イナズマイレブンMONSTERS!!!   作:月兎タンク

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ヴィクロの最推しは星村ナオです。来夏先輩も捨てがたいけどあのゆるふわ系のビジュアルがたまらん。


落ちこぼれのブルース 中編

雷紋「ち、父…さま…?」

 

雷牙?「まっ、半分正解半分不正解ってとこだなー。」

 

 ありえないありえないありえないありえないありえない。

 僕の父さまが死んでるってならまだ理解の余地はあるけど本人は現役の生者…、なんなら今頃ベットでイビキをかきながら寝てるはずだ。

 

雷牙?「この世に“ありえない”という事こそがあり得ない…、オマエの親父からはそう教えられなかったのか?」

 

雷紋「…勝手に心を読まないでください。そもそもあなたは誰なんですか…?姿形こそは中学生の頃の父さまと同じですけど…。」

 

雷牙?「だから言っただろ?半分正解半分不正解って、俺は稲魂雷牙であって稲魂雷牙じゃない。」

 

 …言っている意味が分からない。なんだ?父さまであって父さまじゃないって…。後方に否定系が入るのならそれはもうただの他人では?

 

雷牙?「俺はオマエさ稲魂雷紋。」

 

雷紋「…は?」

 

 ますます訳がわからなくなった。目の前の少年が僕だって?冗談も程々にしてほしい。確かに僕は見た目だけは父さまに似ているとよく言われるがどう甘く見積もっても目の前の少年とは6割程度しかにていない。

 

雷牙?「外見の差異なんて些細な問題でしかないんだよなー。重要なのはなぜ俺がオマエの目の前に現れたかなんだよ。」

 

雷紋「どういうことですか…?」

 

雷牙?「ちょっち俺に触れてみ。」

 

雷紋「? はぁ…。…うわっ!?」

 

 差し出された父さまの手を掴んだはずなのに僕の手はすり抜ける。まるで父さまは初めからそこにはいないように。

 

雷牙?「俺は幻さ。オメーが抱いている“怪物”へのコンプレックスが生み出した幻…言わば稲魂雷紋という人間の“サッカー”への想いそのものさ。」

 

雷紋「僕の…“サッカー”への想い…。」

 

雷牙?「イェースYES!だから俺ちゃんの事は『ライガ』って呼んでくれよ。オメーさんにはそれ以外の呼び方はないだろうし。」

 

雷紋「…いや、名前全然変わってないんですけど…。」

 

ライガ「画面の前のみんなは分かりやすくなるからいいんだよ。あと敬語禁止な、現実(リアル)の俺も嫌がってんだろ?」

 

雷紋「…分かったよライガ。それで?君は何をするつもりなの?」

 

ライガ「う〜んそうだな〜…、んじゃあちょっとテストしてやるか。」

 

雷紋「テスト…?」

 

 ライガは指パッチンをすると突如僕の身体は目も眩むほどに眩しい光に包まれる。ようやく視力が戻ったと思うと僕は公園ではなく人工芝で覆われたグラウンドの中にいた。

 周囲を見渡すと僕が立っているグラウンド…いやスタジアムは少年サッカー界の聖地…

 

雷紋「FFスタジアム…!?」

 

 日本最強の少年サッカーチームを決める祭典・フットボールフロンティア通称FF。

 その本戦の舞台となるまさにサッカーを愛する中学生にとっては憧れの聖地だ。

 

ライガ「おい雷紋、後ろ向いてみ。」

 

雷紋「後ろ…?」

 

 言われるがままに振り向くとそこには帝国のユニフォームを着た白金髪の少女とオレンジ色のバンダナを首に掛けた雷門ユニフォームの少年が僕と対面していた。

 

雷紋「銀牙…!それにハルくんも…!」

 

 ハルくんはニッと笑うと足元にあったボールを僕にパスすると人差し指をクイクイ動かし、かかってこいと挑発する。

 

雷紋「…どうせ夢なんだ、やれるだけやってやる!」

 

 僕はトップスピードで駆け出しハルくんを抜こうとする。だがハルくんスピードは僕を遥かに超えておりまるで赤子の手をひねるようにあっさりボールを取られてしまった。

 

雷紋「クッ…!もう一度…!」

 

 僕はハルくんにリベンジを申し込むも既にハルくんの姿は消えていた。

 

銀牙?「お兄。次はあたしの番。」

 

 今度は銀牙がボールを持ったままトップスピードでドリブルを開始する。

 つまり今度は僕がコイツをブロックしろというわけだ、帝国サッカー部体力テスト全種目新記録更新者であるこのフィジカルモンスターを。

 

 先に僕の名誉のために言わせてほしい。僕は精一杯やった。

 日頃から見てきたアイツの癖や動きを頭の中で再現しどんなプレーをされてもすぐに対処できるように短時間でシミュレーションを行った。

 でも僕がアイツと対峙できた時間はたったの1秒だけだった。

 

雷紋「グハッ…!」

 

 まさにフィジカルモンスター、中途半端な知識では力には絶対に勝てないと言わんばかりに真正面からぶつかってきた。

 一般自動車がモンスタートラック相手に押し勝てるか?ネズミがゾウを狩れるか?綿を使って鋼鉄の塊を粉砕できるか?

 

 答えは“NO”だ。

 

 残念なことに僕と銀牙にはそれほどまでの実力差があった。

 

ライガ「おーい。生きてっかー?」

 

 人口芝の床に仰向けになる僕にライガは能天気な声色で生存確認をする。

 

雷紋「…なんとか。」

 

ライガ「しっかし本当に弱いなーオマエ。2人相手に1秒しか持たなかったじゃん。そんなんで“怪物”になるって言うとか恥ずかしくないん?」

 

雷紋「……る。」

 

ライガ「え?なんて?」

 

雷紋「分かってるよ!!!僕が弱いことは!僕が誰よりも1番に!!!」

 

 気づけば僕は怒鳴っていた。自分でもびっくりするくらい大きな声で。

 

雷紋「父さまに憧れて必死に特訓した…!走って…、筋肉もつけて…、勉強もして…必死にもがいてるんだ!でも…!ハルくんや銀牙はいつも僕の上を行く…!」

 

ライガ「……。」

 

雷紋「僕だって分かってるんだ…!僕に才能なんかないってことは…!でも…“勝ちたい”…!自分の力を全て使って“怪物”に勝ちたいんだよ…!」

 

 …え?一体僕は何を言ってるんだ?“怪物”に“勝ちたい”だって…?僕は“怪物”に“なりたいん”じゃなかったのか…?

 

ライガ「“人は追い詰められた時に出る言葉こそがその人の本音である。”…どっか偉い心のお医者さんはそう言ったらしい。なら、今のがオメーさんの本心ってわけだな。」

 

雷紋「今のが…僕の本心…?」

 

ライガ「オマエの道を振り返ってみろよ。なぜオマエは帝国に行った?ただ“怪物”になるだけだったらハル坊と一緒に雷門でサッカーをしてもよかった筈だろ?だがオメーは帝国に行ってハル坊と戦う道を選んだ…。それってつまりハル坊に勝ちたいからじゃないのか?」

 

雷紋「あ…。」

 

 考えたこともなかった。でも確かに僕は雷門中に行こうと思えば行ける機会はあったのにそれを蹴って帝国に行くことを決意した。

 それはハルくんへのコンプレックスだけじゃなくて彼と戦いたかったからじゃないのか?

 

雷紋「…ねぇライガ。僕は…“怪物”に勝てるかな…?」

 

ライガ「知らん。でも1つだけ教えといてやる。」

 

 ライガは右手の人差し指を天高く上げるとスタジアムの地面が隆起し天高くそびえる岩山が出現する。

 そこの中腹には銀牙とハルくんが立っており頂上にはライガが僕を見下している。

 

ライガ「ガムシャラに這い上がってこい雷紋!無様でもいい、カッコ悪くてもいい、例え身体中が泥まみれになっても、崖から転がり落ちても何度でも這い上がって“怪物(俺たち)”がいる場所まで上り詰めるんだ!!」

 

 そう言うと再び僕の身体が眩い光に包まれ意識が途切れた。

 

雷紋「…ハッ!ら、ライガ!」

 

 目を覚ますと僕は公園のベンチに座り込んでいた。

 

雷紋「…ガムシャラに這い上がってこい…か。」

 

 アレが夢だったのか現実だったのか分からない。ただ1つ確かなのは僕は泥まみれになってでも這い上がるしかないという現実だけだ。

 

 

♢♢♢≪次の日≫

 

???「なあ聞いたか嵐?今日の尾刈斗との練習試合に助っ人が来るらしいで?」

 

 ここは東京某所にある私立中学校雷門中。在校生は1000人を超える都内でもトップクラスのマンモス校である。

 以前はそれしか取り柄のなかった学校だったが25年前に“イナズマ世代”と呼ばれる伝説のサッカープレイヤー達を数多く輩出し、現在では日本最強のサッカー強豪校としてその名を轟かせている。

 

 サッカー強豪校の評価通り正門から入ってすぐの所に巨大な人工芝のサッカーグラウンドが設置され雷門サッカー部は今日も今日とて最強を名乗るに相応しいサッカープレイヤーになるための特訓に励んでいる。

 

 そして今日。このグラウンドではある学校との練習試合が行われる予定だったが雷門イレブンはある噂で持ちきりになっていた。

 

嵐「本当か暖冬屋?この前も似たような事言って結局嘘だったじゃねぇか。」

 

暖冬屋「本当やって!今回の噂は新聞部から直接仕入れた情報やから間違いないわ!それで…その助っ人はどこから来ると思う?」

 

嵐「うーん…駄目ださっぱり分からん。そもそも尾刈斗の監督ってかなり性格が悪いって噂だろ?そんな監督が助っ人を頼める人脈があるとは思えんな。」

 

暖冬屋「つまらんなー嵐は。まあいいわ、聞いて驚くなよー!なんと帝国学園らしいわ!!!」

 

嵐「帝国!?マジか!?そりゃたまげたぜ!」

 

暖冬屋「せやろー!なんでも最近尾刈斗中は帝国学園の帰属校になったから助っ人を呼べたらしいわ。」

 

嵐「なるほど…確かFF予選時も帰属校同士による助っ人は認められているからな、それを利用したという訳か…。どうやら余程切羽詰まっていると見える。」

 

暖冬屋「まあ尾刈斗は今日の試合負ければFF予選にも出られないらしいからなー。あー!でもめっさテンション上がるわー!“怪獣”・稲魂銀牙来てくれんかなー?ワシあいつのシュートいっぺん受けてみたいと思っとったんや!」

 

嵐「いやいや…、稲魂銀牙みたいなスター選手が来るわけないだろ…。来るとしても精々稲魂雷紋くらいだろ。」

 

暖冬屋「稲魂兄かー…、あいつ強いんかいな?」

 

嵐「確かに妹よりは活躍は地味だが1年で帝国のスタメンを張ってんだ、弱いわけがないだろ。…そんなに気になるならあいつ(・・・)に聞いてみればどうだ?」

 

 嵐が向けた視線の先にはミニゲームを行っているオレンジ色のバンダナを首に掛けた少年がいた。

 少年は1対5のミニゲームにも関わらず圧倒的なフィジカルで次々とディフェンスを突破していき遂にゴールを決めた。

 ディフェンス側の5人は息が上がっているのに対し、アレだけ激しい動きをしていた少年は息一つ上がっていない。

 圧倒的な実力差を見せつける少年に暖冬屋は少しだけ顔を顰める。

 

暖冬屋「あー…、いや今回はやめとくわ。」

 

??「そこ!無駄口を叩くな!練習に集中しろ!」

 

 突如2人に向けて鋭い叱責が入る。

 暖冬屋と嵐は視線を声の方向に向けると右腕に赤色のキャプテンマークを付けた緑髪のショートヘアーの少年が2人を睨んでいる。

 

暖冬屋「はい!すいまへん!月影キャプテン!」

 

 彼の名は月影蓮。現雷門イレブンのキャプテンを務める男であり、その優れた戦略眼と統率力により日本一のキャプテンと称されるほどの凄腕の選手だ。

 

嵐「うへー、キャプテンは今日も厳しいぜー。暖冬屋、久しぶりに技有りでPKでもするか?」

 

暖冬屋「よっしゃ!かかってきい!全部ワシが止めたるで!」

 

 キャプテンに喝を入れられ気を引き締め直した2人は練習を再開し、激しい攻防を繰り広げる。

 月影は2人の気が引き締まった事を確認するとその場を後にし、ある人物の元へ向かう。

 

 その人物はミニゲームを終え暇になったのか巧みな足捌きでリフティングを繰り返している。

 一見すると何の変哲もないリフティングだが見る者によってはその動作だけで彼が並外れたサッカープレイヤーである事が十分わかる。

 

??「よっ、ほっ、ほっ!」

 

月影「珍しいな、お前がそんな顔をしながらボールを蹴っている様子を初めて見たぞ。」

 

??「ええ、珍しく気持ちが高まってます。蓮さんも聞いたでしょ?あの噂。」

 

月影「帝国からの助っ人か…。言っとくがお前のお望みの選手が来るとは限らないぞ?俺としては怪我から復帰したばかりの古屋敷が送られたと睨んでいる。」

 

??「いや…、絶対に来ますよ。あいつらは。」

 

月影「その根拠は?…ハル?」

 

ハル「俺の勘です。」

 

 ハルと呼ばれた少年は父を思わせる太陽のように眩しい笑顔を月影に見せ、まだ見ぬ帝国からの助っ人に心を躍らせた。

 

♢♢♢

雷紋「フワァ〜…。」

 

 結局昨日はライガのことが気になって一睡も出来なかった。厳密にはちょくちょく眠りにはつけたけどすぐに脳が半覚醒状態になって寝た気にならない。そのせいで朝から今まで頭にモヤがかかったような感覚だ。

 

銀牙「お兄。今日は雷門との試合なんだよ。そんな大切な日に寝不足だなんてサッカープレイヤーとして恥ずかしくないの?」

 

雷紋「…ゴメン銀牙、本気で1発殴らせてくれない?鳩尾でいいからさ。」

 

銀牙「え?普通に嫌だけど。」

 

 拝啓 母さま

 冗談抜きで妹との兄妹の縁を切らせてほしいです。

 

 普段は眠たそうに生きてる銀牙だけど強豪校との試合の日だけは眠気も吹き飛ぶらしくそれに伴って口数も多くなる。

 そのせいで普段の憎たらしさも数倍に跳ね上がり今にも手が出そうだ。

 

 それでも、例え0:100でコイツに非があったとしても、暴力をふるえば僕が試合に出られなくなる。

 結局、僕は銀牙を殴りたい欲求をなんとか理性で抑えることで、何事もなく雷門中に到着した。

 僕たち兄妹にとって親の顔と同じくらい見慣れ、僕の名前の由来にもなった雷門中に。

 

銀牙「そういえば中学に上がってから雷門中(ココ)に来たの初めてかも。昔はよく遊びに行ってたのに。」

 

雷紋「…だね。僕はともかく銀牙は雷門のユニフォームを着てサッカーしてた未来もあったんだろうね。」

 

 僕個人としてはそうであってほしかったけど。

 

 そんなこんなで駄弁りながらアリス先輩から指定された場所に向かうと、既に尾刈斗の選手達がウォーミングアップを開始していた。

 

???「いやー!お待ちしていましたよー!助っ人の皆さん!」

 

 僕たちの到着に気づいた尾刈斗の監督は猫撫で声で出迎える。

 尾刈斗の監督さんは、目の下に赤い長方形のマークが入った50代ほどの男性だった。

 

雷紋「帝国から派遣された稲魂雷紋です、コッチは僕の妹の稲魂銀牙。今日はよろしくお願いします。」

 

???「これはこれは!丁寧にどうも!私は尾刈斗の監督・地木流灰人(じきるはいと)と申します!今日はわざわざ我が校の助っ人要求に応じていただきありがとうございます!」

 

 …なんかワザとらしいほどに遜った態度だな…。13歳の少年少女にペコペコしなくちゃいけないほどまでに、尾刈斗サッカー部は追い詰められてるんだろうか?

 

地木流「はい!これが貴方達のユニフォームです!更衣室は分かりますかな?」

 

雷紋「ええ、雷門中の地図は粗方頭に入ってるので大丈夫です。少々お待ちください。」

 

 数分後、更衣室で尾刈斗のユニフォームに着替えた僕たちは第二練習グラウンドに向かう。

 尾刈斗のユニフォームは明るい紫をベースに翡翠色の人魂らしき模様が入った、いかにもオカルトらしい独特なデザインだ。

 

銀牙「むぅ…。少しユニフォームが小さい…。もしかして胸が大きくなったかも。」

 

雷紋「可哀想だけどお胸はぺったんこのままだ。お前につくのは精々胸の脂肪じゃなくて筋肉だけだ。」

 

銀牙「…。(ゲシッ!)」

 

 痛った!そんなに強く蹴らなくていいだろ!?普段のお返しだよ、それに事実だし。

 

♢♢♢

 時は、雷紋と銀牙が更衣室でユニフォームに着替えている間まで遡る。尾刈斗監督の地木流はベンチに座り込み何かを考え込んでいる様子だった。

 しかし、その様子はどこかおかしい。先ほどまで温厚そうだった顔から一転して怒りに満ちており、目の下の赤いマークも消失し、その代わりに『X』を思わせる灰色の痣が浮かんでいる。

 

地木流(屈辱だ…!幾ら帝国からの助っ人でも13歳のガキ共にペコペコしなければならないほどに俺が落ちぶれるとは…!それに…!よりにもよってあの稲魂雷牙のガキに相手にだ…!)

 

 25年前、地木流率いる尾刈斗は雷門に試合を挑み完膚なきまでに完敗した。

 以降、尾刈斗サッカー部は無名のオタク集団に敗れるまで落ちぶれ、今では王者雷門に勝てという無理難題をこなさなければ、FF予選にすらも出られないほど困窮していた。

 

尾刈斗部員A「どうしたんだろ監督…?急に黙り込んで…?」

 

尾刈斗部員B「シッ!新入生のお前は知らないだろうが今の監督は“ハイドフェイス”だ!話しかければ何されるか分かったもんじゃないぞ!」

 

地木流(ククク…!だがいい!稲魂兄はともかく、稲魂妹はあの円堂ハルに匹敵すると言われる選手なんだ…!この際、怨敵の娘であろうが利用出来るものは徹底的に利用してやる…!)

 

 地木流は内心ほくそ笑みながら、このチャンスを物にし、雷門に対しての25年越しの復讐を決意する。

 その顔には、今年で齢50近くに達する大人とは思えない哀愁と大人げなさだけが滲み出ていた。

 

♢♢♢

雷紋「さて…そろそろ試合か…。」

 

 尾刈斗はその学校名の通り“オカルトサッカー”と評される独特なサッカーを得意とするチーム。

 技やタクティクスの奇怪さは間違いなく全国トップクラス。でも所詮はそれだけだ。

 奇怪さや物珍しさで勝てるほどサッカーは甘くない。25年も経ち情報化社会が進んだことで、“オカルトサッカー”の種が割れた尾刈斗イレブンは途端に弱体化し今では最弱の烙印を押されている。

 事実、僕の見立てじゃ尾刈斗で1番強い選手も雷門基準じゃ、精々2軍の控えに入れるかどうか…。それ以外は良くても3軍レベルの実力しかない。

 

 まあ、十中八九試合するのは2軍だろうし、僕と銀牙がいればなんとかなるだろ。

 

 

 

 

 

 

 …そう思ってた時期が僕にもありました。

 

月影「雷門のキャプテン月影です。今日はよろしくお願いします。」

 

雷紋「」

 

 何故、現実は悉く僕の予想を裏切るのだろう。

 普通に考えて、尾刈斗相手に1軍が出てくるとは思わないじゃん。

 

星村「うわぁ…!生の稲魂兄妹だぁ…!やっぱり雷紋君お父さんそっくりだなぁ…!」

 

嵐「マジで稲魂兄妹が来やがった…。」

 

暖冬屋「しゃあ!気合い入ってきたぁ!!ワシが稲魂兄妹のシュート止めたるでぇ!!!」

 

 僕が1軍の登場に唖然としているように、雷門の人たちも僕たち兄妹の登場に多種多様な反応を見せていた。

 …まあ、僕のようにビビってる人は誰1人居ないわけだけど。

 

??「久しぶり雷ちゃん、銀ちゃん!元気にしてた?」

 

雷紋「…久しぶりハルくん。」

 

銀牙「お久ー。ハルくん。」

 

 首にオレンジ色の古ぼけたバンダナを掛けた同い年の子が僕たちに声を掛ける。

 彼こそが父さまの大親友・円堂守おじさんの息子であり、“神域のサッカーモンスター”と呼ばれる、現日本最強の少年サッカープレイヤー・円堂ハルだ。

 

ハル「今日はいい試合にしようね!俺、この日をずっと楽しみにしてたから!」

 

 ハルくんは眩しい笑顔を見せて指定のポジションに着く。

 …そういえばあんな顔のハルくん久しぶりに見た気がする。この前のスプリング杯はずっと浮かない顔してたのに。

 

雷紋「…銀牙。」

 

銀牙「何?お兄。」

 

雷紋「勝つよ。雷門に…、そして…ハルくんに。」

 

銀牙「…あたしは別に勝つことには拘らない。ただ“ワクワク”を感じれればそれだけでいい。」

 

雷紋「そこは『当然。あたしたちに不可能はない。』とか粋な台詞を言うところでしょーが!」

 

 ハァ…。結局、試合前になっても僕たち兄妹の足並みは揃わないみたいだ。

 

♢♢♢

 両チーム選手の配置が終了し、試合開始まで秒読みとなる。

 稲魂兄妹が助っ人に入った尾刈斗イレブンのスタメンは以下の通り。

 

FW:黒幽、銀牙、鬼宿

MF:雷紋、不夜

DF:影霊、呪見、怪戸、幽波、黙霊

GK:怪現(キャプテン)

 

 FW3人とDF5人というあまりにアンバランスな独特なフォーメーションを起用した尾刈斗。

 どうやら得点は完全に銀牙に任せるつもりらしい。

 

 それに対して絶対王者・雷門のスタメンは以下の通り。

 

FW:野神、ハル、嵐

MF:赤袖、月影、星村

DF:天空寺、遠野、紫雨、鬼門

GK:暖冬屋

 

 バランスの取れた4-3-3のトライアングルを起用する事により銀牙の動きに対応するつもりなのだろう。

 

 試合開始直前、銀牙は軽快な動きで小ジャンプを何度も繰り返し身体とグラウンドの感触を慣らす。

 その動作を見た雷門は彼女に父親の面影を見出さずにはいられなかった。

 

星村「うわぁ…!今度は“稲魂ステップ”だ…!銀牙ちゃんの“稲魂ステップ”を生で見れるなんて感激ぃ…!」

 

 明るい空色と白のツートンカラーが特徴的なゆるふわ系女子・星村ナオは“稲魂ステップ”を行う銀牙に対しまるで推しのアイドルを見るかのような視線を送っていた。

 彼女は大の少年サッカーファンであり、ただ推しのサッカープレイヤーを近くで見たいという理由から雷門に入り遂には1軍にまで上り詰めたというかなりの剛の者だ。

 

月影「気を緩めるな星村。相手はハルに匹敵すると言われる選手なんだ、1人でも1チームと同等以上の戦力だと思っておけ。」

 

星村「はーいキャプテン。」

 

不夜「雷紋君は“稲魂ステップ”をしないのかい…?」

 

雷紋「やりません。夢を壊すようですけどあの動き自体に科学的な根拠はありませんよ。父さまも銀牙もルーティーンとしてやってるだけです。僕には僕のルーティーンがありますから。」

 

 そう言うと雷紋は両手で自身の頬を強く叩き気合を入れる。

 

雷紋「…よし!」

 

ピピーッ!

 

 審判のホイッスルにより試合が開始する。今回の試合は尾刈斗からのキックオフだ。

 

黒幽「頼んだぞ稲魂!」

 

 FWの黒幽はすぐさま銀牙にボールを渡し自分達の夢を彼女に託す。

 

月影「稲魂妹にボールが渡ったぞ!みんな彼女に注意しろ!」

 

 月影はチームメイトに的確な指示を送る。その刹那だった。

 まだ13歳とは思えない凄まじいプレッシャーが銀牙から放たれる。まるで“怪獣”に睨まれているかのような威圧感の前に雷門イレブンは無意識のうちに冷や汗を流す。

 

 銀牙は姿勢を大きく下にすると怪獣の如き脚力で地面を強く蹴る。すると地面は数十cmの穴が発生すると共に銀牙の姿が雷門イレブンの視界から消える。

 

銀牙「隙だらけ。」

 

野神「なっ…!速…」

 

 野神が銀牙のスピードに驚き終わる前に彼女は横を通過する。試合の映像によりハルにも匹敵する身体能力の持ち主だと理解していたが画面越しに見るのと実際に目にするとでは段違いだ。

 

 だが雷門イレブンは“怪獣”のプレッシャーにより忘れていた。雷門にも“怪物”の名を受け継いだ者がいる事を。

 

ハル「そう来ると思ったよ!銀ちゃん!」

 

銀牙「ハルくん。勝負。」

 

 ハルは銀牙の動きを完璧に捉え彼女の前に立ち塞がる。

 今ここに“怪物(サッカーモンスター)”VS“怪獣(サッカービースト)”。名前は僅かに異なるもののどちらも“化け物”の名を与えられた者同士の攻防が幕を開けた。

 

 その光景を見た選手は敵味方問わず言葉を失ってしまう。

 

 銀牙が右に抜こうとすればハルは右に向かい左に抜こうとすればハルも左に向かう。

 一見何の変哲もない攻防だが特筆すべきはそのスピード。

 

 辛うじて移動後の姿だけは確認できるが彼らが移動するまでの過程が目で追えないのだ。

 まるで時間が消し飛ばされでもしたかのように衝突音と衝撃波を感じた時には既に2人は別の位置に移動している。

 しかも観客は気づいていないが、彼らは0.1秒もの間に複数のフェイントも挟んでいる。

 

 別の世界の人間は彼らが行うサッカーを“超次元サッカー”と呼んでいるが、“超次元サッカー”基準でも円堂ハルと稲魂銀牙の実力は次元が違いすぎた。

 

ハル「ハァ!!!」

 

銀牙「GO。」

 

 これ以上のフェイントの掛け合いは時間の無駄だと判断したのだろう。銀牙はハルに対してある挑発を行うとハルはその挑発にあえて乗り、互いの右脚で同時にボールを蹴った。

 

 2人の怪物的な脚力により如何なる衝撃にも耐えるように設計されたボールは正円から歪な円柱へと変形しパンク寸前だ。

 

ハル「グギギ…!」

 

銀牙「……。」

 

 互角の勝負に見えた怪物同士の攻防だがハルはやや苦悶の表情を浮かべているのに対し銀牙は表情一つ変えない。

 次第にハルが押され始め、1秒後にはハルの身体は吹き飛ばされてしまった。

 

月影「ハルが…!」

 

雷門『パワー負けしたぁ!?』

 

 雷門のFWにしてエースナンバー(10番)を任されているハルは当然雷門最強のキック力の持ち主である。

 だがそのハルに純粋なパワーで勝てる人間がいるとは夢にも思わなかった雷門イレブンは唖然としている。

 

銀牙「ウィナーあたし。ブイ。」

 

ハル「へへ…!やっぱり銀ちゃんは強いや…!」

 

 ハルを突破した銀牙は更に加速して暴力的なスピードで前線へ上がる。

 他者を寄せ付けないその速さは必殺技抜きでも雷門のディフェンスを軽々と破る。

 

月影(速すぎる…!ハルも相当なものだが稲魂銀牙のスピードはそれすらも超えている…!)

 

 あまりに圧倒的すぎる銀牙のスピードは雷門だけでなく味方である尾刈斗や雷紋すらも置き去りにし単身突撃となっているが数による差をものともしない実力差が彼女とハル以外の雷門にはあった。

 遂にディフェンスは崩壊しキーパーの暖冬屋と1対1となる。

 

雷紋「絶好のシュートチャンスだ銀牙!舐めプせずに必殺技で確実に点を取れ!!」

 

銀牙「分かってる。お兄に言われなくても最初からそうするつもり。」

 

暖冬屋「しゃあ!こい!“怪獣”!ワシがお前のシュートを止めたるで!!!」

 

銀牙「嫌いじゃないよ。その熱さ。」

 

 銀牙はボールを軽く上げると目にも止まらぬ速さで二連撃を叩き込む。すると彼女の背後に白金の獅子が出現する。

 

銀牙「“プラチナレオーネ”。」

 

 獅子が天に向かって雄叫びをあげるとボールに白銀のオーラがチャージされ一気に放出され暖冬屋を食い殺さんと襲い掛かる。

 

暖冬屋「上等ッ!怪獣の“獅子(レオーネ)”とワシの“猛虎(タイガー)”のどちらが上か決めようやないか!!!」

 

 暖冬屋は右手に気を集中させると巨大な黄金の右手が出現する。

 

 これこそ伝説のGK・円堂守が最初に習得し以降最も愛用した伝説の必殺技“ゴッドハンド”である。

 

 しかし暖冬屋はそのまま拳を握るとその動きに連動して“ゴッドハンド”も拳を握る。

 そして左脚を天高く上げ力強く踏み込む拳を突き出す。

 

 すると“ゴッドハンド”は巨大な猛虎へと変貌し自身に襲い掛かる獅子を逆に返り討ちにせんとばかりに口を大きく開き待ち構える。

 

暖冬屋「“ゴッドハンド・タイガー”!!!」

 

 暖冬屋十八番の“ゴッドハンド・タイガー”が炸裂する。彼はこの技で数多くの無失点記録を生み出してきた日本屈指の名キーパーだ。

 

 ところで読者の皆様は“遠近法”という言葉をご存知だろうか?

 簡単に言えば“見る者から遠ければ遠いほど物体は小さく見え、近ければ近いほど物体は大きく見える。”という意味だ。

 

 本来美術関係や使われる言葉であるが、今日“遠近法”の使用場面に新たにサッカーが追加された。

 

暖冬屋(…は?なんやあの大きさ…?)

 

 技の発動時は“ゴッドハンド・タイガー”の猛虎と同じ大きさに見えた白金の獅子は近づくにつれて暖冬屋に彼本来の大きさを取り戻す。

 その大きさは猛虎の優に数倍はあり、限界まで開いた鋭い牙を内蔵した大きな口は猛虎の頭部を一口で噛み砕いた。

 

暖冬屋「グアァァァァァァァ!!!?」

 

 一瞬の拮抗も許さずに“ゴッドハンド・タイガー”は粉砕されシュートは暖冬屋の身体ごとゴールに叩き込まれた。

 

ピッピー!

 

 審判ホイッスルと共に尾刈斗側のスコアボードに『1』の数字がカウントされる。

 

暖冬屋「…グッ…!クソ…!次は止めたるさかい覚悟しいや…!…ん?」

 

 必殺技を破られた悔しさを飲み込み次のリベンジに燃える暖冬屋だがそこに銀牙が近づく。

 何故か彼女は右手の人差し指と中指以外の指を折りたたみピースの形を作っている。

 

暖冬屋「…なんや?煽っとるんか…?」

 

銀牙「違う。今の技は“ワクワクポイント2”。そのお知らせ。」

 

暖冬屋「……は?」

 

 説明しよう!“ワクワクポイント”とは銀牙の脳内にある謎の概念であり彼女の存在意義でもある凄いポイントなのだ!

 “カッコいい”ד強い”דロマン”の方程式によって算出され特定のポイントを貯めると何かが起こる!何が起こるかは実際に起こってからのお楽しみだ!

 

暖冬屋「…ちなみに貯めると景品とか貰えたりせん?」

 

銀牙「1000ポイント貯まったら“プラチナレオーネ”のプレゼント。」

 

暖冬屋「んならいらんわ!てか1000ポイント貯まっとたんかい!」

 

 関西人の(さが)によるものか、はたまた銀牙の天然ボケが彼の中にある関西人の血を刺激したのかは定かではないが敵同士にも関わらずコントが繰り広げられる。

 

雷紋「おい銀牙、いつまで油売ってるんだ。早くポジションに戻れ。」

 

銀牙「人に頼む時はまず点を取ったことを褒めるのが先。」

 

雷紋「ハァ…、ナイスシュート。」

 

銀牙「当然。だってあたしだもん。」

 

 今度は兄妹がコントを繰り広げている一方、“怪獣”・稲魂銀牙の実力を目の当たりにした雷門は本格的に危機感を感じ始めていた。

 いくら練習試合といえど王者雷門の看板に泥を塗る事は許されない。ましてや事実上1人を相手に。

 

ハル「蓮さん。少しいいですか?」

 

月影「なんだハル?」

 

ハル「少し耳を貸してください。多分この作戦なら銀ちゃんを止められます。」

 

月影「…本当にそれだけの事でいいのか?」

 

ハル「はい!だって雷門で雷ちゃんと銀ちゃんのことを1番知ってるのは俺ですから!」

 

 これまた見た事がないほど自信タップリに答えるハルの姿を見た月影は彼の底知れぬ雰囲気を感じつつもハルの作戦に乗る覚悟を決めた。

 

ピッピーッ!

 

ハル「リベンジさせてもらうよ!銀ちゃん!」

 

銀牙「パピー風に言い変えるなら。バッチこい。」

 

雷紋「注意しろ銀牙!ハルくんはお前の弱点も知ってる!何かを仕掛けてくる可能性があるぞ!」

 

 再びレベルの違う攻防を繰り広げる銀牙とハル。まるで先ほどの攻防の焼き直しのようにハルが押されていたが何故かハルは笑っていた。

 

銀牙「もしかして性癖変わった?ハルくん?」

 

ハル「違うって、楽しいんだよ。やっぱり君たちとサッカーしている時だけ心の底から生きてるって感じがするからさ!」

 

 するとハルはヒールリフトでボールを上空へ上げる。だが銀牙は考えるよりも先に肉体がボールに反応し飛び上がる。

 その瞬間、銀牙の視界からボールが消失する。

 

月影「大当たりだなハル!」

 

ハル「ナイス反応です!蓮さん!」

 

 ハルが立てた作戦は銀牙唯一の弱点を突くものだった。

 稲魂銀牙は所謂“感覚型”と呼ばれる選手に属する。彼女は相対した選手が次に行う行動を感覚的に察知する事で先読みする事が出来るがその際思考が肉体に追いつかないという欠点を抱えている。

 

 故にハルは敢えてヒールリフトでボールを上げる事で強制的に彼女の行動を抑制しそれより早く月影にボールを奪わせる事で彼女のフリーズを誘ったのだ。

 

雷紋「クッ…!銀牙!僕が時間を稼ぐから!すぐに後衛に戻れ!」

 

月影「悪いが時間は稼がせない。」

 

 月影はボールを雷紋の胸あたりまで上げると一瞬にして姿を消したと思うと次の瞬間にはボールも消失していた。

 

月影「“プレストターン”!」

 

 雷紋のディフェンスも虚しく月影のドリブル技により1秒も時間を稼げずに突破される。

 

月影「決めろ!ハル!」

 

 月影はボールを空高く上げると既にハルは灼熱の炎を纏いながら跳躍していた。

 

雷紋「アレは…!伝説の…!」

 

 25年前に存在した雷門最初のエースストライカーにして父・雷牙の最高の相棒でもある伝説のストライカー・豪炎寺修也。

 雷紋の目にはハルの姿が豪炎寺と重なって見えた。

 

ハル「“ファイアトルネード”!」

 

 伝説ここに再誕す。

 

 ハルの脚から放たれた爆炎の旋風はゴールまで数mの距離があるにも関わらず威力は一切落ちる気配がない。

 

 5人もいる尾刈斗のDFは必殺技を使っても、自身が肉壁になってでもシュートを止めようと試みたが一瞬にして吹き飛ばされ壁としての役割を果たせずに終わる。

 

怪現「クソ…!“歪む空k…グワァァァァァ!!!!」

 

 キーパー・怪現の抵抗も虚しく爆炎の旋風がゴールネットを激しく揺らす。

 

ピーッ!

 

 審判のホイッスルと共に雷門側のスコアボードに『1』の数字が表示される。

 両チームの得点は1対1。せっかくのリードも僅か数分で帳消しになってしまった。

 

雷紋(クソ…!最初から銀牙を暴れさせて点差を付ける作戦だったのにもう銀牙を攻略されるなんて…!)

 

 試合開始前、雷紋は銀牙に対して試合開始から派手に暴れるように指示を送っていた。

 最初から警戒されている彼女が派手に暴れれば雷門は嫌でも彼女の対処に人員を割かなければならない。

 ましてやあのハルに力勝ちしたフィジカルモンスターなのだ、彼女がいるだけで雷門のプレッシャーは相当なものだろう。

 そして雷紋の予想通り雷門イレブンには重い空気が流れた…筈だった。

 

 だがハルは一瞬にして点を取り返したばかりか銀牙の弱点を曝け出しチームに希望を齎した。

 

 それに対して自分達はどうだ?伏兵に気づかなかったばかりか彼らとの力の差を改めて示してしまった。

 点数上では同点でもチームの士気には雲泥の差があった。

 

雷紋(クソ…!考えろ…!こんな時アリス先輩ならどんな指示を出す…!?父さまならチームメイトにどんな言葉を掛ける…!?考えるんだ…!“勝つ”ために…!)

 

 だが雷紋の頭に良い作戦が浮かぶ事はなく最初のリードが嘘のように戦況が雷門に傾いた。

 

雷紋(覚悟はしてた…。相手は絶対王者、簡単に叶う相手じゃないってことは…。でも…この実力差(距離)はないだろ…!)

 

 策が無いなりに必死に抵抗する雷紋を嘲笑うように雷門はその実力差をマジマジと見せつける。

 流石にハルの作戦は二度と銀牙に通用する事はなかったが、そもそも雷門イレブンは全国トップクラスの実力者の集まりなのだ。

 ボールがこっち渡りさえすれば“怪獣(銀牙)”の相手は“怪物(ハル)”に任せれれば後はどうとでもなった。

 

「“バハムートクラッシュ”!」

 

「“ツナミブースト”!」

 

「“クロスドライブ”。」

 

 次々と雷門の必殺シュートを決められ、結局前半は最初のプレー以外雷門の好きにされるまま1対4で終了した。

 

♢♢♢

 雷門と尾刈斗との試合をフェンスの外から見守る謎の人物がいた。

 その人物は190cm程の長身だが、フードを被っているため顔が見えないものの辛うじてその体格から男性である事だけは分かる。

 誰かどう見ても不審者にしか見えないが、その目線は確実に稲魂兄妹を捉えていた。

 

???「ハァ…、古株校長から不審者の連絡があったから気になって来てみれば…。やっぱり貴方だったのね。」

 

 謎の人物は声の方向に視線を移すとそこにいたのはスーツを身に包んだ気品のある茶髪のショートヘアーの美女だった。

 美女は眉間に皺を寄せながらフードの男を睨み付ける。

 

???「雷門中(ココ)に来る時は事前に連絡してちょうだいっていつも言ってるわよね?生憎部外者は立ち入りを禁止されてるの。」

 

???「…部外者とは“部の外にいる者”と書く…。その言葉に従えばまだハートは雷門サッカー部にある俺ちゃんは寧ろ部内者と言えないか?」

 

???「あんまり屁理屈言うなら今月のお小遣い0にするわよ。」

 

???「ごめんなさい調子に乗りました。だからお小遣いカットだけは勘弁してください。」

 

 ミステリアスな雰囲気が一変して美女に土下座を始める謎の男。どうやら男と美女はただならぬ関係性のようだ。

 

???「…まあいいわ。それで何故貴方がここにいるのかしら?」

 

???「ハッ、当然だろ?俺の子供(・・)が試合をしてんだ。ガキの活躍を見に行かないパパさんが何処にいる?それはオメーも同じだろ?」

 

 謎の男は視線を美女の手元に移す。美女の手には高級望遠鏡が握られており、どうやら彼女も雷門と尾刈斗の試合を見ていたようだ。

 

???「…それで?あの子達は雷門に勝てるの?」

 

???「さあな。ハル坊のいる今の雷門は間違いなく日本最強だ、このまま行けば世界だって狙える力を秘めている。そんなヤツら相手アイツらがどう乗り越えるか…。今日の試合でその答えが出るだろうな。…(なっ)ちゃん。」

 

 そう言うと男は黙り込み雷紋を見つめる。今の雷紋の顔には解答の見出せない現状への苦悶の表情が現れていた。




イナヒロでは尾刈斗戦がカットされたせいで25年越しに初セリフとなった地木流。なお雷牙本人は忘れてる模様。

〜オリ技紹介〜
・プラチナレオーネ
 銀牙が使用する山属性シュート技。名前からお察しの通り父・雷牙が愛用していた“キングレオーネ”を銀牙流にアレンジした技。
 威力は非常に高く円堂ハルが終盤に習得する“あの技”と同等の威力を誇る。
 なお雷紋は“キングレオーネ”すらも放つ事ができない。

試験的に台詞の頭にキャラの名前を入れています。もしもコッチの方の反応がよければ『HEROS』も世界編から同じ形式にする予定ですのでアンケートお願いします。

  • コッチ(名前あり)
  • アッチ(名前なし)
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