ヤンデレ魔法少女13人から逃げ切れないと死ぬゲーム。 作:クロウト
曇らせってやっぱ良いっすよね。な話です。
───暗い水底の様な記憶の澱の中である少女は夢を見ていた。微睡みの中でふと、その澱の中で一つの嫌な記憶が脳裏を過ぎる。それは余りにも唐突にやって来ては、
そこは牢屋敷の暗い医務室の中だった。夜が更け、草木も眠っている丑三つ時に聞こえるのは医務室のベッドの中に力無く横たわる貴方の掠れた呼吸の音だけが閑静な部屋の中の唯一の音となっている。
ほぼ静寂とも呼べるその空間の中で、貴方は全身に包帯を巻かれた状態で寝かされていた。だが貴方の身体を包むその包帯は純白だった筈のその色が、今や滲む様な赤黒い血の色に変容しており、それが貴方がどれだけの惨事に巻き込まれたかを示していた。
だがその空間の中に居るのは貴方一人だけでは無かった。医務室のベッドの横に置かれている人一人分の丸椅子に一人の少女がそこに座りながら貴方の手を必死に握っていた。縋る様に、失わぬ様にと握っている少女の手は喪失を恐れる様にどうしようもなく震えていた。
「どうしてっ…」
暗い静寂の中、少女がポツリと貴方に言葉を溢す。それは何処か恐怖が渦巻く中で絞り出した物の様にも思える程にその声もまた震えている。
「どうしてっ、貴方はいつもそうやって…誰かを庇って、傷付くの…?」
───少女の震えるその問いに、貴方はただ『友達だから』と答えた。そんな淡白で単純な答え。それ以上でもそれ以下でも無い、その答えを聞いた少女は思わず貴方の手を握る力を強くしてしまう。
「…友達の為なら、貴方は平気で命も投げ捨てられるの?!」
少女の小さな怒号が響く。今や自分を繕い続ける為の少女のお嬢様口調は何処にも無く。どうしようなく心の中に溢れ出ている感情を彼女は制限することが出来なかった。けれども対照的に貴方は冷静に、彼女の反論を受け止める。
───貴方は彼女の言葉に対して、何を迷う訳でも無く、貴方は小さく頷いてはただ彼女の言葉を肯定した。
「っ…!!」
少女は言葉を失った。言葉を出せない程に彼女の中では様々な感情が渦を巻いて心の奥底で蠢いていた。貴方の胸に刻まれた痛ましい傷が、少女の心を大きく揺さぶる。だがそれでも尚、彼女は貴方の手を掴んで離さなかった。
まるでそれは神に悔いる者の様に。貴方をそこに置いてきはしないと言わんばかりにその手は力強く握り締められている。固く、強く握りしめられているその手は温もりを帯びた鎖の様に貴方と少女を掴んでは離さない。
───そして、貴方がその少女の温もりを感じたまま。何も語らずに居ると、やがて少女は縋り付く様に、ただ己の中に吹き溜まっていた禁忌から生じる恐怖を貴方に静かにぶつけ始める。
「…お願い、ですから。わたくしの事を•••
少女はまた取り繕う様にお嬢様の様な口調を取り戻そうと努める。だがその声はどうしても震えており、言葉と言うよりかは苦悶。嗚咽に近い言葉だった。
貴方はそれを静かに聞き届ける。何も言葉を交わさず、ただ少女の恐怖を受け入れる。その時、痛みと怪我で感覚が鈍くなった貴方の手に少女の頬を伝う涙が溢れ落ちた。
「 置いて…行かないでっ…置いていかないで…置いていかないで…」
呪文の様に繰り返されるその言葉には悲しみだけでは形容しきれない、様々な感情が同時に発露していると貴方は感じた。後悔、悲しみ、恐怖、憎悪。それらが一気に一つの言葉の波となって貴方に押し寄せて来る。
───少女は絶えず、置いていかないで。と貴方に言い続ける。彼女が着ている翠を基調としたお嬢様を彷彿とさせる様な豪華絢爛なドレスは涙に濡れ、貴方の隣で手を握っているのはお嬢様では無く、ただ一人の
今にでも大声で泣き出してしまいそうなハンナの姿を見て、貴方は目を見開いた。いつもはお嬢様口調で快活に振る舞っている彼女のこんなにも弱々しくて悲しみに暮れてしまう様な姿は見たことが無かったからだ。
「貴方にまで置いていかれたらっ…わたくしは…私はっ…」
ハンナの脳裏に過ぎるのはかつての残酷な過去。母に置いていかれ、そして自分もまた妹を置き去りにしてしまった過去と貴方を重ねてしまい、また貴方に置いていかれるのではないか。また自分の隣から慕っている人が居なくなってしまうのではないか。そんなどうしようもなく深い暗闇と化した不安がハンナの心を襲う。
そんな訳ない。そんな事ある筈がない。とハンナは否定したかった。けれども貴方の身体に滲んでいる乾いた大量の血がそれを否定する。貴方に巻かれていた包帯の下にあるのは夥しい量の傷であった。大小あれどその傷は貴方の身体を裂き、抉ったかの様な見るに堪えない程の裂傷の数々が貴方にびっしりと刻まれている。
───だが貴方はそんな傷まみれの状態でも、目の前にいる涙を流しているハンナをそのまま放って置く訳にはいかなかった。
貴方はベッドから静かに上体を起こそうとする。出血は止まり、傷が塞がりつつある貴方の身体だったが、それでも貴方の身体には痛みが纏わりついては泥の様に離れない。貴方は微弱ながらも感じるその痛みに耐えながら、徐々に身体を起こしていく。
「…? 貴方っ、一体何をして…」
ハンナが涙を目に留めながら、貴方の行動に疑問を示す。だが貴方はそんなハンナの疑問すら気にも止めずに貴方は起き上がりながら身体全体を使って狭いベッドの中を移動し、自分の今居る位置をなるべくハンナに近付ける様にする。
そして上体を僅かに捻って、貴方とハンナが向き合う形になった時。貴方はハンナに対して両腕を伸ばし───そしてハンナの身体を静かに抱きしめた。
「え…?」
ハンナは呆気に取られた様な顔を浮かべる。それに対し、貴方は自分の包帯の滲んだ血が彼女の服に付着しない様に気を遣いつつ、それでも彼女を抱き締めるのを辞めなかった。
そしてハンナが今貴方に何をされたのか。それを気付いたのは貴方に抱きしめられてから数秒後の事だった。
「あっ、貴方!本当に何をしているの?!?!そんな事をしたら、また傷が開いて… 」
ハンナは突然の事に驚く。それもそうだろう。何せ突然の事だし、それにこんな怪我人に抱き締められたって嬉しいとは思わないかもしれない。と貴方は考える。だが同時にこうする事でしか、彼女を安心させる方法は思い付かなかったとも考えていた。
そして貴方は困惑した表情を浮かべながらも涙を流し続けているハンナに向けて、ぽつりと言葉を溢す。
───『絶対に』
安心させる様に。彼女の中に溜まっている恐怖の澱を打ち払う様に。力強くただひたむきに貴方は言葉を紡ぎ続ける。
───『絶対に、ハンナを置いていかない。』
刹那、ハンナの目が大きく見開く。その言葉と同時に貴方のハンナを抱き締める力が強くなる。まるで大切な物を手離すまいと必死に抗う者の様に。貴方は抱き締め続ける。
───ハンナの身体に貴方の体温が直に伝わって来る。負傷した身体ではあるが、万全に血は巡り、傷を直そうと必死になっている貴方の身体の熱は普段よりも熱く冷たい血液を覆い尽くそうな程の暖かさがハンナの身体を包んだ。
それはハンナが牢屋敷に来る前には感じた事の無かった人の温もりだった。温もりを与えてくれる筈の母が居なくなった事によってそれは二度と手に入らない物の筈だった。
けれども不意に襲って来たその感覚にハンナは困惑する。けれどその困惑も刹那の内に終わり、次に彼女の心に湧き出て来たのは途方も無い程の安心感だった。
「…本当…ですの?」
ハンナが弱々しく、必死に涙を堪える様な声で聞く。貴方はその言葉に肯定し、ただハンナを抱き締め続ける。そしてハンナも貴方の存在が確かにそこにある事を確かめる為に貴方の腕より細い彼女の腕が貴方の身体に巻き付いて行く。
「っ…。なら、約束…ですわっ。」
ハンナの瞳から大粒の涙が溢れ出す。耐えきれなかった感情の発露が貴方の背中を伝い、ベッドに落ちて行く。そしてハンナは必死に嗚咽が混じった声音で言葉を紡ぐ。
「もうっ…もう二度とっ…わたくしの側から離れないで…!!! 」
「…わたくしを置いて死のうだなんてしないでっ…。そんなの、絶対に…絶対にわたくしが許さないっ…から…!!! 」
震えた彼女の声に、貴方は絶対に守るよ。と彼女の約束を守り切ると誓った。もう彼女を二度と離すまい、と。決してハンナのことを置いて行って死ぬつもりも無い。と貴方は力強い声音でハンナにそう告げた。
「 〜〜〜〜〜〜〜ッ!! 」
その後、ハンナは言葉を発せなかった。ハンナから聞こえたのはただ声にならない嗚咽だけ。大粒の涙とも聞こえる彼女の啜り泣く声に貴方は静かに耳を傾けた。そして時折、彼女を抱きしめる力を強くする。ハンナも貴方が自分の元を離れぬ様に強く、強く、強く抱擁しながら泣きじゃくる。
─── そうして、その日の夜は更けて行く。だがそれは古き日の記憶。泡沫に沈んでいったハンナの意識は掬い上げられ、過去に感じた貴方の温もりが遠く離れて行く。そうして彼女は夢から醒めて行くだろう。
夢は醒め、微睡みに沈んでいたハンナは目を覚ます。目覚めた場所は牢屋敷から離れた所にある花畑であり、彼女の足元には様々な色の花々達がそこに芽吹いていた。
そして目を覚ましたハンナの腕には片手に収まりそうな程の
「…なんて趣味の悪い夢ですこと。 おかげで目覚めが最悪ですわっ…」
ハンナは自身の見た夢に早々に少しだけ毒を吐きながら、握られていた人形に目を向ける。その人形の見た目はこの牢屋敷にいる貴方に酷似していた。まるで小さい貴方がそこにいるかの様に思わせるほどの精巧な造りの人形は、常に微笑みを浮かべながらハンナの胸に抱かれている。
─── 『絶対に、ハンナを置いていかない。』
その時、まるで人形から貴方の声が発せられたと思わんばかりにハンナの脳裏に夢の中、旧い記憶の貴方の力強い声音が反芻する。
「 〜〜〜っ…!」
ハンナは顔を一瞬だけくしゃりと歪めれば、その人形を抱き締める力を強めていく。いくら抱き締めても人形は造られた表情を崩さず、ただそこにいる。けれども本物の貴方は、生きている人間の貴方はハンナの隣には居ない。
───その事実が、ハンナの心を締め付ける。
「…本当は分かっていますの。」
ハンナは人形に、或いは自分に向かって言葉を紡ぐ。それはまるで自分の揺れ動いた心を、溢れ出そうになっている感情を堰き止める様に。
「貴方が約束を守ってくれていることも、貴方が必ずわたくしの元に来てくれる事も…」
「けど…それでも…」
─── 心が、己の欲が、貴方を求めていて仕方ない。ハンナはそれを口に出さなかった。それを口に出してしまえば、彼女はきっと貴方に対して抱いている劣情と恋慕に歯止めが効かなくなってしまうだろうから。
ハンナは理解していた。貴方が決してハンナと常に一緒に居られる訳では無いことを。彼は一人しかいないし、何かと忙しない人間でもある。だからどうしても貴方がハンナの隣に居られない時間が出来てしまう。
それはしょうがない事だ。仕方ない事だ。けれどもハンナは貴方が隣に居ないとそうして自分に言い聞かせている理性をも上回る寂しさが彼女の心に泥濘の様に纏わりついてしまうのだ。
あの夜に感じた、貴方の力強い声音が、貴方の温もりが、時折見せる貴方の優しい表情が、ハンナの脳裏に焼き付いている限り、この寂しさからは逃れられない。と彼女の心は理解してしまった。だからこそ貴方の事を理解していても、無意識に心の底から貴方のことを求めてしまう。
「……会いたい、ですわ。」
ぎゅっ、と人形を抱き締めながらハンナはぽつりと言葉を溢す。そしてハンナの顔は何処か寂しそうな表情を浮かべていた。
─── この心を満たして、満たして、満たし続けてくれるのは貴方だけ。
─── だから、早くいつもみたいに私を迎えに来て。
空は未だ明るい。けれどもハンナは夜空に流れる星に願う無垢の子供の様に心の中で貴方が来てくれる事をただ願い続ける。盲目的に、ただ貴方に縋り、想い続ける彼女の姿は、かつて彼女が拾った本の中に居た物語の女の子と似ていた。
前回のあらすじ───貴方の首筋に印がつけられてしまった!それもはちゃめちゃに濃いのを付けられた!!当然、傷みたいなものなので数日すれば引いて無くなるだろう。それどころか貴方の同室相手であるメルルに治してもらえることだって出来る。
だが、貴方はこの印が誰かに見られる事があれば絶対に詰められる事は確定してると思いっきりビビっていた。ので貴方はもし誰かに見られても、ただの蚊に刺さりだと言う事にして何とかその場を乗り切ろうと決心した。これを誰かに見られてしまおうものなら、多分貴方は死亡エンドか修羅場エンド確定である。
───貴方とシェリーは二人だけの探検の果てに見つけた森から抜けれる道を歩いていた。当然ながらまだ貴方はシェリーをおんぶしたまま歩いており、シェリーも満足げに貴方の背に身を預けている。
「 あっ!そろそろ出口が見えて来ましたね!!! 」
森に差し込む日光が多くなり、奥の景色が朧げながらも見える様になるとシェリーがそう呟く。その奥は貴方が目指していた場所である花畑へと繋がっている筈。貴方は意気揚々と•••とまでは行かずとも、気楽にその抜け道をずんずんと進んで行く。
暫く、歩くとやがて二人は森から抜け出した。鬱蒼とした木々の間をすり抜けて抜け出した先には貴方が想像し、思い描いていた場所がそこにはあった。
「 わー…!!いつも来ている所が、まるで別の世界みたいですねっ!! 」
貴方は興奮気味に目を輝かせているシェリーを横目に、貴方もその壮観な自然の景色に目を向けてみる。
───穏やかな風が吹いては、それは地面に咲き誇る色とりどりの花々の花弁を攫っては空へと誘う。その光景はまるでメルヘンチックなお伽話に出て来る一節の様でもあり、晴天の空の下で力強く根付いているその花々の一つ一つが幻想的な絵画を描く色彩と化していた。
そんな場所に足を踏み入れた貴方はその光景に思わず息を呑む事だろう。貴方は暫く、花畑の景観に目を奪われていた。貴方は牢屋敷という人間専用の鳥籠紛いの所に入れられてからは、外なんて碌に出た事が無かった。それは単純に外に出るのが面倒くさいからという理由であったが、この景色を見て貴方の考えは少しだけ変わる事となる。
貴方がそんな風に景色に目を奪われていると、ぐいっと後ろに引っ張られる感覚が貴方の意識を不意に現実へと突き戻す。貴方が後ろに目をやると、そこには少しだけ拗ねた表情をしたシェリーが貴方の事を見つめていた。
「むー、○○さんー?景色に見惚れてて、私の事忘れてませんかー?? 」
貴方はそんな事は無い、と即座に返す。確かにこの辺りの景色は綺麗で、貴方も景色に目を奪われてた事は本当だろう。だが貴方はシェリーの事を忘れた訳では無い。少なくとも貴方がシェリーをおんぶしている状態が続いている今では、景色に目を奪われているその瞬間でも背中に彼女の温もりが彼女の存在がそこに居ると貴方に思い出させてくれるだろう。
───それは彼女の方も同じかもしれないが。
「本当ですかね〜? この名探偵シェリーちゃんの眼は、いくら○○さんでも誤魔化せませんよー!!」
と、冗談を言いながら貴方の背中の上ではしゃぎながらそう言うシェリーに貴方は自然と口角を綻ばせる。彼女も彼女で、なんだかんだ貴方の背中の上が心地良いのだろう。貴方は降ろそうとしてもこれは駄目だな、と半ば諦めに近い結論を弾き出し、貴方は再度シェリーを背負ったまま歩き出す。
花畑を一歩踏み締める度に名前の知らない花々の花弁が乱れ舞う。その度にシェリーは貴方に向かって、背中から身を乗り出しては穏やかなその風に髪を煽られながら、その暖かな景色を噛み締めている様に見えた。シェリーは舞っている花弁を手に取ると、貴方に向けて見せて来たりと先程の拗ねた様子は何処へやら。シェリーはすっかりその花畑に夢中であった。
「今度、このお花を使って○○さんに冠を作ってあげますね!!きっと、○○さんに似合うと思うんですよー!!」
───貴方は、シェリーのその言葉に冗談まじりに『シェリーだと力が強すぎて、冠を引きちぎりそうだな』と笑いながら返す。するとそれにシェリーはわざとらしく怒った様な顔を浮かべる。
「 ○○さんー?女の子に対してそうやって言うのは良くないですよー!!それに私だって、やる時はちゃんとやりますから!!」
えっへんと言わんばかりに自信満々な様子でそう答える彼女に、貴方はどうだかと返す。そんなくだらない冗談の応酬がアテもない二人だけの花畑の散歩に更なる彩を与える。
貴方はそんなくだらなくもありながらも、退屈はしない緩やかなに過ごせるその時間を好ましく思っていた。そしてシェリーもまた貴方と共に、貴方だけとこうして過ごせる時間が出来て、内心ではとても嬉しいのだろう。そこからは彼女の笑みが止まることは無かった。
───貴方とシェリーがそうして冗談を言い合いながら、雄大な花畑を歩いている時。貴方達は不意に目の前に人影が見える事に気付いた。その人影は貴方達からは少しだけ遠い所に有り、見たところその人影は一つだけの様だった。
「んー…?あれは•••誰ですかね…。」
と、人影に気付いたシェリーが貴方の背中から身を乗り出してじっと遠くを見つめる。貴方からしてみればそれは蜃気楼にも満たない微かな影に過ぎない。けれども貴方はその影に向かって、歩みを進めて行く。ここで放って置いても別に問題は無かったが、おそらくそれはシェリーが許してくれないだろう。
幻想的な風景の中に佇む朧げな人影。見る様によってはそれも一つのミステリーかもしれない。ミステリーマニアのシェリーにとってそんなミステリーが見過ごされるだろうか───。答えはきっと否だろう。
貴方はそんな事を考えつつも、人影を目指して歩き続ける。果たしてそこにいるのは何者か。その答えは、貴方が歩き続けてから数分も満たない時間の後に見えたその人影の正体によって明かされる事となる。
─── あれは。と貴方が言葉を溢す。シェリーと貴方は花畑から漸く奥に居たその人影に纏わりついていた影が取れる。蜃気楼の様に朧げだったそのシルエットは明確になり、確かな人物としてそこに移る。そしてその人物は、貴方とシェリーにとってはとても見覚えのある人物だった。
「あー!!!ハンナさんじゃないですかー!!!! おーい!!」
その人影の正体を見たシェリーは貴方の背中からぶんぶんとその人物に向けて片腕を振る。貴方も腕を振ろう...と思ったものの、両腕が塞がっていたので笑顔を作るだけに留めておく。そしてシェリーのその声に反応したのか、ハンナと呼ばれた女性はこちらの方へと視線を向き、やがて此方に近付いて来る。
「っ!?シェリーさん?!と•••貴方まで!?二人して、こんな所で一体何をしているんですの!?」
─── ハンナは突然の貴方と親友とも呼べるシェリーの来訪に驚いた様な表情を見せる。
けれども、貴方の顔を見た瞬間。ハンナの心の底にはどうしようも出来ない程の嬉しさが、愛に飢えていた心が即座に満たされて行く感覚が波の様に押し寄せて来る。
ああ、やっぱり───。
ハンナは貴方の元に駆け寄る時、その満たされて行く感覚と同時に不安だった心が晴れ、ハンナの顔には寂しそうな顔は無い。けれども彼女の心は自分が貴方に対してどれだけ依存しているのか理解してしまった。
─── 私には、貴方しかいない。
けれども、その依存が彼女を人間として繋いでくれる。貴方の存在が彼女を魔女になるのを守ってくれる。そして何より、ハンナはそんな貴方に依存するその感覚を受容していた。故にその依存が心地良かった。
どれだけ寂しくても、孤独でも、それでも貴方は迎えに来てくれる。そんな貴方に抱くこの恋心は酷く歪んでいるのかもしれない。ただ、それでも。ハンナは貴方を想い続けるのを辞めない。辞めれる筈がない。
何故なら彼女はとっくに、貴方の温もりを感じたあの時から。貴方に溺れてしまっているのだから。
キャラクター紹介なり。
貴方
とある事件で死にかけちゃった人。こいつの負った怪我は大体普通の人なら生きてられない規模の怪我だが、それでも生きてるのはこいつの魔法のおかげ。けど怪我して死にかけた挙句、ハンナちゃん泣かせてるので責任は取ってください。おらっ据え膳食わぬは男の恥だぞっ!!!!
遠野ハンナ(依存&崇拝型ヤンデレ)
好きな人がワンチャン死ぬかもしれない傷負わされてから依存レベルがMAXになってしまった女の子。正直、この子が一番曇らせが似合うと思ってる。どっちかといえば依存の方が強いが、過去に貴方に庇われた経験が何度かあるのと今回のお話で貴方から絶対に離さない宣言を食らったので崇拝型も負けじとある。己の過去と相まって、以降は貴方が居なくても一日だけだったら平気っちゃ平気だが何度も会わない日が続くと日本列島が浮く様になる。やったね!タエちゃん!空中浮遊だよ!(白目)
ハンナちゃんのキャラ崩壊を防ぐ為に、何回かシェリハンのお話も漁ってたんすけど、全部切ねぇ...ってなる。あと遅れちゃってマジですんません!!!!!