ここは何処だろうか。真っ暗でよくわからない。
ただ道路の真ん中だということだけは理解することが出来る。
周りには人っ子一人居らず動物の気配もない。
道路だというのに自動車などの車1つすら駐車されていない。
上の方を見上げてみる。そこは空だということを理解できて、赤い月が2つ存在していた。
「!?」
急に後ろの方に気配を感じる。かなりの距離があり、遥か後ろのほうだということが自然と理解できた。
その気配は段々と近づいていくる。
まだかなり距離があるというのにその何かの足音だろうか、ヒタヒタという音が鳴り渡っている。
何故かその存在に追いつかれてはいけないと気がして俺はその場から前へ歩き離れていく。
「…………」
その足音は相変わらず聞こえ続けて、確実に此方を追い続けてきている。
不気味だ。
何も存在しないはずの場所に、俺以外が存在しないはずの場所に得体のしれない何かが、意味の分からない何かが存在しており、此方を追いかけてきているのだから。
何が目的で、どういった理由で来ているのかは良くわからないが追いつかれるのは不味いということは本能で理解することが出来る。
その足音は一定間隔のリズムを刻みながら確実に此方との距離を縮めてきている。
「ッ!!」
俺は思わず走りだした。
走る。疾走る。はしる。ハシル。
風を切り、全力で足を動かしてひたすら逃げ続ける。
するとその後ろの存在もまたスピードを増して追いかけて来る。
走り続けていると相手もかなりの早さで追いかけてきているのだが、そいつ等は走っているのではなく歩いているとういことが理解出来る。
何故ならそれは未だにヒタヒタという音をゆっくりと鳴らしながら近付いて来ているのだから。
そしてその足音以外にも何かの音が聞こえてきた。ピチャピチャとした、グチャグチャとした得体の知れない音が。
それが更に不気味さを感じさせて、俺は更に足に力を入れて走りだした。
それでも距離を取ることが出来ず、その後ろの存在は追いかけて来る。
どれくらい走ったのだろうか。
実際のところはそれほど時間が経っていなくて、2分や3分なのかもしれない。だけど同じ所をグルグルと廻っているかのように同じ景色が続くだけでそれが原因なのか感覚的にはかなり走ったかのように、20分走り続けているかのように感じる。
ふと後ろの方が気になった。
それまで不気味に感じていた何かが居なくなったのだ。そう感じたのだ。
だから俺は足を止めて振り返った。
振り返ってしまった。
「!?」
だが其処には血みどろで身体がグチャグチャになった2人の少年らしき存在が居た。
「 」
その何かがブツブツと呟いている。
それは段々と近づいてきて声もハッキリと聞こえてくる。
近づいてくるだけそれから放たれる声が大きくなり、血の匂いがキツくなり、見るに耐えないグチャグチャとなった肉が鳴らしている音が嫌にハッキリと大きく感じられる。
「――お前の所為だ」
「――お前が悪いんだ」
「――お前が殺した」
「――よくも」
そんな呪詛のような言葉が、声がその少年から。否、周囲から聞こえ始めてくる。
耳を塞ごうにも何故か塞ぐことが出来ず、ただただ聞き続けることしか出来ない。
目を塞ごうにも目はしっかりと開かれており閉じたくても閉じることが出来ない。
鼻を摘もうとしても手は動かすことが出来ず、血の匂いを、鉄の匂いを嗅ぎ続ける他ない。
「止めてくれ」
声に出してその言葉を拒否しても未だに聞こえ続けている。
目の前の、その2人の男の子らしき何かは俺に飛び掛って来る。
「!? ――はぁ……はぁ……はぁ……はぁはぁ」
悪夢。
嫌な夢だった。
よく覚えては居ないが本当に嫌な夢だ。
気持ちの悪い汗が流れて身体とシャツが引っ付いている。
「何だったんだ一体?」
その気持ちから逃げるように俺はまた布団にくるまり、目を瞑る。
だが、頭は覚醒しており、しっかりと目が覚めていた。
「仕方ないか」
俺は布団から抜けだしてパジャマのままで浴室へと向かう。
部屋を出る前にチラッと確認すると時計は朝の3時を指していた。
「…………」
身体を流れていくお湯が、シャワーから出ているお湯が心地よく思わず目を細めてしまう。
それは先程までの不思議で、不気味で、嫌な気持ちだった気持ちを洗い流してくれているような錯覚を感じさせてきた。
ずっと流し続けている所為か、浴室は蒸気が溜まり湯気で周りがよく見えなくなっている。
それはまるで自分の今の状態のように感じさせると同時に何処かそれが他人事のようにも感じられた。
「ふぅ~」
風呂から出て、普段着に着替えた後はこの家に置いてあった扇風機の電源をいれてその前に座る。
修行や風呂などの後に回っている扇風機の前に座るととても気持ちがよく感じるのだ。
「あああああああああ」
思わず扇風機の前で意味のない言葉を口にする。
その言葉は、音は震えてどこか自分じゃない誰かの言葉。まるで宇宙人が頑張って日本語を、地球の言葉を話しているかのように思わせてくるのだ。
それが何故か楽しく、面白く感じられ続けてしまう。
子供のようだと思いながらもそれを止めることが出来ず、無意味に10分ぐらいそれをしながら遊んでいた。
「(ま、今のこの体は子供何だけどな)」
時刻を確認すると時計の針は4を指していて普段ならそろそろ起床して修行を開始する時間だ。
だが、今日はそんな気持ちが出て来なくて俺は自分用だと決めた自室に置いてあるデスクトップ型のパソコンを起動してインターネットを開く。
「今日のアニメは……」
何時もなら真・四身の拳での分身体のうちの一体が観ているのだが、今日は修行する気が無いのでこのままアニメを視聴することにした。
「相変わらずくだらないのに何故か笑ってしまうんだよな」
くだらないことほど不思議と笑えてしまう。それだけ充実しているということだろうか。
そんな取り留めもない事を考えながら今日の分のアニメのノルマを消化していく。
相も変わらず、前世と全く同じで俺THUEEEEEモノやハーレムものばかり視聴している。
実際のところ前者の方は叶っており、後者の方はただ羨ましいと思うだけで叶えたいと思うことは全く無いのだ。
実際にそうなったら今でさえ大変なのに日々を生きていくのに心労が絶え無さそうだから。それどころか増えそうなのだから。無尽蔵に、ただ増殖していくような気がしてならない。
だからこうして現実と2次元を区別して見ているだけで充分なのだ。
だが最近、現実と2次元の区別が曖昧に感じてきているかのように思い始めてきた。
ここは、この世界は前世ではアニメの世界で、2次元の世界だった。だが今、俺はその世界に来て、それが現実になっている。俺は2次元の世界に来たのか、それに限りなく近い現実の、3次元である並行世界に来たのかわからなくなる時が本当にあるのだ。
転生時に並行世界の一種である異世界だと説明は受けた筈なのに、だ。
「ま、いっか」
そんな堂々巡りではないが意味の無いであろう考えを振振り切り俺は朝食の準備を、弁当の準備に取り掛かることにした。
「こんなものかな」
出来上がったものをちょっとずつ取り上げて弁当にチョコチョコと入れていく。勿論色映えなどを考えながらだ。食べる時に蓋を開けて、気持ちの良い気分で食べたいのだから当然であろう。
「続きだ」
自室へと赴き、スリープモードにしていたパソコンを再び触る。
次に観るのはアニメでは無くてMADなどが投稿されている動画サイトだ。このサイトにはアニメなどのMAD以外にも音楽などが投稿されている。中には権利者の申し立てなどで削除されたりする動画、違法に挙げられた動画なども存在しているが基本的は面白可笑しく楽しむためのサイトなのだ。中でもこのサイトには動画視聴中にコメントを投稿することが出来て、そのコメントが動画内で流れるという画期的な技術が存在している。これを始めてみた時は驚くと同時に感動を覚えたものだ。
前世でも似たようなサイトはあったが此処までそっくりなものは見たことが無かった。
だからその分感動をより強く感じることが出来た。
「さてと、そろそろ登校かな」
パソコンに内蔵されている時計を確認すると7時過ぎと表示されており、俺はランドセルに今日の教科の分の教科書やノート、勿論筆記用具に先程準備した弁当を入れる。
腕にデバイスを装着して、変身魔法で周りには気付かれないように。
真・四身の拳で分身をつくりだして、それぞれの役割を確認する。
「さて、行くとしますか」
時刻は7時25分。歩いて行けばバスがタイミングよく来る時間帯だ。
「いい加減にしなさいよ!!」
穏やかで賑わっていた教室の中で一際大きな怒声が鳴り響く。
それまで盛り上がっていた生徒たちは何事かと思いその原因の方を向くもそれも一時的なもので結局は再び元の盛り上がりを取り戻していく。
「この間から何話しても上の空でボーっとして」
だがそんな中でも変わらずに御立腹な人物が一人居た。大声を出した張本人である少女は親友である1人の少女の態度に腹を立てているのだ。
「あ……ぅ……。ごめんね、アリサちゃん」
「ゴメンじゃない。あたし達と話してるのがそんなに退屈なら1人でいくらでもボーっとしてなさいよ」
相当頭にきているのかアリサは言葉をぶつけ終えると教室から立ち去る。彼女の歩く様はまるで床を揺らすように力強く、その怒り様が伝わってくる。
「なのはちゃん……」
「いいよすずかちゃん、今のはなのはが悪かったから」
横で2人を見つめ心配しているすずかに対してなのはは力無く微笑む。
「そんなこと無いと思うけど。取り敢えずアリサちゃんも言い過ぎだよ。少し話してくるね」
そう言うとアリサを追いかけて教室から出て行くすずかに、先に出て行ったアリサに対してなのははごめんねと謝ることしか出来なかった。
「怒らせちゃったな」
「――そうだな」
俺と雄介はそんな申し訳無さそうにしている彼女に、怒っているアリサに、その2人の間でどうすればいいのか悩みアタフタとしているすずかに対してどうするべきなのか頭で考えていた。
『此処は励ますべきなのだろうか、放っておくべきなのだろうか』
『放っておいても問題は無いだろう。時間が解決…いや、自身で気付いて何とかするだろうし』
前世で見たアニメの展開ではそれぞれがそれそれぞれの考えで、自分で気づいて解決していた。
だが、この世界ではそのように上手くいくのか、良い方向に事が運ぶのかどうか非常に心配なところなのだ。
「何で、アリサは怒ったと思う?」
「心配かけているのは分かってるけど、今やってることをアリサちゃん達には話せないし……」
ゆっくりとした感じで雄介はなのはに問いかける。
その質問は何処か自身で悟らせるかのように優しく、穏やかな感じの声をしていた。
「ここは幼馴染みに任せるか。ホワブロンはクールに去るぜ」
そんな捨て台詞を吐きながら俺は教室という喧騒の中から抜け出し、アリサ達がどうしているのか見に行くことにした。
「アリサちゃん」
先に出ていたアリサに追いつき声をかけるすずか。
そこは1階と2階を繋ぐ階段で他の生徒の姿は見受けられずとても静かな場所だ。
「何よ?」
その応えたアリサの声は如何にも不機嫌ですと言わんばかりに低かった。
「何で怒ってるのかなんとなくわかるけど駄目だよ。あんまり怒っちゃ」
そんな彼女に臆すること無くすずかは宥めるようにアリサに向かい会話を投げかける。
「だってムカつくわ。悩んでるの見え見えじゃない……迷ってるの、困ってるの見え見えじゃない。なのに……何度聞いても私達に何も教えてくれない」
「…………」
すずかはその言い分には同じ気持を抱いているのか止めることも否定することも出来ない。
「悩んでも、迷ってもいないなんて嘘じゃん」
「どんなに仲良しの友達でも言えない事ってあるよ。なのはちゃんが秘密にしたいことだったら私達は待っててあげるしか出来ないじゃないかな?」
その2人の言葉は、瞳は真剣にもう一人の友達の事を、なのはの想っていることを現していた。
「だから、それがムカつくの。少しは役に立ってあげたいのよ」
自覚をしている分、しているからこそだろうか。アリサは大事な友達が悩み、苦悩しているのを見ているだけなのだが力になれず無力であることが歯痒く、とても悔しく、やるせないのだろう。
「どんなことだって良いんだから。何も出来ないかもしれないけど、少なくとも一緒に悩んであげられるじゃない」
「うん。やっぱりアリサちゃんもなのはちゃんの事が好きなんだね」
「そんなの当たり前じゃないの」
照れながらも全力で肯定するアリサにすずかは優しく微笑んだ。
そんな様子を俺は遠くから見つめている。ひっそりと、物陰に隠れて彼女達の事を伺っていた。
「(優しい娘達だ。本当に恵まれているな、なのはは)」
俺は足音を立てないように気付かれないように気配を殺しながらゆっくりとまたその場を後にした。
「あの娘が居たからわたしは独りぼっちじゃ無くなったんだ」
揺れる風の中、屋上でアリサとすずかは街を見下ろしながら少し前の事を、2年前の出来事を思い出す。
「――そうだね。わたしもだよ」
少し前、というが彼女達にはそれがそれなりに昔の事のように思えてしまっていた。
「なのはちゃんが居たからわたし達友達になれたんだよね」
終了のチャイムが鳴り渡る。今日の授業は終わり特にこれといって用事の無い生徒は帰宅をする時間だ。
「じゃ、なのはちゃん。ごめんね。今日はわたし達お稽古の日だから」
「夜遅く迄なんだよね? 行ってらっしゃい。頑張ってね」
教科書とノートを鞄に入れながら激励の言葉を述べるなのはを教室に残してアリサは廊下を歩く。
「大丈夫だからね」
「うん。ありがとうすずかちゃん」
そんなアリサの後ろ姿を見ながらすずかはなのはに優しく声を掛ける。
その言葉は何に対してなのだろうか。なのはが悩んでいることを話さなくても良いということなのか。アリサは実はそれほど怒っているというわけではないということだろうか。直ぐに仲直りが出来るということだろうか。
なのははただそんなすずかの言葉に感謝の意を表すことしか出来なかった。
その帰り道はとても寂しく、暗いものだった。
落ち込んでいるなのはを志蓮は励まそうとするが効果は無く、自分の世界に閉じこもるなのは。
『で、どうするんだ? 雄介?』
『結局放置することにしたよ。自身で気づいて欲しいし』
そんな事を考えているとなのはは何時もの帰り道から逸れて別の方向へと向かっていく。
「(大方、今の顔を見られたくないから寄り道しようとでも思ってるんだろうな)」
そんななのはの背中はとても寂しそうであり、消えそうな気がした。
俺達は彼女を放っておくことが出来ない。だが何かをしてやれるという訳でも無く、ただ付いて行くことしか出来なかった。
塾へと向かう車の中でアリサとすずかは静かに、それぞれ窓際に座っていた。
外は車の排気音や人の声などで騒がしいが中はお互いに黙っているからかとても静かだ。
「初めて会った頃はさ……わたし、今よりずっと気が弱くて思ったこと全然言えなくて。誰に何を言われても反応出来なくて……」
暫く続いていた沈黙に耐えかねたのかそれを破りすずかは独白する。
「わたしは我ながら最低な娘だったけね。自信家で、ワガママで、強がりで。だからクラスメイトをからかってバカにしてた。心が弱かったからね」
そんなすずかにアリサもまた自らの過去のことを述べる。
「わたしも弱かったからちゃんと言えなかった。それはすごく大切な物だから返してって」
「止めなよって言われても聞かなかった。他人の言う事素直に聞いたら何かに負けちゃう気がしてたから」
過去の自分を認めながらもそれを否定せずに過ちを認める。そんな難しくも当たり前の事をしながら初めて出会った時の事を思い出す。
「あの時なのはちゃん、何て言ったんだっけ?」
「痛い? でも大事な物を取られちゃった人の心はもっともっと痛いんだよ」
「そうだったね」
「(アリサちゃんとはその後大喧嘩になったけ…それを止めてくれたのが)」
「事の発端の酷く大人しい娘」
「あの時は……だって必死だったんだよ」
その事を思い出して恥ずかしがりながら特に否定することもなく俯くすずか。
「それから少しづつ話をするようになって行ったんだっけね」
「そう。3人、ううん。なのはちゃんの幼馴染みの雄介くんとも友達になって志蓮くんが盛り上げてくれて。ブロンくんが転校してきて」
「で、すずかはそんな昔話を切っ掛けにわたしに一体どうさせたい訳?」
「理解ってる癖に」
「わたし達に心配させたくないだけだってくらいわかってるわよ。多分わたし達じゃあの娘の助けにならないって事も。待っててあげるしか出来ないなら……じゃあ、私はずっと怒りながら待ってる。気持ちを分け合えない寂しさと親友の力になれない自分に」
「意地っ張り」
「フンだ」
アリサの瞳には決意が満ちていた。大事な友を待ち続ける事、自ら明かしてくれることを信じ待つという決意が。
とあるビルの一室。
陽も沈みかけ太陽の光が部屋に差し込んでくる。
「ううん、こっちの世界の食事もなかなか悪くないよね」
アルフはそう言いながら皿からスプーンで口に入れていく。
「それは良かった。だが、ヒトの形態でいるのならドッグフードを食べるのは止めろ」
そんなドゥームの言葉は聞こえていないのかアルフは尻尾を大きく振りながら食事に勤しみ続けている。
「さて、家のお姫様はっと」
自身の主であるフェイトの居る部屋へと向かうアルフ。
食べ物に満足したからかその足取りは軽い。
「ああっ! また食べてない。駄目だよ、食べなきゃ」
「少しだけど食べたよ」
そのフェイトが横になっているベッドの側には殆ど手が付けられていないであろう食事が置かれていた。
「大丈夫。……そろそろ行こうか。次のジュエルシードも大まかな位置特定は済んでるし。あんまり母さんを待たせたくないし」
「それはわかるが飯はちゃんと食べろ。広域探索の魔法は身体に与える負担が大きい。この世界には腹が減っては戦ができぬという諺というものがあるらしいしな」
「大丈夫だから」
「リニスが居たら何て言うだろうな?」
「大丈――」
「…………」
そんなドゥームの言葉に、無言の圧力に耐えかねたのかフェイトは渋々といった感じにスプーンを手に取り食事を口にする。
すると余程お腹が空いていたのか小さな可愛らしい音が部屋に鳴り響く。
「…………」
赤面しながらもフェイトは夢中になって食事を摂っていた。
「そろそろ帰らないと」
「大丈夫だよ、僕が残ってもう少し探しておくから」
門限なのかなのはネオンが光る街の中でジュエルシードの探索を中止することにした。
「うん。ユーノくん1人で大丈夫?」
「平気。だから晩御飯取っといてね」
「俺も一緒に探そう」
動物体であるユーノ。彼は遺跡の調査などで探すことは得意な方かもしれないが身体は小さい為に苦労することが多いだろう。
その分、俺が力を貸すことでジュエルシード探しが楽になるのならば嬉しい。
幸い、俺の家は俺の分身体しか居ないので遅くなろうが何の問題もないのだ。
「だが、もう1人居てくれれば更に楽になるのだが……」
「ここにいるぞぉ!」
そんなワザとらしい俺の言葉に雄介はのってくれて、一緒に探すことになった。
高層ビルの屋上。少年と少女、そして一匹の計3つの影が降り立つ。
「だいたいこの辺りだと思うんだけど。大まかな位置しかわからないんだ」
「確かにこれだけゴミゴミしてると探すのも一苦労だね」
そんなフェイトの言葉に同調しウンウンと頷くアルフ。
「ちょっと乱暴だけどこの辺に魔力流を打ち込んで強制発動させるよ」
「ああ待った。それあたしがやる」
今にも魔力を流しそうな主人を制してアルフは自らが前に出る。
「大丈夫? 結構疲れるよ」
「このわたしを一体誰の使い魔だと?」
その言葉はアルフが主の実力を知っており、その使い魔であることを誇りに思っているからかとても強く、同時に頼もしいとフェイトは感じた。
「じゃあお願い」
「そんじゃ」
その了承の言葉と同時に彼女の獣の体から大きな魔力が迸る。放たれた魔力は天へ昇り、月は雲に隠される。
遥か上空、雲の上では更に上に存在している雲から雷がゴロゴロと鳴り響き地上に落ちる。
「こんな街中で強制発動!?」
なのはと別れるとほぼ同時にその魔力を感じる。
「ユーノ、結界を」
「わかってる。間に合えっ!!」
「レイジングハート、お願い」
魔力の波動を感じ、なのははバリアジャケットを展開する。彼女の服は分解され、白を基調とした防護服へ変更された。
「見つけた」
「けど、あっちも近くに居るみたいだね」
なのはの魔力を感じ取りそちらの方を見据える。
「速く片付けよう。バルディッシュ」
【Sealing form Set up】
「あ!」
なのはの目の前にはジュエルシードから放たれている魔力が、光が見えていた。
『なのは、発動したジュエルシードが見える?』
『うん。すぐ近くだよ』
『あの娘達もも近くに居るんだ。あの娘達より先に封印して』
『うん、わかった』
それぞれのデバイスから放出される魔法がジュエルシードに命中する。
「リリカル、マジカル」
「ジュエルシード、シリアルⅩⅣ」
「封っ」
「印っ!!!」
ジュエルシードの封印は瞬間的なものとはいえ、それは同時に行われた。
封印された青い宝石は光を放ちながら空中に浮遊している。
「(アリサちゃんとすずかちゃんとも初めて会った時は友達じゃなかった。話を出来なかったから、分かり合えなかったから。アリサちゃんに怒られてのもわたしが本当の気持ちを、思っていることを言えなかったから)」
「やった。なのは、速く確保を」
「――そうはさせるかいっ!!」
駆けつけたユーノに対してアルフは勢い良く飛び掛かる。
だが、張られたフィールド系の防御魔法に跳ね飛ばされる。
その魔法は解除されるとなのはの目の前には黒の魔法少女であるフェイト・テスタロッサが居た。
ジュエルシードを挟みながらお互いを見つめ合い、瞳の中にそれぞれを映し出している。
「(目的がある同士だからぶつかり合うのは仕方ないのかもしれない。――だけど、知りたいんだ)……この間は自己紹介出来なかったけどわたしなのは。高町なのは。私立聖祥大学付属小学校3年生」
【Scythe form Set up】
自己紹介をするなのはに対してただ武器をもって応えるフェイト。
それに対してなのははレイジングハートを構える。
「(どうしてそんなに寂しい瞳をしてるのか)」
構えるなのはにフェイトは手にしたバルディッシュを振りかざす。
【Flash move】
その攻撃を躱して後ろを取るなのは。
彼女の瞳には何か、強いモノが感じられた。
【Divine shooter】
【“Defenser”】
レイジングハートから放たれた攻撃を逸らして回避するフェイト。
「フェイトちゃんっ!!」
「!?」
そのなのはの言葉は不思議とビルの間を駆け抜け強く反響しているように感じられる。
「話しあうだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらないって言ってたけど話さないと、言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ。ぶつかり合ったり競い合ったりするのは仕方が無いのかもしれないけど…だけど何も分からないままぶつかり合うのはわたし、嫌だっ!!」
過去の経験からかなのはは心の底から思いの丈をぶつけて言く。
最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に思いをぶつけていく。
「わたしがジュエルシードを集めるのは、それがユーノくんの探しものだから。ジュエルシードを見付けたのはユーノくんで、ユーノくんが元通りに集め直さないといけないから。わたしはそのお手伝いで。だけど…そのお手伝いをするのは偶然だったけど今は自分の意思でジュエルシードを集めてる。自分の暮らしている街や自分の周りの人達に危険が降りかかったら嫌だから。これがわたしの理由」
「……わたしは」
そんななのはの真っ直ぐで真摯で真っ直ぐな想いに突き動かされたのかフェイトは自らの理由を述べようとするが。
「フェイト、応えなくて良い」
「「!?」」
「優しくしてくれる人達のとこでヌクヌクと甘ったれて過ごしているガキンチョになんか何も教えなくていい」
「え?」
「わたし達の最優先事項はジュエルシードの捕獲だよ」
そんなアルフの言葉にフェイトは本来の目的を思い出し、ジュエルシードに目を向ける。
封印されたジュエルシードへと向かいそれぞれのフェイトは飛んで行く。
なのはは一歩遅れてその彼女を追いかけた。
同時だ。同時にお互いのデバイスがぶつかり合う。それぞれのデバイスにヒビが入り砕け散った。
そこからそのデバイスに流れる魔力に反応したのか。それともただ打つかった衝撃の所為なのか。
ジュエルシードは大きく脈打ち暴走する。
「…………」
お互い見つめ合いながら微動だにしない俺達転生者組。
「この前ぶりだな、ドゥーム」
「ああ」
「え? 何? 名前知ってるの?」
それぞれ名前を呼び合う俺達を見て雄介は首を傾げる。
「で、どうする? やるか?」
構えた俺を見て、目の前の少年は少し後退りするも直ぐに立て直す。
よっぽど全開の戦闘で力の差というものを実感したのだろう。
「なあ、今回こそ俺にやらせてくれよ」
そこに志蓮が言葉を投げかけてくる。
俺は特に気にすることもなく、ただただ自然にドゥームの相手を志蓮に譲った。
「さてと、この前は何も出来なかったけど俺はそこのトカゲ野郎とは違う。来いよモノマネ野郎」
「そこのサイヤ人以外には負ける気は毛頭ない。来いよ金ピカ」
トカゲ野郎という言葉に怒っている雄介を無視しながら彼等はお互いに挑発しながら様子を見ている。
それぞれ実際のところは初めて戦うのだ。警戒するに越したことは無い。
両者に緊張が走る。
だが、いざ戦おうとするとそこにジュエルシードの大きな魔力の波動を感じ取った。
「ちぇっ、横槍かよ」
「また駄目だった」
「なのは達の方だな」
「きゃあああああっ!!!?」
「くぅ!?」
暴走しているジュエルシードから強烈な衝撃波が発生する。その大きく凶暴な風になのはとフェイトは吹き飛ばされてしまう。
「すずか、どうしたの?」
「ううん、なんでも」
月明かりの下、用事である習い事を済ませたアリサとすずかは迎えの車に乗ろうとしていた。
「もうお腹減ったよ。速く帰ろう」
「あ、うん」
月は今にも雲で隠れようとしていた。
何時もよりも速く描き上げることが出来た。
毎回この調子なら良いんだけどな