異世界エルフ、ミスティの楽しい魔法教室〜世界に魔法を贈りたい   作:おんせんみかん

14 / 23
14話 生誕祭直前

 

「んー! このミルクのソフトアイスすごくおいしいですね!先生!」

 

「そうだね。温泉地をここに選んで正解だった」

 

 きゃいきゃいと長閑なやり取りをしつつ、名物のアイスを堪能しながら、温泉街の散歩を続ける。ミスティアとレンの二人が並び立ち、その後ろには周辺を常に警戒している泉美が続いた。呑気な二人と違って、泉美は常に気を張り詰めていた。

 

「うん。このカフェラテソフトもおいしいよ。上品な味だ」

 

「そうなんですか? じゃあ、一口貰ってもいいですか? 私も差し上げますので、はいアーン!」

 

 レンは手に持っていたミルクソフトを、横を歩くミスティアの口元に持っていく。聞く分にはカップルのような会話ではあるが、今のミスティアは背丈が子供サイズのエルフ姿であった。周りから見れば、微笑ましい仲のいい姉妹のようである。

 

「だぁぁー! 二人してどうしてそんなに呑気なんですかぁぁ!」

 

 後ろを歩いていた泉美は不意に大声をあげて足を止めた。それにつられて、前を歩いていた二人も足を止める。

 

「何をそんなにカリカリしているんだい? そりゃ、レンちゃんの生誕祭ライブまで、まだまだ、余裕があるからに決まっているじゃないか?」

 

 そう言ってミスティアは横に立つレンを見上げると、レンも「ねー?」と言わんばかりに笑顔で小首を傾げて見つめ返してきた。

 

「そ・う・じゃ・なくて! 周りを見てください!」

 

 泉美の剣幕に渋々、ゆっくりと周囲を見回す。そこには人人人の人だかりが出来ていた。一定の距離を保ち、スマホを向けていたりと、野次馬に徹している。

 

「ふむ。みんな楽しそうでなによりだね」

 

「楽しそうじゃなくて! もう、私たちの居場所がバレちゃってるってことじゃないですか!」

 

 泉美は興奮して顔を真っ赤にしているが、ミスティアは周囲にもう一度、視線を向けて、スマホを向けていた女の子に、小さく手を振ってサービスしておく。途端に手を振った先から黄色い声が上がるが、それは旅館を出てからずっとのことなので慣れたものだ。

 

「あ、あの店は中々面白そうじゃないかい?」

 

「また、お土産屋さんですか! どれだけ買うつもりですかぁ」

 

 泉美はここに来るまでの間にも立ち寄ったお土産屋さんで買った紙袋を軽く持ち上げて、ミスティアに見せつける。

 

「まあまあ、事務所の人にはたくさんお世話になったんだしさ。お土産はいくらあっても足りないよ。ほら早く早く」

 

 ミスティアは二人の手を取り、見た目通りの子供の如く、二人を急かして店の中へと入る。

 

 それを見届けると、数人の浴衣をきた男達が、さりげない距離を保ちながら店へと近付いた。しかし、残り数メートルのところまで来ると、急に眩暈を覚えてたたらを踏む。

 そこで違和感に気付いた。先ほどまで自然豊かとはいえ、温泉街を歩いていたはずなのに、軽くよろめいた足の裏からは不整地独特の凹凸を感じ、湿った腐葉土の匂いが鼻についたのだ。

 

「やぁ、君はどこの人かな? 僕は警告を発したつもりだったんだけれども、言葉では君たちには足りなかったようかな?」

 

木々の隙間から、標的の声が聞こえてきた。

 

(いつから? いつから尾行に気付かれ、いつから俺は錯覚させられていた?)

 

 声が聞こえた瞬間には頭の混乱とは関係なく体が、浴衣の懐に隠していた小振りのナイフを取り出していた。

 

「幻覚でここに誘導されたわけじゃないってことはわかるかい? 君は確かにあの温泉街に居たよ。つい先ほどまでね? まぁ、君の疑念に応える必要もないか……別に君たちがどこの誰で何を目的にしていたのかはどうでもいい。けれども、これも警告だよ。君のご主人様のところに戻ってこう伝えておくれ。減点3ってね?」

 

 その声を最後に森の中から気配は消えていた。残されたのは浴衣を着た外国の男性が一人だけだ。その男性もふらふらと視線を彷徨わせた後、迷いなく森の中を歩いていった。その瞳には意思を感じさせるものはない。

 

「師匠どうしたんですか? 疲れちゃいました?」

 

 店に入って少し商品が入り組んだ奥にミスティアが、急に立ち止まり、中空を睨んだので、不安になり泉美が声をかけた。

 

「ああ、いや。本当に色んな商品が楽しいなって思ってね。ほんと、点数をつけられないほどのいいお店だよ」

 

「……???」

 

 ミスティアは意味ありげに微笑み返して、そう告げると、お菓子類などをいくつかカゴに詰めて、レジへと向かった。レジではそこそこ歳のいった妙齢の女性が、ニコニコと愛想よく会計をしてくれた。

 

 それから数時間、予定の時間になるまでブラブラと温泉街を散策をする。

 

「あの……師匠、大丈夫ですか?」

「ん? なにがだい?」

 

 泉美の問いかけに、ミスティアはきょとんとした顔を問い返した。店に立ち寄ってはお土産を見たりするたびに、ミスティアは心ここに在らずになったり、ボーッとするのが、泉美は心配だったのだ。

 

「いえ、あのお疲れじゃないかなぁって……あはは、変ですよね私」

 

「心配してくれてありがとう。けども、もう終わったからね。大丈夫だよ」

 

 お土産屋さんの店内にある時計に目を向けると、そろそろ、夕方の五時を回ろうかと言う時間だった。ミスティアはそっとスマホの画面に目をやる。微かな笑みを浮かべると、小さなポーチにスマホをしまってから、連れの二人へと振り返った。

 

「おっと、そろそろここを出ようか。流石に生誕祭に本人が遅刻するなんてことは許されないだろうからね」

 

 師匠のその言葉に泉美はようやく安堵の溜息を吐いて、肝心のレンは少し残念そうであった。

 

「ここからタクシーで向かいますか? それとも電車で向かいますか? あ、でも、電車だと少し間に合うか不安が……」

 

 泉美が秘書よろしく、スマホで電車の時刻表を見たり、車で掛かる時間を検索したりしていたが、師匠は満面の笑みを向けると指を一本立てて左右に振る。

 

「ちっちっちっ、泉美、君はまだ魔法の真髄を知らないんだね。僕が魔法の真髄を弟子である君とレンちゃん。そして世界に見せつけてあげよう」

 

 悪童のような嫌な笑みに、泉美は冷や汗を流して、覚悟を決める。何を言ってもこの人はやると言ったらやる魔法使いなのだ。

 

 

 

 

「やっぱりぃぃぃぃいいぃぃ!」

 

「凄い凄い凄ーーい!! 先生すごい! もう、それ以外の言葉が思い浮かばない!」

 

 三人がいる場所は、上空約1000メートルの場所だった。時折、雲の隙間を抜けてさらに上空へ行ったりと、絶叫マシンよりも遥かにスリリングな体験となっていた。

 

「どうだい? 飛行魔法は正確にはアストラル位相という。我々は飛んでいると言うより、半分幽体のような存在となり、物質界と精神界の中間に身を置くことにより……」

 

「あのぉ! 先生、イズミンが気を失っているので、聞こえてはいないかと……」

 

 先ほどまでワーギャーと叫んでいたのが、急に静かになったから、話を聞いているのかと思っていたのだが、とうに意識を飛ばしていたようで、体が力無く垂れていた。

 

「やれやれ、肝が小さいねぇ。世界のこんな美しさを見ないなんて損だって言うのに」

 

 そう言って急上昇をすると、雲の上へと上がる。本来ならばまともに空気すら吸うことも、体温を保つことがまだできないであろう高度でも、レンは、全くの不自由さを感じなかった。

 むしろ、身体を包み込んだいるのは、まるで母の胎内に抱かられるよう安心感を感じさせるモノだけである。

 

 時間はすでに日暮れに差し掛かっており、雲海がオレンジ色に染められていた。それは見る人によっては一面の荒野のようにと、黄金色に波打つ稲穂のようにも感じられる神秘的な光景だった。

 

「私、これを見て、先生の言われていたことがわかる気がします」

 

「何がだい?」

 

「世界はとても美しい。それも想像よりも遥かに……けど、怖くもあります」

 

 もう、空を飛ぶことに慣れたのか。雲の上へと着地するように縦向きで浮いて見せ、ミスティアをクルリと振り返った。

 

「この綺麗な世界を知ったら人間がすごくちっぽけなものに思えて……人の見え方が変わりそうで怖いです」

 

「ふふふ……あははははは!」

 

 その言葉を聞いて、ミスティアは笑い声を上げた。そしてツイッと滑るようにレンの元へと飛んでゆくと、その額にパチンと指を弾いて打った。

 

「あいたぁ! もー何をするんですかー! 痛いですよ」

 

 指で弾かれた部分がほんの少しだけ赤みを帯びて、本当に少しだけ痛かったのか、レンは非難の声を上げた。

 

「生意気だからさ。未知を──人を怖がるのはいい。けれども、知った気になっちゃダメさ。それは好奇心を止める毒だ。ずっと持っていたまえよ。好奇心を。5000年生きていたって、人を理解できなかった僕がいうんだ間違いないよ。この宇宙と同じぐらい、人は驚異と感動に満ちている」

 

 ミスティアはそう言って、仰向けに寝転がるように浮いて、空を上を指差した。それにつられるようにレンも上を見上げる。

 

「人を知りたければ、下を見るのではなく、上を見なくてはね。そうじゃないと人の嫌なところばかり見る羽目になるのだよ」

 

 雲の上ゆえか。空気が薄いせいか。地上で見るよりも遥かに美しい精彩をもった星々が空に輝いていた。

 

「え? わっ! ぎゃあぁぁぁ! どこですか! ここ! おち……おちおち、てない? でも飛んでる! まだ、飛んでます! 高いーー! 師匠! しーしょーー!」

 

「やれやれ、情緒が不安定な弟子が起きてしまった。それじゃあ、本格的に会場に向かおうか?」

 

「はい! 先生!」

 

 三人は太陽が沈みゆく方向へと、また空を滑り始めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

【魔法】ミスティちゃんの魔法を語るスレ206【性別はどっち?】

 

神秘に包まれたエルフっ子のミスティちゃんについて語るスレです。

 

魔法理論と考察については別スレへどうぞ!

 

• 魔法利用法考えるスレ1150【悪用厳禁】 [サイトURL]

 

• ミスティちゃんとイズミンのてぇてぇを見守るスレ78 [サイトURL]

 

253.名無しの地球人@666

ミスイズのスレが落ちとった。誰かスレ立ておなしゃす。

 

254.名無しの地球人@666

ミスイズ?

 

255.名無しの地球人@666

ミスティ✖️イズミンのてぇてぇスレだろ?

ほら、立てたぞ。

 

ミスティちゃんとイズミンのてぇてぇを見守るスレ79

【サイトURL】

 

 

256.名無しの地球人@666

>>255

ありがとんくすの魔法!

 

257.名無しの地球人@666

さて、今日はレンちゃんの生誕祭か。先生の放送もないし、ゲスト出演予定かな?

 

258.名無しの地球人@666

>>257

多分そう。ツブヤクンヤーも何の書き込みもなし。シークレットゲストだろうな。

レンちゃんと仲ええし

 

259.名無しの地球人@666

つか、事務所との相性がいいんだろ。

確かteamワルプルギスって、コンセプトが『夢と希望を叶える魔法』とかだったし、大半キャラが魔女、魔法少女だろ?

 

 

260.名無しの地球人@666

あんまり仲がいいところは見せんほうが……

事務所的には数字は美味しいけど、世界中の組織から目を付けられるのは遠慮したいだろ?

 

261.名無しの地球人@666

なんか、M&Aを掛けられてるって噂もあんね。

 

262.名無しの地球人@666

teamワルプルギスって、非上場だろ? そんなことできるもん?

 

263.名無しの地球人@666

できるよ。あくまで株式は発行されているから証券会社を通さずに、個別に買い付けを行える。

 

264.名無しの地球人@666

国家予算並みの価値なってそう。

今のところミーチューブくん以外だと、teamワルプルギスくらいしか接点持つことができないから、買収できたら値千金だろ。

 

265.名無しの地球人@666

汚ねえ大人の争いやだやだ!

魔法とはもっと夢があるもんなのになー

 

266.名無しの地球人@666

けど、所属タレント離脱できるし、ぶっちゃけるとそうなって欲しくはないが、レンちゃんのとの関係を切れば、ミスティちゃん的には何の障害にもならんのにな。

 

267.名無しの地球人@666

今まで動画で見せたミスティちゃんの性格やら行動原理を見てたら、見捨てるなんてしないって判断やろ? ムカつくわぁ!

 

268.名無しの地球人@666

ミスティちゃん。知っとるんかなぁ? 知ってたら心いたいいたいだぞ。

 

269.名無しの地球人@666

魔法で何とかできんかな?

 

270.名無しの地球人@666

ミスティ「買った株を吐き出したまえよ!」 杖でグリグリ

 

271.名無しの地球人@666

それ物理www

 

272.名無しの地球人@666

そもそも、異世界からこっちに来た人だから、株式のシステムとか。市場にも興味なさそうよな

 

273.名無しの地球人@666

今のところ、本人が異世界と言っているだけで。

考察班は、この世界に昔からいた最後のエルフじゃないかって説もあるね。

 

274.名無しの地球人@666

いやまぁ、エルフの伝承はあったけども……、それならドワーフとかも出てきたら面白いんだがな

 

275.名無しの地球人@666

ミスティちゃんと常に喧嘩しそうw

 

276.名無しの地球人@666

ドヤ街とかにいくといるね。アルコール臭いドワーフw

 

277.名無しの地球人@666

それwww単に酔い潰れたおっさんだw

 

278.名無しの地球人@666

おい! これミスティちゃんじゃない!?

 

279.名無しの地球人@666

単に綺麗な星空だなぁって見たら、人が浮いとるwww

 

280.名無しの地球人@666

やべぇ! もっと、いい望遠鏡はないんか! 拡大にも限界があるんだぞ!

 

281.名無しの地球人@666

国立天文台ーーー! 星見てる場合じゃないぞ! 星の前に魔法少女を追え!

 

282.名無しの地球人@666

やべぇ。本当にミスティちゃんじゃん! 拡大して画像調整してる人いるわ!

[サイトURL]

 

283.名無しの地球人@666

まじだぁぁぁぁ! しかもミスティちゃんいつものワンピーース! レンちゃんはズボンか?これ? おい!もっと綺麗に映ってるのないか!?

 

284.名無しの地球人@666

パ……パンツが……くそ! もっといい望遠鏡はないのか!?

けど、望遠鏡でこのサイズってどんな望遠鏡を使ってるか知らんけど、高度数千メートルは超えてるだろ!?

 

285.名無しの地球人@666

酸素とか大丈夫? つか、気温もか?

 

286.名無しの地球人@666

かなり、低気温で低酸素なはずだけど、多分魔法なんだろうなぁ

 

287.名無しの地球人@666

やっぱ、魔法は反則だわ。

物理法則全て丸無視じゃんw

 

288.名無しの地球人@666

これどこ?

多分、これレンちゃんもいるから、生誕祭に向かってる途中でしょ!?

 

289.名無しの地球人@666

ああ、そうか! 生誕祭に向かってるのか! つか、空から舞い降りる魔法少女とエルフとか! リアチケ当たったやつマジ最高じゃん!

 

290.名無しの地球人@666

ワイらは大人しくネット配信を見るしかないんやで。

 

291.名無しの地球人@666

やばい。今会場にいるんだが、会場周辺が警察もかなりいて厳重警戒体制が引かれてる。

結構、怪しい外国人がいて、チケ狙われる可能性が高いから気をつけて、会場は予定より早く開けて来場者を保護体制に入ってる。

手荷物検査も金属探知機と中身を取り出しての検査とかなり厳重だわ!

飲み物は配布物以外持込内容にもなってるし。これ異常だろ!

 

292.名無しの地球人@666

警察も動員されてるって、どこからか圧力があってイベントの保護が入ったか。本音としては中止してほしいぐらいだろうな

 

293.名無しの地球人@666

カウントダウンは一体何なんだろうな。

時間的に結構なズレが出てるっぽいから、生誕祭関係なさそう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。