イナズマイレブンMONSTERS!!!   作:月兎タンク

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本編にてある描写に若干の違和感を感じると思いますが、意図的にそうしてるので取り敢えず飲み込んでください。


荒波海兵団と白金色の怪獣 中編

雷紋『ひぐ…!えっぐ…!』

 

 ハルくんが初めて“怪物(サッカーモンスター)”って呼ばれた日。お兄は部屋で泣いてた。

 

銀牙『……。』

 

 あたしはその姿を扉の隙間からずっと見てた。ずっと。ずっと。ずーっと。お兄が泣き疲れて気絶するように眠るまで。

 あたしの名誉のために言っとくと。別にお兄を哀れんだわけじゃない。かといって心配だったわけでもない。ただ…()()()()()()

 

夏未『“人は産まれながらに不幸を持ってこの世に生を受ける”と聞いた事があるけど…。そう考えるとそれが貴方の“不幸”なんでしょうね、だって貴方は()()()()()産まれてきたんだから。』

 

 あたしは産まれた時から一度も泣いたことがない。文字通り一度も。

 そのせいかよく周りから感情の起伏が薄いとは言われるけど。あたしにだって感情はちゃんとある。

 パピーに楽しみにしていたプリンを食べられた時はちゃんと怒るし。“ワクワク”を感じて楽しい時はほんのちょっぴり笑顔になるし。アイスの当たり棒を引けた時は嬉しい。

 

 …けど。どう頑張っても泣くことだけは出来ない。

 

ハル『なんで死んじゃったんだよぉ…!』

 

 数年前にサッカーが上手だった子が事故で死んじゃった時。そのお葬式ではハルくんも。お兄も。色んな人が泣いてた。

 でも…。あたしだけはどうしても泣けなかった。あの子が死んじゃって悲しかったし。遊び相手が居なくなった喪失感だってちゃんとあった。

 

 それでもあたしの目から涙は流れてくれない。

 

雷牙『…ならこの先、銀牙が心の底から泣けるようになった時…。その時がオメーさんが成長したって証なのかもな。』

 

 正直なところ。なんであたしがそこまで泣くことに執着しているのかは自分でもわからない。

 

 ただ1つわかるのは。もしあたしが心の底から泣く時は多分……

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰かに負かされた時だけってこと。

 

♢♢♢

アリス「なるほど、これは確かに一本取られたみたいだな。」

 

参募「関心している場合ですかぁ!?新必殺技やタクティクスならともかく化身だけはマズいですってぇ!!!」

 

 スパイの監視の目を掻い潜り切り札を発動した相模原に対して素直に称賛の声を上げるアリスに対し、マネージャー兼参謀である参募は混乱のあまり冷静さを失い焦りまくる。

 

 気を具現化させて顕現させた魔人を従え、選手を大幅に強化する技術“化身”。

 化身が齎す力は凄まじく、一般的には化身は化身でしか破れないと言われている程だ。

 かつては帝国も複数の化身使いを有していた時期もあったが、当代の帝国イレブンに化身を使える選手は0。つまり、化身を発動した井狩に勝てる選手は居ない事と同義なのだ。

 

アリス「落ち着け参募。確かに相模原が化身を使った事は予想外の事態だが、化身の対策は既にしてある。多少の改訂はあっても俺の物語(ストーリー)に路線変更はない。」

 

ウサギ『流石はアリス!天才少年監督に抜かりはないってか!』

 

 既に化身への対策を終えていたアリスは、穂村にアイコンタクトを送り()()()()()()()()の発動を許可する。

 

穂村「“インペリアルサイクル”発動!」

 

「「「「「ラジャー!」」」」」

 

 穂村の号令の元、不思議の国の兵士達は井狩を六角形の陣で囲み逃げ場を無くす。そして瞬く間にボールを奪い、一瞬にして攻めに転じる。

 

参募「おおっ!井狩からボールを奪った!」

 

アリス「敵役(ヴィラン)は個の力を誇るモノ…。ならば主役(ヒーロー)は数の力を誇るモノだ。」

 

穂村「銀牙ッ!」

 

銀牙「ナイスパース。」

 

 遂に帝国の1エースストライカーの脚元にボールが繋がり相模原の選手達に緊張が走る。

 しかし“怪獣”は対策を練らせる暇すらも与えずに爆炎を伴う左回転と共に宙を舞う。

 

銀牙「“ヒートドラグーン”。」

 

 白金の左脚から放たれた爆炎は巨大な東洋龍へと姿を変え、相模原のゴールへ襲い掛かる。

 彼女のシュートによって粉砕されたキーパーの数は数えきれない。だが、海兵相模原の守護神に“逃亡”の選択肢はない。

 例え、この腕を犠牲にしてもゴールを守り切る覚悟を決め、右手に集中させた気を地面に殴り付けると、不思議な事に地面から海水が噴出する。

 

水田「“オーシャンシールド”!」

 

 火は草に強く、水は火に強い。現代っ子なら誰もが知っているこの常識。

 産まれた時から常識の範囲外に生きてきた“怪獣”も衰弱した今となってはその常識の範囲内で生きていかなければならない事を告げるように、地面から湧き出た海水による盾は炎龍の炎を一瞬にして掻き消し天高く弾き飛ばす。

 

王将『止めたァァァ!!!“怪獣”渾身のシュートを相模原のキーパー・水田が悠々と天高くに飛ばすゥゥゥ!!この高さはキーパーの実力と比例しているのかァァァ!?』

 

雷紋(違う…!多分、相模原のキーパーは銀牙のシュートを完璧に止め切れなかったんだ…!その証拠に明らかに想定外の挙動が起こった時の顔をしてる…!)

 

 それはつまり銀牙が徐々に調子を取り戻しつつある証拠でもある。雷紋本人はあまり認めたくないだろうが、帝国が強力な化身を有する相模原に勝つ為にはフルパワー状態の銀牙の力が必要不可欠。

 故に前半の段階で調子が上がりつつある事は、帝国イレブンにとって思いがけない行幸であった。

 

井狩「絶対にボールを死守しろ!当たりの強さならこちらが有利だ!」

 

 一度ボールを保持してしまえば、攻撃力に優れる相模原の方に分がある。

 そう…()()()()()()()()()()…。

 

ピュ~!!!

 

 突如、何処からもとなく鳴り響いた口笛に呼応するように、地面より射出された5羽のペンギン達が目標をボールに定め宙を舞う。

 鋭い嘴がボールに突き刺さると、ペンギン達は高速回転を始め、ゴール中毒者(エゴイスト)のオーバーヘッドキックがボールに叩き込まれる。

 

霊道「“オーバーヘッドペンギンッ”!!」

 

水田「なっ…!間に合わ…グァアアア!!!」

 

ピーッ!!

 

 完全にキーパーの隙を突いた霊道のペンギンが無情にも水田の腹部に突き刺さり、その身ごとゴールネットに叩き込む。

 

王将『ゴォォォル!!!“勝って兜の緒を閉めよ”とはまさにこの事ォォォ!!!見事にキーパーの隙を突いた霊道のペンギンが相模原のゴールに突き刺さったぞォォォ!!!』

 

霊道「ヒャーハッハッハァ!!!感謝するぜ銀牙ァ!!テメェが得点し損なってくれたお陰で俺様のペンギンが大暴れ出来たからよォ!!!」

 

銀牙「……(スッ」

 

霊道「無視してんじゃねェぞコラァ!!!」

 

 1つ歳下相手に盛大な顔芸を晒して煽り散らかす霊道だったが、銀牙はガン無視を決め込み元の位置へ戻る。

 

南波「あっちゃ〜、意外とアッサリと取り返されちゃったっすね〜。どうします井狩さん?もっ回、化身撃っときます?」

 

井狩「無茶言うな。ただでさえ化身は体力の消耗が大きいんだ、これ以上使えば後半に響く。」

 

南波「んじゃあもう()()しか方法は無いっすね〜♪」

 

井狩「何嬉しそうにしてんだ。言っとくがここまでの失敗全部、お前のミスだからな。」

 

南波「はいはい。流石に今回はくらいは井狩さんに合わせるっすよ〜♪」

 

 化身に続き、まだ切り札を隠し持っている様子の相模原のエースストライカー達は軽口を叩きながら自陣へと戻る。

 前半戦の残り時間はあと僅かにして、両者の得点は1-1。勝負の行方はまだまだ分からない。

 

ピーッ!!!

 

銀牙「次は負けない。」

 

井狩「来たかッ!“怪獣ッ”!!!」

 

 試合再開早々、銀牙は先ほどのリベンジを果たす為に一目散に井狩の元へ走り出す。

 その強面からは想像も付かない生真面目さを持ちつつも、好戦的な側面も合わせ持つ井狩は怯む事なく“怪獣”のリベンジマッチに受けて立ち、その屈強な右脚を振りかぶる。

 

 “怪獣”の白金の右脚と“兵長”の屈強な右脚がボール越しに激突し合い、新球のサッカーボールを大きく歪ませる。

 

銀牙「……。」

 

井狩「グッ…!!!」

 

 意気揚々と“怪獣”に立ち向かった井狩だがすぐに自身の選択を後悔する事となる。

 今回放たれた“怪獣”の右脚は先ほどとは比較にならない程重い。今でこそ拮抗しているが、このままでは負けるのは自分であると本能で理解してしまう。

 

井狩「め、“メガロドンッ”!!!」

 

 今の“怪獣”にボールを渡す事はマズいと判断した井狩は、あれだけ出し渋っていた化身を発動し、ギリギリの所で“怪獣”に打ち勝つ。

 

井狩(あ…危なかった…!あと1秒でも化身の発動が遅れていれば間違いなく負けていたのは俺の方だった…!)

 

 徐々に“怪獣”の牙が研ぎ澄まされている事を自覚した井狩は、“怪獣”が完全に目覚める前になんとしてもここでリードを取っておく必要があると判断する。

 

雷紋「そのボールいただきます!“スパイラルドロー”!!」

 

井狩「そうはいかんッ!!必殺タクティクス!“ARANAMI”!!!」

 

雷紋「んなっ!?」

 

 かつて世界大会の大舞台にて、イナズマジャパンと激闘を繰り広げたブラジル代表チーム“ザ・キングダム”の必殺タクティクス“アマゾンリバーウェイブ”を思わせる、荒々しいパス回しで相模原の海兵達は次々と帝国の防御を突破して行く。

 

王将『海兵相模原の豪快なパス回しの前には帝国の鉄壁の防御も為す術が無いィィィ!!!おおっとォ!?その勢いのまま相模原のエースストライカーをゴール前に辿り着かせてしまったぞォォォ!!!』

 

南波「ここで決めるっすよ〜井狩さん!」

 

井狩「今回だけはその自我の強さを押し込んでおけッ!!」

 

 ゴール前に辿り着いた相模原のエースストライカー達は、手始めに南波にボールを渡すと、フィールドに七色に輝く捕食王が出現する。

 

南波「荒波のように荒れ狂いィ!!!」

 

 ルーキーの左脚から放たれた七色の捕食王はゴールではなく、海兵団を率いる兵長へ襲い掛かるも、その背後に更に巨大な捕食王が目の前の獲物を喰らう。

 

井狩「鮫の牙が噛み砕くッ!!!」

 

 井狩の右脚からシュートが放たれた瞬間、二匹の捕食王の牙が重ね掛け(オーバーライド)され、七色に煌めく虹彩の捕食王が降臨する。

 

井狩&南波「「“プリズム・ジョーズ”!!!」」

 

 新たに誕生した捕食王は周囲に眩い光を発しながら帝国の守るゴールに襲い掛かり既に展開された大楯に喰らい付く。

 

陣野「“エンパイアシールド”!…グッ!グァァァァ!!!」

 

ピッー!!!

 

 虹彩の牙は一瞬の拮抗すらも許さずに、三重に張り巡らされた帝国を守護する大楯を噛み砕きゴールネットに突き刺さる。

 

ピッピッー!!!

 

 シュートがゴールネットと割ると同時に、審判のホイッスルが二度鳴り響き、前半戦の終了を告げる。

 

王将『ゴォォォル!!!前半戦終了の直前にて海兵相模原のオーバーライド技が帝国のゴールを粉砕したァァァ!!!これにて帝国はリードを許したまま後半戦を迎える事となったぞォォォ!!!』

 

 まさかの名門たる帝国がリードを許したまま前半戦を終えたという結果に、観客達はざわめき更に熱気をヒートアップさせる。

 フィールド上に居る選手達は、ベンチ周辺にて休息を取るべく駆け足気味に移動を行うも、白金髪の少女だけはその場から動く気配を見せない。

 

雷紋「……ハァ〜…。…そう落ち込む必要はないよ銀牙、確かに負けたことはショックかもしれないけど試合時間はまだまだあるんだ。後半から取り返せばいいさ。」

 

銀牙「……。」

 

 妹は井狩に真正面から敗北した事に強いショックを受けていると判断した兄は、溜め息混じりにフォローを行うも妹は兄の言葉に答える事はなかった。

 

雷紋「…銀牙?」

 

フラ…。ドスン!!!

 

 突如、“怪獣”は人形(マリオネット)の糸がプツリと切れたかのように脚に力が抜けると、受け身を取る事もなく人工芝の上に倒れる。

 

雷紋「銀牙!おい銀牙って!」

 

 “怪獣”の気絶により周囲は騒然となり、運営スタッフ達は大慌てで担架を持って銀牙の側まで駆け寄る。

 

南波「こりゃあ大変だぁ!待ってろ銀牙ちゃん!俺がキs…ゲフン!ゲフン!人工呼吸で目を覚まさせてy(ゴンッ!!) 痛っでぇ!?」

 

井狩「大人しくしてろ変態。」

 

 観客、実況、チームメイト、対戦チーム…。この場に居る全ての人間が“怪獣”の容態を心配し、彼女の無事を祈る。

 

 すると…

 

グゥ~…!!!

 

雷紋「……は?」

 

銀牙「お腹…空いた…。」

 

 帝国学園創立以来、屈指のトラブルメーカーと謳われた稲魂銀牙の問題児っぷりがここに極まる。

 このスタジアムに集まった数千人の人々の注目を集めたアクシデントの正体が、単なる空腹であった事を知った人々がギャグ漫画の如くずっこけた事は言うまでもないだろう。

 

……………

…………

………

……

参募「はい、銀牙ちゃん。」

 

銀牙「サンクス。さんぼー。」

 

 余程お腹が空いていたのだろう。マネージャーの参募からゼリー飲料を受け取った銀牙は10秒どころか0.1秒でゼリーを飲み干し、ゼリーが詰められた容器は一瞬にして萎びたミイラのようにカラカラとなる。

 

アリス「調子はどうだ銀牙?」

 

銀牙「無理。ゼリー程度じゃお腹は膨れない。」

 

参募「弱ったな…。流石にガッツリ食べれそうな物は用意してないし…。」

 

 さしもの帝国学園の権力を使ってもハーフタイム中に銀牙が満足出来るような食い物を用意する事は容易ではないようだ。

 そもそも試合中に空腹で動けなくなる事自体、デビュー戦での居眠り同様前代未聞である為、当然と言えば当然であるが。

 

霊道「…そういや雷紋は何処に行った?さっきから姿を見せねェが。」

 

穂村「恐らくトイレだ。また妹が変な事をやらかしたから胃が限界を迎えたんだろう。」

 

霊道「アイツならありえるな。」

 

 いつの間にか姿を消していた雷紋の居場所を全会一致でトイレだと決めつけられた事に万が一、本人が聞いていようものならきっと心の中で号泣していただろう。

 

 だが、穂村の仮説は残念な事に外れていた。数分後、選手用の出入り口から紫一色の風呂敷に何か重そうな物を包んだ雷紋がフラフラとおぼつかない足取りで現れる。

 

雷紋「んしょ…!」

 

ドスン…!!

 

穂村「何処に行っていた雷紋?やはりトイレか?」

 

雷紋「? いや…少しロッカーまで()()()()()を取って来ただけですけど?」

 

霊道「必要な物ォ?」

 

 すると雷紋は風呂敷の結び目を解くと、その中から容量限界まで料理が詰め込まれた大型のタッパーが重箱の如く積み上げられていた。

 

銀牙「おお…!お弁当だ…!」

 

 空腹に襲われた銀牙にとっては何よりも嬉しいプレゼントだったのだろう。感情の起伏に乏しい彼女としては珍しく目を輝かせながら、タッパーの蓋を開け中に詰め込まれた料理を書き込む。

 

雷紋「あっ!コラ!弁当を食べる前にウェットティッシュで手を拭く!汚い手でご飯を食べたら病気になるよ!」

 

 25年前の母親の如く手を洗わずに弁当を貪る妹を叱る雷紋と、常人ならタッパー1つだけで満腹になるような量の弁当を瞬く間に食い尽くし早速二箱目に突入する銀牙…。

 普通のサッカーチームではまずお目にかかれない前代未聞すぎる状況にチームメイトも若干引いている。

 

参募「あの…これ大丈夫なんでしょうか…?」

 

アリス「まあいいだろう、試合中に弁当を食べてはならないという規則(ルール)は無い。」

 

参募「いや…そういう事じゃなくて…。」

 

 皆が見守る中、数箱の弁当を食べ終えた銀牙は、身体の感触を確かめるように手を握っては開くを数度ほど繰り返すと、胡座を描いた状態で勢いよく飛び立つ。

 

銀牙「超天才美少女サッカープレイヤー銀牙ちゃん。ふっかーつ。」

 

雷紋「銀牙…口元にお米が付いてる。」

 

 独特なセンスのポーズでダブルピースをかます少女に対し、あそこまで大量の料理を食べて後半は動けるのか不安に思う帝国の面々だが、アリスはそんな事は気にせず後半から指示を出す。

 

アリス「後半からは井狩の相手は銀牙に任せ、残りの選手は“不思議な森”の発動に注力しろ。相手のペースを乱し銀牙の攻撃の回数を増やせ。」

 

『はいっ!』

 

 ハーフタイムを終えた不思議の国の兵士達は続々とフィールドに戻り後半に備える。

 しかし、白金の“怪獣”はまたしても動く気配がない。

 

銀牙「ねぇ。お兄。」

 

雷紋「…なんだよ。」

 

銀牙「ありがと。」

 

雷紋「なっ…!」

 

 まさか、あの自己中心的・我儘・自意識過剰の妹が自身に対して礼を言うとは夢にも思っていなかったのだろう。

 不意を突かれた雷紋は母親譲りの素直になれない病が発動した事で、やや顔を赤らめそっぽを向いてしまう。

 

雷紋「…別に。ただ…帝国の10番を背負うヤツに不甲斐ない試合をしてほしくないだけだし。」

 

銀牙「にひっ。今日はそーゆーことにしといてあげる。」

 

 “怪物”の遺伝子を継ぐ兄妹達は、本当に久々の兄妹らしい会話を交えながらピッチの上に降り立つ。

 

 遂に解かれた“怪獣”の封印…。本当の戦いはここから始まる。

 

ピーッ!!!

 

南波「オッス〜♪愛しの銀牙ちゃ〜ん♪元気になったようだし、この試合が終わったらお茶s「邪魔。」んぎゃ!?」

 

 試合中にも関わらず銀牙をナンパしようとした南波から一瞬でボールを奪った銀牙は、前半とは比較にならないスピードで相模原の陣地へ向かって駆け上がる。

 

横川「“ザ・一本釣り”!」

 

大蔵&多田「「“サルガッソー”!!!」」

 

佐府院&釣田「「“ホエールガード”!!」」

 

 “怪獣”の侵入に反応し、続々と発動される海兵相模原のディフェンス技。1つ1つが全国トッププレイヤーにも通用する完成度の高い必殺技の数々…。それが儚げ雰囲気を纏う少女1人に対して放たれる様はやや不憫にすら感じてしまう。

 

 もしも…だ。これが雷紋だったのならば120%の確率で相模原にボールを取られていただろう。

 だが目の前の相手は残念な事に並みではなく、常人の理解の外に生きる正真正銘の“怪獣”だった。

 

銀牙「ほいっと。」

 

 大量のディフェンス技を前にして“怪獣”が選んだ選択は“跳ぶ”事だった。それもただ跳ぶだけじゃない、その強靭な脚力を最大限に活用した事で数mの上空まで跳躍する事に成功していた。

 

 天に降り立った白金の巫女は獅子の魂をその身に宿し、目にも止まらぬ速さでボールに二連撃を叩き込む。

 

銀牙「“プラチナレオーネ”。」

 

 “怪獣”の両脚から放たれた白金の咆哮は、隕石を思わせる様相と速度で地面に流れ落ちゴールへ向かう。

 相模原のゴールを守る水田は右手に気を溜め海流の盾を出現させようとするが…

 

水田「“オーシャンシー…んなっ!?グァアアア!!!」

 

ピーッ!!!

 

 白金の獅子は盾すらも出現させる暇を与えずに、相模原のキーパーを大きく吹き飛ばしゴールネットを激しく揺らす。

 

 後半開始から僅か1分。帝国のエースストライカー・稲魂銀牙により海兵相模原のゴールが破られた。

 圧倒的な実力差を見せつけた“怪獣”に対し、ある者は恐怖を覚え、ある者は切り札を使う覚悟を決め、またある者は“怪獣”に対しより強い恋心を抱く。

 

銀牙「その程度?もっとあたしに出させてよ。本気ってヤツを。」

 

 今ここに“怪物(サッカーモンスター)”と双璧を為す、“怪獣(サッカービースト)”が完全復活を遂げたのだ。




書いてる途中に思ったけどイナMONってヴィクロの二次創作っていうよりかは、イナヒロのスピンオフ的な側面が強いね。南雲原の面々も全然出て来ない所か言及すらされないし。
もしかしてイナヒロと比べると評価が付けられにくい原因はそれかな?

〜オリ技紹介〜
♦︎プリズム・ジョーズ
属性:風
分類:シュート(オーバーライド)
使用者:井狩、南波
≪概要≫
南波の“シャーク・ザ・レインボー”と井狩の“ザ・シャーク”のオーバーライド技。
モーションは地の文では、巨大な鮫が七色の鮫を喰らったとあるが、もうちょい詳しく説明すると
①南波が“シャーク・ザ・レインボー”を井狩に向けて放つ
②後方に現れた巨大な鮫が七色の鮫を喰らい1つに混ざり合う
③井狩がシュートを放つと、混ざり合った鮫がダイアモンドカット状の皮膚に覆われた七色に輝く鮫が現れゴールに向かう
的なプロセスを踏んでいる。
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