えぇ?!俺がworld:Bに転生ですか?! 作:観測者
ということで午前と午後で二回更新します。
そしてトークショー開始まで40時間を既に切っているらしいですね。
一周回って正気に戻り始めました。
起床すると、見覚えのない景色が目に飛び込んでくる。いわゆる、知らない天井という奴だ。周囲を見渡すと、どうやらここが病院であるという事がわかった。呼吸補助器具は付いておらず、点滴なども行われていない。どうやら、ここに運び込まれてそう時間は経っていないようだ。
窓の外は少し赤みを残したすみれ色、院内にはまだ灯りがついていることから……恐らくは夕方だろう。
ベッドサイドを探ると、ブザーに繋がっているであろうスイッチが見つかった。躊躇いなく押す。少し離れた所で気の抜けるようなチャイム音がした少し後に……慌てた様子の看護師が病室に飛び込んで来た。
その看護師──イズミさんによると、俺は父に背負われて運ばれて来たが全身異常の無い健康体であり、経過観察こそするものの明日にでも退院できる状態であるらしい。その後に軽く口頭での検診を受けたが、特に問題無しという事で家族を呼んでもらえることになった。
「「シュウジ!!」」という声と共に、俺のベッド付近のカーテンが開け放たれた。息を切らして入ってきたのは、もちろん
ということで、二人が来た……訳だが、どうにも様子がおかしい。父さんは顔を真っ青にして、逆に姉ちゃんは顔を真っ赤にして、どちらも様子こそ違えど泣きそうな表情だった。
「まぁまぁ二人とも落ち着いて……ひとまず、俺は無事だから」
「……そうだな、
「……そうね」
どうやら、俺の寝ている間に何か話していたらしい。やだ?!私に隠れて内緒話?!と冗談めかして聞き出せるような事でもなさそうだし……ほとぼりが冷めた頃にでも聞ければいいな。
「現況について聞きたいんだけど……俺が運ばれて来てどれぐらい経った?検査されてることを考えると早くて数時間ぐらいかな」
「そんなところだ。病院には車と接触したと伝えてあるが……検査した医者も“余程打ち所が良かったのですね“と驚いていたよ」
こっそりと父の袖を掴み、手招きをする。顔を近づけてくれたので、耳打ちで質問した。(姉ちゃんに俺の現状はどこまで話したの?)と。
「別にもう隠すような事でもないからな。事件に関してはリョウコ刑事による取り調べの下に洗いざらい話させてもらった。そうでもしないと離してくれなさそうな勢いでな」
冗談めかして話す父だったが、一方の姉ちゃんは一気に顔を赤くして父に詰め寄った。
「当たり前でしょ!!シュウジが死にかけたのよ?!」
「とまぁこんな感じでな。すまないとは思っているが……まだ巻き込むには早いと思っていた」
「結局、私に何も話してくれなかったのは私が役に立たないと思ってたからなんでしょ?私はただ父さんの背中を追ってるだけの一般人で……肝心な時には役に立てなかった。こんなんじゃ、伝説の刑事になんて到底……」
そうして。姉ちゃんの瞳からは涙が零れ落ちていき……シーツの上に、ぽつぽつと染みを作っていった。
確かに今回、俺の救出時に姉ちゃんは居なかった。それは、紛れもない事実ではある。恐らくは安全を鑑みてどこかで保護してもらっていたのだろうが……それは、未成年に対する警察の姿勢として、至極正しいものだ。
だからと言って、リョウコは伝説の刑事になれないのか?
答えは間違いなく否だ。
その原動力こそ父親の死という最悪のものであったが、その名に甘んじることなく……色々な仲間と協力し、一部の被害者を救い出し……そして、最後こそ無念に終わったが、多くの人を救ってきた。それは、間違いないだろう。ただゲームマスターがカス野郎だっただけだ。
……そんな人が、こんなことで燻っていていい訳がない。
「それは違う!!だって俺は
しまった。と、そう思った時には手遅れで。
泣き腫らした目の姉ちゃんと、顔を青くしながら腕を組んでいた父さんが、目を見開いて俺の方を見ていたのだった。
「……シュウジ?お前のことについてはただ
「……ということは、俺の力については……」
「……当然、話していなかったな。今の今までは……」
……まぁしょうがない!切り替えていこう!
「……シュウジ?アンタまだ何か隠してるの?」
「今から話すことは信じられないと思うけど、できれば聞いてほしい。俺、実は未来が見れるんだ」
「……はぁ?こんな時に何言ってるの?」
「父さんに聞いてみてもいい。実際俺は父さんの未来を言い当てて……最悪の未来を回避したんだ」
「嘘よね?私だからって何でも騙されるとは……」
「いや、事実だ。俺も過去にシュウジには助けられている。その能力自体が誘拐事件の原因の一端でもあるが……」
そこまで言われると流石に観念したのか、姉ちゃんは大きく息を吐きだした。俺に催促するように手を出しているのだが……続きを話せと?了解。
「まぁそれでね、俺の知っている未来ではなんやかんやあって父さんが殉職してしまうんだ。そこで姉ちゃんが父さんの跡を継いで伝説の刑事になったって訳なんだけど……」
「詰め込みすぎじゃない?!というか、その説明だと私に仕方なく称号を継がせたみたいになってない……?」
「そこは問題ないよ。動機こそ悲壮なものだったけど、その未来での姉ちゃんは数多くの人を救ってる。名に負けないレベルの実績を残した。まぁつまり、何が言いたいかというと……ポテンシャルはあるんだし、今はまだじっと耐えて待つべし!ってことかな」
「何よそれ……結局今は足手まといってことじゃない」
「そこに関してはその通りだね。でも、ポテンシャルがあるってわかるだけでも良くない?それこそ、俺には見えなかったけど、いつか二人が並び立って伝説の刑事コンビ!なんて言われる日もあるかもしれないし」
「ふふっ、何よそれ……伝説の刑事コンビ?随分と個性的な呼び方ね?
……まぁいいわ。私が頑張り続ければいつかは父さんを追い越せるぐらいには凄い刑事になれるのよね?それで十分」
どうやらモチベーションは取り戻せたようで……よかったよかった。それなら、今後の話に移ってもいいかな。
「……ということで、だ。今後の方針を決めてもいいかな」
「何が……ということで、なのかはわからんが……まぁいいだろう。お前は確か、ゲームマスターにしばらくは干渉しない、と言われたのだろう?どれ程信用できるかはわからないが」
「そうだね。これに関しては個人的な勘になるけど……そこら辺の約束は違えないと思うよ。"ゲームマスター"と名乗るだけあって、明文化されたルールには厳格だから」
「それならば、しばらく様子見ということでもいいだろう。俺たちに干渉が来ないだけでも大分さける人手が変わってくる。奴の誘拐事件などの捜査は引き続き続けるが……しばらく様子を見て、それでも大丈夫そうならすこし警戒を緩めよう」
そう言うと、父さんは立ち上がった。恐らく今日は帰るのだろう。
「そうそう、聞いたとは思うけど明日退院だから準備よろしくね」
「わかった」「オッケー!」
そんな訳で、ひとまずは様子見という結論になった。父の失踪という目下の危機は脱したのだ。差し迫った事情がない以上、しばらくは安心して過ごせるだろう。
とはいえだ。俺の身体についてはどうにかして調べる必要がある。あれだけの傷を負ったのに、体表の目立つ痕どころか血痕すら消してしまうという能力。この世界の理にすら反しているものだ。
“ゲームマスターが嘘を付いた”という可能性も有るが、あまり有力ではない。あのゲーム狂いがわざわざ
とはいえ、馬鹿正直に父に事情を話す訳にもいかない。この世界で物理法則に反しているモノというのは、大体“消滅”に通じるモノ。ここで大きく流れを変えてしまうと、この先何が起こるかわからなくなってしまう。メインストーリーの核心となるモノなら尚更だ。
となると、やはり有力なのは自力で解析する、もしくは既に事情を知っている誰かに協力してもらうことだろう。既に事情を知っていて協力できる人物と言えば……現時点ではゲームマスターだけなのだが。
ということで、当分の目標はこうだ。ひたすらに勉強して、専門的な設備を利用できる大学に行く。父には、“自分の未来視について研究したいから”と言えばなんとかなるだろう。
そして、サブの目標を一つ定めた。これに関しては保険のようなものだが……まぁ、やらないよりはマシだろう。内容は至ってシンプル。自分の“想い”を鍛え上げるのだ。
この世界は今後、“想い”の強さとそれを増幅する
特に今は暇を持て余している。一応入院している以上激しい運動をする訳にもいかないし……大人しく、今から瞑想でも──
「シュウジさーん。夕食をお持ちしましたよ」
……あとでやろう。
そうしてあっという間に一日が経過し、無事退院することとなった。迎えに来た姉ちゃんが俺の着替えを忘れ、危うく外に出る服が無くなる珍事こそあったが……無事家に帰る事ができた。
そうして、俺は日常へと戻ることとなり──
──そうして3年もの間、俺は全く事件に遭遇しなかった。
ひとまずこれで小学生編は終わりとなります。
午後5:26にも更新予定です。