イナズマイレブンMONSTERS!!!   作:月兎タンク

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 最近知ったんですけど“雷紋”ってラーメンのどんぶりによく刻まれているグルグルマークの事だったんですね。
 よく雷門中って検索する時に雷紋って文字が出てくるからなんのこっちゃっと思ってたんでまた1つ謎が解けました。
 ちなみに稲魂兄の名前は普通に雷門のもじりなので上述のマークとは一切関係ありません。


雄大な山々を制覇せよ!対決 上州赤城山! 後編

 アリスの命令により2トップの体制で後半戦に挑む事となった帝国学園。

 

 そんな即席コンビを組んだFWの現在はーー

 

霊道「俺のゴールの邪魔してんじゃねェぞ稲魂兄ィ!!!」

 

雷紋「僕の名前は雷紋です!そもそも邪魔してません!ただシュートチェインしただけです!」

 

穂村「…本当に大丈夫なのか?こいつらに任せて…?」

 

 凸凹コンビという評価すらも生温い超不仲コンビっぷりに穂村は頭を悩ませていた。

 

≪数分前≫

アリス「後半は古屋敷をMFに下げ、霊道と雷紋の2トップでいく。」

 

雷紋「……はい?」

 

 雷紋の間抜けな返答がベンチに軽く響き渡る。

 聞き間違いだろうか?今アリスは雷紋をFWに起用すると言った。シュートのバリエーションが多いだけで肝心のシュートパワーは下から数えた方が早いMr.非力こと稲魂雷紋をだ。

 

穂村「…確認させてくれアリス。俺の聞き間違いじゃなければ雷紋をFWに起用すると聞こえたんだが?」

 

アリス「安心しろ聞き間違いじゃない、後半は雷紋と霊道の2トップで攻める。これは決定事項だ。」

 

雷紋「異議ありッ!!!」

 

アリス「却下だ。」

 

 雷紋の異議を即座に却下するアリスだが、本人は元より帝国のメンバーも今回のアリスの戦略には納得がいっていない様子だ。

 確かに雷紋は前半終了間際に赤城山のゴールを奪いかけたもののアレは上手くDFの不意を突けただけであり二度も同じ手が通用するとは思えない。

 

アリス「…雷紋、何故今の帝国に攻撃力が不足しているか分かるか?」

 

雷紋「え〜と…、これまでの試合が銀牙に頼りきりだった…とか?」

 

アリス「違う。答えはシンプル、今の帝国には強力な連携技が足りない。」

 

雷紋「連携技?“皇帝ペンギン2号”じゃ駄目なんですか?」

 

アリス「駄目だ。そもそも“皇帝ペンギン2号”は雷門も使える。優勝をもぎ取る為には2号を超える新たな連携技が必要だ。」

 

雷紋「…まさか」

 

 嫌な悪感が雷紋の背筋を凍らせる。何故ならアリスが質問の答えを1から10まで丁寧に答える時は大体彼の無茶振りの序章曲(プレリュード)だからだ。

 

アリス「雷紋。お前にはこの試合で2号を超える連携技を編み出してもらう。」

 

 こうして物語の著者()は無慈悲にも雷紋に新たな試練を与えたのだ。

 

♢♢♢

雷紋(無理だって…!100歩譲って試合中に連携技を編み出すのはいいけど、プライドの高い霊道先輩が僕の動きを合わせてくれるわけがないって…!)

 

 アリスの無茶振りを受けた雷紋は新連携技の開発に挑戦しているが未だに完成の兆しが見えず、ただ体力と時間を無駄に消費するだけだ。

 

 それもこれも開発の難易度を上げている要因である霊道のせいだ。

 

 ここで霊道界也(れいどうかいや)という選手を補足しておこう。

 

  霊道界也ーー帝国学園サッカー部所属の2年生。

 

 彼の事を一言で表すとするのなら重度のゴール中毒者(エゴイスト)と評するのが相応しい。

 

 その強靭な脚力を持って幼少期から幾つもの大会にて得点王となった彼はいつしかゴールを奪う事だけを考えて生きるようになった。

 その実力を買われて帝国サッカー部にスカウトされた後もその実力を遺憾なく発揮し瞬く間に帝国のエースストライカーへと登り詰めた。

 その強さは絶対王者たる雷門であっても警戒する程で暖冬屋の“ゴッドハンド・タイガー”を初めて単独で破ったのも彼と言えばどれだけ凄まじいかが分かるだろう。

 

 その強さを讃えていつしか世間は霊道の事をこう評するようになった。

 

 “ペンギンストライカーの最高傑作”と…

 

 …だが雷紋の父・雷牙の性格の悪さを見れば分かる通り神は人に二物を与えない。

 それこそ神が霊道に与えたは欠点はまさにその性格だった。

 

 彼はとにかく嫉妬深いのだ。 

 敵は元より味方のゴールにすら嫉妬するその様はまさに“ゴール中毒者”の末期症状。

 味方がゴールを決めてしまえば即座に機嫌は悪くなり荒いプレーを連発。

 雷門と比べると帝国はヒール的な扱いをされるがその原因の8割は彼のプレーにある。

 

 それでも性格の悪さによる悪評は勝利による実績で黙らせる事で今日まで生きてこれた。

 

 

 

 

 あの“怪獣”が現れるまでは…

 

霊道『クソッタレが…!』

 

銀牙『噂の最強FWもその程度?期待して損した。』

 

 忘れもしない稲魂銀牙との10番(エースナンバー)を賭けた運命の一戦。

 彼は1歳年下の少女に完膚なきまで叩きのめされた。それもただ負けただけじゃない圧倒的な実力差を見せつけられた上で負けたのだ。

 

 天よりも高いプライドを持つ彼にとってこの事実は許し難いものだった。

 確かに霊道は傲慢ではあるがその裏では血の滲むような努力を欠かさない努力家でもある。

 その努力すらも目の前の“怪獣”には通用しなかったのだ。彼にとっては自分の人生を全否定されたも同然だった。

 

 その日から再びエースの座を取り戻す為に更なる特訓に打ち込む日々が続くも一向に彼女との差が縮まる気配はない。

 次第に彼女に対し憎しみを感じるようになった霊道は次第に自分の為だけのサッカーをするようになっていった。

 

 そんな“坊主が憎けりゃ袈裟まで憎い”状態にある彼が血の繋がった兄である雷紋とまともに連携しようとする筈がない。

 1から5段階まであるアリスの無茶振りレベルも今回は最高ランクのレベル5だろう。

 

愛原「何ボーッとしてるべ!」

 

雷紋「ハッ!クッ…!“そよ風ステップ”!」

 

 考え込むあまり僅かに隙を晒してしまった雷紋は師から譲り受けたドリブル技でなんとか突破しようとするが彼の前に立ちはだかったのは人間ではなく謎の山神だった。

 

愛原「これが赤城山に伝わる伝説の山神さまだべ!」

 

 愛原は両手で合わせ祈りを捧げると地面を媒介に赤城山に伝わる猪によく似た山神を顕現させる。

 山神が顕現した途端、まるで蛇に睨まれた蛙のように雷紋の動きが止まってしまう。

 

雷紋「う…動けない…!?」

 

 その隙を見逃さない山神は巨大な牙も、巨大な身体とも一切関係のない極太のビームを口から放出し雷紋を吹き飛ばした。

 

愛原「“山の裁き”!」

 

雷紋「グワァ!?」

 

霊道「何やってんだァ!雷紋ッ!」

 

 霊道の怒声が飛んで来るがどんなに怒鳴ってもボールを奪われたという事実は変わらない。

 そのまま赤城山のFWにボールが回ってしまうが、何も力を温存していたのは赤城山だけじゃないのだ。

 

穂村「要塞を築け!」

 

古屋敷&本能寺「「ラジャー!」」

 

 穂村が手を後ろに組んでゆっくりと歩き、古屋敷と本能寺は彼の後ろで傅くと地面から巨大な要塞が出現し川辺の行手を阻む。

 

穂村「“ザ・フォート”!」

 

 多数の砲台を兼ね備えた要塞は川辺に狙いをつけると一斉射撃を行い彼を吹き飛ばした。

 

王将『帝国のブロック技“ザ・フォート”が炸裂ーーッ!!!前半戦は技を温存していた帝国が技を解禁したという事は遂に帝国の本気が見られるぞーーッ!!!』

 

穂村「霊道!」

 

霊道「今度は邪魔すんじゃねェぞ!雷紋!」

 

 霊道は優雅な動きで口笛を吹きネオン色に輝く数匹のペンギン達が合体し王冠を被った巨大な1羽のペンギンとなってゴールへ向かう。

 

霊道「“ペンギン・ザ・パレードォ”!!!」

 

 霊道が放つ強力な必殺シュートを前にしても赤城山は余裕を崩さずに即座に6人の選手を集め赤城山の誇るであるタクティクスを発動する。

 

家山「必殺タクティクス!“ビッグマウンテン”!」

 

 本日2度目となる雄大な山脈がペンギンの凱旋を中止に追い込みシュートを止めてしまう。

 

王将『今度は完璧に止めてみせたーーッ!!!強いぞ赤城山ッ!その防御力はかつての千羽山を思い起こさせるーーッ!!!』

 

銀牙「…千羽山?聞いたことがあるようなないような…?」

 

夏美「忘れちゃったの?千羽山中は25年前のFF本戦でパパと試合した学校よ。」

 

 千羽山中ーー25年前のFF本戦にて雷門中と戦った学校だ。

 千羽山の特徴はその防御力。特にキーパー技“無限の壁”は当時の日本屈指の防御力を誇り、雷門とぶつかるまで無失点記録を樹立していた程だ。

 当時の雷門はある事情によりチームの連携が乱れ満足に実力を発揮出来ずに“無限の壁”の攻略に大苦戦した。

 試合の途中で鬼道が雷門中に加入しなければ敗北していた可能性が高いかなりの強豪校だ。

 

 選手の戻りの速さといい、高い防御力といい、それ反比例するように足りない決定打といい、プレースタイルと欠点すらもやたら千羽山に似ている赤城山に千羽山の面影を見出すのも無理もないだろう。

 

 だが赤城山と千羽山には決定的に異なる点が1つだけある。

 

 それは防御の要となるのがキーパー技か必殺タクティクスかの1点だ。

 

 千羽山は“無限の壁”がキーパー技である都合上、技が破られる=得点の図式が成り立ってしまい途端に勝利から遠ざかってしまう。

 しかし赤城山の防御の要である“ビッグマウンテン”がフィールド技である為、前半のように発動が間に合わなくてもリカバリーが効きやすい。発動に人数を割かなければならないという欠点はあるものの戻りが早い赤城山からすればそんなものは欠点に入らないのだ。

 

雷紋「千羽山…無限の壁…父さま…。…!そうだ!()()ならいけるかもしれない…!」

 

 王将の実況から何かを思いついた雷紋はなんとか赤城山からボールを奪い即座に外に出し試合を中断させる。

 

雷紋「霊道先輩!穂村先輩!話があります!」

 

穂村「霊道はまだしも俺もか?」

 

 自分も読んだ事に疑問を浮かべつつも雷紋の閃きに賭けた穂村は彼の話を聞く。

 

雷紋「いいですか、赤城山は防御力は高くても攻撃力には難があるチームです。だからコッチが先制すれば僕たちの勝利は決まったも同然です!」

 

霊道「んな事ァ分かってる。とっとと本題に入れ。」

 

雷紋「…つまり僕たちが勝つ為にはあの“ビッグマウンテン”を制覇する必要があります。」

 

穂村「だがシュートチェインによる霊道のシュートも雷紋の奇襲すらも通用しなかったのだぞ?今更どうするつもりだ?」

 

雷紋「簡単なことです、()()()からぶち破るんですよ。あの大きな山を。」

 

霊道/穂村「「…は?」」

 

 あまりに雷紋らしくない脳筋発言に霊道と穂村の間抜けな声がハモッてしまう。

 

雷紋「先輩方が混乱するのも分かります。けど恐らく100%不可能なことではありません。事実、前半のシュートチェインした霊道先輩のシュートで“ビッグマウンテン”を破ることには成功してます。今の帝国(僕たち)に足りないのは破った後も余力を残せる連携技なんです。」

 

穂村「…取り敢えずお前が言いたい事は分かった。だがそんな都合のいい技はあるのか?」

 

雷紋「あります。25年前に父さまと鬼道総帥が編み出した必殺技…“イナズマペンギン”ならきっと破れます。」

 

霊道「“イナズマペンギン”だと…!?」

 

 正式名称“イナズマペンギン No.11(ナンバーイレブン)”。

 

 25年前の千羽山との一戦にて雷牙、鬼道、豪炎寺が生み出した連携技だ。その威力はこれまで無失点を誇っていた“無限の壁”を容易く破り以降の試合でも雷門イレブンの最高戦力として重宝された伝説の必殺技の1つである。

 

穂村「無理だ…!その技は25年の間に数多のチームが習得を試みたが成功した者はいない…!」

 

雷紋「出来ます!今ココには強靭なキック力を持つ霊道先輩とアリス先輩に匹敵する分析能力を持つ穂村先輩…そして稲魂雷牙の息子である僕がいます!3人で力を合わせれば必ず“イナズマペンギン”を完成させられる筈です!」

 

 普段の押しの弱さからは想像も出来ない程、力強い声と目で2人に訴えかける雷紋。

 彼の勝利に対する執念の強さを見た穂村は後輩の姿に“雷撃のサッカーモンスター”の面影を感じずにはいられなかった。

 

穂村「…分かった。それが帝国の栄光を取り戻す唯一の旅だと言うのなら喜んで協力しよう。」

 

雷紋「穂村先輩…!ありがとうございます!」

 

穂村「…お前はどうする?霊道。」

 

 穂村は目線でお前も覚悟を決めろと訴えかけるが霊道はバツの悪そうな表情をするとそっぽを向いた。

 

霊道「断る。なんで俺が後輩の言う事を聞かなきゃいけねェんだ?それも稲魂銀牙の兄妹の言う事をよォ?」

 

穂村「勝利よりも意地を選ぶ気か?」

 

霊道「ああそうだ!前半は“7”のシュートチェインだけで“ビッグマウンテン”を破る事に成功したんだ!なら2号や“ツインブースト”を重ね掛けするば稲魂兄が言った威力に到達すんだろーが!」

 

 霊道の言う事も尤もではあるものの彼の言葉は所詮、怨敵・銀牙の身内である雷紋に協力したくないがあまりに飛び出た詭弁でしかない。

 恐らく本人もそれは理解しているのだろう。だが天よりも高いプライドが稲魂の名を継ぐ者との協力を拒んでいるのだ。

 

 すると雷紋は…

 

雷紋「…ごめんなさい霊道先輩。先に謝らせてもらいます。」

 

霊道「あん?何をだ?」

 

 雷紋は震える身体をなんとか止め一呼吸を置き最後の覚悟を決める。何故なら今にも口から飛び出そうな言葉は殴られても文句は言えない程汚い言葉だから。

 

雷紋「ハッキリ言わせてもらいます霊道先輩…。…あなたは“負け犬”です!」

 

霊道「…は?」

 

 あまりに予想外な一言により霊道の思考がストップしてしまう。言葉の意味が分からないのではない。寧ろその逆、意味を理解しているからこそ脳が理解を拒んでしまったのだ。

 

霊道「もういっぺん言ってみろ稲魂ァ…!!!」

 

 徐々に言葉の意図を理解し始めた霊道は怒りが沸々と沸き上がりドス黒いオーラを発しながら雷紋を威圧する。

 それでも雷紋は臆さずに言葉を続ける。それ程確信しているのだろう。自分の意見は間違っていない事を。

 

雷紋「何度だって言わせてもらいます!あなたは“負け犬”です霊道先輩!あなたは銀牙に勝てないからアイツに繋がる全てを否定しなくちゃ生きていけない!それを“負け犬”と言わないで何と言うんですか!」

 

霊道「グッ…!だったらテメェはどうなんだよッ!!!テメーも妹に一度も勝てねェ負け犬だろうがッ!!!そんな奴が「そうです!!!」…は?」

 

雷紋「僕もそうだ…!同じ日に産まれたにも関わらず僕は喧嘩でもサッカーでも一度もアイツに勝ったことはない!清々しいまでの負け犬です!でも…あなたと違って勝つこと自体を諦めたことは一度も無い!」

 

霊道「クッ…!」

 

雷紋「僕は今日、世間に稲魂雷紋ここにありと知らしめる為にピッチの上に立ってます!先輩だってそうでしょう!?」

 

霊道「ッ…!」

 

 刹那、霊道の心に稲妻が走ると同時に今まで心の底に封じ込め見て見ぬふりを続けていた感情が蘇る。

 

霊道「うるせぇよ…!俺だってなぁ…!勝ちたかったんだよ…!」

 

 初めて稲魂銀牙に負けて以降、霊道は彼女からエースの座を取り戻す為に特訓を続けてきた。

 だが特訓を続ければ続ける程、銀牙は更に先の領域へ至る一方で自分には限界が見え始めてしまった。

 

霊道「俺は自分の運命が憎いッ!!!あんな化け物と同じ世代に生まれちまった糞みてェな運命が憎いんだよッ!!!」

 

 いつしか霊道は本気で“怪獣”に勝とうしなくなった。だがその事実を受け入れられなかった霊道は彼女に関わる全てのモノを憎む事で心を満たそうとした。

 それこそが人間にとって最も無様で哀れな選択だと知りながら。

 

霊道「…答えろ雷紋。なんでテメーは俺よりも近くで“怪獣”を見ていながら心が折れねェ…?なんで何度でも立ち上がれる…?」

 

雷紋「…僕はまだアイツにーー銀牙に一度も“勝って”ないからです。だから僕はずっとアイツに“負けて”いる状態なんです、でも僕は“負けて”いる状況で“勝つ”こと以外は考えたくないんです…!」

 

 霊道は悟る。

 

 目の前の後輩はIFの自分である事を。

 

 “怪獣”の圧倒的な暴力性を目の当たりにしながらも心が折れなかった世界線の自分の姿こそが稲魂雷紋なのだと。

 

雷紋「…霊道先輩、どうか僕に力を貸してください。帝国が勝利を掴むにはあなたの力が必要なんです…!」

 

 IFの“自分”は負け犬である筈の“自分”に頭を下げている。勝者が敗者に頭を下げるなど前代未聞であろう。

 

 あまりに純粋で。あまりに眩しくて。あまりに強い。

 

 輝きのあまり“自分”を直視出来なかった霊道はその顔を見る事が出来ずに後ろを振り向く。

 

 それでも力強く答えるのだ。もう一度1からやり直す為に。

 

霊道「…失敗したら本当(マジ)でテメーを殺すからな。…()()!」

 

雷紋「…! はい!成功させましょう!僕たちのペンギンで赤城山のゴールを破るんです!」

 

穂村「帝国にあるまじき熱さだな。…だが悪くない。」

 

 こうして勝利を掴み取る為に一致団結した3人は赤城山との最後決戦に挑む。

 

ピーッ!

 

 赤城山ボールのスローインから試合が始まる。もう残り時間はあと数分ほど、そんな短時間で新必殺技を完成させなければならない為3人には強い緊張が走る。

 

 今世代の帝国は“戦術の帝国”と評される程に(1名を除いて)統率の取れた連携と天才少年監督が織りなす戦略が秀でたチーム。

 その裏には当然の如く血の滲むような努力と緻密なミーティングによって支えられている。

 それ故にこんな土壇場で新必殺技を完成させる事は初めての経験だった。

 

雷紋「そのボール奪わせてもらいます!」

 

家山「いいガッツだ!だが試合に勝つのは我々だ!」

 

 自らの前に立ち塞がる雷紋を突破する為に家山は両手を合わせると再びフィールドに山神が顕現する。

 

家山「“山の怒り”!」

 

 何に対して怒っているのか分からない山神は鼻息を荒くし、白目を剥き、顔に青筋を立てながら地面に着いた4本足をフル稼働させ雷紋目掛けて突進する。

 

雷紋(まだこんな技を隠していたのか…!クッ…!ココは一旦引いてDFに止めてもらうべきか…!?)

 

 稲魂の血を引きながらもフィジカルで劣る雷紋では山の神の怒りを受け止める術を持たない。

 それならば無駄に止めようとせずにMFかDFあたりに奪取を任せカウンターを狙うのが得策だろうと考え抵抗を諦める。

 

 だがその選択に物申しを入れる声が内側から聞こえてくる。

 

ライガ『おいそりゃねェだろ雷紋!オメーは稲魂雷牙の息子だろーが!変に確率の高い方を選ばずに偶には男らしく一歩踏み出してみやがれッ!!!』

 

雷紋「クッ…!ウォォォォォッ!!!」

 

王将『おおっとーーッ!!!“怪物”の血が騒いだか!?稲魂雷紋!?突如雄叫びをあげて家山のドリブル技に突っ込んだーーッ!!!果たしてこれは彼の作戦なのかーーッ!?』

 

 変に深読みする王将だが真実はただの無謀な作戦である。それを示すように雷紋は冷や汗をダラダラ流しながら自分の選択を後悔している。

 

ライガ『ビビってんじゃねェ雷紋!そういう時は目を閉じろ!思考をするな!全細胞から恐れの感情を全て削ぎ落として“本能”を爆発させるんだ!!!』

 

雷紋「やってやる…!ここまできたら“本能”でもなんでも爆発させてやるさ!!!」

 

 覚悟を決めた雷紋の表情に恐怖は消え去り、勇敢に山神へ突撃する。その時、雷紋の身体は水色のオーラに包まれたと思うと家山の視界から一瞬にして姿を消した。

 

家山「なっ…!?どこに消えた!?」

 

雷紋「ここです。」

 

 家山の脳が雷紋の声を認識した時には既に雷紋の足にボールが確保されており、周囲には漆黒に染まった鳥類の羽が空を舞っていた。

 

王将『な、な、な、なんとォーーッ!!!?突如、稲魂雷紋が眩い光を放ったと思うと次の瞬間にはボールを奪っていたーーッ!!!?今のは一体技なのか!?それとも彼が生み出した新たなテクニックなのかーーッ!!!?』

 

雷紋「霊道先輩!穂村先輩!ココで決めます!」

 

霊道「失敗すんなよ雷紋!」

 

穂村「俺はお前の方が心配だがな。」

 

 雷紋は黄金の稲妻を纏わせながら天に向かってシュートを放つと前方を走っていた穂村も同時に飛び上がりシュートに追いつく。

 そしてマスクの上から指笛を吹くと何処からか黄色6匹、紫5匹…合計11匹のペンギン達がボールの中に入り込むと黄金の稲妻は紫色の稲妻も纏い地に落ちる。

 そのボールに対して雷紋、穂村、霊道の3人が息の合ったトリプルシュートを放つと中のペンギン達が一斉に飛び出しシュートと共にゴールに向かう。

 

雷紋「“イナズマペンギン”!!!」

 

穂村&霊道「「“No.11”!!!」」

 

王将『こ、これはーーッ!!!?25年前少年サッカー界を騒がせた伝説の一戦!雷門中VS千羽山中にて披露された必殺技“イナズマペンギン No.11”だーーッ!!!これまで数々の選手がこの技を習得しようとし挫折していったが25年越しに稲魂雷牙の息子、稲魂雷紋が完成させてみせたーーッ!!!』

 

 25年越しに日の目を浴びた11匹のペンギン達は溜まりに溜まった鬱憤を晴らさんとばかりに勢いよくゴールに向かう。

 だがペンギン達の前に立ち塞がったのはこれまで誰も制覇した事のない雄大な山々だった。

 

『必殺タクティクス!“ビッグマウンテン”』

 

 幾度となく帝国の攻撃からゴールを守ってきた天然の要塞がペンギン達の行手を阻む。

 しかし11匹のペンギン達は怯む事なくその鋭い嘴を岩山に叩きつけるとドリルの如く猛回転を始めた。

 すると徐々に岩山に亀裂が入り始め、数秒後にはあれだけ悠然としていた山脈は跡形もなく粉砕させられた。

 

家山「ば、馬鹿な…!?“ビッグマウンテン”が破られた…だと…!?」

 

 純粋な威力だけで破られた事で大きな反動がきたDF達は先ほどとは異なり立ち上がる事が出来ず今度はキーパー1人の力でシュートを止めなければならなくなる。

 

木霧「“まさかり…何!?ま、間に合わない!」

 

 一切の威力を落とす事なくゴールに辿り着いた正真正銘の必殺シュートはシンプルな手刀すらも繰り出させる暇を与えずに木霧の身体ごとゴールに叩き込んだ。

 

ピーッ!!!

 

 審判のホイッスルにより帝国のゴールが確定し、大画面の液晶に表示されたスコアボードに『1』の数字が刻まれる。

 

ピッ!ピッ!ピッー!!!

 

 同時に審判のホイッスルが三度スタジアム内に鳴り響く。この笛の音が示すのはただ1つ。試合の終了だ。

 

雷紋「勝った…!僕たちの勝ちだ…!」

 

 雷紋が勝利を実感したと同時に観客達も状況を飲み込んだ事で大歓声が巻き起こる。

 

観客『て・い・こ・く!て・い・こ・く!』

 

 まだ予選一回戦にも関わらずまるで優勝したかのような大歓声がスタジアムを包み込む。

 それもそうだろう。25年間、誰も成し遂げられなかった偉業を達成した上での勝利なのだ。

 目の肥えた観客達から見てもこの一戦はFF決勝戦にも匹敵する興奮と感動を届けてくれたのだ。

 

観客『ら・い・も・ん!ら・い・も・ん!』

 

 すると観客達の“帝国”コールは何故か“らいもん”コールへと変わる。だが少し待って欲しい、王者雷門はBブロックである為この会場には雷門の選手は居ない。

 

 では何故観客達は“らいもん”と呼び続けるのだろうか?

 

 答えは簡単。ここにも居るのだ。

 

 母親から名付けられた全く同じ読みの名を持つ選手が1人。

 

王将『ご覧くださいこの大歓声を!何百、何千もの観客達がピッチの上に立つたった1人の選手に向かって盛大なコールを送っています!そのコールの受け取り主の名前は稲魂雷紋!偉大なる“怪物”の血を引く者だーーッ!!!』

 

観客『ら・い・も・ん!ら・い・も・ん!』

 

雷紋「アバババ…!こ、こんな時どんな反応すれば…!」

 

???『オドオドしてんじゃねぇぞ雷紋!こーゆー時はシャキっとしやがれ!』

 

 このような大舞台での歓声に慣れていない雷紋はガチガチに緊張し別の意味で動けなくなってしまうが、いつもの甲高い怒声により我を取り戻す。

 

雷紋「アリス先輩…!」

 

アリス「せめてお辞儀だけでもしてろ。生真面目なお前にはそれが最高のファンサービスになる。」

 

雷紋「は、はい!」

 

 アリスの言葉を鵜呑みにした雷紋は綺麗な上半身を勢いよく地面に向かって折り曲げ上半身と下半身との間の角度がジャスト90度になるようにお辞儀を行う。

 

夏美「おめでとう雷紋…!貴方の努力がやっと今日報われたわね…!」

 

 観客席で息子の勇姿を見守っていた母はハンカチで涙を拭うと拍手で息子を祝福する。

 

王将『波乱に塗れたFF予選一回戦は帝国の勝利で幕を下ろしましたーーッ!!!これから帝国!そして稲魂兄妹がどのような活躍を我々に見せてくれるのか今から楽しみでなりませんッ!!!』

 

 観客の声援と拍手に包まれながら帝国の戦士達は戦場から去る。その表情には名門として勝って当然といった余裕の表情はなく、全力を尽くして試合が出来た事による充実感で満たされていた。




 なんか思ったより試合の描写雑になっちゃった。初めての読者様投稿のチームだった事もあってあんまりキャラを掴めてなかったんで次回から改善するんで今回は大目に見てください。
 あとしばらくは本編に集中するんでまたまた投稿期間空きます。本編に詰まったらまた再開する予定ですので首を長くしてお待ちください。
 ではでは〜!

試験的に台詞の頭にキャラの名前を入れています。もしもコッチの方の反応がよければ『HEROS』も世界編から同じ形式にする予定ですのでアンケートお願いします。

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