ヤンデレ魔法少女13人から逃げ切れないと死ぬゲーム。 作:クロウト
お久しぶりです。クロウトです。前回投稿してから約半年ほど更新出来なくて申し訳ないっす。理由としては去年の十二月からスケジュールがパンパンになっていて、執筆する時間が余り無く、そこに更に資格勉強とかもあったのでハーメルンを開く時間すら無かったのが主な理由です。ですが、最近は落ち着いて来たので依然よりかは投稿頻度が落ちるとは思いますが、またまのさばの二次創作をばしばし書いていくので、これからもどうぞよろしくお願いします。
あなたは遠い昔の夢を見ていた。それは、かつての友との出会いと、あの日見た夕焼けの景色、どれもあなたの頭に強く刻まれる思い出の欠片、その追憶を辿る夢である。
その始まりは、あなたが屋上で傷まみれになりながら、息も絶え絶えになりながら、地べたを這いつくばっている場面から始まった。あまりにも突然のことで何を言っているのか、と思う者も居るかもしれないが、その場面のあなたは確かに蛞蝓の様に床に這いつくばっていた。
そんなあなたは鉛の様に重い身体を引き摺りながら、どこを目指す訳でも無く、ただただ無力な身体を引き摺りながら、どこかの影に向かってただひたすらに突き進む。
その様相はさながらゾンビを彷彿とさせる。あなたの見た目も相まって、今にでもバイオハザードが始まってもおかしくはない。
春の穏やかか陽気が鎮まり、代わりに夏の鮮烈な暑さが夕焼けに染み込む様になった日。打撲やら裂傷やらで散々に傷付いたあなたの身体には鋭い陽光の熱さがじんわりと、あなたの傷を焼き、ひりついたその痛みが、あなたの身体をまるで鉄板の上に置かれた肉の様に焦そうとしてきた。
あなたの朧げな頭でそう思案していると....。何処からか、足音が聞こえて来た。ぱたぱた、と小走りしながらこちらに歩いて来る人物の存在が、あなたの脳裏を掠めた。そして、その脳裏に掠めた予感に従い、あなたはその方を向いてみた所...。
「 ね、ねぇ...キミ、大丈夫?? ...キミ、確かボクと同じクラスの.....! 」
おなじ学校の制服を纏った、白と桃色が混じった髪色の少女の姿がそこにいた。
その少女は、おずおずと何かに少し怯えながらもあなたに話しかけていた。そこに滲んでいるのは恐怖か、或いは傷まみれのあなたに対する心配なのか、どちらにせよ、あなたはその少女の言葉に掠れた喉で応答した。
『大丈夫だ。心配いらない』、と発言したあなたの見た目は、あなたの発言とは真逆を行く様相であり、あなたは笑顔でその少女にそう応答する。
けれど、身体はあなたの意志通りにはならなかった。あなたがそのまま何も言わずに立ち去ろうとすると、疲労か、或いは蓄積されたダメージが間欠泉の様に吹き出したのか、突如、片足の膝がかくんと、折れてしまい、そのまま前のめりに倒れそうになったのだ。
「 っ....、ね、ねぇ、キミ、ほんとは全然大丈夫じゃないんじゃ....! 」
少女が心配しそうに話しかけてくる。けれどあなたは変に強がりな気質があるのか、またもやあなたは小鹿の様に震える足を持ち直して、『大丈夫だ、問題ない。』 と、そんな装備で大丈夫か??と聞かれそうな奴のイントネーションでそう言い、また、踵を返そうとしたが........。
結局のところ、次にあなたが見たのは視界いっぱいに広がっている、少しだけ灼熱を帯びたコンクリートの床だった。
あれ...??とあなたは疑問に思うも、現実は変わらない。そこに転がっているのは、うつ伏せになりながら、海の藻屑の様に転がっているあなただ。
「 えっ?!?! 、...ね、ねぇ!!本当に大丈夫...じゃ、ないよね...。 」
突如、芋虫みたいに這いつくばり出したあなたを見た少女は、ちょっと待ってて!!と言い出せば、ぱたぱたと、その足音が遠ざかっていった。
コンクリートの床面に籠る微かな熱に頬を焼かれる感触に浸りながら、あなたはその間に何度も立ちあがろうとした。...けれども、身体が言うことを聞かず、あなたの身体はただただ必死に手足を動かすことしか出来ない、という結果仕舞いだ。
情けない、そんな四文字があなたの脳裏を掠める。大丈夫だ、なんだとぼやいて、結局のところ見ず知らずの女の子に心配を掛けさせてしまう。
あなたはこれ以上の恥はあるものか、と心の中で苦虫を噛み締めた様な顔をしながら自分を強烈に責め立て、それでもなんとか手足を動かして、身体の体幹を取り戻そうとする。
けれども、やっぱりあなたの身体は思うように動かなかった。と、言うより身体が栄養を失っていて動くに動けない感覚に近かった。
喉がカラカラに乾く様な感覚と唇が乾き、水分が完全に抜け落ちている感覚が鬩ぎ合い、あなたの頭には徐々に鋭い頭痛が現れ始める。脱水症状だ。
やばい。これは本当にやばいかもしれない。今度は、そんな不安の様なそれが痛みと共に神経を駆け巡る。頭痛が脊椎を伝わり、全身に衝撃波の様に伝播し、喉の渇きが増していく感覚が、徐々にあなたを蝕んでいく。
...下手をしたら、このまま意識が吹っ飛んでそのまま死んでしまうかもしれない。そんな最悪なシナリオが、断片的に痛みと共に現実になりそうだ、と予感してきた時、先ほど遠ざかっていった足音が、またぱたぱたと此方に戻って行くのを感じた。
「...お、おまたせっ!!これ、お水持って来たよ!まだ新しいのだから...よかったらこれ飲んで!! 」
そう言いながら、少女がキンキンに冷えた水の入った新品のペットボトルをあなたに差し出して来た。
あなたはコンクリで焼ける顔面の中で、そのペットボトルを見た。何の変哲も無い、ただただ水が入ってるだけの天然水のペットボトル。だが、今の水分が枯渇しているあなたにとっては正に渡りに船であった。
水────。そう認識した時にはすでにあなたの手は、そのペットボトルに伸びており、持てる力を振り絞って、なんとか上体を少しだけ起こして、壁に寄りかかると、少女からペットボトルを受け取り、蓋を外して、一気に飲み始めた。
コンクリの熱く、硬い地面から一転し、あなたの身体に冷たい水の感覚が染み渡る。灼熱から一気に冷却されていくあなたの身体は、その水がまるで、空っぽの身体に注がれる命の水のともばかりに、あなたの身体は急速に満ち足りていく。
そしてミイラの様な乾いた身体に徐々に生気が注がれ、あなたの身体はようやくまともに動くことを許され、重かった身体に少しだけ羽が生える。
「 ...どう、かな。ちょっとだけ落ち着いた...? 」
日陰に寄りかかりながら、水を必死に飲んでいると、隣から少女が話しかけてくる。その表情には、やはり何処か怯えが滲んでいて。しかしその少女はあなたから見てみれば、自分の死に体の命を救ってくれた人物だったので、あなたはペットボトルから口を離すと、あなたはその少女に猛烈な感謝を伝えた。それはもう、土下座をするほどに。
「ええっ!? そんな頭を下げなくていいよっ.....まだ、具合悪いだろうし... 」
その少女は、あなたにそれはもう綺麗な土下座をかまされて、すごく焦っていた。その反応は至極真っ当なモノではあった。が、今のあなたには彼女に感謝を伝えるぐらいしか出来ることは無かった。その間、桜色の彼女はずっと戸惑うことしかできなかったという。....当たり前である。
そこから、一体どれくらいの時間が経っただろうか。場面は移り変わり、追憶の場面は貴方と少女が屋上のフェンスを超えた先の小さな縁の部分に腰を下ろしているとこから始まった。
あなたは少女の隣に座り、まだ水が少しだけ残っているペットボトルを片手で持ちながら、ぼんやりと夕陽が差す校舎を眺めている。校舎の下では部活動に明け暮れている部員たちの号令と、吹奏楽部の楽器の音だけがその場に残響していた。
静寂が二人を包み込み、そしてその後。少女があなたに言葉を紡いだ。
「...明日から学校、行きたくないなあ...。 」
その言葉にあなたは不意に耳を傾け、その方へと視線を送る。しかし、あなたの視線の先にいた少女の顔は、とても寂しそうな顔をしていた。
まるで雨に濡れてしまった子犬の様な表情をしていた少女に、あなたはふと事情を聞いてみようと、少女に何があったのかと聞いてみた。
「 ...あ、ごめん。口に出ちゃってた...? 」
ちょっと聞こえてた、とあなたが言うと少女はそっか、と言ったっきり、黙りこくってしまった。
沈黙した時間は他者から見れば、それほど長くは無いのかもしれない。けれども、あなたからしてみれば、その沈黙の時間は長く、悠久にさえ思えてしまうほど、少しだけ雰囲気が重くなるのを肩身に感じた。
あなたは何かまずいこと聞いちゃったか、と思い少女にやっぱなんでもないと告げようとしたその瞬間、その静寂は不意に破られた。
「 ...... ボク、中学に来てからずっとひとりぼっちなんだ。 」
重い口から開かれたそれは、一人の少女のずっと抱えて来た悩みだった。己の中の孤独を噛み締める様に、その悩みを言葉に紡いでいくのを、あなたはそっと何も言わずに聞き届ける。
「 ずっと一緒にいた幼馴染と、クラスが離れ離れになっちゃって...。ボクはその幼馴染の子にずっと着いて回ってて、ボク一人じゃ、友達も作れないから...それで、今孤立しちゃってるんだ。 」
ぽつぽつ、と雨の滴の様に言葉を溢す少女。その言葉は本物の滴の様に冷ややかで、それでいてその言葉は寂寥と孤独に満ちて、緩やかにあなたの心に纏わり付く。
「 .......ひとりぼっちなのが嫌で、明日からどうしようかなって... 」
顔が項垂れて、表情を隠す少女。だがあなたには素顔は見えずとも、その少女が今どんな表情をしているのか、そして今どんな心境に立っているのかを何処となく察する事は出来た。
あなたにとって、この少女は自分の命を救ってくれた恩人だ。あのままコンクリの床に放り出されていたら、多分あなたはそのまま溶けて死んでいただろう。
だが、そうはならなかったのはこの少女が今日、ここに居てくれてあなたに手を差し伸べてくれたからだ。
...だからであろうか、あなたは自分の事を救ってくれたこの子が、このまま孤独に苦しむ事はあなたにとっては許容出来なかった。
いつかこの子にも寄り添ってくれる友が出来るだろう。いつかこの子の幼馴染が、この子に手を伸ばしてくれるだろう。
...だが、あなたはそのいつ来るか分からない、
そう思ったあなたその少女が自身の孤独の苦しみを打ち明けると、少しだけ逡巡した後に、あなたは少女に向かって、意を決して、その少女に向かって、ならば、と言葉を紡いだ。
「 ...えっ......? 」
少女は信じられない物を見たかの様に、こちらの事を見つめた。その目は大きく見開かれ、先程の寂寥と孤独に対する苦しみは、驚愕で塗り潰されて行く。
あなたが声に出した言葉は、どこにでも聞く様なありふれたフレーズに過ぎない。けれどその少女にとっては、自身の心を大きく揺るがす様な、そんな一言だった。
─────── 『友達になろう。』
あなたはただ一言だけ、そう言った。
「友達って.......ボクが、...キミと.......? 」
少女は口をぽっかりと開けては、あなたを見てぽつぽつと言葉を溢す。だがそれは先程のそれとは違い、あなたの言葉を、確かに聞いたあなたからの提案を確かめる言葉だった。少女のその言葉に、あなたは首を頷き肯定する。
義理を返す、という形にはなってしまうけれどもあなたとてそこまで友達が多い方ではない。なんならほぼぼっちと同義であるので、あなたもまた少し失礼だと思われるかもしれないが、同じ逸れもの同士、どこか仲良くなれるんじゃないかと思っていたが、その予感は当たったようだ。
「 っ...!!ほ、本当に良いの?!ボクが...キミと友達になって...!!! 」
その直後、少女の顔はまるで花の咲いた様な華やかな笑顔になった。目を輝かせ、友達になろうという提案に歓喜を示す少女を見て、あなたは釣られて、此方も笑いながら、それに応じる。
あなたは自分が友達になりたいんだ、と言いながら手を差し出す。握手だ。...なかなか、友達1人作るのに握手なんて大層なことをする人は居ないかもしれない。けれど、あなたにとっても、少女にとっても、その握手は大きな意味を持っていた。
「 ...... !!うんッ....!! うんっ....!!これからよろしくね!!! 」
少女がその手を握る。自分よりも遥かに小さく、それでいて雪の様に白い手があなたの手に収まる。固く確かに握られたその手、少女にとってはそのあなたの手こそが、自身の中にある孤独という名の苦悶から逃れてくれる物だということ、この時のあなたはまだ知らずにいた。
「 ...... あ、まだ自己紹介とかしてなかったね。...って言っても、ボク実はキミの名前、知ってるんだ。 」
○○。自身の名が少女の口から出た時、少しだけ驚いた。けれどもそれもそのはずのことだった。
「 ...ボクとキミ、同じクラスだったよね?だから、名前だけはちゃんと覚えてたんだ。...けど、なかなか話しかけられなくって.....。 」
そんな少女の言葉に対して、あなたは『なら、これからもっと喋れば良い』と返した。あなた自身、それはさらっと言い返したものに過ぎなかった。けれど、少女にとっては、あなたのその言葉は、冷え切ってしまった心に暖かい燈を灯す様な、そんな言葉だった。
「 ッ....うんッ...そうだよね....!!...そうすれば良いよね....!!! 」
少女は感極まった様子であなたに言葉を投げかけた。その目は何処か潤っている様に見え、本当に友達が出来て、心から嬉しいんだな、と彼女のその素直に喜んでいるのが、良く見えた。正にそれは、あなたにとっての太陽でもあった。
「 ...ボクの名前は、桜羽エマ!これからいっぱい話そうね!!○○くん────!! 」
その時、あなたがその夢の終わり。その追憶の果てに見たのは、あなたの友。親友のエマの夕陽に照らされた、鮮やかな笑顔だった。
夢が終わり、意識が心の外郭に引き摺り出される。追憶は終わり、目を覚ました貴方の視界にはいつもと変わらない牢屋敷の部屋が広がっていた。朝の時間、いつもと変わらない起床時間に貴方の身体はゆっくりと持ち上がる。
やけにリアルな夢を見たな、と思いながら眠気で重い身体を持ち上げ、眠い目を擦りながらベッドを降りる。すると、降りた先であなたのルームメイトであるメルルがあなたより先に起きていた。
「...お、おはようございます!○○さん!! ...今日も良い寝顔でしたね! 」
あなたを迎えたメルルはいつも通り、微笑みながらあなたを見つめている。だがメルルの視線の中、彼女の瞳の中に宿るそれには確実にあなたに対しての劣情が積み重なりつつあった。
あなたはメルルに挨拶を返すと、鍵が開いた牢屋の鉄格子の扉を開けて朝食を食べに行こうとする。その道中で、メルルに冗談っぽく自分の寝顔をずっと見てたのか??と言ってみた。勿論、あなたはメルルがそんなことをしてるはずないと思ってるし、思うまでもないだろうと思っていたが。
「はい!!昨日、○○さんがベッドに入ってからずーっと見てました!とっても愛らしいお顔で寝ていたのでつい.... 」
頬を紅潮させ、恍惚としている表情でそう語るメルルにあなたはこいつマジか...。と思ってしまった。きっかけは多分あなたが作っているものの、あなたはまだそれに気付いてなかった。
食堂はいつも通りの光景だった。目の前には人数分の椅子と、テーブルが並んでおり、その奥にはおよそ美味しいとは言えない化け物のお手製料理がバイキング形式で並んでいる。あなたは適当に席を選んで座ろうと席を移動しようとする。
が、席を移動しようとした時。あなたの手首に何者かの掌が音も無く握られた。
力強く決して離さないと言わんばかりに握られるそれにあなたの手首は圧迫感を覚える。それと同時に、あなたは背後から言い表し様のない微かな威圧感を感じ、錆びたブリキの様に首をゆっくりと背後へと回す。
そこには、とある少女の姿があった。
「•••おはよう、○○くん。 」
白色に桜が混じった髪にベレー帽を被り、その双眸はあなただけを射抜いているものの、その瞳には何処か光が無く、代わりに暗く、昏い何かがその瞳に宿してあり、明るい食堂の中でゆらりと蝋燭の火の様に揺れている。
その少女は、あなたが体験した今日の夢に出てきた少女そのものだった。あなたはがっしりと掴まれた手首にかつてないほどの戦慄を覚えながら、その少女の名をぽつりと溢す。
─── エマ.......?
あなたがそう名前を呼ぶと、目の前のエマがにこりと笑った。満面の笑みとはこのことだか、目が笑っておらず、エマは軽やかな足取りで手首を掴みながら、あなたとの距離を緩やかに詰めてきた。
「•••やっぱり、キミの隣は良いなあ。こんなにも近くでキミの顔が見れるなんて。 」
エマがあなたの手首を握りながら、あなたの隣を陣取る。そしていつのまにかエマのその手は手首からあなたの掌へと蛇が這う様に移動し、その手をエマは愛おしそうに握りしめて、自分の手へと恋人の様に繋いでいく。
あなたはそのエマの行動にびくりと身体を震わせて、困惑することしかできなかった。あまりにも雰囲気が違うエマのその様子に、ただただ沈黙を貫くことしか出来ずにいる。その間、あなたの手を愛おしそうに握り締めるエマの顔は、少しばかり恍惚としていた。
「•••席、座ろ?隣で良いよね? 」
やがてエマがあなたの手を恋人繋ぎしながら聞いて来た。その時、視線が手から顔へと映るのだが、その顔は有無を言わせないと言わんばかりのほんのり威圧を混ぜた笑顔になっており、あなたはそれに従うしかなかった。
エマがあなたの手を引き、席へと誘導する。その間、エマはあなたの手を一切離さず、むしろ握る力を強くしていた。離れない様に、確かめる様に。
やがて、あなたとエマは隣同士に着席した。けれどテーブルの下ではエマががっちりとあなたの手を掴んで離さずに掴んでおり、エマの視線はあなたしか見ようとしていない。
その状態からどれほどの時間が経ったのだろうか。あなたの背中は冷や汗が噴き出し、いつもと様子の違うエマに恐怖感を抱いていた。その間、あなたは脳裏で自分が何をやらかしたのかをまず必死に整理しようとするのだが。
その思考の循環は、エマの一言でその機能を停止にした。
「••••••ねぇ、昨日はボクを置いてけぼりにして楽しかった? 」
エマがあなたの耳に顔を寄せて、そう囁やいてくる。その囁いた声にあなたは背中を震わせる。焦燥か、あるいは囁かれたことに対して甘い感覚が電流として走ったのか、そのどちらもか。
だがあなたの反応を見ずにエマはあなたに囁き続ける。
「ボクね、昨日ずーっとキミと一緒に居たかったんだよ?...それなのに、ヒロちゃんとレイアちゃんに囲まれて、シェリーちゃんとハンナちゃんにも囲まれてて、夕飯の時にはノアちゃんにほっぺにちゅーもされちゃってて。ボク、ずっと我慢してたんだよ???キミが他の女の子と話すの、ずーっと我慢してきたんだよ??ボクはキミが幸せなのが一番だから、キミの事が大好きだから、ボクは今までずっと我慢して来たのに。...なのに、キミがボクの所から離れるから。 」
囁きは止まらなかった。まるであなたの脳髄に侵入するかの様にエマの言葉は有無を言わさずあなたの鼓膜の中へと病的な甘さとなって入って来る。あなたはそれをただただ聞くことしか出来ず、そこから逃れようとしてもエマがあなたの手をがっしりと握っていた為に、あなたは彼女から逃れることは出来なかった。
あなたはエマのその言葉に対して、必死に謝罪しようとした。額に冷や汗を滲ませながら、ただひたすらに彼女に許しを希う様に謝り、弁明しようとしたが。
「•••言い訳は、聞きたくないかな。 」
そう言うと、エマの身体があなたの胸の中へと雪崩れ込んで来た。ぽすん、という気の抜けた音と共にエマの白髪があなたの胸へと消える。そして、エマはするりとあなたの手を抜けて、今度はあなたの腰へとがっちりその腕を這わせれば、力を込めてあなたのことを抱きしめていた。
「 •••あのね、ボク、昨日は本当に寂しかったんだよ? キミがボクのことを見てくれないから•••、ボク、キミに嫌われちゃったかもって•••怖かったんだ•••すごく••• 」
エマはあなたを離さなかった。がっしりとホールドされたその腕は力強く固定されており、離れる気配が無い。けれど胸の中で聞こえて来たエマの声は、その力強く固められた腕とは違い、どこか震えていた。
あなたはエマのその言葉を聞くと、困惑してた表情から少し罪悪感に塗れた表情になった。昨日、あなたが色んな少女に追い回されていたのは事実だ。だが昨日、一日中エマに気が回らなかったのも動き様のない事実だ。あなたはエマに謝罪した。抱きしめられながら、許しを希う謝罪では無く、それは罪悪感から絞り出たものだった。
エマはしばらく喋らなかったが、その後言葉を紡いだ。
「 •••今日からずっと、ボクから離れないで。ずっと一緒に居て。 」
エマはそういうと、埋めていた顔を上げ、こちらに上目遣いをしながら条件を提示した。その目は少しだけ潤っている、目に少しだけ元の光が戻りつつあったものの、やはり根本的な威圧はまだ霧散しておらず、顔を上げると、胸に顔を沈めていた位置から、ずいっ、と顔を上げては、あなたと視線を合わせ、あと数センチで唇と唇が触れ合う距離にまで顔と顔の距離を見せた。エマの吐息が、あなたの頬にかかり、あなたの視界にはエマしか映らなくなる。
「 寝る時以外、ずっとボクの隣にいて。ボクと手を繋いで。ボクから離れないで。ボクだけを見て。•••できるよね、○○くん。 じゃないと、ボク...寂しくて死んじゃうから。 」
•••桜羽エマはこうすることで、あなたの意識を自身に全て向けさせられることを理解していた。それは中学一年生からの付き合いによる友達としての勘か、或いはそれ以上に、あなたという人間を慕う恋する少女としての本能か。計り知ることは出来ないが、桜羽エマという人間はあなたという人間のことを理解していた。どんなことをして、何を贈ればあなたが喜び、どんなことをして何をすれば、あなたが恐怖に歪むのか、それらを全て把握していた。
あなたという人間は友を大事にする人間だ。義理と人情にも溢れてるとも言えるその性格は、一度信じた友を絶対に裏切らず、その友の為なら自身が死地に赴く事だって構わない。そんな性格をしていた。...だが、それは裏を返せば、行きすぎればその性格は友を失うことを極度に恐れ、友に依存しているとも言える。エマはそんなあなたの義理堅い性格を逆手に取った。
あなたはエマが死んじゃうかも、と呟いた瞬間。その性格が作用し、大きく目を見開き急激に顔が青ざめていった。明らかに怯えとも言えるその感情の発露は、明らかにエマという友を失ってしまうのではないかという恐怖が見て取れ、それを間近で見ていたエマの瞳にはハートのマークが浮かび出ていた。
(••••••怯えた顔もかっこいいなあ、○○くん♡)
こつん、という音と共にエマの額があなたの額にくっつき、エマの瞳があなたの双眸を射抜く。怯えが取れる瞳の色にエマの頬はほんのわずかだか赤くなり、その桃色の瞳の奥に暗く深い何かが宿り始め、光が徐々に失われて行く。
「 •••••• ボクたち、これからずーっと一緒だよね?○○くん♡ 」
疑問符が付いているそれは、しかしそれは同意を求める物ではなく、相手に同意を強制させる物だった。エマの言葉が、甘い蠱惑的なそれがあなたの心に入って来る。震えた両手がエマの肩を割れ物を扱うかの様にしっかりと優しく握り締められ、あなたは平静を努めようとするが、その瞳の奥にある怖気をエマは見逃すことはなかった。
あなたの口が開く。超至近距離で見つめられているエマの眼があなたを見つめ続け、あなたの口の動き一つ一つを見逃さない様に目で追っている。その目は獲物を見つけた肉食獣の様に鋭かった。
──────── 『自分は..........』
その言葉がエマの鼓膜に響き、その後の言葉が続こうとし、エマの口角が釣り上がった。ーーーその時だった。
「 •••抜け駆けは正しくないな、エマ。 」
あなたの後方から聞こえた凛とした声によって、あなたの言葉が遮られ、怯えて震えた声が止まり、その方に意識が向く。それはエマにとっても同様であり、あなたしか見えていなかった視線が、あなたの後方へと向けられた瞬間、エマの顔が驚愕一色に染まった。
後方へと映るその姿はあなたとエマにとっては余りにも見慣れている姿だった。赤い瞳に宿るその視線は鋭く、あなたとエマを映しており、その顔は
あなたは後方へ振り向き、後方にいる人影と目を合わせる。あなたの顔からは怯えよりも驚愕が上回る。だが、その人影の正体を視界に収めた時、あなたの心には余計に嫌な予感がした。
あなたは咄嗟にその名を呟いた。
────── 『ヒロ........?』
桜羽エマの幼馴染、そしてあなたのもう一人の親友。
桜羽エマ(依存•執着型)
恐らくこの牢屋敷の中で一番ヤンデレになってはいけない子。元より他者に嫌われたくないという恐怖があり、中学の頃にヒロと離れ離れになってしまった後に、一人だった所を○○と出会う事で、時間を重ねるにつれてその恐怖が執着へと変わってしまった。牢屋敷の中だとこの子が一番湿度が高いと思っている。全然桜色でもないし、ロマンティックでもない。
○○(クソボケ)
よかったな!!お前のことが大好きな女の子が二人同時に来てくれたぞ!!(死刑宣告)
久しぶりなのでクオリティが低いのはユルシテ......(命乞い) ついでに自分のプロフィールにXのアカウントをはっつけたのでよろしかったらフォローよろしくお願いします。作品の進捗とか色んなこと呟いてます。