【速報】ブルマ寝取ったったwww【悲報?】   作:粗品もんすたー

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お待たせしました。今回はやり忘れてた話を書きました。


外伝・三蔵とブルマ

 

 

 

 

 

 時を巻き戻し、エイジ751年5月。

 

 BE機関養成校に戻った三蔵は、校長室に入るなりどかりと椅子に腰を落とした。

 

 

「ハァ……」

 

 

 特大の溜め息。疲れたのだ。肉体的には一寸も消耗してないが、精神面は大いに削られた。

 異能で精神負荷を消却するのは容易いが、一仕事を終えた後であれば、この負荷もスパイスになる。背凭れに体を預け、リラックスした三蔵は、自らのデスクにカップが置かれるのを待った。

 仕事終わりの彼の傍には大抵、一人の女が付き従っているのだ。

 専属の秘書官のように傍に控えるのは、正装姿のバイオレットである。彼女は主人が日常で軸とするルーティンを弁えたメイドのように、珈琲を淹れて甲斐甲斐しく給仕していた。

 

 

「お疲れ様です、法師様。あの演説は歴史に残る名演でしたね」

「名演ね。ぶっつけ本番のアドリブ祭りだったんだがな」

 

 

 後から見返すと粗が目立って、正視に堪えない演説だったと酷評されそうだ、と。

 三蔵は部下の労いをそう自嘲して聞き流す。

 差し出された珈琲に口を付けて、精神的な疲労を肴に芳醇な薫りを楽しんだ。

 

 時の歯車は今なお回り続けている。これはあくまで小休止だ。頑張っている自分へのご褒美である。

 貴重な時間を浪費して沈黙に浸る男は、珈琲一杯の愉悦の内で、これまでの足跡を振り返っていた。

 ワーカーホリックなのかもしれない。

 暇があれば思索に耽る癖が染み付いていて、真に休まった日はないに等しい。

 魔族との戦いを経てより二年。たった二年で時代が変わったのだ。

 何があっても大過なく、いつでも対応できるようにと準備を整えるのに奔走していた。

 故に対応可能ではある。あるが……いざ事が迫ると、苦い気持ちになるのは堪えられなかった。

 

 なぜならば。

 

 

「早すぎんだろ」

 

 

 静寂を破って、愚痴るように呟く。

 

 早すぎるのだ。地球人が宇宙の脅威に直面し、フリーザ軍の存在を知るのが早すぎた。

 もっと万全の支度を整え、完璧な態勢で動き出すのが理想だったのである。二年は余りに早すぎた。武器も、防具も、システムも、多くのものが未完成なのだ。思い描いた理想には程遠い。

 

 地球防衛のシステムの構築は完了している。

 だが肝心要の、実働員の育成が追いついていない。有り体に言って、兵力が足りてなかった。

 

 三蔵は地球から離れられない。政治的にも、軍事的にも、最大戦力は本拠地から離れてはならない。

 強者の気功波一発で星が消え去るのだ、母星の守りを疎かにできるわけがなかった。

 だから理想通りに計画が進行した場合、もっと地球の戦力を拡大しておきたかったのである。

 

 後の展開を見据えた時、自分一人の手に余る強大な存在に襲われる可能性は高い。頼れる味方が絶対必要になる。その筆頭が孫悟空であり、彼の育成が中途のまま死なれる訳にはいかなかったのだ。

 いざという時はドラゴンボールがある、なんてことは考えていない。あれは切り札であり、切り札とは存在を秘匿していてこそ有効に作用するものである。安易に乱用して、ドラゴンボールがあるから大丈夫、なんてふうに心の隙を作ってしまうのは愚策だと三蔵は考えていた。

 

 

「バイオレット」

「はい」

 

 

 だが今更過ぎた事にあれこれ文句を垂れても不毛だ。何もかも自分に都合よく進むわけがない。

 三蔵はサッと意識を切り替えて、腹心の部下と言えるショートヘアの女を横目に見遣った。

 

 

「一年以内に成果が欲しい。最低でも有人惑星を見つけ出さねぇとな」

「大衆はすぐ目に見える成果を求めるものですからね。熱し易く冷め易い。いっそ敵でも構わないと」

「ああ。敵なら戦ったって成果が出るだろ」

「探査船を倍に増やします。年内に打ち上げる宇宙船は七つが限度だと思いますが、如何しましょう」

「六つまでだ。太陽系っつー田舎を出るのは確定してるが、乗組員の精神面に配慮して、地球に帰ってくる為のローテーションを組まにゃならん。中継拠点化する為の、小惑星の開発は国に任せといた」

「確認します。正規軍は地球防衛のために動かさず、BE機関が宇宙軍の役割を担うのですね?」

「その理解でいい。後は一年とちょい後を目途に出す七番目の宇宙船に、お前が艦長として乗り込め」

 

 

 下された指示に、バイオレットは智慧を絞って思考した。

 戦力の派遣順。装備の割り当て。機関の表舞台での立ち回り。

 上官の指示に含まれるものを計算し、自分が上官から何を求められているのかを推察する。

 

 彼女はBS軍時代に高度な教育を受け、機関のエージェントとして様々な経験を積み、多くのスキルを身に着けている。佐官クラスの軍人としても優秀な能力を発揮できた。故に理解できる。

 一年後を見据えてのスペースロケット⸺宇宙船の打ち上げペースは、BE機関の人員、装備、費用の大部分を使ってやっと成り立つものだと。三蔵は機関の活動を完全に宇宙へ移すつもりだ。

 そして七番目の宇宙船の艦長に自分を指名するということは……。

 

 

「私に対フリーザ軍の前線指揮官の任を託すと、そういうことですね」

「その通り。一番から六番は探査、航路の選定、拠点設営が主任務だ。最後のは国がやるが、全部を任せきりにすんのは不安だからな。現場判断でギリッギリ許容できんのは有人惑星との接触までだ。勇敢な外交官殿に倣って呼ぶが、糞便野郎の軍と戦うとなりゃ、巧く捌けんのは現状お前だけになる」

「外交、戦闘、なんでもやるのが七番艦の任務と仰るのですね。確かに私以外に適任はいません。ですが最悪のケースを想定させてください、もし万一フリーザ本人と相対した際はどうしましょうか」

「現段階で出くわすのは事故みてぇなもんだろうが……速攻の初撃で殺せ。遊ぶなよ、何もさせんな」

「了解しました」

 

 

 なんでもないように、できて当然とばかりに三蔵は断じ、バイオレットも特に疑問は持たなかった。

 宇宙の帝王フリーザを、まるで道端に転がっていたゴミを片付けるような軽さで扱えるのは、ひとえに両名ともがフリーザを軽く凌駕する戦闘力を持っているからだった。

 ()()()()()()()三蔵は言うに及ばず。人造人間としての性能をアップデートされ、二千万の戦闘力を有するバイオレットからすれば、フリーザ如きなんら脅威にはなりえないのだ。

 

 ただし、バイオレットに関しては不安がある。

 

 

「……ただまあ万一の事はありえる。念のため教えといてやるから頭に入れとけ。他言無用でな」

「は」

「フリーザは変身型の宇宙人だ。第四形態まで変化する。通常形態で戦闘力は五十三万、第二形態で百万から百五十万、第三形態で一千万ほどだろうよ。で、第四で一億近くに跳ね上がる」

「な……るほど……初撃で殺せというのは、真価を発揮されては、私も敵わないからなのですね」

「ああ」

「……法師様はどこでそんなことを?」

「知る必要はねぇ」

「承知しました」

 

 

 情報源は伏せる。知る必要はない、この一言でバイオレットは疑問も持たずに納得した。

 この御方が不要というなら不要であり、そも軍人なら情報統制は当然の措置である。

 素直に引き下がったバイオレットに、三蔵は更に念を入れて釘を刺すのも忘れない。

 

 

「言っとくが、フリーザ軍は前座だ。頭目含めてな。いつかは俺やお前だけじゃ手に負えん奴が現れる可能性が高い。何が言いてぇのか分かるな? 俺だけが強けりゃいい、ってもんじゃねえってことだ。有事の時に備えて、人材の育成は絶対に必要になる。いいな、バイオレット」

「必要な時以外で私は前に出ず、戦闘員に経験を積ませろということですね」

「ああ。任せたぞ。……頼りにしてる、完璧にやり遂げてくれ」

「……! はい、法師様!」

「下がれ、お前も忙しくなる」

「は! 失礼します!」

 

 

 自身の一言で喜色を満面に浮かべ、やる気に満ち溢れた女の様子に目尻を下げる。

 敬礼して退室した女を見送って、惑いそうな自身を自覚した男は瞬時に感傷を振り払った。

 女の体内にある発信機の反応が遠ざかるのを確かめた三蔵は、懐から通信機を取り出した。

 

 

「⸺三蔵です。そちらの進捗はどうなってますか、ブリーフさん」

 

 

 連絡を取ろうとしたのは、遂に表立って動けるようになったCCの社長だ。

 宇宙一の大天才である彼に力を借りないと、想定より大幅に前倒しせざるを得ない計画を、破綻なく成立させられはしない。元々協力してもらえることになっていたが、協議する必要はあった。

 しかし履歴を残さず、第三者に傍受もさせない通信機から聞こえたのは博士の声ではなかった。

 

 

『あ、三蔵さん!? ごめんちょっと待って、今手が離せないの!』

 

 

 顔が引き攣る。聞き覚えのある声だ。

 覚えがあるから声に連結し、顔も浮かぶ。

 頭痛がした。溜め息を吐きそうになるのを堪えて、眉間を軽く揉んだ。

 

 

「……ブルマちゃん? なんで君が……」

『パパなら隣にいるわよー? 三蔵さんの声がしたから掠め取っちゃった』

「……」

 

 

 手が離せないと言った口で掠め取ったと白状するとは……大した面の皮の厚さだ。

 三蔵の性格的に苛つくポイントではあるが、相手が幼女の頃から知ってる女の子となれば、さしもの三蔵とて怒るに怒れない。彼女の愛嬌には苦笑してしまい、悩ましい気持ちにもさせられた。

 

 ブルマは去年、養成校を首席で卒業した。

 教師もしていたゲロの子機から、もはや教えられることは何もないという太鼓判付きで。

 人智を超えたあまりの天才ぶりをアピールするために、ブルマは大手を振って家に帰ったのだ。

 BE機関に就職するのではなく、家にいた方が自分にとって都合がいいと判断したのである。

 

 CCの令嬢である彼女は、定職に就く必要がまるでないのもある。それを踏まえてどんな都合があるのかといえば、BE機関という上下関係がはっきりした所に入ってしまうと、自分と三蔵の接点が少なくなるという都合だ。自らの天稟を十分に自覚していたブルマは、外部協力者の立場にいた方が、色々とやり易いと考えたわけである。ひとえに、自分自身の恋路のために。

 

 

『それでパパになんの用? この私が手伝ってんだもん、大概のことは達成済みよ!』

「……マジ?」

『マジもマジ、大マジよ。ユンザビット高地にあった宇宙船の解析は大分前に終わってるし、解析して高性能化する設計図も提出して、宇宙船建造の工数は十分の一まで短縮したわ。ゲロ先生のエネルギー炉の小型化もやったし……後なんかあったっけ? なかったわよね?』

「……ホイポイカプセルの高性能化は?」

『あ、それは最初にパパがほとんど終わらせてたわよ。私は完成にちょっと関わっただけね。注文通り西()()()()()()()()()()()()()ようになってる。ね、スゴいでしょ私とパパ』

「相変わらず理解不能なぐらい凄すぎる……」

 

 

 天才と天才の相乗効果だ。父娘だから阿吽の呼吸でもあるのだろう。相性バッチシだ。

 無理難題としか言えないことを幾つも頼んでいたのに、もうほとんど終わっているとは……。

 

 三蔵はますます頭が痛くなってくるのを感じていた。

 ブリーフの実力は分かるが、ブルマがここまで頑張ってくれている理由を知っているからだ。

 

 

『ほら、三蔵さん。私メチャクチャ頑張ってるでしょ? 三蔵さんのためにここまでやってるの。そろそろご褒美があってもいいんじゃない?』

「……いや、まあ……流石にな。こうまでされて何もなしとは言えないが……」

『やりぃ! じゃ、決まりね! 今度デートしましょ! 時間作ってね! 約束だから!』

 

 

 超ハイテンションで喜ぶ声に、咄嗟に何も言えなかった。

 

 別に交換条件なんか出していない。あれそれをどこそこまでやってくれたらデートしてやる、なんて人間のクズみたいな事を言った覚えはなかった。これはあくまでブルマが勝手に言ってるだけである。

 だがしかし、こうまで献身的に尽くしてくれてる女の子を前にして、邪険にするわけにはいかない。ブルマという天才を無下に扱えはしない。ブルマは三蔵の、情と利の二つが揃わないと応じてくれない所を理解していたから、こんな出方をしているのだ。計算高くって惚れ惚れしそうであった。

 

 けれど、けれども。

 

 三蔵はブルマから好かれている自覚はあった。あったが、それは子供の頃から続いている。

 最初は子供の慕情だと微笑ましく見ていた。少女の頃は仕方ないなと苦笑して見ていた。

 それがまさか、こうまで長続きする一途なものになるなど、想像もしていなかった。

 甘く見てたんだなと何回後悔したことやら。でも仕方ないだろう。だって三蔵には、なんでブルマがこんなに好いてくれているのか分からないのである。そりゃあ優しいお兄さん的な接し方は心がけていたが、日頃から多忙な三蔵と過ごした時間なんてほんのちょっとしかないはずだ。ここまで好かれるほど好感度を稼いだ覚えはないし、無理に稼ごうとしていたわけでもない。

 

 

「ブルマちゃん」

『なにー? ……あ、パパそれ取って。うん、ありがと』

 

 

 彼女が現在進行形で取り組んでいるのは、極秘裏に依頼していた()()()()()()()()()だろう。

 依頼先はブリーフだったが、以前彼から娘にプロジェクトを奪われたと笑いながら言われたのを鮮明に覚えている。笑い事じゃねえよとツッコミたくて堪らなかったからだ。

 いくらブリーフ父娘が空前絶後の超大天才といっても、タイムマシンの発明は難航している。色んな理論を構築しては破棄して、どうしたもんかなと日夜頭を悩ませているらしい。

 当たり前と言えば当たり前だが、一朝一夕で出来上がる代物ではない。だが三蔵は知っていた、ブルマは本当にタイムマシンの発明という偉業を成し遂げられるのだと。何年掛かるかは知らないが。

 

 こんな神域を飛び越えた天才に。何より子供の頃から可愛がっていた女の子に不誠実な真似はできない。実利的にも、心情的にも、道徳的にも。だから三蔵はもう一度、言っておくことにした。

 

 

「……あのな。俺、君よりうんと年上のオッサンなわけだ」

『うん、知ってる。私が子供の頃から働いてるんだし。でもオッサンは違うんじゃない?』

「違わない。実年齢差は二十近いんだよ。君が俺を慕ってくれてるのは知ってるし、ぶっちゃけ嬉しいんだけどね、俺は君をそういう対象として見たことはないんだ。君を好ましく思ってるのは本当でも、それはあくまで昔馴染みの女の子としてのものでしかない。俺みたいな面倒な奴はやめた方がいいよ」

 

 

 前にも言ったことだ。二度目である。養成校を卒業していく時、告白された時に言った台詞だ。

 掛け値なしの本音、本心である。あの時ブルマは泣いてしまったが、悪いとは思っていない。

 冷静に考えてほしい。三蔵の立場はどう考えても厄介だ。非道な事をやってきているし、これからもやるし、個人的に親しい立場になるとそこに関わらないようにするのも難しい。

 なぜなら仮に三蔵と結ばれても、二人きりの時間なんてほとんど捻出できないのである。普通の幸せは到底望めないだろう。ビジネスパートナーになれても、人生のパートナーになどなれるわけがないのだ。三蔵はそんな辛い選択を、ブルマにさせたくはない。

 

 関係値が浅く情が薄い相手だったら、普通に交際して限られたプライベートを共有しただろう。

 しかしこんな三蔵でも、子供の頃から成長を見守ってきた女の子にまで冷淡にはなれなかった。

 その気になれば異能でどうとでもできるが、己の心を不必要に操る気は三蔵にもなかったのである。

 

 プラスして、もう一つ事情もあった。

 

 

「おまけに俺は不老長寿だ。君と人生を共にしても、一緒に老いていけない。人生の時間の大事さが、俺と君は釣り合ってないんだよ。そんな奴と一緒になってもお互い……いや俺が辛いだけだ」

 

 

 本当は長寿どころではなく、完全に不老な訳だが、流石に思考停止してそこまで話す気はない。

 三蔵は懇々と説く。本当は俺のどこがいいんだよとか、君にはもっといい奴がいるとか、そういう事を言ってしまいたかった。ベジータとかいるし、彼とブルマの間にトランクスが生まれるはずだから。

 だがそんなことを今のブルマに言っても訳が分からんだろう。ベジータって誰って話であるし、自分が矢印を向けている相手に、君には他に相応しい男がいる、俺なんかやめとけって言うのは、はっきり言ってブルマをバカにしている台詞だ。女の子に恥を掻かせたりするのは、男として、年長者として落第な振る舞いだった。三蔵は朴念仁ではないし、無神経でもないのである。

 

 三蔵はできる限り心を砕いた言葉選びをしている。しかしそれをブルマは鼻で笑った。

 

 

『じゃあ私も、三蔵さんと同じになればいいじゃない』

「……ん?」

 

 

 一瞬、何を言われたのか分からなかった。一瞬どころか、たっぷり考えても分からない。

 ブルマは堂々とした調子である。以前フラれた時みたいなか弱さがなかった。

 

 

『私もさ、最初は三蔵さん以外の男の人を見ようとしたわ。けど⸺

 

 ⸺三蔵さんよりも顔がいい男なんていないじゃない?』

 

 

 いる。普通にいる。

 

 

『三蔵さんよりも頭がいい男もいないわ』

 

 

 いる。そこら中にいる。なんなら養成校の、頭脳面のエリート候補達は全員頭がいい。

 

 

『三蔵さんより強い男もいないし』

 

 

 それは……今はいない。

 いないが、重要か、それ?

 

 

『三蔵さんより上のステータスを持ってる男はいないし、責任感が強い人もいないし、やり遂げる精神力がある人もいない。イケメンで、性格よくて、頭が良くて、心も体も強くて⸺私を好きでいてくれてワガママ聞いてくれる。そして何より三蔵さんより素敵な人はどこにもいなかったわ』

 

 

 そんな男、狙わなくっちゃ女が廃るわよ。ブルマはそう言って、声だけで分かるぐらい不敵に笑う。

 

 スゲェなこの娘……と他人事のように三蔵は思った。

 

 だってこれ、全部実の父親の近くで言っているのだ。

 普通は恥ずかしくってこんなこと言えない。ってか聞かされてる父親はどんな顔をしてるんだろう。

 ブルマをどうやったら傷つけず突き放せるか、考えてみても思いつかなかったから、どうでもいいことに意識が向いてしまう。ブリーフの表情を想像して、ちょっと笑いそうになってきていた。

 

 だが少々現実逃避している三蔵に、こんなところで気を遣うブルマではない。

 

 

『ね、三蔵さんが昔話してくれたわよね。三蔵さんの師匠だっていう鶴仙人と、そのライバルっていう亀仙人と同じで、三蔵さんも仙人になったから不老長寿なんだって』

「ブルマちゃんだけじゃなくて、地球人の大半が知ってることだけどな」

『うん。つまり私も仙人になれば条件は同じじゃない? そしたらさ、外見年齢も釣り合ってるんだし私達の間に障害はなくなるじゃん』

「……は?」

 

 

 何言ってんだコイツ。三蔵の単音の反応には、その感情がこれでもかと滲み出ていた。

 だがブルマは怯まない。むしろ確信しているように、自信を秘めた声で言い切った。

 

 

『氣っていうのは生体エネルギーで、仙人は氣を極めた末の形態なのよね。ゲロ先生の技術で氣はもう科学的に生産も運用もできる、ならどんな手段かまだ分かんないけど、仙人化の技術も作れるでしょ。少なくともタイムマシンとかいうトンデモよりは簡単に決まってるわ』

 

 

 簡単って………そんなの普通は無理だ。無理に決まっている。

 しかし残念ながらブルマは普通じゃない。

 できそうだ。いや、できる・できないじゃあない。

 やるのだ。ブルマにはやってみせるという凄みがある。

 

 三蔵は戦慄した。戦慄させられたから、もう変に誤魔化すのはやめて、率直に言うしかない。

 

 

「やめろ。できそうだとしてもやるな。そんな真似をして天涯孤独にでもなる気か? お前と仲のいい奴ら全員、お前を置いて死んでいくんだぞ」

『うわ、それは嫌かも……』

「だろ? だから早まるな。分かったな?」

『じゃあ三蔵さん、私が()()()()()()のはやめとく代わりに、三蔵さんが()()()()()()

 

 

 こ、コイツ……。

 

 頭だけじゃなくて、キリキリと胃まで痛くなってきた。

 だが、どうしてか、それも悪くないと思ってしまう。しょうもないが男の性だ、可愛い女の子に言い寄られては満更じゃないと感じてしまう。ましてやブルマは、ただ可愛いだけじゃない。

 

 

「……ハァ。不老長寿をやめようと思ったらやめられる、お手軽なもんだと思ってんのか?」

『分かんないけど、三蔵さんならできるわよ』

「俺をなんだと思ってんだか……できるけど」

『やっぱり! じゃ、それでお願いね!』

「……ワルガキめ。……デートだったな、時間作れたら連絡する。だからブリーフさんと代わってくれ、詰めなきゃいけない話があるんだよ」

『はーい。それじゃ、パパに代わるわね!』

 

 

 溜め息。通信機越しにも感じられる、ニヤついたような気配の博士に、またも溜め息を重ねた。

 

 

『三蔵くん。娘を頼んだぞ? あの娘を任せられるのはキミぐらいなものだからのう』

 

 

 簡単に言ってくれちゃって……気楽なものだ。

 嫌味の一つでも言ってやりたいが、大恩ある人なだけに頭が上がらない。

 事を軽く見ている向きがある親御さんを、真摯に窘めるのが精一杯だった。

 

 

「ブリーフさんも止めてくださいよ。どう考えても俺なんかやめた方がいい。俺の立場じゃあ、誰かを幸せになんてしてやれないんです。娘の暴走は止めるのが親ってもんじゃないんですか?」

『違うね。子供を支えるのが親ってものだよ、三蔵くん。娘が選んだのがろくでなしなら兎も角、気心知れてるキミならなんら憂うものはない。それに茨の道だという事ぐらい、うちの娘は理解しとるよ』

 

 

 普通の親なら二十近く歳の差があれば、娘の相手にするのは反対するものだろう。

 なんせ三蔵はブリーフと歳が近いのだ。三蔵が年下とはいえ、いくらなんでも受け入れがたいはず。そのはずなのに⸺ブリーフは一切頓着していない。世間一般的な感性からズレてるせいだ。

 

 三蔵は反論をやめ、心の中で呟いた。

 

 

(逆に俺の方が女々しいか、これ? いや俺なりに考えたら、どう見ても俺は地雷だぞ)

 

 

 有名人のパートナーなんて、どう見られて、どう言われるか分かったもんじゃない。

 ただ有名なだけならともかく、三蔵は立場が立場だ。面倒臭いだけである。

 

 三蔵の煩悶は、もうちょっとだけ続きそうだった。

 

 

 

 

 

 

 




次回から本筋に戻ります。
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