「ストップだ! 此処での戦闘行動は危険過ぎる」
彼等は俺達の目の前に、なのはとフェイトの間に突然現れた。
だが、それは転移時に発生する魔力を感じ取ることが出来なければそう感じるだけなのだが。
「時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ」
バリアジャケットだろうか。黒い服を着た少年クロノ・ハラオウンはなのはの方を、もう一人の少年の方はフェイトの方を抑えている。
もう一人の少年。名前の方は分からないが、彼は何処か異質めいたものを感じさせた。それは原作に登場していない人物だからなのだろうか。それともその彼の放つ存在感によるモノなのだろうか。
「詳しい事情を聞かせて貰おうか。先ずは2人とも武器を引くんだ」
そのクロノ・ハラオウンの言葉によりなのはとフェイトの2人は大人しく地上の方へと降下していく。
「このまま戦闘行為を続けるなら――っ!!」
着地をした瞬間、そんな彼等の方へと魔力弾が飛んで行く。
クロノ・ハラオウンはこのような事に慣れているのかそれに対して落ち着いた感じでProtectionだろうか防御魔法を発動させる。
そのおかげか後ろに居たなのはには何の被害もなかった。
だがフェイトはその隙に、防御の際に発生した土埃と爆発に紛れ彼等管理局員から大きく距離を取る。
「撤退するぞ、フェイト」
予想通りというか何と言うか、攻撃をしたのはフェイトの使い魔であるアルフと兄であるドゥームの2人だった。
2回目の攻撃時、フェイトは未だに空中に浮かんでいるジュエルシードへと手を伸ばす。
だが、それを目にしたクロノ・ハラオウンは彼女に向かい攻撃をする。
その魔力弾は見事に命中し、フェイトは受け身を取ることが出来ず落ちていくが何とかアルフが受け止める。
「っう……」
その攻撃はクリティカルヒットしていたのか彼女は苦しそうにしている。
再び彼の、クロノ・ハラオウンの杖に魔力が集中する。
「駄目! 撃たないで」
そんな彼の目の前になのはは思わずフェイトを、彼女を庇う形で前に出る。
「撤退だ」
そんなドゥームの言葉にアルフは怪我をしたフェイトを背負いその場から離脱していく。
其処には封印処理がなされ浮かんでいる青い宝石と4人の魔導師と1匹の小動物だけが取り残された。
「戦闘行動は停止。捜索者の一方は逃走」
「追跡は?」
「多重転移で逃走しています。追いきれませんね」
「そう」
アースラ内にて一連の行動は監視されていた。
監視、覗いていたというのは些か言葉に語弊があるかもしれない。何か起きた時の為に様子を見ていたと言った方が彼らにとっては良いだろう。
「ま、戦闘行動は迅速に停止。ロストロギアの確保も終了。良しとしましょう。事情も色々聞けそうですしね」
《クロノ、お疲れ様》
「すみません。片方は逃がしてしまいました」
突如、何もない空間にモニターのようなモノが出現、それに女性の顔が映し出された。
その女性は自分の失態だと謝罪してくるクロノに対して優しい言葉をかける。
《ううん。まあ、大丈夫よ。でね、ちょっと話を聞きたいからそっちの子達をアースラに案内してくれるかしら》
「了解です。直ぐに戻ります」
『どうするんだ?』
『どうするもこうするも、今は大人しくするさ。下手に動いて問題を起こしたくは無いからな』
雄介、志蓮の2人に俺の考えを念話に乗せて伝える。
その言葉に2人は快く承諾してくれた。予め相談して決めていたことだ。これはあくまで確認という行動なだけなのだから。
クロノ・ハラオウン執務官と共に俺達は転移魔法でアースラの中に移動した。
そこは見たこともないような機械的な、それでいて神秘的な空間で、先程まで居た公園とのギャップにただただ驚くことしか出来ない。
『ユーノくん、此処って一体?』
『時空管理局の“次元航行船”の中だね。えっと簡単に言うと幾つもある次元世界を自由に移動するその為の船』
『……あ、あんま簡単じゃないかも』
『ええとね……なのはが暮らしている世界の他にも幾つもの世界があって僕達の世界もその1つでその狭間を渡るのがこの船で。それぞれの世界に干渉しあうような出来事を管理しているのが彼等時空管理局なの』
『そうなんだ』
「すげーな、まるでSFだぜ」
「写真撮っとこうぜ」
ユーノがなのはに説明を受けている間、俺達は面白可笑しく笑いながら携帯電話のカメラ機能を使用して写真を撮っていく。その様子は見るもの全てが新鮮に見えて、所構わずはしゃぎまわる観光客のようだった。
「ああ、何時迄もその格好というのも窮屈だろう。バリアジャケットとデバイスは解除して平気だよ」
「あ、そっか――そうですね。それじゃ」
そのクロノ・ハラオウン執務官の言葉でバリアジャケットを解除、レイジングハートを待機状態へと戻すなのは。
「君も、君達も元の姿に戻っても良いんじゃないか?」
「ああ、そう言えばそうですね。ずっとこの姿で居たから忘れてました」
不思議そうにしているなのはを余所にユーノはフェレットの状態からヒトへと戻る。その姿はハッキリと言うと女の子のようで、中性的な感じがする。
「なのはにこの姿を見せるのは久しぶりになるのかな?」
そう言いながらなのはの方へと目を向けると彼女は壊れかけのラジオの様に、ロボットの様にカクカクとした感じになっていた。
「ふええええええええええええええええっ!!!!???」
その彼女の驚いた声は大きく、アースラ全体に響いいているかのような錯覚を与え、そう感じさせた。
「なのは?」
「ユーノくんって、ユーノくんって――あの、その……何? ああ、ええっと、だって……嘘? ええええええ?」
「君たちの間で見解の相違でも?」
そんなやり取りを見てクロノ・ハラオウンは思わず、質問を投げかける。
「な、なのは。僕達が最初に出会った時って僕はこの姿じゃ?」
「違う違う、最初っからフェレットだったよ~」
「ううん? あああっ! あ、あ、あ、そうだそうだ。ごめんごめん。この姿は見せてなかった」
少しばかり頭に手をやり、記憶の中に潜っていくユーノ。直ぐに自分が見せていなかったことに気が付く。
「だよね、そうだよね。ビックリした」
「こっちがお前の声の大きさにビックリだよ」
「何か言った。ブロンくん?」
「別に……」
思わず俺は口にしてしまった言葉をなのはに聞かれ、それを否定する。
誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟いたつもりだったのだが、彼女には聞こえたらしい。
「被告人、ユーノ・スクライア」
「え? え?」
突然、雄介と志蓮は裁判だろうか、裁判官の真似をし始める。
茶番が始まったのだろう。
「君はなのはに自分がヒトだということを話していなかった。もしくは教えていなかった。これに間違いは無いかね?」
「――は、はいっ」
その低い声に、強烈なプレッシャーにユーノは思わず返事をしてしまう。
「ジャッジ、判決を言い渡す。……ギルティ。有罪だ」
「な、何で?」
「風呂や温泉に一緒に入ったり、なのはが着替えるのを覗いたりしていたからだ。ウラヤマシイ」
最後のほうでかなり私怨な理由だという事を察する事が出来る言葉を放つ雄介と志蓮。
だが、そこで俺にも火の粉が降りかかる。
「温泉での一件ならブロンも一緒だったよっ!」
「ダニィ!? それは本当か? ブロン被告人?」
「一緒に入ろうと言われたんだ。お前らだったら断れるか?」
「そ、それは……」
そんなどうでも良いやり取りをなのはとクロノ・ハラオウン、そしてもう一人の少年は白い目で俺達を見ていた。
「コホン……で、君は変身魔法を解かないのか?」
そのクロノ・ハラオウンの質問に俺は思わず黙りこんでしまう。
今此処で変身を解除すると俺が
そうなるとどうなるのだろうか。
管理局上層部に情報が行く。何処かでその情報が“聖王教会”に漏れる。
どのような事になろうと面倒臭い事に変わりはない。
「しゅ、宗教上の問題で――変身魔法を解除することは」
「――そうか、わかった」
苦しい。とても苦しい言い訳だ。苦し紛れに出てきたその場から一時的にしか出来ない逃走手段だ。
だが、彼は深くは追求してくることは無く、何とか窮地を脱出することが出来た。
そんなクロノ・ハラオウンとは違い、もう1人の彼は俺のことを見ている。その目付きは鋭く、睨んでいるかのように感じられた。
「…………」
「艦長を待たせているので出来れば早目に話を聞きたいんだが」
「あ、はい」
「すみません」
「艦長、来てもらいました」
扉が開き、中を覗く。
すると其処はまた違った意味で別世界が広がっていた。
盆栽、茶道で用いると思われる道具一式、ししおどしなどなどetc………。
和という和、日本の文化とイメージを集めたと言わんばかりの状態だ。
例えるのならばそう、日本の事を間違った形で知ってしまった外国人の様な感じだ。まあ、間違った形でなどと言うが、正しいというのは一体何なのか、どうなのだと聞かれても答えることは出来ないのだが。
「お疲れ様。まあ、4人ともどうぞどうぞ楽にして」
その目の前の女性の笑顔に対して俺達はただ呆然とする事しか出来なかった。
「どうぞ」
「あ、はい……」
差し出された和菓子、羊羹と緑茶を受け取る。
「なるほど。そうですか……あのロストロギア。いえ、ジュエルシードを発掘したのは貴方だったんですね」
「それで僕が回収しようと」
「立派だわ」
「だけど、同時に無謀でもある」
その管理局員の言葉はユーノに対する賞賛と、それと同時に無茶をするなという意味に聞こえた。
「…………」
ユーノはただ黙ってその言葉を聞くことしか出来なかった。その行動の意味、重さを理解しているからこそだろう。
「あの、ロストロギアって何ですか?」
「ああ、遺失世界の遺産って言っても分からないわね。えっと……次元空間の中には幾つもの世界があるの。それぞれに生まれ育っていく世界。その中に極稀に進化しすぎる世界があるの。技術や科学……進化しすぎたそれらが自分達の世界を滅ぼしてしまって。その跡に取り残された失われた世界の危険な技術の遺産」
「それらを総称してロストロギアと呼ぶ。使用法は不明だが使いようによっては世界どころか次元空間さえ滅ぼす力を持つ事もある危険な技術」
なのはのその疑問に丁寧に、分かりやすく噛み砕きながら説明をしてくれる2人の局員。
ブラックテクノロジーだとか、オーパーツだとかそいういったものも含まれると考えてもいいのかもしれない。
というよりも、あらかじめユーノから聴いていた筈なのだが。
「然るべき手続きを以って然るべき場所に保管されていなければいけない品物。貴方達が探しているロストロギア、ジュエルシードは次元干渉型のエネルギー結晶体。幾つか集め特定の方法で起動させれば空間内に次元震を起こし、最悪の場合“次元断層”さえ巻き起こす危険物」
然るべき手続きに然るべき場所。言葉にするのは実に簡単で使い勝手の良いモノだろう。
だが、それは一体何処に存在し、どのような手続きで、それらを一体誰が許可するというのだろうか。
時空管理局という名称からそれらの危険物を管理したりするのだろう。
だけどそのことから考えるに然るべき場所というのは管理局で、然るべき手続きというのは管理局を通して、という解釈しか出来ない。
相手側に対して失礼なことなのかもしれないが、それは余りにも傲慢すぎるのではないのだろうか。
こういった考え事態が傲慢でエゴなのかもしれないが、自分にはその様に思うことしか出来ず、その気持ちを抱えたまま話を聞いていた。
「君とあの黒衣の魔導師が打つかった時に発生した振動と爆発。あれが次元震だよ」
そのクロノ・ハラオウンの言葉になのはは街での戦闘を、レイジングハートとバルディッシュがぶつかり合った時の事を思い出す。
「たった1つのジュエルシードの全威力の何万分の一の発動でもあれだけの影響があるんだ。複数個集まって動かした時の影響は計り知れない」
「聞いたことあります。“旧暦”の462年。次元断層が起こった時のこと」
「ああ。あれは酷いものだった……」
「……隣接する平行世界が幾つも崩壊した。歴史に残る悲劇」
どれくらいの大きさの次元震なのか。どれほど沢山の世界が崩壊し、滅んでいったのか。それらは実際のところ良くは分かってはいない。
だが、語り継がれていくほどの出来事だった。それだけ酷いモノだったということだけは話を聞いていて理解することが出来た。
「繰り返しちゃいけないわ」
そいう言いながら女性は緑茶の中に砂糖を大さじ一杯入れ、それを飲む。
「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収については時空管理局が全件を持ちます」
「「え?」」
「君達は今回のことは忘れてそれぞれの世界に戻って元通りに暮らすと良い」
「でも……そんな」
「次元干渉に係る事件だ。民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」
「でも――」
「まあ、急に言われても気持ちの整理もつかないでしょう。今夜一晩ゆっくり考えて皆で話し合ってそれから改めてお話をしましょう」
善意で言っているのだろう。
だが、精神年齢によるモノか、中途半端に知識や知恵といったモノを持っている所為なのか。前世で読んだ二次創作の解釈による影響を受けているからなのかどうしても彼等の事を疑ってしまう。何か裏があるのではないかと訝しんでしまう。
純粋な気持ちで彼等の、彼女等の言葉を真摯に受け止めたいのだがそれが出来ない。
「送って行こう」
この部屋から、アースラから出ていこうとしたその時。相手側から、もう1人の管理局員である少年が声を掛けてきた。
「すまないが、少し話がある。其処の少女と少年以外は残ってくれ」
「ええっと……」
「先に帰ってくれ」
その心配そうな、不安気ななのはに対して俺達は先に帰れとしか言葉に出来なかった。
「自己紹介をしよう。俺の名前はゾイル――時空管理局執務官。この船の第2戦力。……そして転生者だ」
「やっぱりか……俺達が転生者だというのを理解しているからこそ話してきたのだろうけど、なんでこの2人が居るんだ?」
その場には先程なのはとユーノを送り届けたクロノ・ハラオウン執務官が。そしてこの船の、アースラの艦長であるリンディ・ハラオウン提督が居た。
「それは知っているからよ。彼が、そして貴方達が転生者であるということを」
その言葉に思わず出てきた唾を飲み込んでしまう。
話したというのだろうか。自ら転生者であるということを、自分にとってのこの世界のことを、前世での事を。
「安心しろ。記録なんかしていない」
「その言葉は信じるにしても、何故こんな事を」
「貴方達の放つ雰囲気があの娘達とは違っていた。そう感じたからと言うべきかしら」
「あのもう1組の捜索者の方にも転生者が居るんだろ?」
転生者だという事は既にバレてしまったのだからもうどうしようもない。大人しく、それでいて半信半疑で受け答えをしていくしか無いのだろう。
「さてな、それは自分達で確かめるべきだろう」
「そうだな。さて……原作通りの展開ならば今夜にでもあちらから、ユーノから連絡が来るだろう。手伝いたいってな」
「君達はどうなんだ?」
そのクロノ・ハラオウンの質問に俺は迷う事無く応える。
「YESだ、手伝う。だが、そちらの下につくわけではなく対等のボジション、立場で」
「俺も同じだ。なのはに負担を掛けるわけにはいかないからな」
「俺の嫁に格好良いところを見せたい。というか、もっと活躍したい」
「分かった。だけどお前達の実力が理解できなければ意味は無い。――そこで模擬戦だ」
「試合方式は1対1。どちらかが戦闘不能になるか、降参するかで決着」
「「「上等!!」」」
「だけど、君達は2人で俺達は3人だろ? どうするんだ?」
その雄介の言葉に俺と志蓮は頷く。
ゾイルは転生者だから何かしら強力な力を持っているのだろう。
だが、クロノ・ハラオウンの方はどうなのだろう。
歩くロストロギアとでもいうほどの力を持つ存在である転生者にどう対処するのか。対策があるとでも言うのだろうか。それだけの実力があるとでも言うのだろうか。
「何を言っている。1対3に決まっているだろう。ま、順番は決めてもらうが……いや、一斉に掛かって来ても良いんだぞ」
その彼の、ゾイルの言葉に沸点が低いのか雄介と志蓮の2人は声を荒げる。
「良い気になるなよ。あとでそこのチビすけに助けを求めるなんてしても駄目だからな」
「だ、誰がチビすけだ」
「そんな事は絶対に、絶対に……絶~~~~~~~~~~~~~~~っ対にしなあああああいィィ」
そんなゾイルの言葉には絶対に自信が含まれており、余裕というものを感じさせた。
《それでは上条雄介くんとゾイル執務官の模擬戦を始めたいと思います》
「…………」
「…………」
お互いに睨み合っている。
それぞれの持つ力を、実力をしらないのだから当然か。
互いの様子を見て、隙を伺っているのだから。
「――ッ!!」
先に動いたのは雄介の方だ。
「火竜の鉄拳ッ!!」
炎を纏わせた拳で殴りに行く。その速さは今までの比にならずかなりのスピードを出していた。
「ほう」
雄介の全体像をよく見てみると足元から炎が噴出している。ブースターの替わりにしているのだ。勢い良く出ている炎が推進力となり直線的に跳び、ゾイルの懐へと一瞬で到達する。
「喰らえ!!」
「フン。動きが愚直過ぎる、真っ直ぐ過ぎる。そんなんじゃ避けろと言っているものだぞ」
だがその攻撃はスルリと簡単に躱されてしまう。
「まだまだ――火竜の鉤爪ェッ!!」
ブースターの代わりにしていた足の炎をそのまま相手に向け、蹴り放つ。
「クッ」
その攻撃は予想外だったのか彼の、ゾイルの顔を掠めた。
「彼、炎熱の変換資質持ちなのかしら?」
――“魔力変換資質”。
魔力は炎や電気、凍結などといったものに変換をする事が出来る。
魔力をそういった他のものへと変換する事は学習によって習得をする事も可能である。それでも変換時にはいろいろと必要なのだが。
だが、極稀にそういったプロセスを踏まずに、意識をする事無く変換する事が出来る資質を持つ者が居るのだ。
今の俺達は別部屋に居り、モニターを通してその模擬戦の様子を観ている。
リンディさんは自身の知識内で推測を立て言葉を口にするが、俺はそれを否定する。
「いえ、違いますよ。彼奴が使うのは炎だけじゃない」
「彼奴は他にもいろいろな力がある」
「炎か。随分と熱いじゃないか」
「燃えてきただろ?」
「ああ、確かにな。グツグツに燃え滾ってきたぞ、俺の血が、血液が」
ゾイルはそいう言いながら自身の体から血管を出していく。
それは普段直接目にする事が無いものだ。身体の中にあり、常に脈打っている。
その血管が、赤黒い触手のようなものが体外に出て、それぞれ一本一本に意志があるかのようにウネウネと動いている。
グロテスクであり、気味が悪い。
モニターを通して観ているとはいえ、SAN値がガリガリと削れていきそうなものだ。
「な、何だそれ?」
「見ろよ。お前の言う通り燃えてきた所為か熱くて熱くて、俺の血は沸騰してるぜ」
その血管から血と思しきものが噴出している。だがそれは本当に血なのだろうか。その出ているモノから熱と思しきモノが発生しているのだ。
「何だよ、それ」
「――“
その血はまるで火山から吹き出ている溶岩の様にグツグツと煮えたぎり沸騰している。その熱で発生した蒸気により周りは歪んで見えてしまう。
「本来のこの力では血液を500℃までしか加温出来ないが、俺のこの力は――俺の血液は摂氏1000℃にまであげることが出来る……オリジナルの倍の熱さだ。俺の身体は丈夫でな、それに耐えることが出来る。お前はどうかな?」
「そんなもん飲み干してやる」
見栄を張り、強気な態度をとるのはいいのだが雄介は内心焦っていた。
焦るどころではない。勝てないのではないか。そう思い始めていた。
「(さて、どうしたものか……炎を食べる事は出来るけどグツグツに煮え滾った血液なんて食えるものじゃないし)」
「来ないのなら此方から行くぞ――“
針のように尖った先端を持っている血管を全身から突き出させて、回転するゾイル。
彼の身体から、血管から最低でも1000℃もの高温の血液が噴出する。その様子は外から観ているとまるでスプリンクラーの様だ。
だがそれは、実際には相手を死へと誘う炎の嵐なのだが。
「――危ねっ!」
飛んでくる血液、血飛沫をギリギリの所でなんとか避けていく雄介。
だが、その血液が当たった所は溶けて赤くなり、物凄い蒸気を出していた。
「(ブロンと修行してて良かったぜ……あんなモノに当たってたらどうなってたか。考えたくもないね)」
「ま、流石にこれは模擬戦だ。殺しはしないさ、殺しはな。だがな、思い切りはやらせてもらう」
「来るか?」
「
血管から出ている熱い血液だけじゃなく、彼の身体の周りに突如風が発生する。
「厄介だな……」
そんな雄介の額には大粒の汗が流れていた。
使ってみたい、欲しいと思ったことのある能力の多数が何故か集英社の、主にジャンプ系列の作品に出て来る不思議。