【速報】ブルマ寝取ったったwww【悲報?】 作:粗品もんすたー
「もう一度聞いてやる。テメェらは何者だ」
悟空に瓜二つレベルで似ている男と、見覚えのない青年、どちらの氣も素の俺に匹敵する。
超サイヤ人2になれる今の俺とだ。コイツらがサイヤ人で、同じ形態になれると仮定した場合、無駄に戦う選択肢は選び辛かった。更に上のステージへ形態移行できる可能性があるから尚更に。
正体不明かつ戦力が不透明な奴に、軽率に手を出すのは愚策と判断する。対話で終われるならそれに越したことはない。俺だけなら渡り合える自信はあるが………余波で地球がヤバいのだ。
コイツらが敵なら片割れで俺を足止めし、もう片方で星を破壊する戦術も取れる。ミラがその手合いである可能性を懸念していたから、なるべく対処が間に合うように、地上じゃなくて成層圏ギリギリにぶっ飛ばしたのだ。仮にミラやコイツらがそういった戦術を好まないのだとしても、人ってのは追い詰められたら何をするか解らん。である以上環境に配慮するのは地球人として当然だった。
そしてそうした配慮は戦闘時において俺のパフォーマンスを著しく制限する。強敵と対峙した場合、特に現実に起こり得る魔人ブウ戦を想定すると、現時点の俺じゃあ殺し切れはしないだろう。
俺が殺し切れないという事は、イコールで地球の破滅にダイレクトで繋がってしまう。だからこそ最優先で、地球という星を防護するシステム、惑星天蓋バリア発生装置『釈迦如来掌』の開発を急ピッチで進めているが、完成まで最低一年は掛かる見込みだ。それまで地球上での戦闘は避けたかった。
俺の誰何に対し、即答はない。
バーダックとやらは明後日の方を見て退屈そうにあくびしており、完全に青年へ対応を投げている。
で、相方に丸投げされている青年はといえば、小声で誰かと話し合っているようだった。
通信機でも持っているのか、はたまたあの有能な界王のように、遠方の奴と思念で話してるか。どちらでもいいが、さっさと答えて欲しい。こちとら後の予定が詰まってんだから。
「トワとミラは既に撤退しているようです。ここにトワ達がおらず、法師様がここにいるという事は、奴らは彼に撃退されたか………あるいはなんらかの目的を達成したのだと考えられます。ここで事情を話さないと、逆に歴史は改変される恐れがあるんです。法師様は未知の脅威にも備え続ける人だ、既知となった脅威を捨て置く事は絶対にしない。だからこの人にだけは話すべきです」
地獄耳を澄ますと、青年が小声でそんな事を言っている。
俺という人間の行動理念を、深い部分で知悉しているかのような口ぶりだった。
トワという前例がある。コイツも未来人なのかもな。なら悟空似の男は悟空の子孫かもしれん。
じゃあコイツは? 地球人の線はない。これだけ強大な氣を、地球人は自前じゃ持てんだろう。氣を感じ取れるから人造人間の線もない。やはり地球生まれのサイヤ人だと仮定しておくべきかもな。
悟空の息子の孫悟飯、悟天、名前は忘れたが悟空の孫娘、ベジータの息子のトランクス、こっちも名前は忘れたが娘、いずれにも該当しない。なら孫世代か曽孫世代、もっと後の未来の奴の可能性も考えにゃならんが………流石にそこまでいくと考えるだけ無駄だろう。解らんもんは解らん。
コイツの様子を見るに、コイツらには現場に出てない上司がいるのだろう。
頭が硬いのか、取り扱いに困る案件を前に熟慮しているのかは分からんが、上司らしき奴が考えを纏めるまで待たされるのも気に食わん。いつまでも判断に迷われてたら俺の時間が勿体無い。
しょうがない。ここにいない上司らしき奴が、決断しやすいように話を振ってやるとしよう。
どう話を振る? 何を言えば食いついてくる?
自称未来人である暗黒魔界のトワとミラ。
小声でのやり取りで出た歴史の改変とかいう言葉。
この二つを絡めるだけで、なんとなく察せるものがある。
俺は魔人ブウ編の後にも続きがあるなら、話の導線はどこにあるかと考え続けてきたからだ。
空前の大ヒット作品として昭和から令和まで長寿を誇ったなら、様々な媒体で取り扱われるのは想像に難くない。令和で例えるならアプリゲーム化なんてその最たるものであり、コンシューマ向けゲームなども多岐に渡るはずだ。自社の商品を大々的に打ち出すなら、相応の扱いもされるだろう。まして令和ほどの技術がない昭和なら、取り扱い方なんて限られてくる。大別してアニメ化かゲーム化だ。海外展開されてたら実写化して大コケする、ある種の通過儀礼、洗礼、伝統的な経験もするかもだ。
仮にゲームとして商品を制作するとして、主な購買層である原作ファンに受け入れられそうなストーリーを練るならば、敷居が低そうなのは物語の歴史の追体験とかだ。別媒体でも似たようなものはそこそこある。するとトワとミラが敵役になるなら、役回りはここにいる青年が言う『歴史改変』になるだろうし、それを阻止する味方サイドとして、歴史を管理・保護する組織がある事になるだろう。
振る話は纏まってきた。氣の操作で思考を高速化させ、脳みそをフル稼働して考えた内容を、培った外交能力で出力していこう。大丈夫だ、俺なら絶対に上手くやれる、そんなマインドを作る。
「ハァ………」
露骨に、しかし自然と溜め息を吐いた。青年がぎくりとして俺を見る。
どこかから見ているらしい奴の目にも、俺が苛ついてるように映るだろう。
演技だが、演技じゃないからだ。実際俺はわざと自分の心を操り苛つかせていた。
形としては上司と部下が悠長に相談し、長々と客を待たせていることを思い出させてやったわけだ。
「お前らがトワの一派じゃねぇのは分かる。奴らの味方だってんなら、あそこで撤退を選ぶメリットはないからな。そんで、お前らがどの
「なっ………」
青年が驚いている。この反応………俺が五感も強化して、地獄耳になれるって知らなさそうだな。俺に聞かれてるの前提で話してたにしては、ちょいとばかし大袈裟な驚き方だ。
上辺に関しては知ってるし、人柄も知ってはいそうだが、コイツと接点があったかもしれない未来の俺は、余計なことまで長々と教えてあげてはいないと見て良さそうだ。さっきの小声でのやり取りも、俺にはちっとも聞こえていないと思ってるんだろうな。ならそのように振る舞うか。
「お前らの仕事はタイムパラドックスの阻止ってとこか? 俺が関わることで、未来が変わると困るんだろ。もしそうならとっとと話した方がいいと思うぜ。さもなきゃ俺はやるべきことをやるだけだ」
「ほ、法師様………貴方はまさか、オレ達のことを知っていらしたんですか?」
「知ってるわきゃねえだろ。幾ら俺でも未来予知なんざできねえからな。今のは推理だ。トワの奴がわざとらしく、これみよがしにペラ回して、俺に教えてくれた情報も踏まえてのな」
驚愕したような反応をされるが、それは些か飛躍し過ぎだ。ってかコイツが馬鹿じゃねえなら、自分の立場の秘匿性ぐらい理解してるはずで、俺の立場では知り得ないことぐらい分かるだろ。
なのにこういう反応が出るってことは、コイツの中の三蔵法師って奴は、とんでもない知恵者か何かになってるのかもしれんな。切れ者扱いは背中が痒くなるが、都合がいいからノっとこう。
「いいか? 俺はお前らがトワ達の敵だと見ている。タイムパラドックスの阻止が目的だってんなら、俺が誰かに殺されたりすんのは困るわけだ。お前らには俺に危害を加える選択肢はないだろ」
「それは………」
「今すぐに正直に説明しないなら、俺はお前らが困るタイムパラドックスを起こしてやる。具体的な例を挙げるなら………そうだな、トワ達がいなかったらやりそうにない事だ」
「………例えば、どんな事ですか?」
顔を強張らせ、ひくひくと口端を痙攣させながら、青年が恐る恐る訊ねてくる。
俺はそれに肩を竦め、本当にやらないといけない事を瞬時に計算しながら口を開いた。
「あんな奴が好き勝手に時間の流れを渡り歩けるなんざ、冗談にしたって笑えねえ。俺の個人的な倫理観やら情やらで、判断を鈍らせていいラインを越えてやがる。ならやる事は簡単だろ。戦力の増強だ」
それも可及的速やかに、だ。
俺は俺の人間性の維持を高い優先順位に置いてるが、地球という住処の安全性には劣る。
倫理や道徳を捨ててでも、俺は必要ならやらねばならないことが幾つもあった。
「まず手始めに、人造人間の大量生産だ。今はまだヴァイオレットしかいねえが、最低でも十万体は確保する。世界中から凶悪犯を集めて部下に実験させ、即戦力をかき集めるだろうな。俺なら」
嫌だが、やる。俺ならやる。やれてしまう。
確信を込めて言うと、青年は絶句し、バーダックという男は面白そうに口笛を吹いた。
「そんでそれと並行して、根本的な事態の解決を図らにゃならん。時を渡ってくる敵がいるなら、それに対抗する術が必須になるだろ? ブリーフさんや他の天才達に
つらつらとこれから俺がやっていただろうことを垂れ流す。
すると絶句していた青年を通して⸺⸺ではなくて、なんと俺の頭の中に直接“声”が響いた。
『ま、ままま、待って⸺⸺!』
「ん………?」
甲高い、少女のような声。
聞き覚えがあるような、ないような。伊○か○恵に似てるような………。
俺が一番好きだった声優の声すら、今ではすっかり掠れてしまってるが………似てる気がする。
いや、今はどうでもいい。気を散らすな、俺。
『そんな事されたら大迷惑よ! トワの奴、貴方にとんでもないこと吹き込んでくれたようね!』
「…………誰だテメェ。人の頭ん中でデケェ声出しやがって。がならなくても聞こえてるわ」
『あ、ごめんね三蔵くん。でもそんなことより! ホントに余計なことはしないでよ!?』
くん付け? 別に悪い気はしないからいいが。というか普通に耳が幸せな気分になる。
いかん、雑念だ。心を濁らせる余分を切除した俺は、隠す気もない怪訝な気持ちを口に出した。
「余計なことだぁ? 悪いが俺は、テメェがどこの誰で、なんで迷惑なのかも知らねぇんだよ。詳しく説明しろ、そんで俺を納得させろよ。でねぇと俺は、テメェらの事情なんざ無視するぞ」
『ヴっ………』
「………はン。いいねぇ、オレは嫌いじゃねぇよ。お前のその強気な態度は。地球の王はオレらの王様よりよっぽど
言葉に詰まる誰かさんを無視して、バーダックとかいう男が好意的に言った。
ベジータ王か。その名前が出るってことは、本当にサイヤ人なんだな。にしても俺が地球の王?
やめてくれよ。誰がそんなのになりたがる。まさか未来で俺は王様になってんのか? マジで嫌だ。
確かめないと落ち着いて話もできない。いや、できるが無視できない。
露骨に顔を顰めた俺は、バーダックの方を見て確認した。虚偽は許さんと睨みつけながら。
「バーダック。お前、サイヤ人だな? 地上にいる悟空に似てるが、血縁でもありそうな面だな」
「あん? なんでオレの名をテメェが………いや、そうか。この馬鹿が口走ってたな。迂闊な奴め」
横目に青年を睨んだバーダックに、青年は気まずそうに目を逸らす。
呆れながら俺に視線を戻したバーダックは、嘆息して返答した。
「如何にもオレはサイヤ人だが………悟空って奴がどこの誰だか知らんし、興味もねえ。下級戦士はタイプが少ないんでな、似てる奴ならそこら中にいる。俺の顔は珍しくもねえよ」
「………滅んだはずの惑星ベジータの生き残りが、なんだってこんな所にいる?」
「それに答える義理はねぇな。そういうテメェこそ、サイヤ人のくせしてなんだって地球にいる。サンゾウ、テメェが惑星ベジータにいれば、フリーザの奴なんざイチコロだったろうが」
殊の外、静かな語気で糾すバーダックに、俺は少しの沈黙を挟んだ。
こんな所でこんな話を振られるなんて面倒この上ないが、無駄に敵愾心を買うのも馬鹿らしかった。
物言いから察するに、バーダックはどうやら純血のサイヤ人にしては、そこそこ身内に情がありそうだし、身内を見殺しにした野郎と思われるのは損になるだろう。多分。
「お前、何歳だ?」
「あ?」
「だから年齢だよ。今お前は何歳だ」
「………んなもん一々数えてねぇよ。三十路ぐらいだと思うぜ、当てずっぽうだがな」
三十路近く。意外と今生の俺と歳が近いな。それでも俺の方が年上臭いが。
「ならテメェも知らねぇんだろうな。俺は地球で育った地球人だ。俺の体は確かにサイヤ人だが、知識としてしか惑星ベジータは知らねぇんだよ。おたくらの母星が滅んだのには、お悔やみ申し上げてもいいが、見たこともねぇ星の危機なんざ知ったこっちゃねぇ。駆けつけようにもアシがなかったしな」
「………チッ、そうかよ。テメェは飛ばし子か、その子孫ってわけだ。それじゃあしょうがねぇ」
「納得してもらえたら何よりだ。で、そんなもんよりお前、俺を地球の王って言いやがったな。なんでそんなふうに呼びやがった、まさか未来だと俺が王様になんざなってんのかよ」
聞きたかったのはそれだ。王様なんて冗談じゃない。絶対にならんぞ、そんな七面倒臭いもんには。
そういう想いを込めて睨みつけてみれば、バーダックは鼻を鳴らして肩を竦めた。
「言葉の綾だ。テメェの肩書は王なんて大層なもんじゃねぇよ」
「………本当だろうな」
「おうよ。ただし………地球の外じゃあ、テメェの方を王様扱いしてるかもしんねぇがな」
「…………」
皮肉げに揶揄する男に、俺は素直に顔を歪めてしまう。
確かに俺の立場と想定している今後の立ち回りでは、外部からだとそう見られるのも無理はないかもしれん。が、かといって王位なんて上げると言われても、断固として要らんとしか言えない。
承認欲求と名誉欲はもう十分満たされてる。満ちすぎて溢れ出て、吐き気さえするぐらいだ。なのにこの上さらに持て囃される様を想像すると、何もかも嫌になってしまいそうだった。
『バーダック、あんまり余計なこと言わないで』
「へいへい。それよか早くゲロっちまった方がいいんじゃねえか? トワの奴が何言ったかは知らねえがな、コイツはやると言ったらやるタイプに見えるぜ。そうなったら困るのはアンタだろ?」
姿が視えない女の声が聞こえた。今度は頭の中じゃない。五月蝿いって伝えたから気を遣ってくれたのか? だとすれば、意外と話は通じる手合いなのかもしれない。バーダックも援護射撃してくれた。
声がいい女はそれでも逡巡していたが、やがて観念したように小さく息を吐いた。ようやく話す気になったらしい。ただし、強く二人に言い含めるのは忘れなかった。
『………仕方ないわね。事情を話していいわ。けど二人とも、私のことは話していいけど、貴方達の名前含めて素性は伏せてね。色々不都合が出たんじゃ堪ったもんじゃないもの』
「はい、分かりました」
「………下手だねぇ、どうも。俺に知られちゃマズい素性ってだけで、大方の予想がついちまうぞ。そういうのは事前にバックストーリーを練って、偽名含めて考えとくもんだろうに」
『ヴっ………だ、ダメ出しされた………!』
呻く女に俺は苦笑した。腹芸の経験がないクチなのが丸わかりで、いっそ微笑ましくさえある。
青年の方も少し引いた顔で愛想笑いしてるが、敢えて素性を詮索するのはやめておいてやった。
「………法師様、それでは俺の方から説明させてもらいます」
「おう。なるはやで頼むわ、俺も暇じゃねぇんでな」
「はい」
戦闘は必要なしと判断し超化を解く。腕を組んで、青年の話に耳を傾けた。
⸺⸺女は時の界王神。トキトキ都。トワとミラは歴史改変をする、神の法での犯罪者。青年たちはタイムパトロール。時の巻物やら歴史改変に伴う危険性。改変時に生じるキリとかいうエネルギーをトワ達は収集しており、彼らはトワ達を捕縛、ないし討伐する必要に追われている、と。
聞いた上での感想は、なんだそりゃ、の一言。
つまりなんだ。時の界王神ってのも初耳だが、本来なら俺はなんの関わりもない、関わる方がおかしい騒ぎに巻き込まれたってのか。傍迷惑にも程があるだろ。対応策を練るのもダメとか頭が痛くなる。
苦々しい顔をして、悪態の一つでも吐き捨てたくなった。余計な仕事を増やしやがって………。
俺の機嫌が悪くなっていくのを感じたのか、青年は居心地悪そうにしている。
「………そういう事なら、何もしないでおいてやるよ。奴らの事はなかったことにする。それでいいな」
『解ってくれた!? ありがとう!』
「………礼はいい。それよりさっさと奴らを始末しろよ。ミラの野郎はブチのめしたが、後一歩のとこで覚醒しやがったからな。手間取るだろうが、こっちの仕事を増やすんじゃねぇぞ」
「なに? 覚醒ってのはどういうことだ?」
バーダックが思わずといったふうに口を挟んでくるのに、一応情報を提供しておいた。
コイツらが負けたりしたらとんでもないことになりそうだからだ。さもなきゃ知ったこっちゃない。
ぶっちゃけ神の法だか摂理だかは知らんし、どうでもいいが餅は餅屋だ。部外者がよく知りもしない分野に首を突っ込んだら、事態は悪化して余計にややこしいことになるのは明白である。
「奴は魔界製の人造人間だ。使われてる細胞にはサイヤ人のもんも入ってたんだろう。超サイヤ人化して、パワーアップしやがったぜ。今の俺じゃ手に負えんぐらいになってそうだ」
『はぁ!? なにそれ、聞いてない!』
「今言っただろ。まあ………仮に傷を癒す術をトワが持ってたとしても、早々に全快しそうにはないぐらいボコボコにしといたよ。半殺しどころか十分の九殺しにしてやったからな。ま、奴が元気になる前に見つけて始末できれば儲けもんだろ」
「あ、あのミラを、そこまで追い詰めてたんですか………流石は法師様ですね」
慌てふためく時の界王神をよそに、青年の方は感嘆していた。バーダックはというと好戦的な顔で俺を見てきて、ちょっと煩わしい気分になる。俺は敵じゃねえだろ、やるならミラを殺れよ。
にしても………“時の”界王神ときたか。界王神にバリエーションがあるなんてな。
“時の”界王神がいるなら、“力”や“技”、“知恵”を司る奴もいんのかね。
いや、ねぇな。もしいるなら、魔人ブウ編で出てくる名前も忘れた界王神が、付き人を一人しか連れずにやって来る事はなかっただろう。もしも敢えて一人で行かせてたんなら、とんでもない薄情者だ。
そんな他所事に思いを馳せていると、ふと俺は閃きが脳裏を過ぎるのを感じた。
「待てよ?」
トワ達を追ってるらしいのに、一向に捕まえられていないタイムパトロールとやら。
実際に交戦したミラと、俺に見せた勝利への渇望、執着。
またぞろ戦う事になりそうな気がしていた。だから対策しようとしていたんだ。
ってことは………展開的に、コイツらがミラ達を順当に討ち滅ぼせる可能性は低そうだな。
むしろまた歴史改変のために余計なことをやらかしてくれて、俺に迷惑がかかりそうだった。
「なあ、時の界王神様よ」
『なぁに?』
いい声だなホントに。
や、それはどうでもいいんだって。
俺はこの耳が幸せになる声の女神に、建設的な提案をすることにした。
ひとえに俺のために。ついでに歴史とやらのために。
「俺もその仕事に噛ませてくれ。おたくらも戦力は欲しいだろ? 役に立つぜ、俺は」
『へ? だ、ダメに決まってるじゃない! 貴方がいなくなったら歴史が変わっちゃうでしょ!』
「なんでだよ」
例えば今の俺が一瞬いなくなっても、帰る時に一秒後の今に戻れば、いなくなった事にはならねぇんじゃねえの? 何もずっとトキトキ都に居座る気はねぇし、なんなら戦闘の時だけでいい。
秒単位で跳べる時間を選べる訳じゃないなら、スケジュールを調整して予定を空ければいいし。歴史が変わるって言うが、ぶっちゃけここ数年は俺が抜けても差し障りはないだろう。
俺がそう言うと、時の界王神は年下のガキを叱るように、あるいは宥めるように言った。
『そりゃあ三蔵くんが来てくれたら大助かりよ。でもね、貴方は自分の存在を軽視し過ぎだわ』
「そうか?」
『ええ。三蔵くんは歴史の中でも重要人物なの、些細な変化でも途方もない大事になるのよ』
「………」
昔の俺なら自尊心が擽られて悪い気はしてなかっただろうな。
だがそんなに持ち上げられても、今はちっとも嬉しくない。むしろうんざりしてきた。
「分かった。じゃあせめて、こっちに迷惑はかけんでくれ。メンドクセェ」
『あ、それはごめん。多分無理だわ』
「………」
『わ、私は悪くないわ! でもトワ達が現れたら貴方に手を貸してもらうことはないって言えないの』
だったら最初から関わらせてくれよ。そう言いたいが、向こうには向こうの決まり事がある。
こっちが何を言っても、向こうも決まり事を曲げるわけにはいかないだろう。まさしく徒労だ。
「す、すみません………トワ達は神出鬼没で、行方を掴めてないんです。俺が不甲斐ないばかりに、ご迷惑をおかけして申し訳ありません………」
「謝んな。お前は悪くねえ」
ガシガシと頭を掻き毟って苛立ちを誤魔化す。
ホントに悪くないから責めるに責められん。責められるべきはあの魔族共だ。
前例があったならともかく、なかったなら対応が後手に回ってしまってる女神様も悪くはない。
「もういい。話は分かったからさっさと帰れよ」
『ご、ごめんね? せっかく協力するって言ってくれたのに、その気持ちを無下にしちゃって』
「いいって。むかっ腹が立ってしょうがねえが、アンタらに当たり散らすほどガキじゃねえつもりだ」
女神様に謝られると妙な気分になる。たかが人間如きにフランク過ぎるだろ。威厳とか権威とか気にして、偉そうに接してくれる方が逆にやりやすい。ぶっ殺してやる、って気になれるからな。
青年も何度か謝り、申し訳なさそうにしながら姿を消した。バーダックもだ。今度会った時にでも、いっちょやり合おうぜと言われたが、それに関しては無視しておく。約束しない。
「………あぁ、やだやだ。現場も知らねえで、無茶な案件持ってくる営業を見た気分だわ」
つまり、最悪。
俺は小さくストレスを吐き出して、地上へと降りていく。事の成り行きを見守っていた少年達は適当に誤魔化して話すとして、さっさと仕事を片付けにいかないといけない。予定を前倒しにしてでも。
歴史改変。女神様はそれを懸念していて、放置したら色々ヤバいのは理解した。
だがそれはそれとして、何もしないわけにはいかないだろう。バーダック達がしくじったら皺寄せはこっちに来るんだ。なら次の機会で仕留めるのが最善、最低でも敵の逃走経路を掴む必要がある。これ以上余計な仕事を増やされては堪らんしな、厄介な案件には早々にピリオドを打ちたい。
キリ、だっけか。改変時に生まれる未知のエネルギーは。俺の些細な行動の変化ですら敵に利することになるんだとしても、こればっかしは必要経費として割り切ってもらおう。
備える。ミラとの再戦に。トワを加えての戦いも想定して。これは、決定事項だ。任せられる仕事はヴァイオレットに全部投げて、余剰時間を捻出し、それらは全部修行に回そう。
ミラ達の再来が、俺の主観時間でいつになるかは知らんが、次を最期にしてやるつもりだった。
(大猿の力をモノにする。
SSJ3にはなれる。なれるが、氣の消耗を抑えきれずにいたから実戦投入していなかった。
平時と変わらないパフォーマンスを発揮できるSSJ2と同等に使いこなせれば、三倍・玄奘法や大猿の力の併用もできるだろう。いや界王に謁見して界王拳を教えて貰えれば、更に氣の出力は上がる。
(大猿の力を取り込んだ超サイヤ人………さしづめ超サイヤ人4ってとこか)
ナンバリングするとそうなる。そこに界王拳の二十倍を掛け合わせれば、超化ミラも倒せるだろう。奇策に頼った奇襲ではなく、純粋な力だけでも圧倒し、完膚なきまでに
今は絵に描いた餅だが、必ず成し遂げよう。
そこまでしてやっと、目標にしていたベジット超えも視野に入るだろうから。
⸺⸺今まで俺は、急ぐ気はなかった。
しかしミラという未知の強敵の出現を受けて、あと数十年も時間はあるし、焦んなくてもいいと後回しにしておくわけにはいかなくなった。
一匹発見数十匹ゴキブリ理論じゃないが、他に時間を超えて襲来する敵がいないとも限らない。
その可能性が出てきたのだから、悠長に構えてはいられなかった。
幸いというか、この身は不老である。加齢というリスクもなく、使えるものがあるじゃないか。
(神様に頼んで使わせてもらうか。ドラゴンボール。界王様に奥義伝授を頼んで………そんで。
⸺⸺エイジ749年9月1日。
奇しくも別世界にて孫悟空とブルマが出会い、摩訶不思議な冒険に出た日だった⸺⸺
ここで第一部、完!
第二部から悟空の冒険がはじまります。
高評価、お気に入り登録などで、応援よろしくお願いします!