えぇ?!俺がworld:Bに転生ですか?! 作:観測者
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探偵事務所を出る頃にはすっかり日が暮れていた。ここに来るときはあまり気にしていなかったが……電灯で照らされた周辺を見てみると、放置されたゴミや清掃されていない落書きが目立つ。俺の住んでいる所よりは幾分か治安が悪いようだ。
始めて来る上に随分と話に頭を使ってしまったので、道順が頭からすっかり抜け落ちてしまった。電灯を頼りに地図を確認していると、「君、忘れものよ」と声をかけられた。
声を掛けてきたのは特徴的な襟付きの黒いミニワンピースと、電灯で照らされたボブカットの赤髪が目立つ女性……そう、
「ありがとうございます。わざわざすみません」
「いいのよ。トモコがこんなに長い間話を聞くなんて珍しいもの。
あ、それと……トモコから伝言よ」
「彼女はなんと?」
「"君が交渉を成立させたならば、父君から連絡してもらうように。急ぐ必要はなさそうだ。"ですって。彼女から連絡先を手に入れた上に、家族と話して貰うなんて……君、ここでバイトでもするつもり?」
探偵事務所で働く。確かにそれは、願ったり叶ったりな待遇だ。父の下にも情報は集まってくるが、やはり対象は捜査しているゲームマスター関連に偏ってしまう。その点、この事務所は主人公のタクヤがそのうち所属するだけあり、原作にてサイドストーリーで語られた数多くの事件を調査している。
更に、今俺の目の前にいる彼女──リサーチャーこそ、原作本編にて主人公一行に依頼と称して数々の特別なクエストを振り分けてきた張本人なのだ。当然、協力してもらえれば百人力だろう。都合もいいし、そういうことにして承諾は後々取ろう。
「といっても、声を掛けられたのは僕の方なんですけどね。話があるから後で事務所に来てくれって、学校の前で」
「それでよくこんな所まで来たわね……今回は良かったものの、不審者には気を付けなさいよ?」
「言われてみればその通りですね、気を付けます……
つかぬことを聞きますが、この付近から駅に向かうならどう行くといいですか?思ったより治安が悪そうなので」
「それなら、こっちの通りをこう行くと良いわよ。電灯も多めだし、比較的安全なの」
そう言いながら、彼女は俺の取り出した地図に蛍光ペンで印をつけてくれた。シンプルな上にわかりやすいルート取りで、彼女の"リサーチャー"たる所以を見た気がした。道もわかったことだ。リサーチャーに挨拶だけして、とっとと帰るとしよう。やることはまだ沢山ある。
「それでは、俺はこの辺で!ユミコさん、ご丁寧に色々とありがとうございました!しばらく忙しいとは思いますが……またお世話になると思います!では!」
そう言って闇の中へ走って行ったシュウジを見送っていたリサーチャーだが……ふと、何かに気付いたように独り言を呟く。
「そういえば、私って彼に名乗ったかしら?まぁ、トモコが教えたんでしょうね……"さて──では、君と共に働く仲間達を紹介しよう"とでも言って、教えたんでしょう」
リサーチャーが教えてくれた道は、車の通行量が多いだけあって明るく、先程の事務所と比べても数段は治安が良さそうだった。とにかく、ただでさえ帰宅が遅くなってしまったのだ。いち早く家に帰るのが先決だろう。
そうして家に帰った俺を待ち受けていたのは……
「──いくら何でも遅すぎるだろう!」
父さんからの説教だった。その通りです、ハイ。
「とはいえですよ、未来視で見た相手に声を掛けられたんです、折角なら話してみようと思うのも無理ないじゃないですか」
「それならそうと連絡を入れてくれればよかっただろう」
「それもまぁその通りですね。すみません……」
そう謝ると、父さんも流石に気になったのか、話し相手について聞いて来た。許された……
「それにしても、お前がこんなに遅くまで外に居るなんて珍しいな。今日会ったのはどんな奴だったんだ?」
「今日会ったのは探偵の人だね。名前はトモコ。今は"ヨウジ"って人について調べてるんだけど……」
「あの政治家か。黒い噂は聞いているが、なんせ俺の管轄外でな……」
「それで、未来視の内容なんだけど──」
「待て。お前のことだ。また何か大きいことが起こりそうな気がする。少し準備させてくれ……」
そう言うと父は目頭を押さえて天を仰ぎ……心構えができたとばかりにこちらを向いた。
「よし、話してくれ」
「これからその人がなんやかんやあって瀕死で下水道に潜伏するから、その人を追手に見つかる前に保護したい。ということで、これがその人の電話番号です。多分今ならまだ繋がるはず」
「……なるほど。警察に直接通報したり、仕事場に居る俺にそのまま掛けて来なかったのは……」
「公的に捜査するとマズいものを持ってたり、銃創で大けがしていたりするからだね。とはいえ、悪い人でないことは保証できる」
「俺が介入しない場合はどうなるんだ?」
「その場合も半死半生の状態で脱出して、生存自体はする。ただ、怪我を長期間放置したのが祟って半身不随になってしまうんだ。父さんが助け出せば、新進気鋭の名探偵に恩を売れる。情報源としてはかなり頼りになると思うよ」
そう言うと父は十数秒だけ腕を組んで考えていたが……すぐに返事が返ってきた。
「いいだろう。ひとまずはそのメモを貸してくれ。それに電話を掛ければいいんだろう?」
「ありがとうございます!これです」
幸いにも、姉はまだ帰って来ていない。電話するなら今のうちだろう。とは言っても、実はこの番号がトモコさんの番号であるという確証はない。これでかけてみたら実はヨウジ本人の電話番号だった……というオチもあり得るが……そんなくだらないことはしないだろう。
そうして手渡されたメモを父は手に取り……仕事用のものではなく個人用の携帯を取り出し、スピーカーで発信した。
プルルルルル プルルルルル
2コールで通話が繋がった。幸い、まだ会議はおろか、情報すら届いていないのだろうか。
「思ったより早かったね。今私に電話をかけているのは、シュウジ君の父君……ヘイジロウ氏で間違っていないかな?」
スピーカー越しに聞こえてきたのは予想通り、トモコさんの声だった。
俺は、ほっと胸を撫で下ろした。
「単刀直入に聞こう。俺はシュウジの言葉を信じ、"個人的な"仲間と共にお前の救助に向かうつもりだ。そちらは何を差し出せる?」
そう尋ねる父の声はいつもより剣吞であり……顔も心なしか、怒っているように見える。
……俺を信じて電話してくれたんじゃないんですか?!
ということで、新進気鋭の探偵編です。
かなり後のことにはなりますが、消滅都市本編に入った場合に大きくシナリオが変わっていない限りは、この物語内で消滅を逃れたタマシイは除外した上でクリアできるよう検証した上で投稿し、クリアチームなどは後書きに追記できればと考えています。(助っ人は固定になりますが……)
ということで、クリア編成の検証結果次第で多少プロットを弄りつつ進行させていきます。よろしくお願いします。