イナズマイレブンMONSTERS!!!   作:月兎タンク

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荒波海兵団と白金色の怪獣 後編

南波「あれが“怪獣”の本来の力…!くぅ〜〜!!益々惚れたァ!!!」

 

 兄の弁当を食した事により全快へ至った“怪獣”・稲魂銀牙。

 後半開始から僅か1分で、相模原の防御網を純粋なパワーだけで粉砕して見せた圧倒的な実力を前にしても、期待のルーキー・南波陽太だけは彼女を恐れる所かより一層気に入っていた。

 

井狩「フッ、この状況でもお前は相変わらずだな。」

 

南波「そりゃそうっすよ!美人で・儚げで・サッカーが上手い!俺の好みドンピシャっすよ!」

 

 13歳とは思えない女好きと軽い性格を併せ持つ海兵相模原屈指の問題児でもある彼だが、チーム全体が精神的に追い詰められているこの瞬間においてはその明るさに救われる物がある。

 

井狩「…皆、聞いてくれ。俺は後半は化身を使って銀牙を抑える事に注力する。だから攻撃の軸は南波、お前に任せる。」

 

南波「りょーかいっす。けど、大丈夫なんすか〜?相手が“怪獣”ってのもあるけど、井狩さんは頑張りすぎる所があるからな〜。」

 

井狩「“化身には化身でしか対抗出来ない”…。その不文律を覆した者は未だに居ない。ならば“怪獣”でも例外ではない筈だろ?心配するな、化身の使いすぎで自滅するような真似はしない。」

 

南波「そっすか…。なら、相模原の期待のルーキーの真骨頂を世間に見せつけちゃおうかな〜!」

 

 ここから先のプレーの方向性を定めた海兵相模原イレブンは、各々のポジションに戻り自チームのキックオフに備える。

 彼らの目には、打倒“怪獣”を決意する強い覚悟の光が灯っていた。

 

 

ピーッ!!

 

穂村「必殺タクティクス!“不思議の森”!!」

 

「「「「「ラジャー!!」」」」」

 

 試合が再開して早々、不思議の国の兵士達は総習得数20を超える戦術の一部を複数展開する事で、実体を持たない霧の如くフィールドの戦況を目まぐるしく変化させる。

 

王将『出たァァァ!!!帝国の十八番たる“不思議の森”だァァァ!!!複数のタクティクスを一気に展開する事で相手のプレーを乱す、天才少年監督・不破アリスの代名詞ィィィ!!!はたして海兵相模原はこれをどのように攻略するのかァァァ!?』

 

南波「何が“不思議の森”だ!!そっちが“森”ならこっちは“海”!それも…荒れに荒れる大海原だぜぇぇぇ!!!」

 

 そりとて相模原イレブンも負けていない。

 必殺タクティクス“ARANAMI”を発動し、荒れ狂う荒波の如き攻めを行う事で、常に一定のペースを維持し“不思議の森”の効力を極限まで薄める事に成功する。

 

 先ほどの蹂躙が嘘のように、一進一退の攻防を繰り広げる相模原。

 ただ…彼らの死力を尽くした攻撃が“怪獣”を上回っているわけではなかった。

 …何せ、当の“怪獣”はまるで他人事のようにディフェンスに参加せずに前線で立ち尽くしているのだから。

 

雷紋「ってオイ!何ボケーっとしてるんだ銀牙!!オマエもディフェンスに加われって!」

 

銀牙「キョーミない。ディフェンスはソッチで勝手にやってて。なんならアッチに点を取って欲しいまであるし。」

 

雷紋「なんだよそれ〜!」

 

 結局、雷紋の説得も虚しく“怪獣”が縄張りから動く事はなかった。

 この期に及んでも自身のペースを一切崩さない、妹のマイペースっぷりに雷紋は頭を抱えつつ、彼女の性格を理解していながらも無駄な時間を使ってしまった事を後悔し、後方へ下がる。

 

穂村「“ザ・フォート”!!」

 

 こうしている間にも試合の戦況は刻一刻と変わり、フィールドに築かれた要塞による砲撃がボールを保持する南波に向けて放たれる。

 

南波「みんなに繋いでもらったボールをよぉ…!こんな所で失うわけにはいかねぇんだよッ!!」

 

 皆の想いを無駄にしない為にも、絶対にここを突破しなければならないと奮起した南波は、足元のボールを軽く前方にシュートを打つと、真球状のボールはみるみるうちにサーフボード状に板へと姿を変える。

 

南波「“エアライド”!!」

 

 サーフボードに跨った南波はサーフィンの如き動作で宙を舞い、紙一重の差で次々と砲撃を躱していく。

 

穂村「馬鹿な!?全ての弾を避けただと…!?」

 

南波「どこぞの強面兵長が言ってたぜぇ!人間死ぬ気で努力すりゃあなんでも出来るってなぁ!!!」

 

井狩「フッ!あいつめ!」

 

 中盤の要である穂村を突破した事により、南波の前に立ち塞がる障壁は後衛を守るDFのみとなる。

 だが、既に味方の救援を封じられている南波にはDF達を突破出来る余力はそこまで残っていない。

 

 …となるとだ、彼に与えられた選択肢はたった1つ。

 正直言って成功する保証は何処にもなければ、失敗した時のリスクだって十分大きい。それでもここまで来たらやるしかないのだ。

 

南波「漢・南波陽太ァ!!一世一代の大博打いきまぁぁす!!!」

 

 ゴールに狙いを定めた南波は、ボールに膨大な量の気を注ぎ込むと周囲が波一つ立たない大海原に覆われる。

 

南波「チェストォォォ!!!」

 

 間髪入れずに渾身のシュートを叩き込むと、徐々に水面が揺れ始め、その下に正体不明の巨大な影が現れる。

 大量の水飛沫を周囲に撒き散らしながらゴールへ向かうボールとそれを追従する謎の影…。

 

 事前情報にない正体不明の必殺技に強い警戒心を持ちつつも、DF達に不思議の国の防衛戦を預かる者として見逃すわけにはいかない。

 彼らは少しでもキーパーへの負担を減らす為に、シュートの前に割り込みブロック技を発動しようとする。

 

 それこそが“白い悪魔”を降臨させる合図であると知らずに…。

 

バッシャァァァ!!!

 

王将『な、なんとォォォ!!!帝国のDFがシュートブロックに入った直後に巨大な何かが飛び出したぞォォォ!!!?こ、これは…!鯨ですッ!!それも我々が想像する色とは程遠い“白い鯨”が現れたァァァ!!!』

 

南波「これが俺のぉ…!“HAKUGEI”だぁぁぁ!!!」

 

 かつて海を超えた地にて“白い悪魔”と謳われた最強最大の海の覇者が日の本の地にて再臨し、不思議の国の兵士達の妨害すらもモノともせずに大進撃を行う。

 帝国の精鋭すらも一喝してみせたそのシュートに陣野は、先ほどの“プリズム・ジョーズ”に勝るとも劣らない危機感を感じるが、彼に“逃亡”の選択肢は無い。

 例え、本能が敗北を悟ったとしても誇り高き帝国のゴールを守る者としてその役目を全うするだけだ。

 

陣野「“エンパイアシールド”!!!」

 

 帝国の紋章に沿うように三重に張り巡らされた盾は、白鯨の侵攻を食い止めようと試みるも、“白い悪魔”はその巨大な顎を用いて1枚、また1枚と容易く盾を噛み砕き、瞬く間に最後の防衛線である第3の盾すらも粉砕し、守護神の身体を巻き込みゴールネットに突き刺さる。

 

陣野「グァアアアア!!!」

 

ピーッ!!!

 

王将『ゴォォォル!!!この土壇場にて覚醒した南波による新必殺技が陣野の“エンパイアシールド”を粉砕したァァァ!!!これにて両者の得点は2-3ッッッ!!!またしても海兵相模原がリードを獲得したァァァ!!!』

 

南波「しゃおらァァ!!!これが相模原の期待のルーキー・南波陽太様の実力だァァァ!!!」

 

 まさか神奈川の名門が、全国に名を轟かせる超名門相手に二度目のリードを獲得するとは誰が予想したのだろう。

 事前予想を覆す大番狂せの数々に会場内の熱気は更にヒートアップし、スタジアム内に軽い地響きを発生させる。

 

雷紋「…良かったね銀牙。オマエがディフェンスに入らなかったから、お望み通り相模原に点が入ったよ…。オマエがディフェンスに入らなかったせいで。」

 

銀牙「そだね。ラッキー。」

 

 チームの失点すらも『ラッキー』の一言で済ませてしまう妹にドン引きする雷紋。

 普通のサッカープレイヤーならあり得ない発言の数々に、そもそも根本的な性格がサッカーのようなチームスポーツに向いていないんじゃないかとさえ思ってしまう。

 

ピーッ!

 

銀牙「GO。」

 

 霊道からボールを受け取った銀牙は、再び点を取るべく全速力で駆け上がる。

 しかし、古代から甦りし捕食王が“怪獣”の血肉を喰らうべく少女の前に立ち塞がる。

 

井狩「来ォいッ!!!“古代王者 メガロドン”!!!」

 

 フィールドに顕現した古代の捕食王は、自分こそが食物連鎖の頂点に立つ者だと言わんばかりに、刃のように鋭い牙を見せつけながら唸り声を上げる。

 

 だが“怪獣”の顔に“恐怖”や“怒り”といった感情は一切無い。それどころか鴨がネギを背負ってやった来たと言わんばかりの微笑を浮かべながら古代の捕食を見上げている。

 

銀牙「不思議だね。さっきまでアレだけ大きく見えたのに。今は小魚(スイミー)よりも小さく見える。」

 

井狩「何をゴチャゴチャ言っているッ!!化身を使えん貴様に勝ち目は無いッ!!そのボールは貰ったァァァ!!!」

 

 井狩の中にある“化身は化身でしか破れない”という不文律はもはや盲信の域に達していた。

 彼の名誉の為に言っておくなら、確かに()()()()()()には化身が非化身使いに負けたという記録は無い。

 

 …だが稀に居るのだ。数十年保ち続けてきた不文律をいとも容易く覆してみせる正真正銘の“化け物”が。

 彼にとっての不幸はその“化け物”が彼の目の前に居た事であろう。

 

井狩「なっ…!」

 

銀牙「その程度?もっと期待してたんだけど。」

 

 ボール越しに衝突する右脚と右脚。

 身長180cmに迫る巨漢の選手の背には古代の捕食王が顕現し、一方の“怪獣”の異名を持つ少女の背には何も背負っていない。

 にも関わらず両者の力は拮抗していた。二方向から圧力を加えられた事で楕円形に歪むボールがその力を可視化している。

 

 勝利を確信していた折に見せつけられた“怪獣”の規格外さ…。それを目の当たりにした井狩は徐々に盲信していた絶対の不文律が崩壊していく音を耳にする。

 

井狩「いや…!まだだッ!!“ギガハウリングスクリュゥゥゥ”!!!」

 

 不文律が完全に崩壊する直前に思い直した井狩は、温存していた化身技を発動し今度こそ“怪獣”の打ち勝たんと限界を超えた力を発揮する。

 

銀牙「おっと。流石にコレはマズいかも。」

 

 全快の“怪獣”を持ってしても捕食王の咆哮には手を焼くようで、遊びを捨て全力で対応する。

 白金の稲妻を浴びた“怪獣”の蹴りは古代の捕食王が作り出した大渦と激突し、なんと一瞬にして粉砕してみせる。

 

王将『なんという事だァァァ!?稲魂銀牙の蹴りが化身技に打ち勝ったぞォォォ!!!』

 

 勝利こそは出来なかったものの本来ならば同じ技術を使ってようやく同じ土俵の上に立てる程に化身が齎すパワーは絶大なのだ。

 寧ろ引き分けという結果は、観客相手に“怪獣”の規格外さを知らしめる良い広告となった。

 

王将『それはともかくボールは天高く飛び上がりフリーだァ!!宙に上がったボールを受け取るのは帝国の霊道かァ!?それとも相模原の南原かァ!?はたまたそれ以外かァァァ!!!?』

 

 空中で自由になったボールの行末を観客達が息を呑み込み見守る中、彼らの視線に映ったのは宙を舞うペンギンでも地から飛び出した白鯨でもなく……

 

 

 

 

 

 “それ以外”に該当する漆黒の羽だった。

 

王将『答えは“それ以外”ィィィ!!!ボールを受け取ったのは……!“怪獣”の兄、稲魂雷紋だァァァ!!!』

 

 皆の予想を覆しボールを獲得した雷紋は、妹よりも遥かに劣る走力をフル稼働させ敵陣へ攻め込む。

 まさかの伏兵の登場に呆気に取られる相模原イレブンだが、その中で唯一彼の登場を予測していた者が雷紋の前に立ちはだかる。

 

南波「あんたは未来のお義兄(にい)さんになる男かもしんねぇけどよぉ…!悪いが勝利だけは譲れねぇ!!!」

 

雷紋「……。」

 

 ボールを奪い返し更にリードを広げんと雷紋に襲い掛かる南波。

 だが、不思議な事に雷紋の視線には南波の姿は映っていない。かと言って後方に聳え立つゴールの姿も映っていない。

 

 彼は一体を何を見ているのか?その答えを知る者はこの世にたった1人…稲魂雷紋自身しか居ない。

 

雷紋(もっと力強く一歩を踏み込め…!ココが僕の限界だと言うのなら…目の前の壁に風穴を開けろ…!だって…!きっとその先に…“怪獣”と“怪物”の姿がある筈だから…!)

 

南波「ケッ!上等!野郎が俺を無視した罪は重いぜッ!!!」

 

 雷紋の無言を無視だと解釈した南波はその屈強な右脚から鋭い蹴りを繰り出しボールを奪わんとする。

 

雷紋「師匠ォ!!貴方の必殺技…!お借りしまぁぁす!!!」

 

 刹那、雷紋の前方に道を切り拓くかの如く漆黒の暴風が吹き荒れる。

 

雷紋「“風穴ドライブッ”!!!」

 

南波「なっ…!これって雷門の…!」

 

王将『抜いたァァァ!!!ここに来て雷紋の新技が相模原のディフェンスをぶち抜くゥゥゥ!!!漆黒の暴風をフィールドに吹き荒らすその姿に!かの“革命の旋風児”の面影を感じずにはいられないィィィ!!!』

 

 まさか雷紋がここまで高度な必殺技を使うとは想定していなかった相模原イレブンは対応が遅れてしまい、雷紋の前方一直線に大きなシュートコースが開かれ、最高のシュートチャンスが生まれる。

 雷紋は間髪入れずに指笛を鳴らすと、地面から6門の近未来的な砲台が出現し、砲門が開くと中から計6匹の漆黒のペンギンが現れた。

 

雷紋「“ペンギン・ザ…!トリガァァァ”!!!」

 

 ボールに叩き込まれたシュートは隊員達に指令を送る引き金(トリガー)となり、砲台に詰め込まれたペンギン達を全弾発射(フルバースト)させる。

 

水田「“オーシャン…何!?」

 

 キーパーは雷紋のシュートを止めるべく海水の盾を発生させようとするも、その直前にペンギン達はシュートコースを逸らし天へ向かう。

 

王将『いや違うッ!!これはシュートじゃない!!パスだァァァ!!!その先に居るのはまさかァ!?』

 

 絶好のシュートチャンスを不意にしてでもパスを送る相手はこの場において1人しか居ない。

 選手・実況・観客、この会場に居る全ての人間のその者の顔が浮かび上がり、無意識のうちに移した視線の先には、その背に戦乙女を降臨させた“怪獣”が映る。

 

銀牙「いいパスするじゃんお兄。今だけは褒めてあげるよ。」

 

 物理的な意味でも精神的な意味でも兄を見下す怪獣少女は、上げられたパスに渾身のドロップキックと“戦乙女”の大剣による一閃を炸裂させる。

 

銀牙「“ルナ・ヴァルキリー”。」

 

 月明かりに照らされた戦乙女の一閃を受けたペンギン達は、体色を漆黒から黄金色へ染め直し、更なる推進力を得てゴールへ向かう。

 

水田「クッ…!“オーシャンシールド”!…グッ…!グァアアア!!!」

 

 戦乙女の加護を受けて黄金に輝くペンギン達の前には、薄い海水の盾など無意味も同然。

 盾を突き破ったペンギン達はキーパーの腹部に突き刺さり、その身体ごとゴールネットに突き刺さる。

 

ピーッ!!!

 

王将『ゴォォォル!!!稲魂兄妹が生み出した新連携シュートが海兵相模原からゴールを奪ったァァァ!!!アイコンタクトすらも用いない見事な連携ッ!これもまた血の繋がった兄妹だからこそ可能な芸当なのかァァァ!?』

 

ウサギ『エクセレントッ!!ペンギン達と戦乙女の見事なデュエット!名付けるなら…そう!“ペンギン・ザ・ヴァルキリー”だな!』

 

参募「おお…!割とそのまんまですね!」

 

 実に見事な連携を見せた稲魂兄妹の活躍に対し、観客達は湧き上がるも雷紋に関してはかなり不満気な様子だ。

 まぁ、絶好のシュートチャンスを見逃してでもパスを送るという行為は自分の力ではゴールを奪えませんと言っているも同然である為、本人としてはかなり不服なのだろう。

 

 すると…

 

銀牙「ん。」

 

 妹は兄に向かってちょこんと右拳を差し出す。13年の人生の中で何百ものゴールを奪ってきた妹が得点後に誰かと喜びを分かち合おうとするのは初めて経験だった。

 当然雷紋は呆気に取られるも、妹の成長を兄として素直に喜び左拳を静かに差し出す。

  

雷紋「…ん。」

 

コツン!

 

 互いに拳を軽く合わせる事で、一切の言葉を介さずに互いのプレーを認め合う兄妹。

 両者の間に表面的な『喜び』も無ければ、賞賛の言語化も無い。それでも2人の間には確かな信頼が存在していた。

 

南波「井狩さん申し訳ないっす!今のミスは100パー俺のせいっす!」

 

井狩「…いや、化身のパワーに慢心して稲魂銀牙を止めきれなかった俺のせいでもある…。…だが安心しろ、次は負けない!」

 

 稲魂兄妹の活躍によりなんとか3-3の同点に持ち込んだまま後半戦も最終局面に入る。

 

 既に両チームの選手達は力を出し尽くし満身創痍…なおかつ全ての切り札を使い切った状態だ。

 ここまで来れば、先に得点を獲得した方がこの勝負を制すると言っても過言ではない。

 

ウサギ『……となるとだ!この最終局面の主役はやっぱり〜!』

 

アリス「稲魂銀牙と井狩京一の一択だろう。」

 

ピーッ!!!

 

 審判のホイッスルが鳴り響き、互いの日本一の夢を懸けた最後のワンプレーが幕を開ける。

 相模原のキックオフ早々、主将である井狩にチームメイト全員の未来が託されたボールが回る。

 彼が行くべき道は、数多の不思議の国の兵士達……そして白金の怪獣が守るゴールだけだ。

 

井狩「ヌォォォォ!!!“古代王者 メガロドン”!!!」

 

 今試合、幾度かになる“古代王者”をフィールドに顕現させた井狩はこの身を犠牲にしても未来を掴み取るべく、力強い一歩と共にドリブルを始める。

 

銀牙「シャルウィーダーンス。」

 

井狩「やはり来たかッ!!“怪獣”ッ!!!」

 

 “古代王者”の侵入に反応した白金の“怪獣”は、その屈強な脚を

 

井狩「無駄だッ!!化身使いの俺と化身を持たないお前とでは…!ほんの少し俺の方が強い!!」

 

 先ほどの攻防にて、自身の勝利を確信している井狩は化身パワーを最大にし、その屈強な肉体を最大限活かしたチャージを繰り出す。

 

井狩「勝つのは…!海兵相模原(俺達)だァァァ!!!」

 

銀牙「……。」

 

 化身パワーが極限まで高まった井狩を止められる選手は今の帝国には居ない。

 例え、タクティクスを駆使したとしてもそれは時間稼ぎにしかならない。

 つまりは、銀牙こそが最初にして最後の不思議の国の防衛線なのだ。

 

 だが…

 

王将『これはどういう事だァァァ!?稲魂銀牙は一歩も動かないぞォォォ!?まさかここに来て臆したというのかァァァ!!!?』

 

 少女は一歩も動かなかった。

 

 まさかここに来て臆したのか?

 

 まさか責任の重さに耐えきれなかったのか?

 

 まさかまたしても居眠りをしているのか?

 

 様々な思案が観客達の脳裏をよぎる中…

 

 “怪獣”は微笑を浮かべていた。

 

なんなんだろうね。この気持ち(感情)は。

 

霊道「銀牙ァ!!!」

 

“ワクワク”を感じる時とは違う。この胸の奥がポカポカする感じ。

 

穂村「銀牙ッ!」

 

…そっか。コレがその“何か”なんだね。

 

アリス&ウサギ「『……。』」

参募「いや!何か言いましょうよ!」

 

だとしたら…。ちょっぴりお兄が羨ましいな。

 

帝国イレブン『銀牙(ちゃん)!』

 

あたしはコレが終わったらしばらくは体験出来ないんだもん。けど…

 

雷紋「頑張れェェェ!!!銀牙ァァァ!!!」

 

たまにするチームプレイも結構いいもんだね。

 

銀牙「スゥ…」

 

今はただ。あなたたちに感謝を。

 

 一度、死地を彷徨った事で自身の中で眠っていた“何か”の正体を見出した怪獣少女は、静かにその名を呟く。

 

銀牙「“獅風迅雷(しっぷうじんらい)”。」

 

 刹那、少女の身体から夥しい量の白金のオーラが発せられ、周囲の人間の目が絡んでしまう。

 

南波「んお!?眩しッ!?」

 

 まるで太陽の如き光源が天より落ちてきたかのように眩い光は徐々に収束し始め、その全貌が明らかとなる。

 

井狩「なんだ…?その…変化は…!!」

 

 そこに居たのは神々しい光をその身に宿した1人の“怪獣”だった。

 

 完全に“何か”をモノにした“怪獣”は自身の変化を噛み締めるように、一呼吸を置くと、そっと静かに言葉を紡ぐ。

 

銀牙「最初に言っとく。こっから先は瞬き厳禁だよ。だって…」

 

 刹那、“怪獣”の姿が音も無く消え去る。

 

銀牙「ボヤボヤしてると見逃しちゃう(こうなる)から。」

 

井狩「なっ…!」

 

 また1つ新たな領域に到達した“怪獣”にとって、数億年前という遠い過去に君臨した食物連鎖の頂点は餌にする価値すらなかった。

 ボールを奪った“怪獣”は古代の捕食王を無視(スルー)し、限界を超えた速度でゴールへ向かう。

 

 最強の矛を失った海兵相模原イレブン達はせめてもの抵抗としてありったけのディフェンス技を“怪獣”1人に向けて炸裂させる。

 

銀牙「さーてと。そろそろあたしの超必殺技を見せてあげようかな。」

 

 その瞬間、“怪獣”の身体に一筋の光が天より轟き落ちる。

 

 常人が直撃しようもの即死するであろう、数億ボルトもの電流…。

 

 それを直接受け続ける“怪獣”は痛みの余り苦痛の声を上げる所か、眉一つ動かさず悠然と歩みを進める。

 

 その光景にただならぬ雰囲気を本能で感じ取った海兵達は、撤退しようとするも時既に遅し。

 

 白金の稲妻は徐々にその形状を変化させると、“怪獣”の背に白金の魔神が顕現する。

 

王将『わ…!我々はその魔神を知っているぞォォォ!!!何故ならその魔神は他ならぬ“怪獣”の父・稲魂雷牙がFFIにて使用した伝説の技だからだァァァ!!!それをまさか“怪物”の娘が再臨させたというのかァァァ!?』

 

 その魔神に強烈な親和性を感じる“怪獣”は小さな微笑を浮かべると、天高く飛翔し唖然とする海兵達を宇宙(そら)から見下ろした。

 

 そしてボールに“怪獣”の踵落としと“魔神”の拳が炸裂させる。

 

銀牙「“プラチナギャラクシー”。」

 

 白金の銀河の名を冠した一撃は、文字通り白金に輝く星々と惑星をその内に内包しゴールへ降下する。

 

 かつて米国の海を支配した白鯨ですらも比較にならない圧倒的な質量を前に、もはや自分では手に負えないと判断した水田はゴールを捨てて敵前逃亡を行う。

 本来ならばチームのゴールを守る守護神として絶対に許されないタブー…。

 …だが、彼の判断が正しかった事はすぐに証明される事となる。

 

ドッカァァァァン!!!

 

雷紋「・・・は?」

 

 結論ファーストでいこう。圧倒的な恐怖により守護神すら廃した白金の銀河は、一切の妨害を許さずにゴールに突き刺さった。

 

 ……だが、白金の銀河はゴールネットに突き刺さるだけでは満足せずに、その圧倒的な質量を用いてゴールその物を完膚なきまでに粉砕した。

 

 無惨にも鉄塊と化したゴールだった物を目撃した観客は元より、チームメイトも“怪獣”の理不尽にも程がある実力にドン引きしている。

 

ピッ!ピッ!ピーッ!!!

 

 試合会場に微妙な空気が流れる中、審判のホイッスルが三度鳴り響き、この会場に集まった全ての人間に試合の終了を知らせる。

 スコアボードに表示された両チームのスコアは、帝国は『4』に対し海兵相模原は『3』。どちらが勝者かは誰の目から見ても明らかだ。

 

王将『ここで試合終了ォォォ!!!激戦の末に3回戦に駒を進めたのは帝国学園ーーッ!!!』

 

 実況により我に帰った観客達は、せめて自分達の役割を全うせんと最大限の拍手を選手達に送る。

 

 互いの死力を使い果たした両チームは、観客の歓声を背景にその場に座り込む。

 だが、敗者となった海兵相模原の選手達には悔しさの感情は無かった。

 

南波「クッソ〜!負けた〜!やっぱ帝国は強かったっすね〜!」

 

井狩「…ああ。だが…俺達は全てを出し尽くした上で負けたんだ。勝敗自体に悔いはない。」

 

南波「うっわ出たよ井狩さんのクソ真面目…。…でも、今はそれに救われるっすよ。」

 

銀牙「確かに。顔が怖いくせに良いこと言うじゃん。」

 

 敗者と化した海兵達の会話に割り込んだのは、勝者である筈の“怪獣”だった。

 

井狩「何の用だ稲魂銀牙…。敗者に嫌味でも言いに来たのか?」

 

銀牙「そんなダサい真似はしない。ただあなたに渡したいモノがあるだけ。」

 

井狩「俺に…?」

 

銀牙「あなたは久々にあたしを楽しませてくれたからね。だからあなたに“ワクワクポイント1000”を贈呈する。」

 

井狩「ワクワク…ポイント…?」

 

 やや上から目線ではあるものの、試合が楽しかったと言っている事だけは理解出来るが、“ワクワクポイント”なる謎のポイントを渡された事については理解が及ばすに井狩は唖然としてしまう。

 

南波「ねぇねぇ〜♪俺には何かくれない〜?贅沢は言わないからデートの約束でも〜…」

 

銀牙「フイッ」

 

 試合前の有言実行とばかりに銀牙をナンパする南波だが、当の銀牙はあなたのような男に興味は無いと言わんばかりに無視しその場から立ち去った。

 

南波「ガ〜ン!メガロドンショック!!」

 

井狩「もう諦めろ、彼女はお前とは住む世界が違うんだ。色んな意味でな。」

 

 “怪獣”に抱いた淡い恋心は、あえなく失恋に終わった南波と憧れのFFの夢が道半ばで途絶えてしまった井狩は、自分達が成し遂げられなかった日本一の夢を不思議の国の住民達に託し、兄でありチームメイトでもある選手の元へ帰る“怪獣”の後ろ姿を見送る。

 

雷紋「…銀牙。」

 

銀牙「ん?何?」

 

雷紋「…悔しいけど、今日の試合はオマエの力が無かったら勝てなかった。…ありがとう。」

 

銀牙「当然。だってあたしだし。お礼は晩ご飯に弁当に入ってたナポリタンを作ってくれればいいよ。アレ割と美味しかったから。」

 

雷紋「()だよ!僕だって試合でもうヘトヘトなんだから!」

 

 観客の大歓声を背景に、勝利に貢献した双子は兄妹漫才を繰り広げながらフィールドを後にする。

 こうして3回戦に駒を進めた帝国学園はまた一歩、王者奪還への道が近づいた。

 

 果たして…3回戦にて帝国学園を待ち受けるのはどの学校か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

???『ブラボー!oh〜!ブラボー!!』

 

 少年はただ拍手をしているだけだった。

 

 他の観客と同様に自費でチケットを購入し。

 

 指定された観客席に座り。

 

 今まで帝国と相模原との試合を観戦している。

 

 そんなサッカーファンなら誰でも行うごくごく普通の行動を継続していただけだ。

 

 しかし…

 

「…おい、あそこに居る子ってもしかして“()()()()”じゃないか?」

 

「はぁ?そんなわけねーだろ?第一、なんで“アクセル”がワザワザ日本(ここ)に来るんだよ?今は1番大事な時だろーが。」

 

「そ、そうだよな…。」

 

 その少年を目撃した人々は口を揃えて、少年の事を“アクセル”だと言い放つ。

 

 まるで正体を隠すように帽子を深々と被り。

 

 非常に流暢な英語で選手達を賞賛し。

 

 実に太々しい態度で席に座り。

 

 紅白の二色で構成されたジャージを着こなす。

 

 そんな少年に対し人々は、今頃は海の向こう側に居る筈の“アクセル”という人物の面影を感じずにいられなかったのだ。

 

???『日本(ジャポン)にはハル・エンドウしか価値のあるプレイヤーは居ないと思ってたが、こいつ中々に驚きだなァ!まさか()()1()()の“イナタマ”がこの国に居るなんてなァ!』

 

 謎の少年はやや興奮気味に流暢な英語を用いて独り言を呟く。

 不思議な事にその独り言には“神域のサッカーモンスター”・円堂ハルの名と“稲魂”の姓が言及されていた。

 

???「ゼェ…!ゼェ…!やっ…と!見つけましたよ…!アクセルさん…!」

 

 すると少年と同デザインのジャージ姿の少女が息を切らしながら少年の名を呼び、彼に近寄る。

 息を乱しながらも、その表情には明確に少年に対する“怒り”や“呆れ”の感情が浮かび上がっており、彼の対応次第では暴力を振るう事も辞さない…そう感じさせる凄味がある。

 

???『一体どこに行ってたんですか!?もう集合時間はとっくに過ぎてるんですよ!?そもそもあなたは…』

 

 日本語が未熟な少年に、その怒りを100%伝える為に少女は使用言語を日本語から流暢な英語へ変更し、マシンガンの如く口早々に少年に対して文句を捲し立てる。

 

???『Oh!中々イイ質問だな!OK!それじゃ1から説明しよう!そう…アレは俺がジャパンに向かっている飛行機の中で…』

 

???『あ〜もう〜!分かった!分かりましたから!自分語りはもういいから早く移動してください!貴方が遅刻したらどやされるのは私なんですからね!』

 

 少年の自分語りを拒絶する少女だったが、残念な事に少年の自分語りが止まる事はなかった。

 仕方なく少女は少年を首根っこを掴み、強引に引き釣りながら観客席を後にする。

 

???『そう!その瞬間は俺は思ったのだよ!なら試合を見てから学校に向かえばいいと!』

 

???『その結果がこれなら大失敗ですよ!もう1時間以上遅刻してるんですから!』

 

 突如、嵐のように現れ、嵐のように去っていった少年と少女を観客達は若干引いた目で見つめる。

 

 “怪物”と“怪獣”に強い興味を示す謎の少年…。果たして彼の正体は…?

 

 

 

 

 

???『そう言えば…俺が行く学校の名前は何だっけ?』

 

???『木戸川清修ですよ!き・ど・か・わ・せ・い・し・ゅ・う!いい加減自分の留学先の名前くらい覚えてください!』




好きな展開発表ドラゴンクラッシュ<子供がパピーの台詞を言うヤツ♪

〜オリ技紹介〜
♦︎HAKUGEI
属性:風
分類:シュート
使用者:南波陽太
≪概要≫
海兵相模原の期待のルーキー・南波が使うシュート技。その威力はかなり高く、連携技でやっと破れた“エンパイアシールド”を単独で破る程。
モーションはヴィクロ版のくっそ簡略化された“ラストリゾート”とほぼ一緒。強いて言うならオーラが青と白になって、最後のドラゴンが白鯨に変わってくらい。
元ネタはアメリカ文学を代表する名作である『白鯨』から。

♦︎風穴ドライブ(雷紋ver)
属性:風
分類:ドリブル
使用者:稲魂雷紋
≪概要≫
既存の技だが一応記載。妹の復活に呼応した雷紋が、“そよ風ステップ”の強化をすっ飛ばして進化させた技。
モーション・威力共に原作の方と変わらないが、風の色が白から漆黒に変わっている。
本人曰く、師匠と呼ぶ人物が使う必殺技らしいが…?

♦︎獅風迅雷(銀牙ver)
≪概要≫
銀牙が弱体化による苦戦の末に掴んだパワーアップ形態。ゲーム風に言えば“熱血オーバードライブ”や“キーパー根性”に近いかも。
名前の通り、父・雷牙が使っているモノと同一の原理の技でありフィジカルモンスターの銀牙が使う事で、化身すらも超える力を発揮する。

♦︎ペンギン・ザ・ヴァルキリー
属性:無
分類:シュート
使用者:雷紋&銀牙
≪概要≫
雷紋の“ペンギン・ザ・トリガー”と銀牙の“ルナ・ヴァルキリー”とのオーバーライド技。
モーションはシンプルに
①空に居る銀牙に向かって雷紋がボールとペンギン達を飛ばす
②放たれたシュートを銀牙がゴールに向かってオーバーヘッドキックを炸裂させる共に戦乙女の一閃も炸裂。
③すると、漆黒のペンギン達は黄金に輝きゴールへ向かう
といった感じ。
素の威力は“春雷”くらいかな?フィニッシャーは銀牙だから実際の威力はそれよりも高そうだけど。
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