閣下、私は覚えています。   作:息抜きのもなか

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最終回。


エピローグ 決着

 閣下、私は覚えています。

 飛空艇のどこに座るかで揉めている閣下たちを見るのが好きでした。

 騒がしくも心地好いあの日々は、今でも私の宝物です。

 

 マコト閣下の死に最も動揺したのがイロハ先輩であったことに驚いたのは、私だけではなかったと記憶しています。普段の態度から見れば到底そんな素振りは見えませんでしたし、無茶振りや後始末で迷惑を被っている姿ばかり見ていたからです。

 ですがよく考えてみれば、あのような扱いなのにも関わらずその席を辞していなかったことこそが、イロハ先輩があの場所に最も心を預けていた証左なのかもしれないと、今は思います。

 だから、彼女が転化してしまったことに驚きはありませんでした。その矛先が身内までに及んだことは、その限りではありませんが。

 

「ねぇ、イロハ先輩、どうしちゃったの?」

 

 まだ事態を飲み込めていない幼子の前ですべてを壊そうと試みた時点で、私たちは彼女のことを諦めました。諦めるしか、ありませんでした。

 クズノハ(いわ)く、『完全に』反転した生徒をもとに戻す方法はないそうです。空崎委員長が斃れたアビドスの一件についてはまだ猶予があったはずだと語った彼女が、ひどく落胆する様子を隠さなかったことが記憶に新しく、結局手を下した彼女が『そう』なってしまっているのならば世話がないだろうに、とは彼女から出た言だったでしょうか。

 禍き怨泥に飲み込まれた彼の地にはもう使い手が居らぬと譲り受けた銃がようやく手に馴染み始め、対価として預けられた化け猫退治を終えたのがつい昨日のこと。人も、泥も、まるで端から存在しなかったかのような静けさに寂寥を覚えた彼の地のことが、離れた今でも思い出されます。

 ですが、機は熟しました。

 取り返しがつかない段階ではありますが、それでも幕は引くべきです。

 

「そう思いませんか、イロハ先輩」

 

 それがたとえ、全滅という終わりだったとしても。

 

「………………」

 

 彼女はただ怪異と化した戦車の中から、私に砲を向けるだけ。

 紅い海に沈む私を見下ろす表情は今、欠片ほどでも悲哀を有しているのでしょうか。

 こと私の方はと言えば、早々にサボりを決め込んだ利き腕は行方すら眩ませて所在不明。私の四肢だというのにこの体たらく、呆れて声も出ません。

 わかっていたことです。どれだけやっても彼我の実力差は埋まりません。

 そもそもの話、向こうは一人でゲヘナを終わらせた怪物。それに単身で挑んで勝てるのは、それこそ成ってしまったアビドスの二名か、空崎委員長ぐらいのものでしょう。

 ミレニアムの雄もトリニティの傑物も借りられない以上、私がやるしかありませんでしたが、前提から無理な話だったと言わざるを得ないでしょう。

 

「だからと言って、まだ、勝った気ではないですよね?」

 

 私は懐の装置を取り出して、起動します。

 警戒したような回避行動を取ろうとした戦車の前に展開されるのは、ミレニアム製のシールド展開装置。レールガンすらも耐えられると豪語していたエンジニア部の面々から法外な金額を吹っ掛けられましたが、他の装置と合わせて購入することで何とかセット割を使うことができました。

 エンジニア部自慢のシールドの内側に、別のシールド発生装置を展開、そして、市販のシールド装置も重ね掛けして。

 その直後、イロハ先輩の背後に太陽が着弾します。

 

「うっ…………くっ…………」

 

 頭が壊れるかのような轟音と、爆炎。

 熱風対策はしていたつもりでしたが、肝心の温度耐性を軽視していたことを思い出します。

 爆心地からはかなり離れているはずなのに、この威力。試し打ちをしていてよかったと心底思います。

 肌が焼ける感覚。沸騰しそうな血液。

 辛うじて私の息があったのは、エンジニア部のシールドごと吹き飛ばされて距離を取ることができたからでしょう。それでも、致命傷は避けられていない気がしますが。

 

『そんなッ、嘘ですよね?!』

 

 エデン条約の調印式。我々は愚かにもアリウスを利用しようして、失敗しました。

 飛空艇に詰められた大量の爆薬。イブキさんが発見したそれらから皆を庇ったマコト閣下は重傷を負って昏睡状態に。飛行船が水のある場所に落ちたおかげか他のメンバーは何とか一命をとりとめましたが、閣下は昏睡状態から目を覚ますことなく、そのまま息を引き取りました。

 しかし、マコト閣下がいなくても世界は回るもの。

 万魔殿(パンデモニウム・ソサエティ)を除いた組織だけでエデン条約は乗り切られ、変わらない日常が戻ってきます。

 マコト閣下の訃報に反応したのは一部の生徒のみで、皆は何事もなかったかのように日々を過ごしています。

 恐らく、それが最もイロハ先輩を堪えさせたのでしょう。

 それはまるで、あの人との日々に価値がないと言われているかのようでしたから。

 

「許せませんよね。閣下はご自身の人生における貴重な一年を、ゲヘナのために投げ打ってくださったというのに」

 

 イロハ先輩の次に反応を見せていたのは、恐らく風紀委員会の空崎委員長だったと思います。

 明らかに精彩を欠いていましたし、その顔色は我々からの嫌がらせが無くなったにもかかわらずどんどん悪くなっていっているようでした。

 何か一つ間違えれば壊れてしまいそうな雰囲気だった彼女に、嫌な予感を感じなかったと言えば嘘になるでしょう。

 そして、『雷帝の遺産』を発見したとの報を受けた空崎委員長が向かったアビドス砂漠で、彼女は帰らぬ人となりました。小鳥遊ホシノの反転(テラー化)、砂狼シロコの色彩との接触、小鳥遊ホシノのヘイロー破壊。あれは良いニュースが一つとてない、最悪の出来事だったと記憶しております。

 空崎委員長がいなくなったことで、ゲヘナの治安は本格的に崩壊。

 それが最後の決め手だったのでしょうね。

 犬猿の仲だった我々万魔殿と風紀委員会が手を取り合ってこの事態に対処しようと動き始めたとき、彼女はついに決壊しました。

 

「イロハ先輩は、おそらくマコト閣下の意思を継ごうとしていたのでしょうね」

 

 イロハ先輩がテラー化したタイミングは、考え得る最悪のタイミングでした。万魔殿と風紀委員のほぼ全員が集まって、決意を新たにしようとした瞬間。イロハ先輩は戦車ごと怪物になって、我々を吹き飛ばしてしまいました。

 そもそもその一撃でかなりの死者が出ていたのですが、その攻撃行動が決定的な溝となり、我々が風紀委員と手を取り合う道は閉ざされてしまいました。

 それからは、見るに堪えないゲヘナの出来上がりです。

 

「イロハ先輩、これがあなたの望んだ景色でしたか?」

 

 非行は見境なく行われるようになり、最後の一線だったはずの殺人も横行するようになりました。イロハ先輩が最大の脅威として闊歩し、そのため相手をビビらせるために戦車に乗り込む輩も増えました。

 イロハ先輩はゲヘナの生徒を見つけると見境なく攻撃する暴力の化身となり、特に万魔殿と風紀委員を執拗に追い回しました。それに加えて彼女は複製(ミメシス)と呼ばれる幽霊のような存在も作り出しました。それは万魔殿の制服を着た生徒たちで、おそらく彼女は自身の思い出の中に囚われていたのだと思います。

 こちらを攻撃してくる万魔殿の姿をした化け物がいるのですから、万魔殿の生徒は必然的に攻撃対象になり、複製(ミメシス)ではない本物はイロハ先輩のもとに連れて行かれます。それを囮として使う者もいれば、生贄にすれば本当に事態が解決すると考える生徒もいました。

 

「先輩と同じように、皆さん現実から逃げてしまいました」

 

 薬物も蔓延しました。

 万魔殿の生徒が最初だったと思います。追われ、身を隠す生活に耐え兼ねて、手を伸ばしてはいけないものに手を伸ばしました。

 そこからはもう、完全に取り返しがつきませんでした。

 ブラックマーケットはまだ無法地帯と言えどもマーケットガードがいるように最低限、本当に最低限ではありますが秩序を有しています。

 今のゲヘナ(ここ)はそれすらもありません。

 正真正銘、ゲヘナは終わったのです。

 

『目標の沈黙を確認したっす! 戦車は半壊して、中から(なつめ)イロハの反転状態が放り出されている状態っす! ッ! 複製(ミメシス)が大量に!』

「予想できたことです。問題ありません」

 

 所詮は幻。一過の夢。

 夢物語には、現実を突きつけましょう。

 

「頼みますよ、百蓮」

 

 私が彼の地で何体の幻魎百物語を倒したと思っているのでしょう。

 百物語ならばいざ知らず、夢物語程度であれば苦戦する道理もありません。その存在の強度が違いますからね。

 だから、そんなにイロハ先輩を守るように立ったところで、無意味なのですよ。

 そんなことを考えつつも、一体ずつの殲滅は面倒だと考えていたところに、どこからか砲撃が降り注ぎました。ほとんどタイミングを同じくして着弾した複数の砲弾は回避行動を与える隙もなく複製(ミメシス)たちを蹂躙し、面の制圧を行います。

 

「これは……Time on Target(タイム・オン・ターゲット)……。まさか彼女が?」

 

 思わずトリニティ方面を見てしまいますが、恐らく彼女たちは口を割らないでしょう。

 予定外の攻撃行動。しかも本来ならば実行しないと言っていたはずの、武力介入。感謝を伝えようにも、それをさせてくれない()()()さに、トリニティらしさを禁じ得ません。

 礼は言いませんよ。その言葉も心の中に留めて、改めて目標を睨みます。

 列車砲の着弾でクレーターのように大きく削れた地面の中に、イロハ先輩は倒れていました。

 久方ぶりに見るその姿に、零れそうになる(しずく)(こら)えます。

 

「お互い、酷い姿ですね」

 

 イロハ先輩も私と同じように、全身に火傷を負っているようでした。

 シールドでガチガチに防御を固めた私よりも状態が浅く見えるのは、恐らくは戦車ごと反転(テラー化)した影響なのでしょう。その頑丈さには呆れるばかりです。

 ですが、こちらの狙い通り行動不能な程度には追い詰めることが叶ったようで、倒れ伏しながらもこちらに向ける視線が恨めしそうに私を睨んでおりました。

 

「イロハ先輩、もう、終わりにしましょう。ここで終われば、まだ閣下の栄光は守れます。まだ、ゲヘナ学園として終わることができるんです」

 

 マコト閣下が雷帝から取り戻し、危うくも秩序を保っていたゲヘナを、イロハ先輩が破壊したなんてどうして受け入れることができるでしょうか。

 もう閣下は戻りません。ゲヘナがかつての栄華を取り戻すことはありません。

 それは死者が戻らないのと同じように、自然の摂理。覆しようのない理なのです。

 ですが、矜持を保つことはできます。責任を取ることはできます。

 

「せめて、ゲヘナが終わるとしても、それはあなたが完膚なきまでに壊すのではなく、木の葉が落ちるように、盛者必衰の理に従うように、穏やかで緩やかな末路(さいご)を目指しませんか」

「…………どの、口で……ッ!」

 

 言葉が通じたようで、良かったです。

 イロハ先輩が憤る理由も分かります。そうですよね。私に言われたくないですよね。

 だって、イロハ先輩を諭しているこの口は。

 

「アリウスとの交渉係をマコト先輩から任されていた私の言葉なんて、聞きたくないですよね」

 

 でもだからこそ、私は責任を果たす必要がありました。

 イロハ先輩に殺されようと、他の全ての万魔殿の生徒から殺意を向けられようと、私だけは閣下の栄光を取り戻すために動かなければいけなかった。

 

 だって、マコト先輩を殺したのは、私なんだから。

 

 傷だらけのイロハ先輩が、懐に手を入れたのが見えました。

 そしてそれがこちらに向けられ、引き金が引かれるのが分かって。

 私は目を閉じて、終わりを待ちました。

 

「……間に合ったようで、良かったです」

 

 いつまで経っても訪れない衝撃に、瞼を開きます。

 私の瞳に映ったのは、水色の羽。

 

「救護が必要な場に救護を。蒼森ミネ、現着しました」

 

 大きな盾が、先の一撃から私を守ってくれたみたいです。

 しかし、彼女がどうしてここに居るのでしょう。

 百合園セイアとの約定では、作戦成功後の治安維持のみ人を派遣するという手筈だったはず。今この現場に彼女が居る説明ができません。

 

「セイア様とのお約束は、作戦成功後のゲヘナの治安維持に協力すること。列車砲の着弾を(もっ)てイロハさんの無力化が完了――(すなわ)ち作戦が成功したとみなし、私は治安維持に参上した次第です」

「そうそう! ごえー? もしてくれたんだよ!」

 

 それは、私が殺されたあとに到着予定だった切り札。

 他の生徒に迎えに行かせたはずの少女の声が聞こえて、私は思わず後ろを振り返ります。

 

「……イブキ?」

 

 そう呟きを漏らしたイロハ先輩の声は、信じられないようなものを見たといった声音でした。

 それはそうでしょう。自身が殺してしまったと思っていた最愛が、まだ生きていたのですから。

 私も先日トリニティでお会いするまで、半信半疑だったのです。

 イブキさんはイロハ先輩に攻撃されて、行方不明になっていました。しかし情報部の先輩からイブキさんがトリニティに逃げ延びているという情報を聞いて、救護騎士団の管理する病室に面会に向かい、彼女の無事を確認しました。

 だからこそ、彼女の存在は切り札になると思いました。

 マコト閣下との思い出の中で、間違いくなく一番の輝きを放つのは彼女ですから。

 無力化が完了し、私という彼女にとって最悪の諸悪の根源を潰した後であれば、イブキさんの声が届くのではないかと、そう思っての采配でした。

 

「イロハ先輩、ひさしぶりー!」

 

 本来の予定とは異なりますが、これでいいのかもしれません。

 彼女がイブキのことを認識した今ならば、その心には間違いなく隙ができたはず。

 先生のような全てを覆す力は持ちません。イロハ先輩の欠けた心を埋めるような何かは用意できませんでした。

 ですが、真実を捉える代物を、私は有しています。

 

「イブキさん、イロハ先輩に、一緒に声を掛けましょう」

「うん、お話しするー。そうだ! イブキ、これ、持ってきたよ!」

 

 百蓮をイブキさんにも触ってもらおうと思っていると、イブキさんが鞄から何かを取り出して、こちらに見せてきました。

 それは、元宮チアキが主導していた万魔殿発行の週刊誌。

 私は用意できませんでしたが、イブキさんはずっとそれを大切に持っていたみたいです。

 うん。百蓮なんかより、そっちの方がずっといい。

 私たちはイロハ先輩に『週刊万魔殿(ぱんでも)』を押し付けるような形で手を伸ばします。

 これが最後の機会です。ちゃんと、終わらせましょう。

 

 

 気が付けば、そこはいつかの生徒会室。

 

「ねえ、イロハ先輩。また一緒にあそぼー?」

「ですが、もう、他の皆は……」

 

「悪いことをしちゃったなら、ちゃんとごめんなさいすればみんな許してくれるよ!」

「そう、ですね。ごめんなさいをして、そうすれば、またイブキと一緒に遊べますかね?」

「うん、大丈夫だよ! みんな優しいから!」

 

 

 気が付けば、そこはいつかの飛空艇。

 

「私はあなたのことを、許しません」

「許さなくていいですよ。私が唯一閣下を止められたというのは、間違いのない事実ですので」

 

「なので、お互い罪を背負った者同士、傷を舐め合って生きていきませんか?」

「最悪の提案ですね。嫌ですよ、絶対」

 

「ならばせめて、責任を抱えたまま苦しんで生きていきましょう。逃げることなく、向き合って」

「そんなに強くないから、こうなったんですよ」

 

「面倒くさい人ですね。あなたが遊ばないなら、私がイブキさんと遊びますよ」

「それはとっても、癪ですね」

 

 

 気が付けば、そこは列車砲で出来たクレーター。

 イロハ先輩の姿は戻りません。ですが、先程までの禍々しいオーラは、感じませんでした。

 

「あの馬鹿に、怒られました」

 

 イロハ先輩は、まるで会ってきたかのように言葉を溢しました。

 

「何をやっているんだって。お前がそうなってどうするって」

 

 イロハ先輩はストッパー的な役割を担っていました。暴走しがちな万魔殿の中で、唯一冷静で、ちょうどいい折衷案を出してくれる存在でした。

 実現不可能なことをしようとする閣下を諫める、忠臣のような存在でした。

 

「本当に、何をやっているんでしょうね」

 

 きっとイロハ先輩も訳が分からなかったんだと思います。

 いろいろなことが起こりすぎて、受け入れられなくて、パンクして、どうしていいか分からないまま、全部めちゃくちゃにしたくなって。

 その衝動に、身を任せてしまった。

 

「あなたのことも、許してやれなんて言うんですよ。愚かだったのは自分だからって。いやほんと、一言ぐらいは相談してくれって話ですけど」

 

 マコト閣下は私を恨んでいないのでしょうか。なんだかんだ自分のやるべきことを自覚している閣下のことです。きっと、イロハ先輩と私の中の閣下像は一致しています。

 だからこそ、イロハ先輩は本当に戻ってきたんだなって、実感ができました。

 

「戻って、良いのでしょうか」

「イロハ先輩にはやるべきことがあるはずです」

「イブキとも遊ばなきゃヤ、だよ!」

「ふふ、そうですね」

 

 本来であれば落とすはずだった命。

 イロハ先輩に全部丸投げするつもりだったのに、拾ってしまった私も気張るしかありません。

 こうなった以上、逃がしませんよ。

 

「はあ、自分で蒔いてしまった種です。ちゃんと、自分で片付けないとですね」

 

 そう言いながらイロハ先輩は身体を起こしました。

 彼女の姿はやはり戻りません。ですが、その方が彼女にとって都合がいいかもしれません。

 棗イロハは恐怖の象徴になってしまいました。これから罪を償っていく彼女にとって、その姿で表を歩くのは都合が悪い。

 戦車の中にいた彼女は幸い、誰にもその姿を見られることはありませんでした。だからこの変わってしまった姿は、人を傷つけた彼女の姿は、誰にも認識されていません。

 彼女は自分が傷つけたと誰にも知られることはなく、しかし自分が壊してしまった平和を取り戻すため、歩まなければなりません。筋違いな感謝を受け取らなければなりません。受け取るべきではない栄光を享受しなければなりません。

 それが、彼女が受けるべき罰。行うべき償い。

 

「イブキも手伝うー!」

 

 無邪気に笑うイブキさんを見て微笑む彼女の姿は、いつかの日々を思い出させる懐かしい光景。

 それはゲヘナのこれからが、あの日々のように騒がしくも心地好いものになることを期待するには十分な時間でした。

 

 だから、閣下。

 もう心配することはありません。

 どうか、安らかな眠りを。

 

 誰が忘れても、歴史の露に消えたとしても、我々は覚えていますから。




ここまでお付き合いありがとうございました。
これにて本作は完結となります。

お察しの通り、この世界の問題はいろいろ残っていますが、それでも彼女たちは最期まで足搔くことでしょう。
いろいろ裏設定やどこで分岐したのかなどは活動報告の方に書いています。興味があればぜひ。
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