めて外に飛び出した。かつて大猿になった悟空より、今の悟空の方が幾分か強い。以前より衰えた今の自分では敵うまい。……戦ったら死ぬだろう。

 だが戦わないわけにはいかないのだ。あの大猿を無視すれば、どれだけ酷い災禍が撒き散らされるか悟飯には想像がついていたから。あの優しい子供に、罪を背負わせるわけにはいかない。

 自分が止めねばならないのだ。それが悟空が化物になると知っていながら育てた己の責任。そしてただ止めるだけではダメだ、悟空が元の姿に戻った時、自分が死んでいたら悲しませてしまう。

 

 氣を練って外に飛び出した悟飯の覚悟は悲壮なものだった。

 しかし、悟飯は予想だにしないものを目撃してしまう。

 

 

「⸺⸺⸺!?」

 

 

 なんと自分が死を覚悟して戦い、なお敵わないだろうと悟っていた怪物……大猿が、地面に叩きつけられていたのだ。

 

 振動が起こり、揺れの正体を知る。

 悟飯が起きたのは、大猿が投げ飛ばされた際に生じた振動のせいだ。

 そして跳ね起きた大猿が何者かに挑みかかり、また投げられたのである。

 

 

 ⸺⸺グォォオオオオ!!

 

 

 怒り狂って大猿が起き上がり、空中で静止していた人影に掴みかかる。

 しかし人影は大猿の大きな手の一部、指を掴むと、信じられない腕力で豪快に上空に放り投げたではないか。そして悟飯にちらりと視線を向け、軽く会釈をする余裕まである。

 人影は藻掻きながら落下してくる大猿の尻尾を指差した。指先から伸びたのは恐ろしく薄く、鋭利な氣の刃。大猿の尾が切断され、大猿が素っ裸の子供の姿に縮みながら落ちてくるのをキャッチする。

 

 驚愕し立ち尽くす悟飯の許へ人影が降下し、抱きとめていた悟空を返してくるのに声が出なかった。

 

 人影の正体は、眉目秀麗な好青年。赤い軍服を着て、きっちりと軍帽をかぶり、青いスカーフを腕に巻いた偉丈夫だ。鍛え上げられた肉体の厚みは凄まじく、黒髪黒目の容姿は端麗の一言。

 だが見た目に騙されてはならない。伝説の武天老師の一番弟子だった悟飯は、青年の体に宿る途方もない氣の片鱗を感じ取り、彼を星の擬人化かと見紛うほど巨大に見せていたのだ。

 

 

「こんばんは、夜分遅くに失礼します。孫悟飯さんでよろしいでしょうか?」

「お、おお………ごほん! い、如何にもわしは孫悟飯じゃが………お主は………?」

 

 

 友好的に話しかけられ、悟飯は我に返る。

 それでも気圧されたままだったが、なんとか平静を取り戻そうと呼気を正した。

 青年は朗らかに握手を求めようとして、自分が悟空を返したばかりに両手が塞がっている悟飯を見て手を下ろす。代わりに小さく頭を下げて、用向きを丁寧に語りはじめた。

 

 

「失敬。俺は三蔵、ご覧の通り軍人です。元々近い内にお訪ねするつもりだったのですが、突如として大きな氣を探知したので急行させてもらいました。まさかこんな所で大猿を見ることになるとは思わず、いささか乱暴に大人しくさせてしまいましたが……その子に怪我はないはずです」

「………軍人さんじゃったか。近頃の軍人さんは、凄まじい強さをお持ちのようじゃのう」

「まさか。俺が異常なだけで、軍人全てが俺のような強さを持っているわけじゃありませんよ」

 

 

 苦笑した青年は、興味深そうに老人の腕の中で眠る少年を見つめる。

 悟飯が難しい顔で黙り込むと、三蔵と名乗った青年は肩を竦めた。

 

 

「幾らなんでも突然過ぎましたね。もしよろしければ夜が明け、昼になってから出直したいのですが、構わないでしょうか?」

 

 

 三蔵の申し出は、悟飯が未だ動転しているのを見抜いて、気遣ってのものだ。

 わざわざ仕切り直そうとしている青年の気配りに、悟飯は内心感謝して肩から力を抜いた。

 

 

「……お主はわしが命をかけて倒さねばならなかった大猿を、代わりに止めてくれた恩人じゃ。いつでも歓迎するとも。じゃがわしになんの用が? わしがお主の役に立てるとは思えんが……」

「ありがとうございます。用件は、簡単に言ってしまうと、その子に関してです」

 

 

 悟空に関して……? 三蔵の言葉が予想外で、悟飯は不思議そうに悟空と三蔵を見比べる。

 すると、不意に三蔵の腰に巻き付いていたベルトが動き出したのを見咎めて、悟飯は再び驚愕した。

 ベルトじゃない。三蔵が動かしたのは……尻尾だ。悟空のと同じ、猿の尻尾だ!

 

 まさか、血縁者? 悟空にも家族がいたのか!

 

 安堵、喜び、寂しさ。

 様々な感情が胸中に去来するのを感じ、目を見開いた悟飯へ三蔵は一礼して浮遊する。

 

 

「ではまた後でお会いしましょう」

「っ……ま、待ってくれい! ま、まさかお主、三蔵殿は……ご、悟空の……!」

「その件についても、悟空くんが起きてから、一緒に話しましょう」

 

 

 そう言われてしまえば、悟飯は何も言えなかった。

 飛び去って行くあの術……鶴仙流の奥義、舞空術だろう。とんでもない達人だった。

 

 またたく間に遠のいていく三蔵を呆然と見送った悟飯は、裸の悟空が眠りながらくしゃみをすると、慌てて家の中に戻る。服を着せてやり、寝台に横たわらせてやりながら、悟飯は思った。

 

 あの尻尾。間違いなく、悟空と同じものだ。ということは、三蔵という青年と悟空には血の繋がりがある可能性が高い。もしもそうだとすれば、これほど喜ばしいことが他にあるだろうか?

 倒されたにしては気持ちよさそうに眠っている悟空の頭を、悟飯は優しい顔で見詰めながら撫でる。

 

 

「よかったのぉ、悟空。お主は、天涯孤独ではなかったんじゃな」

 

 

 老い先短い自分の、唯一の心残り。

 自分が死んだ後、悟空がどうなるかだけが心配だったが……あの青年に悪の氣はなかった。

 安心した。心の底からだ。悟飯は我が子のような少年の頭を撫でながら、窓から見える満月を見る。

 

 

「………うむ。いい、月じゃな」

 

 

 

 

 

 

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