閣下、私は覚えています。   作:息抜きのもなか

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新シリーズ、始めちゃった。


プロローグ 目標の確認

 閣下、私は覚えています。

 閣下と過ごしたあの輝かしい日々を。

 共に研鑽し発展に努めていた同志たちのことを。

 

 閣下がいなくなったゲヘナは、秩序が消え失せて混沌としています。

 戦車が我が物顔で闊歩し、不良共は見境なく非行に及んでいる。閣下の時代も少なからず存在していた事象ではありますが、治安の悪化は著しいものです。

 かつての隆盛が嘘のよう。

 

 今、私はかつてのゲヘナを取り戻すべく、各地を歩き回っております。

 閣下がお戻りになることはないと理解していますが、しかし今のゲヘナは閣下にお見せできないほどに荒れているのです。無法地帯、と呼んでも過言ではないかもしれません。ですから私はせめてかつての姿を取り戻せるようにと画策し、彼女に見つからないようにしながら準備を進めている次第です。

 閣下と共に過ごした構成員は、閣下を失った後すぐにバラバラになってしまいました。こちらを執拗に追いかけてきた彼女の存在も大きく、我々は日陰での生活を余儀なくされています。崩れそうな建物で夜を明かさねばならない日々に思うところはありますが、砲撃の音が響き渡るこの地では天井付きの寝床があることを感謝するべきでしょう。

 

 さて、当面の目標は最大の脅威である彼女の無力化です。

 圧倒的な武力を有する彼女をこちら側に引き戻すには、入念な下準備が肝要です。もとより武力での制圧は望み薄ですが、交渉を有利に進めるためにも重火器は必須。頑丈さを考えれば生半可なものでは叶いません。一撃で粉砕できるクラスの火力が求められるでしょう。

 

 他に必要なものは彼女の心を揺さぶる何か。

 まず思いつくのはシャーレの先生。彼女は彼の者に心を預けている様子も見受けられましたし、そこを突きたいところなのですが、しかし必ず一人は護衛が付いていて手を出せず、それ以前の問題もあるが故に論外。暴れられる可能性もある以上はもっと効果が高い物を準備すべきです。

 となるとやはり、閣下の遺品が順当でしょうか。

 それを材料にすれば、多少の会話は可能になるのではないかと考えています。無論先生のときと同様に暴れる可能性がないわけではありませんが、閣下の一件が彼女の現在の行動理由の一つとなっていることを考えれば、確実性はこちらのほうが上だと言えるかもしれません。

 

 そして情報。彼女のような相手に対する攻略手段を知っている人間を探したいです。

 かつての伝手がないわけではありませんが、私は決して彼女を殺めたいわけではありません。スペシャリストがいれば良いのですが、まず思い浮かぶのは関わると碌な目に遭わなそうなスーツの者たち。別の専門家に話を聞きたいところです。

 

 あとは単純に人手でしょうか。

 どうしても集まらなければ一人で挑むことになりますが、かつての同胞たちを集める必要はあるでしょう。どれだけ残っているかは未知数ですが、私の思想に賛同を示すものは少なくないはず。

 かつての威光を取り戻すとまでは言いきれませんが、あの頃のゲヘナを取り戻したいと言えば、きっと手を貸してくれると確信しております。

 私だけでなく、皆にとっても閣下は光のような存在でしたから。

 ああ、畜生。どうしてこんなことに。あの事件さえなければ、我々は幸せでいられたのに。

 

 まず頼るべきは、情報部でしょうか。

 筆頭株が私の敵対組織に行ってしまったとはいえ、あそこの人間は優秀ですから。

 

 さあ、始めましょう。

 閣下の威光を取り戻す物語を。

 かつてのゲヘナを取り戻すための聖戦を。

 

 だから閣下、遠くからどうか見守っていてください。

 たかがいち構成員でしかなかった私のことなど、閣下は覚えていないかもしれませんが。

 私は、あの日々をずっと覚えています。




意味のない空白。
このお話はそこまで長くないです。
追記:筆頭株が敵対組織に行ってしまった
 →筆頭株が私の敵対組織に行ってしまった

途中で違和感を感じるかもしれませんが、終盤まで読み進めていただけると幸いです。
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