イナズマイレブンMONSTERS!!!   作:月兎タンク

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作者はメイド喫茶に行った事はないしこれからも行く事はないと思うけど…
メイド喫茶には、稀にロブ・ルッチが居る事だけは知ってる。


メイド? or 冥土?

 どこかの聖書には人は産まれながらに“罪”を背負っていると書かれているらしい。

 

 別に僕は宗教に熱心ってわけでもないし、その教えには言葉以上の意味もあるかもしれないのでこの場ではこれ以上なんやかんや言うつもりはない。

 

 ……え?1話でも似たような話をしてただろだって?

 ……いやそれはそうだけど別にいいじゃん。それにココまでの台詞は全部徹夜で覚えたんだよ?君は他人の努力をそう頭ごなしに否定するのかい?

 

 あー!待って!待ってってば!ごめんごめん!僕が悪かったから帰ろうとしないで〜!

 

 ハァ…!ハァ…!じゃ、じゃあ最後に1つだけ言わせて!本当にコレだけ!コレを言い終わったら帰っていいから!

 

 コ、コホン…!僕は産まれながらに2つの“不幸”を背負って産まれた。

 

 1つは眉間に皺を寄せて産まれたこと…。

 

 2つは“怪物(サッカーモンスター)”の名を継げなかったこと…。

 

 自分で言ってて情けない気持ちになるけど、ココまでは君も既に知っている“不幸”だと思う。

 

 …けど、非常に残念なことにそれは大きな勘違いだったみたいだ。

 

 結論から言おう。僕にはもう1つの“不幸”があった。

 

 ある意味、“それ”はどの2つよりも屈辱的な不幸でもある…。

 

 ああ…!口にするだけでも恐ろしい…!…けど、ココまで聞いてくれた君の為に勇気を出して言うよ…!

 

 僕に身にふりかかった第三の“不幸”…。

 

 それは……。

 

 

 

 

雷紋「い、いらっしゃいませ〜!ご主人さま〜!」

 

 僕は割とメイド服が似合っちゃうってこと。

 

……

………

…………

……………

 

 海兵相模原との激闘を終えてから早数日。僕たちはミーティングルームに集まって、次の対戦校の説明を受けていた。

 

銀牙「zzz…zzz…」

 

 隣で寝てるヤツは知らない。自分のフィジカルに慢心して情報アドバンテージを軽視するヤツなんていつか足元を掬われちゃえばいいんだ。

 

穂村「予選3回戦となると対戦校の水準(レベル)も大幅に上がる…。更に気を引き締めなければな」

 

霊道「関係無ェよッ!!どんなチームが相手でも俺のペンギンで全て粉砕すりゃアいいだけだッ!!!」

 

 穂村先輩の言うことも尤もだね。

 そもそも、今年の地区予選は例年と比べて明らかにレベルが高い。赤城山も相模原も間違いなく本戦クラスの強豪チームだった…関東地区の平均水準が、他の地区よりも高いことを考慮しても明らかに異常だ。

 

 …まァ、その理由は割とハッキリしてるけど…。

 

銀牙「zzz…zzz…」

 

 十中八九、その理由は僕の横で居眠りしている銀牙と雷門中に居るハルくんが原因だ。

 

 ここ数年…日本の少年サッカー界には傑物と呼べるような選手が居なかった。

 

 25年前なら、守さんや父さまを筆頭とする“伝説のイナズマ世代”…。

 

 15年前なら、師匠や太陽さんを筆頭とする“革命のイナズマ世代”…。

 

 といったように、何故か分からないけど日本のサッカー界は10何年に1度傑物が産まれては、また10何年間は停滞の繰り返しなんだ。

 

 そして、“革命のイナズマ世代”から15年後に現れたのが、“怪物”と“怪獣”ってわけ。

 

 ある意味2人は呼び水だ。ホラ、たまにあるでしょ?陸上競技の不動の記録が急に更新されだしたり、フィギュアスケーターがある選手を境に次々と回転数が上がるみたいなことが。

 

 つまり何が言いたいかっていうと……

 

 “怪物”と“怪獣”が産まれたことで世界の均衡が変わったってこと。

 

アリス「それでは次の対戦校を発表する。参募、用意を」

 

参募「はい!」

 

 あっ、遂にきた。しっかしここまで来るとあんまり予想が付かないな…。

 実力的に無難なのは御影専農辺りだけど、赤城山の例もあるからな…予想するだけ無駄かも。

 

 え?尾刈斗?あ〜…アソコは一回戦で負けたよ。割と大差で。

 

参募「次の対戦校は秋葉名戸学園です!!」

 

「「「「・・・は?」」」」

 

 お待ちかねの対戦校の発表だったけど、帝国サッカー部から捻り出された言葉はシンプルな困惑だった。

 

 それもそうか、だって秋葉名戸学園って…

 

霊道「秋葉名戸…?どこだそりゃ?」

 

穂村「知らないのか?関東屈指の進学校だぞ?ただ…スポーツが強いとは聞いた事はないがな」

 

 大体の解説は穂村先輩の言葉通りだけど、秋葉名戸の名前を聞いて思い浮かぶのは、やっぱり25年前のFF予選だね。

 奇しくも今回と同じ、予選3回戦で父さまの所属する雷門とぶつかった。

 試合結果は、清々しいまでの雷門の圧勝。それはもうビックリするくらいの。

 

 …とまぁ、ここまでなら伝説のイナズマイレブンの栄光の肥やしとなった哀れな犠牲者で済ませられるけど、問題はココから。

 というのも、FFが終わって少し経った後に、勝ち進むまでに行っていた反則と裏工作の数々が問題視されて、数年ほどFFの出禁を喰らってるんだよね。

 それが原因なのかは分からないけど、以降の秋葉名戸は学業に力を入れているらしく、スポーツ関係ではほぼ無名の学校になってる

 

 ……って手元の資料に書いてあった。

 

アリス「…そして、コレが秋葉名戸のデータだ」

 

 アリス先輩の指示で、前方のスクリーンに秋葉名戸イレブンの選手データが映し出される。

 けど、映るのは選手の顔写真だけで、肝心の能力データのグラフもグラフらしいグラフもなく、その代わりに『NO DATE』のスペルが表示されている。オマケに詳細もロクな情報がない。

 

穂村「どうした?何かトラブルでも起きたか?画面に映っているのは大した情報ではないが…」

 

アリス「いや、これが不思議の国の(俺の)住民(スパイ)が集めてきたデータだ」

 

霊道「あぁン?カスみてェなデータばっかじゃねェか!!スパイ共は何してたんだァ?」

 

アリス「スパイ曰く、想像以上にサッカー部のセキュリティが高く、レギュラーの顔写真を撮るので精一杯だったそうだ。…面白い」

 

 うっわ〜…アリス先輩めっちゃ好戦的な笑顔してるよ…。この人、見かけによらずめっちゃ負けず嫌いだからなぁ…。

 

 …にしても帝国のスパイが通用しないってマジか…。

 僕はスパイ行為肯定派ではないけど、スパイさんたちの技量は認めてる。

 基本的に3日もあれば仕事を完遂する彼らが、1ヶ月掛かっても無理って秋葉名戸のセキュリティの高さはよっぽどだぞ…。

 

銀牙「ねぇねぇ。お兄。コレ見て。」

 

 珍しくミーティング中に起きて、コレまた珍しく目を輝かせながら僕に話しかける銀牙。

 その手には、中学進学と同時に買って貰った新品のスマホが握られていた。

 

雷紋「なんだよ銀牙…今はミーティングty…ん?コレって…」

 

 僕の顔に押し付けられたスマホの画面…。

 

 そこに表示されていたのは……

 

『秋葉名戸学園祭開催中!!君も日本のオタク文化に染まろう!!!』

 

 まだ夏にも入っていないというのに、こんな中途半端な時期に学園祭を開催している秋葉名戸学園の公式ホームページだった。

 

雷紋「学園祭?こんな時期に?」

 

銀牙「そう。こんな時期に。」

 

雷紋「…まさかと思うけど、行きたいとか言わないよね?ダメだよ?今は大会中なんだから、遊ぶ暇なんt「いや、それは有りだ」…へ?」

 

 本来なら、銀牙の我儘を取り締まらなければならない立場である筈のアリス先輩は、何故か僕の説教を遮ってまで妹の我儘を肯定する。

 

アリス「俺達はこれから秋葉名戸の学園祭に参加する。参加は強制しない、練習したい奴は残っていいし、息抜きをしたい奴は付いてくればいい。30分後に出発だ、それまでに決めておけ」

 

雷紋「ちょ、ちょ、ちょ!本気ですかアリス先輩!?偵察目的なのは分かりますけど、スパイでも手に入らなかった情報を、直接行っても手に入るわけないじゃないですか!!」

 

アリス「さぁな、それに関してはやってみなきゃ分からん。意外と正面突破の方が上手くいくかもしれないぞ?」

 

 正面突破ってんな脳筋な……貴方、一応データキャラでしょう…?

 

ウサギ『ちなみに費用は学校持ちだぜー!出店のたこ焼きや焼きそばを食い放題だ〜!志がある者はアリスのあとに続け〜!!』

 

銀牙「いち抜けた。」

 

霊道「たらふく飯が食えるってんなら、喜んで付いていくぜェ!!」

 

 “経費で落ちる” それは食べ盛りの学生に取っては何よりも魅力的な言葉だった。

 不思議の国の住人から放たれた、その言葉は瞬く間に帝国イレブンを魅了し、彼らの意志を敵地へ向かうバスへ向かわせる。

 

穂村「…どうする雷紋?お前は行くのか?」

 

雷紋「…流石のアリス先輩でも、銀牙をコントロール出来ないと思うので付いて行きます…」

 

穂村「…やっぱり俺も行く。ああいう時のアリスは、絶対に何かをやらかすからな」

 

 こうして、帝国サッカー部ファーストチーム一同は、帝国所有の黒塗りの超巨大送迎バスを走らせ、敵地・秋葉名戸学園主催の学園祭に向かう事となる。

 

雷紋「前々から思ってたけど、帝国の送迎バスってよく車検通るよね…?どう考えても市販のモノじゃないじゃん…」

 

銀牙「そーすいが裏金でも渡してるんじゃない?」

 

雷紋「…少しありえるかも」

 

……………

…………

………

……

 

雷紋「ん〜!やっと着いた〜!」

 

銀牙「お兄。おんぶ。」

 

雷紋「嫌だよ。たまには自分で歩けっての」

 

 それにしてもココが秋葉名戸学園かァ…!東京屈指の進学校って言われているだけあって、大きくて綺麗だなァ…!

 帝国も設備は新しいけど、なんかこう…全体的に薄暗いんだよね。黒が多いせいかな?

 

アリス「参募、パンフレットを」

 

参募「どうぞアリスさん。どうやら秋葉名戸の学園祭は、部活ごとで出店をやっているようですね」

 

アリス「そうか。サッカー部の出店は……」

 

 ん?どうしたんだろ?急にアリス先輩が黙り込んじゃったぞ?もしかしてバス酔いでもしたのかな?

 

アリス「…こっちだ、不思議の国の兵士達。サッカー部の出店があるのは校舎の3階だ」

 

 と思ったら普通に歩き出した…。何だったんだろ?今の微妙な沈黙の時間は?

 

ザワザワ…ザワザワ…

 

 うう…周囲の視線が痛い…。

 そりゃ当然じゃん、マニア体型の生徒ばっかの中に、ゾロゾロのガタイ良くて人相は悪い帝国の生徒達が、学校内を練り歩いてるんだから。

 こんなの、草食動物の楽園に肉食動物が彷徨いているようなもんじゃん。

 

雷紋「…そういえば、サッカー部の出店って何なんですか?文化系ならともかく、運動部の出店ってあんまりイメージ湧かないんですけど…」

 

アリス「着いてからのお楽しみだ。創作だって、読み手が容易に先の展開が予測出来てたら面白くないからな」

 

 出たよ…アリス先輩の秘密主義…。けど、この人がそこまで言わせるのは少し興味があるかも、スマホで調べるのはもう少し後にしようかな。

 

……………

…………

………

……

メイド「「「いらっしゃいませ〜!ご主人さま〜!」」」

 

 何故、アリス先輩がちょくちょく呆気に取られてた顔をしてた理由が分かった…。

 

 だって僕も、脳の理解が追いついてないもん。

 ココはサッカー部が主催する模擬店の筈だろ?それなのにどうしてメイド服を着た女子生徒が接客するカフェに僕たちは居るんだい?

 

銀牙「オムライス5個とナポリタン5個。それとデザートに特大チョコレートパフェを3つ。」

 

メイド「かしこまりました〜!」

 

 ああもう!だから適応が早いって!てか、どんだけ食うんだよ!?また、太っても知らないからね!!

 

雷紋「…いやいや!!おかしいでしょ!?なんでサッカー部の出店がメイド喫茶なんですか!?もっとこう…あるでしょ!?」

 

アリス「パンフレットによれば監督の趣味だそうだ。メイドはサッカー部のマネージャー、部員は喫茶の運営など裏作業なんだと」

 

ウサギ『コレはコレでありだな〜!今年の学園祭はウチも喫茶店でもするか?』

 

 何、呑気なこと言ってるんですか…。ああもう〜…こんなことになるんだったら残って練習しとけばよかった〜!

 

メイド「ねぇねぇ!あの子、結構可愛くない?」

 

メイド「本当だ〜!絶対メイド服着たら似合うよね〜!」

 

 …うん?何かメイドさんがヒソヒソ話してる…?

 小声すぎて会話を聞き取れなかったけど、『可愛い』って単語が聞こえたし、どうせ銀牙の話でもしてるんだろうね。アイツは顔だけはいいし。顔だけは。

 

???「おやおや?中々の大所帯が入店された思ったら、帝国学園の皆さんではありませんか?流石は名門!予選真っ最中でも、メイド喫茶に足を運ぶ暇があるとは恐れ入りましたよ〜!!」

 

 ーー!!! この自慢げにどうでもいい蘊蓄を長々と語りそうな若干捻くれた声は…!

 

霊道「あぁン?誰だおっさん?」

 

雷紋「知らないんですか霊道先輩!この人は目金欠流さんですよ!伝説のイナズマイレブンの補欠兼マネージャーで有名な!」

 

目金「せめて参謀と言ってもらたい所ですねぇ。まあ、稲魂君のお子さんという事で、大目に見てあげましょう。後々めんどくさくなりそうですし…

 

 感激だァ…!こんな所で伝説のイナズマイレブンの一員に出会えるなんて!!補欠だけど…!

 

目金「それでぇ?噂の天才少年監督さんと、その不思議の国の兵士達が弱小サッカー部の秋葉名戸(ウチ)に何の用でしょうかぁ?も・し・か・し・て・!ウチに送り込んだスパイがロクに情報を仕入れて来れなかったから、痺れ切らして大将が乗り込んできたんじゃありませんよねぇ?」

 

アリス「否定するまでもない。そのまさかだ」

 

目金「おっとぉ?これは意外ですねぇ!名門の帝国が、まさかデータが手に入らなかっただけで、弱小サッカー部にワザワザ偵察に来るとは!余程、データに依存していると見えますよぉ!」

 

 う、ウザい…!この人、一応父さまと同い年なんだよね…?…いや、父さまも大概か。

 家族旅行中に酔っ払って、どこから仕入れて来たのか分からない幼児用の三輪車を乗り回して警察のお世話になったこともあったし。

 あの時の母さま怖かったなァ…。

 

アリス「…25年前。当時、無名だった雷門中は下評判を覆してFF優勝を果たした。その一員だったアンタが、弱小だなんて下評判は何の価値も無い事は1番よく知ってるだろう?」

 

ウサギ『むしろアリスのお眼鏡に適っただけでも、光栄に思って欲しいもんだぜー!』

 

目金「…そうですか。けど、君の目的は叶いませんよ。これでも僕は秋葉名戸の監督なんでね、僕の目が黒いウチは大切な部員のデータは渡しません!」

 

 おお…!今の目金さんはちょっとカッコよかったかも…!父さまから目金さんの話を聞いた時は、情けないイメージが先行してたけど年月は人を変えるって話は本当だったんだ…!

 

アリス「そうか…。なら、()()()()()()()()()()()()()()?」

 

ウサギ『ピクチャー手裏剣はっし〜ん!!』

 

 いつの間にか、ウサギさんの手(?)に握られていた写真が、手裏剣のように射出され目金の手元にキャッチされる。

 …何だろう。ものすっごく嫌〜な予感がするぞ…。

 

目金「こ、これはァァァァァァァァ!?!?!?」

 

 写真を見た目金さんは突然、聞いたことのない程の高音で絶叫して、地面に倒れ込んだ。

 目金さんが気絶したことによって、手から離された写真はヒラヒラと宙を舞い、僕たちの目の前に落下する。

 

 そこに映っていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数年前に、銀牙との勝負に負けた罰ゲームでメイド服を着せられた僕の写真だった。

 

雷紋「」

 

銀牙「あっ。昔撮ったお兄のメイド姿じゃん。なんでアリスパイセンが持ってんの?」

 

アリス「とある筋から仕入れた…とだけ言っておく」

 

雷紋「」

 

銀牙「アレ?お兄が固まってる。オ〜イ。お兄〜。」

 

 刹那、僕の脳裏に溢れ出す数日ぶりの黒歴史(トラウマ)の数々…

 

ハル『あ…雷ちゃん…。…き、気にすることないよ!雷ちゃんにどんな趣味があっても俺はずっと親友だからね…!』

 

夏未『キャ〜!可愛い〜!やっぱり雷紋は私似ね〜!メイド服も着こなすなんて流石は私の子供〜!』

 

雷牙『・・・雷紋って、マジで俺ちゃんの息子?なァなァ、夏ちゃ〜ん?まさかとは思うけどライトと浮気s…アズカバン!?』

 

 次々と蘇る僕の黒歴史達…。この間の相模原でもっと強固な蓋をしたのに…!何度も忘れようと努力したのに…!どうして過去は僕の後ろに付きまとうんだよ…。

 もうダメだコレ。過去は消えない、消えちゃいけないんだ。

 

雷紋「アビビビビ…!!!」

 

穂村「雷紋!しっかりしろ雷紋!!誰だって他人に見せられない趣味趣向はある!お前の場合はそれが女装だっただけだ!だから戻って来い!!」

 

目金「・・・ハッ!ぼ、僕とした事が…!あまりのショックに気絶していたとは…!だ、だが…!そんな紙切れ1枚では絶対に…「誰が取引商品は写真だけだと言った?」…へ?」

 

 ・・・ハッ!ココは…?・・・そうだ!確か…何故かアリス先輩が僕のメイド服姿の写真を持ってて……ん?何ですかアリス先輩?どうしてそんなに僕をジロジロ見ているんですか?

 

アリス「偶然たまたま運が良い事に、()()()()()()()()()()()()()()?」

 

目金「まさか…!」

 

アリス「サッカー部の選手データと等価交換なら、今、目が覚めた稲魂雷紋を今日一日だけ貸し出してやっていい。無論、メイド服を着せて写真を撮るのもOKだ」

 

雷紋「異議ありッ!!!」

 

アリス「却下だ」

 

雷紋「そこをなんとか!!」

 

 ココだけはぜっっっったいに引くわけにはいかない…!もう嫌だ…!メイド服を着るのだけは絶対に嫌だ…!

 

アリス「アンタが創作者(クリエイター)としても活動している事は、既に調べが付いている。特に…最近のマイブームはメイドだそうだな?」

 

目金「グギギギ…!」

 

 なんでそこで悩むのォ!?普通に考えて選手>創作でしょォ!?マジでお願いします目金さん!キッパリとNOって言ってください!!!

 てか、自分の創作意欲を優先して選手を売るなんて監督失格ですよ!?

 

アリス「残り時間は10秒だ!それで答えが決まらないのなら、俺達は速やかに退室する!」

 

 天国に居るであろうステラお祖父様ァ…!雷夏お祖母様ァ…!お願いしますゥ…!!どうか僕の願いを叶えてくださいィ…!!

 

目金「分かりました!取引に応じましょう!!」

 

 コレでハッキリした。この世に神は居ない。ましてや天国なんてありやしない。

 もう僕はコレからの人生、金輪際神頼みはしない。だって頼んだ所でムダだから。

 例え、本当に神様が居たとしてもどうせ居眠りばっかしてんだよ。

 

目金「ホラ!これがウチの選手データが入ったUSBメモリですよ!」

 

アリス「参募、照会を」

 

参募「少し待ってくださいね…。…はい、恐らく正確な物かと」

 

 終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終わった終w…

 

目金「それでは皆さん!雷紋君にメイクアップ!」

 

メイド「「「ラジャ〜!」」」

 

 うわなにするんですかやめてくd…

 

……………

…………

………

……

雷紋「らっしゃいませー…」

 

 こうして冒頭に戻るというワケだ…。

 

 え?帝国のみんな?もう帰ったよ?アリス先輩曰く、なんでも目的の物は手に入ったから、もうココに用は無いんだってさ。1年生を売り払って得たデータが手に入ったから。

 

 …もうこうなったら恥も外聞も捨てて雷門中に転向しようかな?別に雷門でなくてもいいや。

 なんならサッカー部がない所でもいい、そうだな…理由は分からないけど、長崎辺りが良さげな気がする…。

 

目金「駄目ですよ雷紋君!メイドたるもの、もっと愛想良くしなければ“萌え”は生まれません!!データを渡した以上、貴方にはキチンと働いてもらいますからね!!…いや、無愛想系女装メイドもアリか…?

 

雷紋「別に僕は好きでメイド服を着たワケじゃないですし…。そもそも先輩が勝手に言っただけで、僕は一言も了承してませんし…」

 

目金「ハァ〜…!君は本当に分かっていませんねぇ!雷紋君!()()を見なさいッ!!!」

 

雷紋「こ、コレは…!」

 

 僕は正論を言っただけなのに、目金さんからすれば余程意味不明な言葉だったんだろうか。

 頭を抱えながら大袈裟なモーションで差し出された、丁寧に額縁に入れられた写真。

 

 そこに映っていたのは……

 

雷紋「は…母さま…!?」

 

 恐らく25年前の予選時にて撮られたであろう、当時の雷門マネージャーである木野さんと音無さんと共に、顔を赤らめてメイド服を着ている中学時代の母さまの姿だった。

 

目金「伝説のイナズマイレブンを支えた名マネージャーである木野さん、音無さん、夏未さん…。貴方も知っていると思いますが、彼女達はその後素晴らしい実績を残しました」

 

 そ、そうかな…?…いや、そうかも。

 アメリカに居る木野さんはよく知らないけど、音無さんの情報収集のノウハウは今でも雷門サッカー部に活躍されているらしいし、母さまは…まぁ、理事長業務で忙しい中で母親を両立出来ているのはスゴいと思うよ…うん。

 

目金「そんな輝かしい栄光を残した彼女達…。…ですが!3人には“ある共通点”が存在するのです!」

 

雷紋「まさか…!」

 

目金「そう!!それはメイド服を着た事ですッッッ!!!」

 

 ・・・。

 

 ・・・確かに!!!そうかも!!!

 

目金「メイド服とは謂わば、もう1人の自分自身…。メイド服という名の“仮面(ペルソナ)”を被る…いや!着る事によって!色々な効果が発動し!彼女達の才能を開花させたのですッ!!!多分、恐らく、きっと!!!」

 

 おお!!なんか最後らへんはだいぶアバウトだったけど、なんかそれっぽいぞ!

 

目金「雷紋君!貴方は世間では“じゃない方の兄”と呼ばれているそうじゃないですか?それに加えて妹との仲も悪いそうで。それもこれも…全ては稲魂君の才能を受け継がなかった、“嫉妬”が原因なんじゃないですか?」

 

 グッ…!ひ、否定出来ない…!

 

目金「だ・か・ら・こ・そ!!君はメイド服を着て接客を行うべきなのですッ!!!メイド服を着た事でその内に眠る“才能”を開花させ…!日本…いや!!世界の舞台へ羽ばたくのですッ!!!」

 

雷紋「め、目金さん…!…分かりました…!僕、やりますっ!!!この試練を乗り越えてみせます!!!」

 

目金「よく言いましたッ!雷紋君ッ!!それでは早速レッスン開始ですッ!!」

 

 こうして目金さんからメイドとしてのノウハウを教わる事となった僕…。

 完璧なメイドになる為の特訓は、ある意味サッカーの特訓よりも過酷なモノだった…。

 

雷紋「い、いらっしゃいませ〜///ご主人様〜///」

 

目金「駄目です!声に照れが入っているし、声量も小さい!やり直し!」

 

雷紋「い、いらっしゃいませ〜!!!ご主人様〜!!!」

 

目金「今度は声に力が入りすぎてます!もっと自然体に喋るのですッ!!」

 

雷紋「いらっしゃいませ〜!ご主人様〜!」

 

 目金さんに指導を受ける事1時間…。この短時間で徹底的にメイドとしてのノウハウを詰め込まれた僕は、目金さんからのお墨付きを貰った上で、メイド喫茶という名の戦場へと降り立つ。

 

 全ては“怪物”に近づく為に…!全ては“怪獣”を超える為に…!

 

いよいよだ。集中。

 

???「俺の我儘に、付き合ってくれてありがとうございます蓮さん」

 

口調は愛想良く…!口角は上斜め45度…!…よし!イメージは出来た!あとは実行するだけ…!

 

???「俺は別にいいが…少し意外だな…。サッカーの申し子がメイド喫茶に興味があったなんてな…」

 

…それにしても少しお腹が空いたな…。何か小腹を満たすモノを食べたいところだけど、接客業に間食は厳禁だし我慢我慢!

 

???「気分転換の一環ですよ。この間みたいに、意外な所から面白いモノが出て来るかもしれないじゃないですか」

 

ガラガラッ!!!

 

来た…!!!よし…!稲魂雷紋!いきますっ!!!

 

雷紋「いらっしゃいませ〜!ご主人さ…ま…?」

 

 どうして、運命とは無情で残酷なんだろう。

 

 一応は尊敬していた先輩に売られ、40手前の悪い大人に洗脳されかけた今日…。

 

 もうとっくに、1日に体験出来る不幸の回数は限界を迎えている筈なのに、どうして僕の人生はこうも細すぎる不幸に遭遇するのだろう?

 

ハル「…え?何してんの…?雷ちゃん…?」

 

 1億を超える日本国の総人口…。その中で僕が引いた初めてのご主人様は、幼い頃からの顔馴染みである“怪物”だった。

 

バンッ!バンッ!

 

雷紋「…いらっしゃいませご主人様。ご注文を済んだら速やかにお帰りやがれください。出来れば素早くかつ迅速に」

 

ハル「あの〜…雷ちゃん…?ここめっちゃ窓際なんだけど…」

 

雷紋「…人チガイデス。私ハ稲魂雷紋デハアリマセン。ソモソモ雷紋ナンテ人ハ存ジ上ゲマセン」

 

ハル「いや無理があるよ!?」

 

 なんでなんでなんでなんでなんで?

 どうしてよりにもよって、ハルくんが秋葉名戸(ココ)に来るの!?

 君、“サッカーモンスター”だよねェ!?メイド喫茶って、サッカーからほぼ対極の位置に属する場所だよねェ!?

 

月影「…もう詮索しないでやれハル。帝国の練習の過酷さは雷門を凌ぐと聞く。こうでもしないと、ストレスを発散出来ないんだろう」

 

 月影さん…。貴方、割と失礼なことを言ってる自覚あります…?

 

ハル「…雷ちゃん」

 

雷紋「な、何…?…あっ」

 

ハル「何度も言うけど…君がどんな特殊な趣味を持ってても、俺たちはずっと親友だよ…!」

 

ダッ!

 

月影「あっ!ハル!廊下は走るな!ハルー!!!」

 

 数年前にも見た、マジでなんとも言えない顔をしながら喫茶を退室したハル君とそれを追いかける月影さん…。

 

雷紋「アハハ…。アハハハハ…」

 

 幸運なことに、ハル君の一言によって僕に掛けられた洗脳は解けた。

 

 だけど不幸なことに、洗脳が解けたことによって我に帰った僕は、何とも言えない虚無感に襲われて、その場に立ち尽くして乾いた笑いを上げることしか出来なかった。

 

 …こうして、僕の黒歴史(トラウマ)がまた1つ更新されてしまった。

 

……………

…………

………

……

 

雷紋「ハァ…疲れた…。こんなことになるんだったら、銀牙なんかほっといて練習してれば良かった…」

 

 あの後、なんとか持ち直して肉体的・精神的にも苦痛を伴った奉仕活動を終わらせた僕は、おぼつかない足取りで秋葉名戸学園の敷地から脱出する。

 

 恐らく僕は、二度とこの学園の敷地を跨ぐことはないだろう。だけど、不思議なことに名残惜しいといった感情は一切無い。

 寧ろ、刑務所から出所したような清々しささえ覚えている。…僕にそんな経験はないけど。

 

銀牙「あっ。帰って来た。」

 

 門から出ると、帝国のみんなと一緒に帰った筈の銀牙が僕を待ち構えていた。

 …まさかと思うけど、ずっとそこで待ってたとか言わないよね?

 

雷紋「なんで帰ってないんだよ…?もしかして家の鍵忘れちゃったの?」

 

銀牙「違う。だって今日はパピーもマミーも居ないし。お兄がご飯を作ってくれないと晩ご飯抜きなる。だから待ってた。」

 

雷紋「アレだけ食べてたのに、まだ食べるのか…」

 

 前々から思ってたけど、その大食感キャラは誰の遺伝子由来なんだろうね?母さまは元より、父さまも別に大食いキャラってワケじゃないし。

 

雷紋「悪いけど今日はご飯は作らないよ…。もうヘトヘトなんだよ…色んな意味で…」

 

銀牙「そっか。ならこの写真はどうしよっかな?」

 

雷紋「この写真…?ーー!!! ま、まさか…!!!」

 

銀牙「YES。そのまさか。」

 

 僕の全神経に嫌〜な予感が走ると同時に、銀牙のスマホにいつ撮ったか見当もつかない、僕のメイド服姿の写真が表示される。

 

雷紋「…オイ銀牙。お兄ちゃん命令だ、今スグにその写真を消せ…!」

 

銀牙「…嫌だって言ったら?」

 

雷紋「実力を行使してでも消す!!!」

 

銀牙「あっそ。じゃあ一生無理だね。」

 

 銀牙は、ほんのちょっぴり口角を上に上げると、僕に背中を見せて走り始める。

 その圧倒的なフィジカルから繰り出される走りは、助走すらも必要とせずに僅か一歩踏み出しただけで、銀牙をトップスピードに到達させる。

 

雷紋「クソ!速すぎる!!こうなったら…!」

 

 フィジカルで敵わないなら、頭脳で勝負だ!今、銀牙が走っている方向と速度を考慮すると…

 

雷紋「コッチだ!」

 

 この裏路地を抜ければ、恐らく・多分・99%の確率で銀牙に追いつく筈だ!頼む頼む頼む!間に合ってくれ!!!

 

雷紋「ハッ!ハッ!ハッ!ーー!!! 道が見えた!あと少しだァァァ!!!」

 

 最後の力を振り絞ってトップスピードに達した僕は、勢いよく裏路地から飛び出した。

 

 …結論から言おう。僕の予想は正しく、無事に銀牙に追いつくことに成功した。

 多分、銀牙も僕に追いつかれることが予想外だったんだろう。感情の起伏に乏しいアイツにしては珍しく目を見開いている。

 

 ココまでは、何もかもが僕の思い通りだ。一か八かの賭けに勝って、銀牙がビックリした顔も見れた。

 今日僕の身に起こった数々の不幸に比べたら微々たるモノだけど、それでも嬉しいことが無いよりかはずっとマシだ。

 

 

 

 

 …そう。ココまで全てが上手くいっていたんだ。ただ、僕に計算ミスがあったとするなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 路地裏から出て来るタイミングが、ほんのちょっぴり遅かったことだ。

 

銀牙「あっ。ヤバ。」

 

雷紋「ちょっ!待っ…」

 

ゴツンッ!!!

 

 互いにトップスピードを維持したまま、僕のダイアモンドの頭突きと銀牙のプラチナの頭突きが一切の加減なく衝突し合う…。

 

雷紋「バタンキュ~…!)」

 

銀牙「チーン…)」

 

 恐らくコレが常人なら、全治数ヶ月級の大怪我は必至だっただろう。

 

 けど、幸運なことに僕はフィジカルは低くても、身体の頑丈さだけはキチンと父さまから受け継がれていたようだ。

 

 それでも僕たちの肉体強度を以てしても、脳震盪は免れなかったようで徐々に意識が薄れ始める。

 

 薄れゆく意識の中。最後に僕の目に映った光景は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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秋葉名戸は神主主水さんのリクエストです。詳しい選手設定は作者さんが活動報告にて掲載してくださっているので気になった方はどうぞ。
なお、監督周りの設定を一部変更しているので下に記載しときます。

♦︎目金欠流(39)
≪概要≫
現秋葉名戸サッカー部監督。雷門中卒業後はサッカーの道にこそ進まなかったものの、オタク趣味を爆発させ多方面なサブカル分野で活躍した為、その業界では“怪物”の異名を持つ有名人となっている。
本編数年前に漫画に頼まれて監督に就任。補欠兼マネージャーだったとはいえ、元イナズマイレブンの一員の名は伊達ではなく、エイリア騒動とFFIにて培った分析力を駆使してアリスに勝るとも劣らないデータサッカーを展開する。
とはいえ、創作意欲を優先して選手データの取引に応じるなど、もはやサッカーが手段と化している節もある(一応擁護しておくと、渡した情報の一部にブラフを仕掛けている為、彼なりの作戦とも言えなくもないが)。

♦︎漫画萌(39)
秋葉名戸学園の教員でありサッカー部顧問。得意の漫画を駆使して部員集めに貢献している。

♦︎永山
元の設定は監督だったが、目金を監督にした事によりコチラはコーチに変更。それ以外の設定は特に変更なし。
それまでFF予選1〜2回戦で敗退止まりだった秋葉名戸イレブンの実力を大幅に底上げした功労者兼、癖の強い監督と選手に振り回される苦労人。

ちょっとした作者の好奇心なんですけど、読者の皆さんは兄妹のうちどっちが好きですか?

  • 雷紋
  • 銀牙
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