ヤンデレ魔法少女13人から逃げ切れないと死ぬゲーム。 作:クロウト
違う...違うんだよエレン!!!俺のせいなんだ...!!!シェリハンに男を生やしたのは俺なんだ!!!もう嫌なんだ...自分が...殺してくれ...。
(※今回ちょっと長いっす)
─── これはまずい、と貴方は考える。
今貴方の心境は焦燥に駆られている。その証拠に服で隠れているが貴方の背中には冷や汗が滲んで、背中が冷やつく感覚を覚えてしまう。
だがそんな貴方の心情とは裏腹に森を抜けた先に見つけた花畑に吹く穏やかな旋風が貴方の髪を撫でる。まるでその風が貴方の焦っている心を落ち着かせる様に花畑に吹いた風は花弁を運び、貴方の元へとやってくる。
貴方はそんな風が吹いてもどうにも落ち着いた感覚にはなれなかった。
何をそんなに焦っているのか。きっと貴方のその姿を見る者が居るのなら、そう考えるに違いないだろう。だが貴方の眼窩に広がる
と、貴方が焦りで落ち着かないでいると貴方の右隣からふと聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「 見てください!!○○さん!!シェリーちゃんはついに綺麗なお花の冠を作る事に成功しました〜〜!! ほらほらー!!早速、被ってみてくださいよー!! 」
花畑に座り込んでいる貴方の右隣から聞こえたのは先程まで貴方と一緒に探検をしていたシェリーの声だった。貴方がその方へと向けばシェリーは白い花で作った綺麗な冠を貴方に差し出して来る。いつも怪力で全てを破壊してしまうシェリーとは考えられない程にその冠は美しく、かつ精巧に作られていた。
貴方は怪力故に少しどころか大分手先が不器用であるシェリーの側面しか知らなかったので、その白い花の冠を見たとき。貴方は目を疑ったと同時に一生懸命頑張ってくれたんだなとシェリーの健気さに貴方は不意に嬉しさを覚える。
シェリーは貴方に白い冠を渡すと、貴方はそれを自分の頭に乗せる。これは果たして男が付けても映えるのだろうかと貴方は考えてしまうが、その様子を見たシェリーは露骨に目を輝かせていたので、まあ似合っているのだろう。
貴方がそんな風に白い花の冠を付けていると、突然。シェリーの顔が先程の様な目を輝かせていた表情とは打って変わって、へにゃりと力無く笑う表情を作る。
「えへへ •••どう、ですか?○○さん•••。シェリーちゃんにしては渾身の出来だと思うのですが••• 」
と、白い花冠を被せたシェリーが貴方に聞いてくる。その声は何処か不安そうな声音を纏っており、恐らくだが、シェリーは自分が作ったものが本当に貴方に受け入れられるかどうか不安なのだろう。と貴方は考える。
が、当の貴方はシェリーが自分の側で何度も失敗してしまっても諦めずに丹念に作ってくれた事は知っていたし、実際に作られた物も歪な物ではなく、とても綺麗に作られた冠だ。それに対して、貴方は何の文句も無いし、彼女の好意を今更無下にする事なんて貴方は考えていなかった。
─── 『とても、綺麗だよ。一生付けてたいぐらいに。』
貴方はシェリーの質問に対して、自分の率直な感想をぶつける。その一言が素直な感想だし、そのどれもに虚偽の一片すらない。その貴方の感想を聞いたシェリーは途端に少しだけ頬を赤く染めて行く。
「 っ•••えへへ〜•••そうですかね〜〜?? 」
シェリーはそう言いながら、へにゃりと眉を下げて照れ臭さそうに笑ってみせる。
その瞬間、貴方に告げられた言葉がシェリーの鉄の心を溶かす様な甘い熱となってゆっくりとそれはまたシェリーの心に温もりを与えて行く。
そしてその様に貴方が白い花の冠を頭に乗せていると、今度は貴方の左隣から同じく聞き覚えのある声が聞こえて来る。
「 シェリーさんあなた•••中々やりますわねっ•••!! 」
貴方の左隣に座っているのは先程、貴方とシェリーが出会ったハンナの姿がそこにあった。ハンナは貴方が白い花の冠を頭に乗せているのを見ると、まるで尊いものを見るかの様な恍惚そうな表情で貴方のその姿に目を奪われてしまう。
自分の慕う人が可愛らしい物を身に付けていたら、いつもとは違う魅力が生まれる様に見えるのは人の性だろう。ハンナはお嬢様口調は崩さずに居られたものの、その表情は完全に恋する女の子のそれだった。
───だが、ハンナはシェリーの作ったその白い花の冠に対抗する様に、貴方に釘付けになっていた視線を何とか自分の手元へと移す。ハンナもまたシェリー同様に花畑の花々を満遍なく使ったアクセサリーを作っていた。
「 あっ•••あの!○○さん•••?良かったら、これも身に付けてくださる•••? 」
そう言いながらハンナが差し出して来たのは、シェリーの白い花の冠とは対照的に赤や紫、桜色など様々な色の花弁で作った花の腕輪だった。冠よりもサイズは小さいものの、白一色の冠とは違い、様々な色で形取られたそれは白い花の冠とはまた違った儚さと美しさがあった。
ハンナはシェリーとは違い、とても器用だ。洗濯やら裁縫やら日常生活における家庭的な部分は大体出来、手先がめちゃくちゃ良い事を貴方は知っていたがそれを前提に置いてもハンナの作ったその花の腕輪はとても美しかった。
貴方はその腕輪を貰うと早速、自分の右腕に付け始めた。どういう訳かその腕輪のサイズは
何処で腕のサイズなんて測ったのだろうか、と貴方は少々疑問を抱きつつもそれ以上にハンナが作ってくれたお手製の花の腕輪が思いの外綺麗だった為。まぁいいかとそんな些細な疑問は置いておく事にする。
「 は〜〜〜〜... 」
そんな貴方の腕に付けられた花の腕輪を見て、今度はシェリーが貴方の姿に視線が釘付けになる。口をぱっくりと開けて、身を乗り出して貴方の姿をまじまじと見つめる。貴方はそんなシェリーを見て、そこまで近づく必要あるかなー...なんて思うが、とてもそんな事は気まずくていえなかった。
─── 普通なら、こんな女の子に囲まれて花畑できゃっきゃうふふするなんて男子なら一度なら夢見る光景だろう。この場にいる貴方もまた、そんな光景を夢見た男の一人であり、今この状況も本来。貴方にとっては嬉しいでは言い表せない程の喜びがある筈だった。
けれども貴方はその喜びとは反する様に心の中には焦燥はあれど喜びなんてものは欠片もなかった。何故か?それは今貴方の置かれている状況と貴方の首に刻まれている例の印が関係している。
まず、貴方の両隣にはシェリーとハンナがスタンバイしている。が、ここで早速貴方の貞操を揺るがしかねない問題が発生する。
───とても、
シェリーは当然の様にゼロ距離で貴方の右隣に陣取っており、当然の様に脚と脚がくっついている。更にシェリーは貴方の姿を見ようと顔を近付けさせているのでゼロ距離どころの話ではない。貴方がどれだけ抗おうとしても右を向けば、シェリーと向き合ってしまう。
それに加えて、貴方が左に逃げようとしても左隣にスタンバイしているハンナがそれを逃がさない。ハンナは貴方にべったりくっついており、シェリー程では無いがそれでも距離感は余りにも近すぎる。
つまり、今貴方の置かれている状況は『進むも地獄、退くも地獄』なのである。
何故、こうなってしまったのだろう。と二人の視線が刺さる中で貴方はこれまでの状況を振り返る。もしかしたら今までの状況の中にこの場を切り抜けられる突破口があるかもしれない。と貴方は思いながら、当時の状況を振り返る。
そのきっかけはとても些細な物だった。
貴方がシェリーを背負っていた時に出会ったハンナと出会った。そして当然、貴方とシェリーはこんな所で一人ハンナが何をしていたのか気になっていた。ハンナは普段、牢屋敷内では一人でいる事があまり無い。普段ならシェリーや貴方と同じく牢屋敷に集められた少女の一人である桜羽エマ、そして貴方と一緒にいる時間が多い。
「 そういえば〜。ハンナさんってここで何をしていたんですか?? 」
貴方が気になっていた事をシェリーはハンナに問いかける。ハンナはシェリーのその質問に一瞬だけ驚いた様な表情を見せるが、すぐ表情を取り繕う。
「───ここでお花の冠を作っていたんですの。エマさんは朝からメルルさんと一緒に何処かに行っている様でしたし、一人だったのですの。まあ、言ってしまえばただの暇つぶし、ですわね。 」
─── 本当は貴方の事を待ち続けていた、なんて親友であるシェリーが居る前ではハンナは口に出せなかった。今もハンナは強がっていつものお嬢様の振る舞いを見せているが、本当は今にでも貴方に抱き付きたくてたまらないのである。
けれどハンナの理性がそれを制止する。今ここで貴方に抱きついたら、確実にシェリーも負けじと貴方に対して何かしらのアクションを起こすだろう。もしそれが力ずくで貴方かハンナを引き剥がすとかだとしたら、確実に怪力の魔法が絡んで来て運が悪ければ、どちらかは確実にシェリーの魔法によって木っ端微塵になるだろう。
だから今は耐える。けれどもハンナはシェリーに対して何かしらの悪感情を抱いている訳でもなく、ただちょっぴりだけ貴方に背負わされているシェリーが羨ましくもあった。そんな羨ましさや悪感情よりも、ハンナの心中には貴方が来てくれた事への喜びが湯水の様に湧き出ていた。
「 成る程•••成る程•••••• 」
ハンナの事情を聞いたシェリーは納得がいった様に頷く。けれどもシェリーの表情は何処か思案している様でもあった。貴方がシェリーの表情を頑張って見ようとした時。シェリーは突然、思案し考えている表情から何かを閃いたと思わせる様な表情になった。
「 •••!!! ○○さん!!!さっき、私が○○さんにお花の冠を作ってあげるって言ったじゃないですか?! 」
と、シェリーは目をキラキラと輝かせながら貴方の方を見る。貴方はそのシェリーの様子に困惑しながら頷くが、貴方はその瞬間。シェリーがこの先言おうとしている事がなんとなく予想できた。というかできてしまった。
「 ─── だったら、今からこのシェリーちゃんが○○さんの為にとびっきりのお花の冠を作ってあげますね!!!! 」
やっぱり。と貴方は予想していたものが的中した為、それほど驚きはしなかった。
シェリーはそう言うと弾かれた様に貴方の背中から勢いよく飛び降りる。怪力の魔法の影響かシェリーが飛び降りた時にかかった力で貴方は一瞬だけ前によろめいてしまう。
シェリーがそうして背中から飛び降りると、早速貴方やハンナの足元にあるありとあらゆる花を集め始める。貴方はてっきり怪力の魔法で花一本を抜くごとに地面が割れるかクレーターが出来るのではないか、と考えていたが意外にもシェリーは花の扱いには慣れているのか不恰好な手付きながらも慎重に確実に花を摘んでいく。
「 ••• あのシェリーさんが、こんなにも丁寧に•••。珍しい事もあるもんですわね••• 。 」
シェリーが丁寧に花を摘んでいる姿を見て、ハンナは思わず感嘆の声を漏らす。ハンナは貴方に次いでシェリーの怪力を側で見て来た人物でもある。普段なら裁縫をやらせれば、縫う布を思い切りビリビリに破ってしまうし、りんごなんて一度力を入れるだけで即席のリンゴジュースを作れてしまう。なんて話をハンナは貴方に話していたので、それほどまでに珍しい光景なのだろう。
けれど、そのシェリーの様子を見てハンナは感嘆の声を漏らしながらも何処か決意に満ちた表情を浮かべていた。言うなれば、心に火が付いたとでも言おうか。
「 ••• なら、わたくしもシェリーさんに負けていられませんわねっ•••!!! 」
と、貴方の横で花の冠作りにやる気を出し始めたハンナを見て、貴方は思わず驚いた。別に勝負事でもなんでもないが、その表情はまるで花を摘み始めては早速冠作りに取り掛かったシェリーに対抗心を燃やしている様にも見えたからだ。
─── そして事実。ハンナはシェリーに対して少しばかりの対抗心を燃やしていた。だがハンナはそれとは別の理由でその冠作りに対して情熱を燃やしていた。
(○○さんに、わたくしの作った冠を付けてもらいたいですわっ•••!!!)
そうして花冠を被せた貴方の顔を側で見ていたい。ハンナが冠作りにやる気を出したのはそれが理由だった。が、その理由の中にはハンナは貴方に何かしらのお礼がしたかった、というのもあった。それは貴方が傷付き倒れた
こうして、シェリーとハンナの冠作りは開始された。その過程で彼女達によって作られた手製の花冠が大量に貴方の頭に被せられたのはもはや語るまでも無いだろう。
─── こうして、貴方を巻き込んだシェリーとハンナの冠作りは現在に至る。
シェリーは最初、力が強すぎるあまり、繊細な力の微調整が出来ずによく花を引きちぎっていた事もあったが途中でハンナがシェリーに付き従って冠の作り方を教授してくれた事もあってか最終的には冒頭で語ったシェリーの白い花の冠が出来上がったのだ。
貴方は回想しながら、そのシェリーのひたむきさやハンナの作る様々な花冠に嬉しさを感じていた。やはり男女関係無く、一瞬でも自身の為に献身的になってくれるのは良いものだ。実際、え?これ俺のために!?みたいな嬉しさを拒絶するのは多分誰も出来ないだろう。上手い下手関係無しに真心というのは万人の心を穏やかにさせる効果があるものだ。
──── ただその間、貴方と二人の距離は未だ縮まり切ったままである。
この場を切り抜けられる解決策を見出すという当初の目的を忘れて、貴方はただ短い時間ではあるが、その間はただ思い出に耽っていただけだった。とんだ大失態だし、相変わらず距離感が近過ぎる二人の体温が両隣からほぼダイレクトに伝わって来ているのが、思春期の男の子にとっては猛毒となるそれが心にじわじわと否が応でもその暖かさが伝わって来ていた。
すると、呆気に取られていた貴方の意識を引き寄せる様に貴方の服の袖をぎゅっと握り締める音が聞こえて来る。貴方がその方に意識を向けると、貴方の左隣に陣取っていたハンナが貴方との距離を縮めて、貴方の方へと視線を向け。何か言いたそうな表情を浮かべていた。
「 ••• あのっ、○○さん•••?もしよろしければ•••貴方も•••その••• 」
ハンナは少しだけ顔を赤らめながら言葉に詰まる様子を見せている。ハンナは一瞬だけそうして言葉を詰まらせていたが、意を決したのか貴方に向かって思い切って言葉を紡いでみる。
「 •••よろしければ!! 貴方もお花の冠•••作ってみませんこと? 」
ハンナの口から発せられたのは至極真っ当な貴方へのお誘いだった。貴方はそのハンナのお誘いを受けたが、でも作り方とかよくわからないしな...と貴方の脳裏にはうまく出来るかどうかの懸念があった。
─── が。貴方がそう考えたと同時に一つ。貴方の脳裏に天啓とも呼べるアイデアが浮かび上がって来た。
【もしや、ハンナとシェリーと一緒に花冠を作って、それを彼女達にプレゼントしてあげれば、多少なりとも満足してくれるのではないだろうか。そしてそれに乗じて、花冠に合う花を探しに行ってくる!とでも言えばこの包囲網を抜け出せるのではないだろうか。】
そのアイデアが浮かび上がった時。貴方は自らの事を思わず天才なのではないかと思った。少なくとも花冠を作ってるまでの間はそこに集中できるし、抜け出せるまでの間の時間は耐えれる(かもしれない)。
そこで抜け出したら紛れもなく貴方の完全勝利である。完全に貴方のメンタルに依存してる作戦だが、今思春期の男の子を抹殺しかねない紳士殺しのこのサンドイッチフォームから抜け出すにはその作戦しかなかった。
貴方はハンナのお誘いに了承した。が、けれどもやはり作り方がわからない状態で右往左往しながらやると少しだけ時間がかかるのでは?と貴方は思ったが、その辺の心配はいらなさそうだ。
「•••作り方については、わたくしが教えますから安心してくださいまし!! 」
とんっ、と軽く自身の胸を叩いたハンナが少しだけ頬を紅潮させながらも自信ありげと言った表情で貴方の中にある懸念を打ち払う様に言葉を紡ぐ。
貴方はそんなハンナを見て、頼りになるなと思うのと同時にお母さんみたいだなと不意にそう思ってしまった。思わずお母さん...?とも言いたくなってしまうが本人に怒られそうな気がするので貴方はひとまず言いかけた言葉を謹んでおく事にした。
─── と、そんな風にハンナとのわくわく花冠作りが始まるのかなーと貴方がなんとなくそう思ってるその時だった。
「えー!?ハンナさんだけズルいですよー!!私も混ぜてくださーーい!! 」
突如、シェリーのその言葉とともに貴方は自身の腕に二体の大蛇が巻き付かれた感覚に襲われる。貴方がその感覚がする方へと目を向けるとそこにはシェリーが貴方の右腕に抱き付いていた。その様子はさながら大樹にしがみ付くコアラそのものの様だったが、貴方は先程感じたあの大蛇が巻き付く様な感覚にちょっぴりだけ恐怖を覚えた。
貴方は思わずその唐突にやって来た感覚に思わず心が跳ねる様な感覚を覚える。ただでさえ距離がほぼゼロ距離だったので、貴方はここまでされるとは思わず。先程とは違う温もりの大きさに貴方は思わず叫びたくもなる。
「 ほらほらー!!折角シェリーちゃんが○○さんの為に一生懸命頑張ったんですよー?頑張ったシェリーちゃんは○○さんのご褒美が欲しいでーす!! 」
と、シェリーはまるで構って欲しい子供の様に貴方の右腕を揺らしながらおねだりする。貴方はこうなってしまっては彼女はテコでも動かないどころか怪力の魔法で腕が木っ端微塵になる未来が容易に想像出来たので、彼女の要望を受け入れる事にしたし、そもそも貴方も元からシェリーに向けての花冠は作る予定だった。
シェリーは貴方が自身の要望を受け入れてくれると、「本当ですか!? 」と目を輝かせながら此方にまた迫ろうとして来たので貴方が咄嗟に肯定の意志を示すと彼女は明らかに大喜びしている様子が窺えた。
「 ふっふーん!安心してください!○○さん!!ハンナさんから手解きを受けてから、私の腕前はもう冠作りのプロですよ!!なので!この名探偵シェリーちゃんが助手さんに冠作りのイロハを伝授してあげましょうー!! 」
「 •••それ、本当に大丈夫な奴なんですの? 」
ハンナがシェリーの言葉に猜疑心を秘めたジト目でシェリーを見つめる。別にハンナはシェリーの実力を疑っている訳でもなかったが、どうにもシェリーが誰かに何かを教えるなんて所は見たことが無かった為に少々不安ではあった。
貴方もシェリーの言葉に苦笑いを浮かべるが、ハンナからの手解きを受けたのならきっと大丈夫だろう。とも思った。
─── そうして、貴方の冠作りが始まった訳なのだが...結論から言ってしまうと決してその道のりは平坦ではなかった。
花冠は複数の花を編んで作るものだ。元から編み物といった家庭的な事が得意なハンナが貴方の側に着いてくれてた為、作り方自体は直ぐに把握出来たし、シェリーが貴方に付き従ってサポートしてくれている為にすぐに貴方は花冠の作り方を覚える事が出来し、作れもしたが•••。
けれど───貴方には一つ問題があった。
それは先程、貴方の思いついたこの包囲網を抜け出す為の解決策だ。
当初の予定では貴方が花冠作りに勤しむ途中で、少し遠くの所からお花を摘みに行くと言って一人の時間を作るという予定だったが•••。
─── この二人、全く貴方から離れないのである。
まるで貴方の両腕に深い根を降ろした様に離れないのだ。貴方は花冠を作ってる時に何度か花を摘んで来る、と二人に言ってその場を離れようとしたのだが•••。
「お花探しですね?!?!でしたら、このシェリーちゃんにお任せあれです! 」
と言いながら、貴方が離れようとした瞬間にシェリーが即座に貴方に追いて来るのだ。なんとか振り切ろうかとも考えたが、シェリーが貴方に付いて行くという事は当然、貴方の左隣にいるハンナも付いて来るという事。貴方がシェリーが付いて来る事に呆気に取られつつも自身の左隣を向いてみると•••。
「 •••何をぼさっとしてやがりますの?ほらっ、さっさと行きますわよ! 」
そこにはちゃっかり貴方の手を握りながら、貴方の隣に立っているハンナの姿がそこにあった。男性の手を握るのは初めてなのか、ハンナの表情が先程までは平常心を保ってたが段々と赤みを帯びていく。
───貴方はこの瞬間、あ、これ多分逃げられないわ。と悟った。シェリーとハンナによる、まるで獲物を絶対に逃がさないと言わんばかりの檻の様な包囲網に貴方の作戦はあっさり崩れてしまったのである。
貴方が花冠を作り初めてから数刻。遂に自分の納得出来るものが二つ出来上がった。だがその出来上がった冠はシェリーやハンナの物と比べれば些か歪で、不恰好な物だった。ハンナの手解きやシェリーのサポートを受けて、何とか完成には持ち込めたが、貴方の手先はシェリーと同じく不器用だった為に何度も失敗していた。
それでも何とか花弁を潰したり、花を編む時に茎を間違えて折ってしまわぬ様にと貴方が慎重に慎重をかけて作り上げたのがこの二つの花冠であった。一つは黄金色の花だけで作られた花冠。もう一つはハンナが作ってくれた花の腕輪の様に様々な色を使って作った花冠だ。
「 よ、ようやく完成しましたわね•••。 」
「 やりましたねー!!○○さん!!この名探偵シェリーちゃんのアドバイスのおかげで楽々作れましたね!! 」
「 シェリーさんあなた、途中で○○さんの花冠ぶちぶちに引きちぎってたじゃありませんこと!? 」
─── 流石に、目の前で花冠を引きちぎられたのはビビった。
と、貴方はシェリーとハンナの会話を聞いてる時にそう思った。貴方が花冠作りに悪戦苦闘してる最中に善意で手伝おうとしてくれたシェリーが力の加減をミスって貴方の目の前で花冠が木っ端微塵に粉砕された光景は多分忘れないだろう。あの時のシェリーのてへっ⭐︎みたいな顔も多分今後は忘れない。
そうしてようやく完成した花冠に貴方が心の中に溜まった疲労を吐き出す様にほっと一息つきながらシェリーとハンナの会話を聞いていると、ふとシェリーが何かが気になったのか貴方の作った二つの花冠に視線を向ける。
「 あのー•••そういえば気になってたんですけどーなんで、○○さんは花冠を二つ作ったんですか??○○さんが付けるだけなら一個で十分ですよね? 」
─── シェリーのその疑問は彼女達にとっては至極真っ当な疑問ではあったが、貴方からしてみればそれはただの愚問に過ぎなかった。貴方も作り始めた頃は自分が不器用な事も考えて、自分が被る為の一個で良いかなとも考えていたが•••。
途中で、貴方は自分の為に作る•••という事は花冠を作る理由から外した。代わりに
貴方はシェリーの問いに応える。けれどそれは言葉ではない。貴方はシェリーに自身の作ったカラフルに彩られた方の花冠を彼女に差し出した。
「 •••え? 」
シェリーは貴方に差し出されたそのカラフルに彩られた花冠を見ると珍しく表情が呆気に取られた様な表情になる。いつも天真爛漫でトラブルには首を突っ込むタイプの彼女が、ここまで呆気に取られた様な表情を見せてくると貴方も流石にくすりと笑えて来る。
─── そして貴方はシェリーの反応を待たずに次にハンナにもう片方の黄金色の花で作った花冠を差し出す。ハンナもその突然の出来事に理解が追い付かず、貴方に差し出された瞬間。ハンナはあからさまに吃驚している様子を見せた。
「 え•••ちょっ•••○○さん?!こ、これって••• 」
ハンナとシェリーは貴方に差し出された花冠を受け取るが、一様に彼女達は驚きや困惑を隠せない様子だった。貴方はそんなにおかしい事か?と思いつつも彼女達に何故、自分が作った花冠をあげたのかを説明する。
貴方は今日、向こうから誘われたとは言え、不器用な自分に懸命になって着いてくれた二人に感謝していた。その冠は二人にお礼を伝える為の感謝の印代わりの些細な品物に過ぎない。けれども貴方が失敗続きでも根気良く続けられたのは、間違いなく彼女達のあかげだ。シェリーとハンナの懸命なサポートがあってこそ、出来た事だと貴方は考えた。
─── 故に、最初に彼女達から冠や腕輪をくれた時の様に。貴方もまた彼女達に冠をあげる事にしてみた。ちょっと雑な所が、玉にキズだが。
貴方はシェリーとハンナに『今日は付き合ってくれてありがとう』とにこりと笑いながら感謝を述べた。紆余曲折はあったものの、ここで得た経験は無駄にはならないだろう。
•••が、貴方が感謝の言葉を述べた途端。二人はぴたりと石の様に動かなくなってしまった。ハンナならまだしも、シェリーまでもが推し黙るのは珍しい事だ。
もしかして、貴方は何か言ってはいけない事を言ってしまった?!と二人の異様な雰囲気に貴方はそんな邪推が走る。貴方は慌てて弁解をしようと、二人に向けて再び喋り出そうとするが•••。
─── その瞬間、貴方の身体に二つの衝撃が同時に走る。
「 •••すみません。○○さん。 ちょっとだけ、ちょっとの間だけで良いんです。暫くだけ•••こうさせてもらえませんか? 」
「 多分•••今の私の顔っ•••○○さんに見せられないのでっ••• 」
その衝撃の正体はシェリーとハンナが貴方に抱き付いた衝撃だった。貴方の右腕と右半身を抱きしめていたシェリーが貴方の胸板に顔を沈めながらそう言ってくる。
ただその声は、いつもみたいな天真爛漫を思わせるほどの大きな声ではなく、貴方がシェリーをおんぶしていた時に聞いた、弱々しく真剣な一介の少女だと思わせてくる震えた声だった。
貴方は何が何だが、といった顔でシェリーを見た後に今度は貴方の左腕に思い切り抱き付いているハンナを見ると、彼女もまたシェリーと同じ様にまるで自分の表情を悟られまいと貴方の胸板に顔を埋めながら、貴方に抱き付いている。
「 •••左に同じく、ですわっ•••。少しだけ•••動かないでくださいましっ••• 」
─── そう言ったハンナの声もまた、シェリーと同じくどうしようもなく震えており、何だったら少し泣きそうな雰囲気さえも醸し出していた。
貴方は何か言葉を掛けようとしたが、こんな空気感の中で何か気の利いた言葉を言えるほど貴方の中の世辞の引き出しは余りにも少なすぎる。故に貴方は自分に抱き付いて来たシェリーとハンナの抱擁をただ受け入れる事しか出来なかった。
けれども、彼女達はそれで良かった。貴方の心音を聞き、貴方の体温を感じ、そして貴方の優しさを感じる。それだけでも彼女達の心は救われるのだから。
貴方の着ている服が彼女達の流す涙によって、少しずつその雫が貴方の服に沈んでいく。けれども貴方は彼女達の表情を見れないので、それを知る由すら無い。けれども、彼女達はそれで良かった。
貴方から差し出された不器用ながらも優しさが籠ったその花冠を受け取った時に彼女達はぶわり、と心の底から感情の濁流が押し寄せて来るのを感じた。幼いながらに心の処世術を身につけたシェリーでさえも、その濁流には敵わなかった。
その瞬間。どうしようもなく、言葉に表し様のない嬉しさが心地良い感覚となって彼女達の心に覆い被さる。ハンナの経験したあの残酷で凄惨な過去も。シェリーの犯してしまった過去の罪も、今なら全てを忘れてしまえそうな感覚が両者を襲い、そしてその感情の濁流が涙となって現れる。
自分を救って、向き合って、手を差し伸べ続けてくれた貴方から差し出された、しかも貴方のお手製の物だ。その花冠は彼女達にとって、これ以上の価値のある物なんてないと断言出来るほどの物だった。
「 〜〜〜〜っ•••。ありがとう、ございます。○○さん•••。 」
シェリーが貴方に感謝を伝える。けれどもその声色は先程よりも震えていて、まるで泣いているのではないか、と感じさせる程の声だった。
「 •••私、
貴方の胸板に埋めていたシェリーの顔が、貴方の顔に向けられる。だがシェリーの顔は笑いながら大粒の涙を流していた。
─── 貴方が、え?泣いている!?と驚愕した途端。有無を言わさず、貴方の左隣からまた声が聞こえて来る。
「 っ〜〜〜•••シェリーさんの言う通りですわっ••• 」
え!?と貴方は左隣から聞こえてきたハンナの声に驚愕を示す。
「 わたくし•••も、絶対に、ぜーったいに!
笑いながら大粒の涙を流しているシェリーとは対照的に、ハンナは強気で気高いお嬢様の態度を振る舞っているが、目からはボロボロと洪水の様に涙が溢れ出しており、貴方の服を両手でしっかり握り締めていた。
貴方は、そんなにあの冠。気に入ってくれたのかな。と心の中でそう軽く考えるも、どうしても少しだけ今の状況に困惑してしまうのだった。
───ただ、貴方は未だ気付いていない。貴方はもう彼女達の深く、深すぎる愛情で作られた恋慕の檻から抜け出すのはほぼ不可能に近い事だと言う事を。
そして貴方のこの行動が、この一連の出来事が、更に彼女達の恋慕の檻をより強固で堅牢な物にしてしまった事なんて•••貴方はまだ知る由も無かった。
キャラクター紹介なり。
貴方
なんかその場のノリで花冠作ったら、いきなり二人に爆泣きされて困惑している人。二人からしたら貴方のくれた花冠は自分の生命より大事な物となった訳だが、貴方はそんな事なんて知った事ではない。マジで書いててこいつがクソボケのモンスターに進化しつつある。いつかこいつ夜道歩いてる時にマジで背中刺されるよ。
遠野ハンナ
自分の過去やトラウマ、その他全てを受け入れてくれたかつ、自分の作った人形よりも、確実に貴方との繋がりを感じられる物をくれた事によって脳が破壊され尽くした今回の被害者一号。これを機に、とにかく貴方のくれた花冠を枯らさない様に全力を尽くす様になる。うーん健気。
橘シェリー
今回の被害者二号。ただでさえ貴方関連になると自分の無意識のうちにある愛情やら何やらが溢れ出して止まらなくなるのに、貴方の花冠プレゼントイベントによって情緒がバグっちゃった。施設で虐待を受けまくった結果、人の温もりが分からなくなったが、これを機に貴方と接している時だけは幼い頃に身につけた処世術がオフになる。堕ちたな!(確定された運命) ちなみに花冠には永遠の愛とか示すそうなので、これを知った日には彼女は貴方専属のセコムになる事間違い無し。
─── めちゃくちゃ難産じゃったので、頭空っぽにして生暖かい目で見てくれると嬉しいっス。次回からはちゃんと新しいヤンデレっ娘が出ますのでお楽しみにっス。