「……」
「うふふっ」
「……なぁグラベル、常に私の傍にいなくてもいいんだぞ? ロドスの中なんだし」
「わたしは貴方の影。ドクターがいつ奇襲されるかもわからないんだから、わたしがそばにいないとダメじゃない」
グラベルにはいつも助けられている。
それは確かにそうだ。
作戦においても
「それとドクター? ふたりっきりの時はセノミーって呼んでくれていいのよ?」
「ち、近くないか? グラベル」
「いけずね。ドクターは。ふふっ」
そう言ってグラベルは不敵に微笑んでいる。
グラベルはいつもこうだ。
私のことを慕ってくれるのは嬉しいが、彼女の執着は私から見ても少し異常である。
「ひどいわドクター。わたしはドクターに身を捧げる覚悟でいつもドクターの傍にいるのに……」
「気持ちは嬉しいが、それではいつかグラベルにも身の危険があるんだ。いやまあそんなグラベルに助けられている私がこんなことを言うのは都合が良すぎるとは自覚しているんだが」
「ふふっ。そうね。じゃあドクターには責任を取ってもらうっていうのもアリだと思うのよねぇ」
「……私に取れる責任は、君の命の保証と給料くらいだ」
それが私のロドスでの仕事でもある。
それくらいしかできない。
しかしそれもいつまでできるのかもわからない。
「……ドクターはわたしの事、女として見れない? 元奴隷のわたしじゃ嫌?」
「そういうことじゃない。そもそも私には、恋愛感情なんて抱いていい奴じゃない」
かつての記憶もない。
今の私はなんなのか。
これからどうするべきなのか。
わからないことも多い。
知らなければならないことが未だに多い。
「そんなことないわ。ドクターにだって誰かを好きになっていい権利はあるわ」
「権利というか、まあ……なんというか……」
「わたしはドクターに全てを捧げるわ。その上で都合よく扱ってくれてもいいわ。それでもわたしは貴方に尽くせるんだもの」
私の机の上で頬杖をつきながらそんなことをグラベルは言った。
彼女はどこか危うい。
私の命の危険がある、というわけではない。
彼女自身の命の危うさだ。
不敵に微笑むグラベルには、そう思わせる不安を常に感じるのだ。
「わたしはドクターを待ってるわ。ずっと」
グラベルからの明確な好意。
それを私は受け入れる訳にはいかない。
私はきっと、ロクな死に方はできないだろう。
それでも人類の存続の為に、私は生きなければならない。