「どこ行ったァァ!!?銀牙ァァァ!!!」
帝国の校舎に馬鹿でかい声が響き渡り黒い影が廊下を爆走する。
影の主は当然雷紋だ。彼は部活動の時間になったのにも関わらず練習に参加しない妹を必死で探し回っていた。
雷紋「ヤバいヤバいヤバい!!!またアリス先輩にどやされる〜〜!!!銀牙ーー!!!出て来ーーい!!!」
銀牙が練習に参加しない件でくどくどと小言を兄に言うアリスとウサギの姿を想像しながら雷紋は妹を探し回る。
全ては帝国学園のどこかにいるであろう妹を見つけ出す為に。
だが現実は残酷であった。
銀牙「ふーふふんふふふふーふんふーん。ふふふふふーん。ふふふふふーん。」
魔法少女達が百年祭をやっていそうな鼻歌を歌いながら銀牙が練り歩いていた場所は帝国学園敷地内ではなく稲妻町の街中だった。
銀牙「…あれ。今お兄の声が聞こえたような…。…気のせいか。」
兄の苦労も知らずに妹は更に歩みを進める。この街にある“ワクワク”を求めて。
これは稲魂雷牙の娘にして世間を騒がす“怪獣”・稲魂銀牙のとある日常の記録である。
♢♢♢
“W”
“A”
“K”
“U”
“W”
“A”
“K”
“U”
並べて“WAKUWAKU”。作って“ワクワク”。
あたしにとって“ワクワク”は何よりも優先すべき存在であり。あたしは“ワクワク”に生かされていると言っても過言じゃない。
今日も今日とてあたしは“ワクワク”を求めて稲妻町を練り歩く。
ワーッ!ワーッ!
モブA「うおースッゲー!またフルコンボだ!この曲をクリアできるプレイヤーは数えるくらいしかいないって噂なのに!」
モブB「流石は天才ゲーマーWだぜ!」
プロゲーマー「ハハッ!そんなもん?もっと私を楽しませてよ!」
ワクワクポイント10発見。レッツゴー。
銀牙「挑戦者。ミー。」
プロゲーマー「あん?あんたが挑戦すんの?…ってあんた稲魂銀牙じゃない!?本物!?」
銀牙「あたしが本物がどうかはどうでもいい。重要なのはあなたのダンスに“ワクワク”を感じたこと。」
プロゲーマー「まあ別に勝負するのはいいけどあんたダンスゲームの経験あるの?」
銀牙「ない。けど見たことはあるしルールもある程度知ってる。」
プロゲーマー「へぇ?んじゃあ早く100円を入れな、全力で叩き潰してやるから!」
銀牙「GOOD。メイク アップ ゲーム。」
プロゲーマー「…ちょっと待った!なんだいそのサッカーボールは!?そんなもんゲームに必要ないだろ!?」
銀牙「ある。リフティングとサッカーを融合させたサッカーダンスがあたしの十八番。」
プロゲーマー「…そう。ならいいわ…、ゲームを始めましょう。」
≪数十分後≫
プロゲーマー「ハァ…ハァ…、も、もう無理…。」
銀牙「ウィナーあたし。ブイ。」
なんだ、もう終わりか。スコアは同率だけど先にリタイアしたなら必然的にあたしの勝ちだね。
プロゲーマー(なんなのよこの子…!?リフティングを用いてあれだけ激しく動いたのに息一つ乱れてない…!?どんだけスタミナ化けもんなのよ…!)
銀牙「そこそこ“ワクワク”した。あなたにはワクワクポイント10をあげる。」
プロゲーマー「い、いらないわよ…。」
銀牙「そっか。じゃあバイビー。」
この世界には色んな“ワクワク”が溢れている。
他人と競う時に出現する赤の“ワクワク”。
初めてのことを体験する時に出現する青の“ワクワク”。
“ワクワク”ごとに色は違うけどそれを全部ひっくるめてあたしは“ワクワク”を愛する。
銀牙「ちょっと重い。一旦休憩。」
“ワクワク”を求めて歩き回ってたらいつの間に荷物がいっぱいになっちゃった。
手に持ってるトロフィーは歌自慢コンテストに優勝した時に貰ったヤツ。いらないからパピーのトロフィールームに飾っとこう。
大きな花束は小学生のサッカーに混ざったらその子の母親から貰ったもの。後でマミーに渡す。
銀牙「…でもまだ“ワクワク”が足りない。最低でもあと500ワクワクポイントは欲しい。…いっそのこと雷門に殴り込みに行こうかな。一応あたしは部外者じゃないし。」
その時。あたしのワクワクセンサーに電流が走る。
銀牙「ワクワクポイント…500…!」
センサーが指し示した方向は…。河川敷?あっ、なんか高校生がサッカーしてる。
点差は0-2でボロ負け。よほど相手が強いらしいね。
監督「死ぬ気で頑張れー!!!お前達が負ければ部は廃部なんだぞーー!!!」
“ボロ負け”=ピンチ、“敗北”=“廃部”。…ここから導き出される答えは…。
銀牙「うん。これしかないね。」
荷物を坂の上に置いてあたしは負けてる方のチームのベンチまで移動する。
銀牙「お困りのようだね。あたしを試合に出せば?」
監督「だ、誰だね君は!?」
銀牙「知らないんだあたしのこと。OK。じゃあ1から説明する。」
あたしの名前は稲魂銀牙。“ワクワク”を心の底から愛する“ワクワク”の奴隷であり“ワクワク”の探究者。そして…“怪物”の血を継ぐ者。
♢♢♢
星村「はぁ〜!買っちゃったなぁ〜!買っちゃうよねぇ〜!だって伝説のイナズマイレブンのレプリカユニフォームなんだから〜!ぐふふ〜!」
年頃の少女とは思えない顔と台詞を吐きながら河川敷を歩く少女の名は星村ナオ。
これでも先日の練習試合にも出場していた歴とした雷門イレブン精鋭選手だ。
彼女は稲妻町にある大型スポーツショップにて旧雷門イレブンのレプリカユニフォームを買った帰りの途中の様子だ。
星村「円堂守さんのレプユニはすぐに完売して買えなかったけど稲魂雷牙さんのレプユニは買えちゃった〜〜!それにしても本物の存在感は凄かったな〜〜!今度来た時にサインしてもらうためにロッカーにしまっとこ〜と!」
星村が出したユニフォームの背番号は『16』。
自他共に認める雷門最強の選手である稲魂雷牙が今でも愛用しているこの背番号は卒業から約25年経った現在では雷門サッカー部ではキャプテンと顧問監督に“最強”と認められた選手にしか与えられない特別な背番号となっている。
なおかつて雷門一の問題児とも言われた雷牙も40手前まで歳を重ね2児の父となった現在では親としての責任感が芽生え性格も丸くなり頼れる大人へと成長した。
…のならどれだけよかっただろうか。
変わってない。雷門一のハジケリストと謳われた頃から何一つ変わっていないのだ。
どのくらい変わってないかというとオフシーズン中に何を思ったか琵琶湖を幼児用の四輪車で一周するという無謀な挑戦をした挙句、途中で現地住民に通報されて警察のお世話になるくらいには変わっていない。寧ろ悪化しているまである。
ワーッ!
星村「…ん?珍しいな?河川敷でサッカーの試合があるなんて。」
稲妻町の河川敷は25年前の雷門イレブンも頻繁に練習に使っていたサッカーファンにとっては聖地とも言える場所だが水難事故の多発により管理人の許可なしではサッカーができなくなっていた。
それでも伝説のイナズマイレブンが使っていた練習場という事もありこの地での試合を申し込む学校があとを絶たないそうだ。
星村「…って!あそこにいるの
星村の言う通り2点差を付けてリードしている深海サッカー部のDFにいるのは元雷門サッカー部で壁山塀五郎以来の傑物DFと呼ばれた名選手、
その活躍から“蛸”と例えられた防御力は在学中幾度となく雷門に無失点勝利を齎し、現在では高校サッカー界トップDFと評される将来を期待される選手の1人だ。
ピーッ!
星村「ん?対戦校選手交代するみたいだね。でも意味ないと思うな〜だって相手に蛸壺先輩がいるだよ?生半可な選手じゃ突破は無r…んん!?」
星村の目に入った交代選手は外国人を思わせる綺麗な白金の髪を持ち、儚げな印象すら与える表情の変化に乏しそうな美少女だった。
星村は彼女の事をよく知っている。何故ならつい最近彼女と兄の活躍によって危うく負けかけたばかりなのだから。
星村「ぎ、ぎ、ぎ、銀牙ちゃん!!!?え…?あの子まだ中1だよね?…もしかして私タイムスリップしちゃった?」
タイムマシンが完成するまであと55年掛かるため星村の心配は杞憂に終わったが、それでも銀牙が高校生の試合に出ている事は杞憂ではなく歴とした事実である。
銀牙「時間は後半開始数分。点差は2点。負ければ廃部。シチュエーションとしては
自身よりも遥かに体格のよい男子高校生達がひしめく戦場に足を踏み入れても銀牙は臆するどころか僅かに口角を上に上げている。
その表情のまま軽快なステップで軽いジャンプを繰り返し身体をグラウンドに慣らす。
モブC「ほ、本当によかったんでしょうか監督…?」
監督「知らん。だが相手が彼女の参加を認めてくれた以上もう我々には祈るしかないだろう…!」
深海生徒A「あれが“怪物”稲魂雷牙の娘…!」
蛸壺「ビビってんのか?相手はまだ中1だぞ?」
深海生徒A「い、いや〜なんというか…、出てるオーラが中1とは思えないと言うか…。」
蛸壺「ハン!それはお前が弱いだけだ。見てな、“怪獣”が溺れ死ぬ様子をなぁ!」
ピーッ!
銀牙「先手必勝。レッツラゴー。」
開始早々銀牙は速攻を仕掛け次々と深海イレブンのディフェンスを突破していく。
深海生徒B「は、速いっ!!」
深海生徒C「これが中1のスピードかよ!?」
最初は異名が凄くても所詮は中学生と侮っていた深海イレブンだったがすぐに彼女の実力を分からさられる。
彼女が持つパワー、スピード、テクニックは全国の高校生選手でもそう何人もいない脅威的な実力だ。
蛸壺(なるほど…、流石は“怪獣”の肩書きは伊達ではねぇようだな。だが…!)
蛸壺はニヤリと笑うとその巨体で銀牙の進路を塞ぐ。銀牙3人分のウェストを持つ蛸壺の巨体の前では銀牙のスピードを持ってしてもそう簡単に抜く事ができない。
銀牙「むぅ…。」
蛸壺「おっと!抜かせねぇよ!」
スピードで劣る分リーチで勝る蛸壺は的確に銀牙の動きを封じる。
蛸壺「なあ怪獣、巷で俺がなんて呼ばれているか知ってるか?」
銀牙「知らない。そもそもあなた誰?」
蛸壺「知らねぇなら教えてやる!俺の異名は!」
刹那銀牙の肌に形容し難い異物感を感じる。まるで何かの触手に全身を掴まれ今にも地中に引きづり込まれる…そんな感覚に襲われていた。
蛸壺「隙ありィ!!」
銀牙「! しまった…!」
一瞬の隙を突かれた銀牙は蛸壺にボールを奪われ戦況は一気に深海イレブンに傾く。
深海FW「“フライングマーリン”!!」
味方GK「グググ…!グァァァァア!!!」
ピッピー!
深海のFWの必殺技が炸裂し味方チームのGKに必殺技を使う隙も与えずに追加点を許してしまった。
蛸壺「どーよ“怪獣”!この俺、“フィールドのクラーケン”の異名を持つ蛸壺奥斗様の防御力は!」
銀牙「…いいよ。認めてあげる。あなたは強い。あたしが誰かにボールを取られたのはパピーとの勝負以来。」
蛸壺「ヘッ!稲魂雷牙に比較されるなんて光栄だなぁ。」
銀牙「フッ。やっぱりあたしの勘は間違ってない。」
蛸壺「あん?レーダー?なんの事だ?」
銀牙「ううん。コッチの話。」
ピーッ!
試合が再開するが銀牙がやる事は先ほど変わらず先手必勝だ。彼女の見立てでは自分からボールを奪える選手は深海イレブンには蛸壺しかいない。つまり蛸壺を攻略した=得点と同義である。
銀牙「オクトパス。リベンジタイム。」
蛸壺「へっ!何度やっても同じだ!」
前回の攻防で銀牙の体格では左右で抜こうとするのはやや分が悪い事を理解した。ならば次はどうアプローチを仕掛けるべきか?
銀牙「…もうここまできたら答えは1つ。」
蛸壺「(右か?左か?どちらでもきやがれ!…!?)な…!しょ、
銀牙が選択したのは右でも左でもなく真正面、つまり蛸壺を正面突破する事だった。
蛸壺(正気かこいつ!?俺とお前の身長差は30cm近くはあんだろ!?フェザー級ボクサーのチャンピョンがヘビー級の一般ボクサーに勝てるか!?無理に決まってんだろ!)
銀牙の身長は約150cmと少し、だいたい中学1年生女子の平均程度だ。対して蛸壺の身長は180cmオーバー、日本ではトップクラスの巨漢である。
身長の差は
つまり銀牙では数十キロの体重差のある蛸壺の正面突破は不可能なのだ。
…彼女が普通の女子中学生だったのなら。
銀牙「バーン。」
蛸壺「んな…!?」
星村「う、嘘でしょ…!?蛸壺先輩が…!」
深海イレブン『正面で押し負けたァァァァァ!?』
身長差は力では覆せない。それが全てのスポーツの常識である。だがこの世界には稀によくいるのだ、その常識を根本から覆す“怪物”が。
銀牙「さてと。まずは1点。」
銀牙は目に止まらぬ速さでボールに二連撃を叩き込み白金の獅子を出現させる。
銀牙「“プラチナレオーネ”」
白金の獅子の咆哮が河川敷に鳴り響き凄まじい速度でゴールへ向かう。
深海GK「ぐ、“グレートバリ…グァァァァァァァ!!!」
ピッピー!
銀牙「流石はあたし。それほどでもある。」
星村「ほ、本当に蛸壺先輩を突破しちゃった…!でも蛸壺先輩を正面から突破するあのパワーをハル君は1人で抑えてたんだよね…。…やっぱ2人ともバケモンだ…。」
深海DF「大丈夫か蛸壺!?」
蛸壺「くっ…!だ、大丈夫っすよ先輩…!…でも次は油断しねぇ…!」
蛸壺奥斗は普段は粗暴な印象を持たれる選手であるが外見によらず知的な面も持つ選手である。
恐らく既に彼は銀牙のパワーの対処法を立てているだろう。次は正面突破は通用しない、もう銀牙にはなす術はないのか?
銀牙「…やっと見つけた。あたしの勝利の方程式。」
何かに気づいた銀牙は僅かに口角を上げる。その姿は常に不敵な笑みを浮かべて強敵を打ち破ってきた父雷牙と瓜二つだった。
ピッー!
深海FW「取られたら取り返せばいいだけだ!」
銀牙「残念。あなたたちにそのチャンスはもうない。」
銀牙は深海FWの前に立つと緩急のある動きで彼に近づき、直前に超加速し相手の視界から姿を消す。
深海FW「なっ…!消え」
銀牙「“ハンティングセンス”。」
父雷牙がFF初出場時に愛用していたブロック技でボールを奪い追加点を取るべく前線へ駆け上がる。
蛸壺「右でも左でも正面でも!どっからでもかかってきやがれェ!!!撃たれる覚悟をした俺は誰よりも強いぜェ!!!」
その宣言通り真正面から突破しようとしてもびくともせずフェイントにも引っかからない蛸壺の圧力には意地でも銀牙に勝とうとするスゴ味がある。
蛸壺(どっからでもかかってきやがれ…!どちらであろうと
自分の必勝パターンに持っていった蛸壺は心の中で自身の勝ちを確信する。
だが同時にある違和感も芽生え始める。
蛸壺(…なんか長くねぇか?いつもならとっくの昔に息継ぎしてる筈…、だがもうすぐ1分経つのにまだ息継ぎをする気配が無ェぞ…?)
蛸壺の必勝パターン、それは蛸の触手の如く粘着的に相手をマークする事で相手の息切れを狙う戦法だった。
人は誰しも息継ぎを行う瞬間には大なり小なり気が緩む生物。蛸壺はその隙を突く事で確実にボールを奪う戦法を確立していた。
しかも彼は1分間程度なら無呼吸運動を可能とする並外れ肺活量を持っている、まさに鬼に金棒だ。
銀牙「……フッ」
蛸壺「! そこだァァァァァ!!!“ザ・ウォール”!!!」
僅かに銀牙の息が漏れた事を確認した蛸壺はそのタイミングに全てを賭けた。壁山塀五郎が愛用していた伝説のブロック技を使用し今度こそ自身の勝ちを確信した。
だが“怪獣”は彼の想像を遥かに超えた存在だった。
銀牙「かかったね。あたしのフェイントに。」
銀牙は身体を急旋回し大きく地面を踏み込み飛翔する。その距離は約5m。
銀牙の飛翔に呼応するようにまだ日が沈みかけている空に黄金の満月そして
「“ルナ・ヴァルキリー”。」
戦乙女の一閃が炸裂しまたも深海イレブンは追加点を許してしまう。これで点差は1点差、残り時間はあと5分だが彼女の活躍を見れば短時間で2点を取られてもおかしくない。
蛸壺「ば、馬鹿な…!この俺が2度も突破されただと…!」
2度も銀牙の突破を許してしまった蛸壺は自身の不甲斐なさに怒っているのか、はたまた現実が受け入れられないのかは定かではないが身体を僅かに揺らしていた。
その時、彼の顔の前に銀牙は右手の指を全て開いた手が突き出される。
蛸壺「なんだその手は?パーかぁ?」
銀牙「5分23秒。それがあたしの最高無呼吸運動記録。」
蛸壺「な…!」
銀牙「あなたは相手が呼吸を置くタイミングを図ってボールを奪ってる。ならあたしは息を止めてプレイすればいい。そうすればタイミングもクソもない。」
蛸壺「こ、この短時間で見破ったってのか…!?」
銀牙「これでも伝説のイナズマイレブンを支えた名マネージャーの娘。観察眼は人並み以上にある。」
えっへんとまな板の如き小さき胸を張る。…だがその表情はやや不満げだ。
銀牙「…けどちょっぴり悔しい。お兄なら1分で見破れたはず。…いやお兄のフィジカルだったら種が分かっても突破は無理か。」
銀牙「まあ色々言ったけど。あたしが言いたいことは1つだけ。
蛸壺「…上等だッ!“フィールドのクラーケン”の名にかけて…稲魂銀牙!テメェを止めてやる!」
深海DF「お、おい蛸壺!まさかお前
蛸壺「…すんません先輩。俺、どうしても稲魂銀牙に勝ちたいんす。…罰なら後で受けるんで今はあいつとの勝負に集中させてほしいっす。」
深海DF「…ハァ。分かった、監督に怒られても俺は知らないからな!」
蛸壺「あざっす!」
全国大会まで封印していた必殺技を使っても銀牙に勝ちたいという勝利への渇望が生まれた蛸壺は銀牙との最後の決戦に臨む。
ピッー!
銀牙「“ライトニングストーム”。」
深海FW「ぐわぁ!?」
またしても雷牙の必殺技を用いてボールを奪う。その時突如土のグラウンドは一瞬にして大海原へと姿を変えた。
蛸壺「“メイルシュトローム・アビス”!!!」
大海原に大きな穴が空き、そこ起点として巨大な渦潮が発生する。銀牙は一瞬にして潮に飲まれてしまい中央にはボールだけが残された。
蛸壺「フハハハ!!!スゲェよ稲魂銀牙!俺にこの必殺技を出させるとは大したもんだがそれもこれまでだ!俺の渦はお前の身体を捉えた!絶対に脱s…は?」
『絶対に脱出は不可能だ。』蛸壺はそう言いかけた瞬間に言葉が途切れる。
その理由は彼の目線が語っている。
渦潮の中から現れたのは美しい翡翠色の翼を背に持つ1匹の
星村「あ、あれって…!」
星村はその天馬見覚えがある。かつて雷門イレブンの一員だった“フィールドの奇術師”と“革命の旋風児”が宿していたと言われる天馬。
その翼は彼女にも受け継がれていた。
銀牙「“サイクロンペガシス”。」
銀牙は間髪入れずに踵落としを叩き込むと、天馬はボールと共に羽ばたきゴールに向かう。
ハーフライン辺りから放たれたシュートにも関わらずペガシスの羽ばたきは衰えない。
深海GK「“グレートバリアリーフ”!!!…ぐ!グァァァァァァァ!!!!」
ピッピー!
星村「ロングシュートでキーパーを破った人なんて初めて見ちゃった…。一体どんなキック力してるのあの子…。」
ピッピッピッー!
銀牙が3点目をもぎ取った直後、審判は笛を三度鳴らし試合終了の合図を送る。
試合結果は3対3の引き分け。それでも負けではない以上助っ人に入ったチームの廃部は免れた。
見ず知らずのチームの危機を救った銀牙だがどこか浮かない顔をしていた。
銀牙「……。」
雷紋『僕が“なんとかする”しかないんだよォォォォォォ!!!』
銀牙の脳裏に浮かんだのはこの間の雷門中との試合にて兄・雷紋が発揮したあの底力。
あの時、兄を見た銀牙は今まで感じた事のない“ワクワク”を感じた。今回の試合は前回と似たシチュエーションにも関わらずあれほどの“ワクワク”は感じなかった。
銀牙「…もしもここにお兄がいたら逆転できてたのかな。」
あったかもしれない“
♢♢♢
銀牙「ただいまー。」
今日は久しぶりに色んな“ワクワク”に出会えたから疲れた。早く寝よう。
雷紋「…おかえり(ムッスー)」
銀牙「お兄の顔タコみたい。ウケる。」
雷紋「誰のせいでこうなってると思ってるんだよ!!!そもそも練習を休む時は事前に申請を…クドクド」
あーまた始まった。お兄の説教タイム。こーいう時は目を開けたまま寝るにかぎるね。
???「あら、珍しく遅かったじゃない銀牙。いい“ワクワク”は見つけられた?」
銀牙「あっ、マミー久しぶり。コレお土産。」
???「あら!綺麗な花束!フフ、ありがとう。職場に飾っておくわね。」
雷紋「僕の話を聞けェェェェェ!!!」
銀牙「お兄。うっさい。」
こうしてあたしの“ワクワク”を求める1日は終わった。
お風呂に入って久しぶりのマミーの手料理を食べた後。あたしは今日出会った“ワクワク”を回想しながら眠りにつく。
銀牙「明日はどんな“ワクワク”に出会えるか。楽しみだね。」
あたしの名前は稲魂銀牙。“ワクワク”を心の底から愛する他の人よりちょっぴり可愛い中学1年生。
銀牙は書いてて本当に楽しいキャラ。作者が口数少ないクールビューティーが好きってのもあるけど、婉曲的煽リストの雷牙とはまた違った煽り台詞を考えるのがこれまた楽しいんだ。
〜オリキャラ・オリ技紹介〜
【人物】
・蛸壺奥都(たこつぼ おくと)
年齢:17
性別:♂
ポジション:DF
概要
オリキャラ。深海高校サッカー部所属の2年生。中学は雷門サッカー部で一軍レギュラーを張っており、“蛸”と例えられる粘着質な防御力から壁山塀五郎以来の傑物DFと評された実力者。
・星村ナオ
年齢:14
性別:♀
ポジション:MF
概要
原作キャラだが記述。雷門サッカー部一軍チームに所属する2年生であり“なんと!”の人。作者がマイチームに入れるほどビジュが気に入っているキャラなので優遇させて今回も登場。
原作と比べてサッカーオタクとしての側面を強く描いた結果いいリアクション役になってくれた。
どうでもいい余談だが作者はストーリー終了まで星村の事をハルと同じ1年だと思い込んでいた。
【必殺技】
・サイクロンペガシス
銀牙が使う風属性のシュート技。今回は変則的なモーションとなったが本来は回転させたボールを天高く上げペガサスのオーラを出現させた後“バックトルネード”の要領で回転しながら上昇した銀牙が踵落としを叩き込むモーション。
なぜ“ペガサス”じゃなくて“ペガシス”なのかはこれまで銀牙が使用した必殺シュートの名前を見比べてみれば分かる人には分かると思う。
・メイルシュトローム・アビス
蛸壺が使う風属性のブロック技。相手の足元に渦潮を発生させて身動きを取れなくさせる。以上。
試験的に台詞の頭にキャラの名前を入れています。もしもコッチの方の反応がよければ『HEROS』も世界編から同じ形式にする予定ですのでアンケートお願いします。
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コッチ(名前あり)
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アッチ(名前なし)