魔法少女リリカルなのはZ   作:りおんざーど

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明かされる真実   あれっ…俺は?

 ――かあさん。わたしのかあさん。何時も優しかったわたしのかあさん。わたしの名前を優しく呼んでくれた、かあさん。

 

 「ね、とても綺麗ね。アリシア」

 

 ――アリシア? 違うよ、かあさん。わたしはフェイトだよ。

 

 「さあ、いらっしゃい。アリシア。……ほら、可愛いわアリシア」

 

 ――ま、良いのかな。わたしは優しいかあさんが大好きだから。

 

 

 

 

 「戦闘開始みたいだね」

 「ああ」

 

 アースラのモニター室にてクロノ・ハラオウンとエイミィ・リエッタはサーチャーを通してなのはとフェイトの戦闘を観戦している。

 

 「しかし、ちょっと珍しいよね。クロノ君がこういうギャンブルを公認するなんて」

 「まあ、なのはが勝つに越した事はないけど……あの2人の勝負事態はどちらに転んでもあんまり関係ないからね」

 「なのはちゃんが戦闘で時間を稼いでくれてるうちにあの娘の帰還追跡の準備をしておくってね」

 「頼りにしてるんだから。逃さないでくれよ」

 「うん、任せとけってね」

 

 クロノはスプレー状のワックスでエイミィの後ろ髪を固め、櫛で梳かしていくが効果は無くハネてしまう。

 

 「でも……あの事、なのはちゃんに伝えなくて良いの? プレシア・テスタロッサの家族とあの事故の事」

 「勝ってくれるに越したことは無いんだ。今は……なのはを迷わせたくない」

 

 そう言うクロノの視線の先には空を舞いながら戦う2人の魔法少女の姿が映っていた。

 

 

 

 お互いのデバイスがぶつかり合い、その際に魔力による電撃が発生する。

 それも一時的なもので、即座に距離を取る2人。

 

 【Photon Lancer】

 

 宙返りをした後に周囲に電撃の塊である魔力弾を形成するフェイト。

 

 【“Divine Shooter”】

 

 なのはの方もまた魔力弾をつくりだす。

 

 その色は、それぞれの個性を表しており、なのはの方は桃色。フェイトの方は金色といった感じだ。

 

 「ファイア!!」

 「シュゥーート!!」

 

 お互いがお互いの“スフィア”に依る攻撃を回避する。

 

 障壁を張り、防御をしたフェイトの視線の先には再び攻撃の準備に取り掛かっていたなのはの姿があった。

 

 「シュゥーートッ!!」

 【Scythe Form】

 

 形成した魔力刃で桃色の魔力弾を切り裂いていくフェイト。

 

 【“Round Shield”】

 

 回避をしながら接近を試み、飛行するフェイトに対しなのはは防御の体勢に入る。金色の刃とピンク色の盾がぶつかり合い火花が散る。

 

 「…………」

 

 なのはは目を瞑り、残しておいた1つのスフィアを相手の背後に向かわせるがそれを察したのかフェイトは障壁を張る。スフィアは防御され、砕け散り光の泡となる。

 

 「?」

 

 防御をした際にそのスフィアの方に目を向けたか為かフェイトはなのはの姿を見失う。

 周囲を軽く見渡してみるが、その姿は目に入ってこない。

 

【“Flash Move”】

 「てええええい!!」

 「!」

 

 上だ。

 

 なのはによる上空からの攻撃に驚きはするもしっかりと防御をするフェイト。デバイスに魔力を込めている為か、大きな衝撃と魔力の激突による光が発生する。

 

 【Scythe Slash】

 

 バルディッシュに魔力をのせ切り裂くように攻撃をするも、なのはは足元に発生させた羽の様な形をした空を飛ぶ魔法であるFlier Finを自在に使い回避をする。

 だが、回避した先にはフェイトが仕掛けたであろうビリビリと電撃を纏った複数のスフィアが待ち受けていた。

 

 

 

 「始まったようだな」

 「さて、と。此方も始めようか。なあ……ドゥーム」

 「ああ」

 「相変わらず表情1つ変えねえのな、お前は」

 「そう言うお前は常に眉間に皺を寄せているな、トカゲ野郎」

 「殺るか?」

 「待てよ、俺にやらせてくれよ」

 

 なのはとフェイトの戦闘が始まると同時に俺達転生者組もまた一同に介し、睨み合っていた。

 だがドゥームの方からはやる気が、もとい戦る気というものが一切感じ取ることが出来ない。

 

 戦わずに済むという事だろうか。

 いや、そういう訳にはいかないだろう。

 

 「隠れてないで出て来いよ」

 「アラララららら、バレてしまいましたかあああ」

 

 俺の言葉に応えるかの様にして、公園の中に存在する木々の中から其奴は現れた。

 

 「!?」

 

 其れはヒトではない。

 ヒト型の姿をしているが地球人でも、ミッドチルダのヒトでも、その他の次元世界のヒトでも無い。

 其奴は蛇のような見た目をしている。身体全体には草が覆われているがところどころ見られる肌らしき場所には鱗のようなモノが。ずんぐりとしていて、背丈はだいたい180cmくらいといったところだろうか。縦に長い鼻をしており、目はやけに丸く、歯は細かくギザギザとした感じに細い。目と歯の両端に細長く鋭いヒゲが生えている。

 

 「使い魔!?」

 「始めまして。転生者の皆様、そして他世界の住人の皆様。私の名前は“アカマタ”。どうぞ、お見知り置きを」

 

 驚くユーノとアルフを、アースラから見ているクロノ達を余所に其奴、アカマタは口元を大きく歪めながら自己紹介をしてくる。

 その様はとても不気味で、この世の存在とは思えないモノの様に感じられる。

 

 「此奴は……使い魔なんてチャチなモンじゃねえ。……もっと得体の知れない」

 「ええ、ええ、ええ。私とそんな下等な存在を一緒にしてもらっては困ります。私は“外道衆”……“外道衆12呪皇”の1人、アカマタなのですから」

 「(外道衆……?)」

 「けっ、1人じゃなくて1匹じゃねえのかよ」

 「いちいち癪に障るサルどもだ。此れだから猿というものは……いやはや失礼。此度、挨拶をしようと思いましてね。その結晶体を、ジュエルシードを此方に渡して貰えないでしょうか?」

 

 俺達の背後に浮かんでいるジュエルシードを指差し、此方に寄越せと言い寄ってくるアカマタ。

 その口にはチロチロと長い紫色の舌が見え隠れしている。

 

 「それは無理だな。此れはある魔導師捕縛の為に必要なのだから」

 「ゾイル!?」

 「お前、何時の間に……」

 「渡す訳にはいかない。其の上にいろいろと聞かないといけないみたいだからなあ。倒させて貰うぞ。妖怪……」

 「待て、其奴は!!」

 「ええ、ええ、ええ。良いですよ。貴方が私を倒せるのであるのならば……ですがね」

 

 俺の制止しようとする言葉は無視され、アカマタのその言葉と同時に2人は目の前から消える。

 

 発生する衝撃波から、土埃から目の前で戦闘をしているであろうと云う事が辛うじて理解出来るだけだ。

 

 

 

 「な、なんなんだいあれは……」

 「わからねえ。でも、今は」

 「ジュエルシードを守り、あの2人の戦いの邪魔をさせない様にするだけだ」

 

 

 

 「遅い、遅い、遅いですよお。止まって見えますねえ」

 

 そう言いながらアカマタはゾイルに対して次々とパンチを連撃で喰らわせていく。其の度にゾイルの身体は大きくバウンドし、衝撃で吹き飛ばされる。

 

 「――ッ、これならどうだ? “キング・クリムゾン(深紅の王)”」

 

 その瞬間、世界は暗転する。

 

 「今、貴様が見たのは未来のお前自身だ。俺以外の時間は全て吹き飛ぶ……喰らえ」

 

 止まっている敵に対して、ゾイルは強烈な拳をお見舞いする。

 筈だった。筈だったのだ。

 だが。

 

 「未来の自分ですか……はて、見えませんねえ。私には」

 

 切り取られた筈の時間内で、そのスタンドを持つ者以外動けない筈の時間で其奴は見事に動いてみせた。

 ゾイルの拳を受け止め、お返しだと言わんばかりに軽く小突く。

 

 「――ッ!?」

 

 軽く小突かれただけの筈なのだが、それはゾイルにとってはかなりのダメージとなる。

 その付かれた場所から徐々に大きなダメージとなり、広がっていき、身体中から血液が零れ出る。

 

 「面白い身体をしていますねえ……。その血は何度位なんでしょうかあ。その傷もまた塞がるのが非常に速い。気になりますねえ……」

 「――ゾイル!? 全員でたたみ掛けるぞ!」

 

 その雄介の言葉に従い転生者組である俺を除いた転生者組が各々攻撃を仕掛けるも尽く躱されてしまう。

 ヒラリヒラリと避けられて次第に溜まっていく焦り。

 焦りと不安が蓄積されていく一方でその相手であるアカマタは涼し気な顔をしている。

 

 「火竜の咆哮!!!」

 「“ヴァルカンショックイグニション”!!!」

 「“魔術師の赤(マジシャンズレッド)”、“ハリケーンスペシャル”!!!」

 

 それぞれが持っている火属性の攻撃を放つ。

 龍の放つモノと同等の炎、空気中に存在する燃素(フロギストン)を操作して放つ火球、3000℃を誇る見えざる熱の塊。

 それらは見事に目の前の標的へと命中する。

 

 「Yes, I am!」

 「やったか?」

 「へい! フラグを建てるんじゃあねえぜ!!」

 

 当たった炎の攻撃が見る見るうちにその口の中に吸い込まれていく。あっという間にその火は消え果て、その場にはアカマタの姿があるだけだ。

 

 「此れは、此れは、此れはどうも有難う御座います。美味しかったですよ」

 「あ、あれだけの炎を美味しかったで済ますなんて……無理だ、勝てる訳が」

 「い、一体どうなってるって言うんだい。わたしには何が何かさっぱりだよ」

 

 なのはとフェイトの戦闘を観戦している筈が今は此方の戦闘の方が激化しており、激しく厳しいものになっている。

 

 彼女達が此方に気付き、目の前の此奴が彼女達の戦闘に気が付き、混戦になる事だけは避けたい。

 

 「そろそろ“水切れ”の様ですので、失礼致しますね。それでは皆様、また逢う時まで」

 

 その言葉を放つと同時に木々の間に出来た隙間の中に吸い込まれるように消えるアカマタ。

 

 残っているのはゾイルとアカマタの戦闘によってつくりだされた穴や薙ぎ倒された木。

 そして遠くから聞こえてくるなのはとフェイトの戦闘の音だけだった。

 

 《……終わったのか……?》

 「そのようだ……」

 「なのはとフェイトの方は…」

 《そっちはまだ続いてるよ。ってか、結界がボロボロだよ……崩壊寸前っ》

 「俺が補強する」

 

 先程の戦闘で崩れかけている結界を建て直すゾイル。

 

 不安定だった周囲の魔力が立ち直っていくが、ゾイルの方が逆に辛そうに顔を顰める。

 

 「さっきの野郎、とんでもねえ強さだった」

 「また逢う時まで……なんて言ってたな」

 

 不安な気持ちを抱えたままだが、なのはとフェイトの…2人の戦闘を見守る事にする俺達。

 

 臨海というだけあって潮の匂いが強烈で、俺の鼻をうった。

 

 

 

 

 「(初めて会った時は魔力が強いだけの素人だったのに、もう違う。速くて、強い……迷ってたらやられる)」

 

 お互いに睨み合い、呼吸が速くなる。疲労に因るものなのか、それとも相手の実力を知り焦っているからなのか。

 だが、どちらの目もまだ諦めてはおらず、強い光が宿っている。

 

 デバイスを構え直し、呼吸を、魔力を整える。

 

 「っ!」

 

 先に仕掛けたのはフェイトの方だ。

 

 彼女の足元に大きな魔法陣が展開される。

 

 【“Phalanx Shift”】

 

 なのはの周囲に金色の魔法陣が多数展開されたかと思うと、それらは全て消え、フェイトの周囲に多数の魔力弾が形成されていた。

 

 「――ッ!!」

 

 防御の準備に取り掛かろうとするが、手が何かに吸い寄せられ磔にされる。

 

 『“ライトニング・バインド”……まずい、フェイトは本気だ!』

 『なのは、今直ぐサポートを』

 「駄目ええええっ!!……アルフさんもユーノくんも手、出さないで。全力全開の一騎打ちだからわたしとフェイトちゃんの勝負だから!」

 『でも、フェイトのそれは本当に――』

 『其処までにしておけよ、アルフ』

 『その通りだ。横槍を入れるようなら俺達が相手になるぜ』

 

 焦るアルフとユーノに対し、なのははあくまでも一騎打ちだと言い張り、前を向く。

 それでも、と心配するアルフに対してドゥームと雄介は彼女を止めに入った。

 そんな彼等だが、服も身体もボロボロだ。

 それでも、彼達はアルフだけでなく平均的な魔導師では相手になる事すら無理な話だと言えるくらいに実力差が存在している。

 

 『…………』

 「平気。……ありがとうね」

 「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」

 

 フェイトの周りには膨大な数のスフィアが浮かんでいる。それら全てはバチバチと電撃を放ちながら浮遊している。

 

 『はぇ~、すっごい多い……』

 『フェイトの姿が見えない程の数かよ……』

 「フォトンランサー・ファランクスシフト。撃ち砕け、ファイアーッ!!!」

 

 無数の魔法弾がなのはへ向けて飛んで行く。

 

 38個のフォトンスフィアから毎秒7発のPhoton Lancerを斉射していくフェイト。

 

 『なのは!』

 『フェイト!』

 

 魔力の消耗が激しく、コントロールが難しい為かフェイトは大きく肩で息をしている。

 

 「…………」

 

 無数の魔法弾がぶつかり、発生した煙が晴れていく。少しずつ、少しずつ。

 

 『勝ったな……』

 『ああ』

 

 其処にはボロボロになりながらも健在ななのはの姿があった。バリアジャケットはボロボロになっているが其れ丈であり、目立った外傷は無い。

 

 まだ終わっていないようだ。

 

 「痛ったあ……撃ち終わるとバインドってのも解けちゃうんだね。今度はこっちの…」

 【Divine】

 「――番だよっ!!」

 【Buster】

 

 レイジングハートから桃色の光線が放たれる。

 フェイトの方も先程溜めておいた残りの魔力弾を一つに集め迎え撃つ。

 が、なのはの砲撃の方が強かったのか魔力弾は呑み込まれ、フェイトの方へと迫っていく。

 

 「!? ……っ。(直撃……でも耐え切る。あの娘だって耐えたんだから)」

 

 障壁を張り、全力での防御をするフェイト。

 彼女の視界には桃色の光が一杯に広がっている。

 普通ならば発狂したり、恐怖に潰されたりするであろうが、フェイトはそんな事を起こさず必死に防御魔法を発動している。

 砲撃が止み、障壁を解除する。

 バリアジャケットは所々破けており、先程の砲撃が強力なものだったという事を暗に語っている。

 

 「――!」

 

 上空に光が発生しているのに気が付くフェイト。

 

 なのはだ。

 

 空一面に桃色の魔力光が広がり、支配していた。

 

 『来るぞ……』

 『皆大好き』

 『SLB』

 「レイジングハートと考えた、知恵と戦術、最後の切り札……受けてみて、ディバインバスターのバリエーション!」

 【“Starlight Breaker”】

 

 周囲に光が発生し、なのはの元へと集められていく。魔法陣に出来た魔法弾は徐々に、確実に大きくなっていく。

 

 「クッ――!!」

 

 フェイトは防御魔法を発動しようとするもなのはのバインドに動きを封じられてしまう。

 

 「バインド!?」

 

 必死に足掻くも、其れ丈で、バインドが解除されそうにはない。

 

 「これが私の全力全開! スターライト……ブレイカアアァァーーーーーーー!!!!!!!」

 「う……うああぁぁぁっ!!」

 

 左手のバインドを何とか破り、魔法障壁を展開させるフェイト。

 だが、その5層ものシールドを尽くぶち破り、押しつぶすと言わんばかりにその巨大な桃色の光はフェイトへと向かい、直撃する。

 

 《な、なんつぅバカ魔力!》

 《うわ……フェイトちゃん生きてるかな?》

 

 モニターで観ていたクロノとエイミィもそのなのはの攻撃に口を開け、フェイトの心配をする事しか出来なかった。

 

 

 

 

 気絶し落ちていくフェイト。意識が無いからかバルディッシュを手から離し、海の中へと落ちていく。

 

 「!? フェイトちゃん!」

 「大丈夫だ」

 「えと……ドゥームさん……でしたっけ?」

 「ああ」

 

 落ちていくフェイトを拾い上げ、公園の中へと移動する3人。

 抱えられ移動する最中、フェイトは目を覚ました。

 

 「兄さん……」

 「気付いた? フェイトちゃん…。ごめんね、大丈夫?」

 「うん」

 「私の……勝だよね?」

 「そう……みたいだね……」

 

 ドゥームにお姫様抱っこされているからか、勝負に負けてははおやへの申し訳ない気持ちが強いからか複雑な表情をするフェイト。

 

 《良し。なのは、ジュエルシードを確保した後、それから彼女を》

 《いや、来た》

 

 レイジングハートの中に公園内に置いてあったジュエルシードの全てを回収しようとするが。

 

 突如、上空に暗雲が立ち昇り、紫の雷がゴロゴロと鳴り渡る。

 

 「フェイトちゃん!? ドゥームさん!?」

 

 その雷は彼女達兄妹に命中する。

 その威力は強力なものなのかバルディッシュは砕け散り、待機状態へと戻ってしまう。

 

 《ビンゴ! 尻尾掴んだ!!》

 

 その雲に吸い込まれていくジュエルシードを元に転移先の座標を見つけるエイミィ。

 

 《良うし。不用意な物質転送は命取りだ。座標を》

 《もう割り出して送ってるよ》

 

 

 

 

 《武装局員、転送ポートから出動! 任務はプレシア・テスタロッサの身柄確保です》

 

 転送ポートから大人数の魔導師が転移していく。

 

 

 

 

 「やっぱり、次元魔法はもう身体が保たないわ……それに、今のでこの場所も捉まれた。……フェイト、あのこは駄目だわ。そろそろ潮時かもね」

 

 血を吐きながらモニターを通して、フェイトの姿観ているプレシア。

 彼女の周りには先程雲に吸い込まれていったジュエルシードが浮かんでいた。

 

 

 

 「第二中隊、転送完了」

 「第一小隊、侵入開始」

 「お疲れ様。それから、……フェイトさん、ドゥームさん。始めまして」

 「…………」

 「……ああ」

 

 ドゥームの方は返事をするがフェイトの方はヒビ割れたバルディッシュを握り締め無言を貫く。

 

 『母親が逮捕されるシーンを見せるのは忍びないわ。なのはさん、彼女達を何処か別の部屋に』

 『あ、はい……』

 「総員、玉座の間に侵入。目標を発見」

 

 

 

 

 「プレシア・テスタロッサ。“時空管理局法”違反及び管理局艦船への攻撃容疑で貴女を逮捕します」

 「武装を解除して此方へ」

 

 目の前に居る多数の管理局員を前に、プレシアは悠然とした感じに椅子に座っている。

 だが、彼女のその瞳は何処か虚ろの様になっているみたいだ。

 

 「フッ」

 

 だが、数人の局員が奥の部屋の方へと向かった時、彼女の様子が一変した。

 

 

 

 

 「こ、此れは……」

 

 

 

 

 「え!?」

 

 モニターに映っている培養カプセルの中には、其処には見覚えのある少女の姿があった。

 

 

 

 

 「私のアリシアに……近寄らないで」

 「撃てえ!」

 「煩いわ……」

 

 そう言い、プレシアは局員の攻撃を難なく防御し、彼等を吹き飛ばす。

 

 

 

 

 《局員たちの送還を!!》

 「りょ、了解です」

 

 

 

 

 「(アリ……シア……)」

 《座標固定、0120503》

 「固定。転送オペレーションスタンバイ」

 

 

 

 

 「もう駄目ね……時間がないわ。たった9個のロストロギアではアルハザードに辿り着けるかは分からなかったけど……でも良いわ、これで21個。終わりにする」

 

 大事なものを護るように、大切なものに触れるかのように優しくその生体ポッドに手を添えるプレシア。

 彼女は管理局のサーチャーの方へと目を向ける。

 

 

 

 

 《この娘を亡くしてからの暗鬱な時間も……この娘の身代わりの人形を娘扱いするのも》

 「!?」

 「…………」

 《聞いていて? アナタのことよ、フェイト。折角アリシアの記憶をあげたのにそっくりなのは見た目だけ……役立たずでちっとも使えない。私のお人形》

 

 そのプレシアの言葉はフェイトの心を少しずつ抉り取っていく。

 耳を塞ぎたいのに、聞きたくないのに、何処かで理解をしていたからかその話に耳を傾けてしまう。

 目は信じられないモノを見聞きしているかのように開かれているのに、だ。

 

 《最初の事故の時にね、プレシアは実の娘……“アリシア・テスタロッサ”を亡くしているの。彼女が最後に行なっていた研究は、使い魔とは異なる……使い魔を越える人造生命の生成》

 「「え?」」

 《そして、死者蘇生の秘術。フェイトって名前は当時彼女が研究に付けられた開発コードなの……》

 《よく調べたわね……。そうよ、その通り。だけど駄目ね……ちっとも上手くいかなかった。造り物の命は所詮造り物。失ったものの代わりにはならないわ。……アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ……アリシアは時々我儘を言ったけど私の言う事をとても良くきいてくれた》

 「止めて…」

 《……アリシアは何時でも私に優しかった……フェイト、やっぱりアナタはアリシアの偽物よ。折角あげたアリシアの記憶もアナタじゃ駄目だった……》

 「止めてよ……」

 《アリシアを蘇らせるまでの間に私が慰みに使うだけのお人形。……だからアナタはもう要らないわ。何処へなりと消えなさい》

 「お願い、もう止めて!」

 

 プレシアの言葉に悲痛な叫びをあげるなのは。

 フェイトは目尻に涙を浮かべ、ただただその言葉を聞く事しか出来ない。

 フェイトの脳裏には今までの記憶が、何処から何処までが自分の記憶で、アリシアの記憶なのか分からず、混乱が起き始める。

 そんな中、プレシアはただ不気味に笑い続けていた。

 

 《……いい事教えてあげるわ、フェイト。アナタを創りだしてからずっとね、私はアナタが……大っ嫌いだったのよ》

 

 その言葉にフェイトは、フェイトの心は崩れ去る。

 

 「フェイトちゃん……」

 「フェイト……」

 「局員の回収、終了しました」

 《大変大変! ちょっと見て下さい。屋敷内に魔力反応多数!!》

 《何だ? 何が起こってる!?》

 

 慌てたエイミィの言葉にブリッジに居るメンバーとクロノはただ驚く他なかった。

 

 「庭園敷地内に魔力反応。何れもAクラス!」

 「総数、60……80……まだ増えています!!」

 「プレシア・テスタロッサ……一体何をするつもり?」

 

 

 

 

 生体ポッドを固定していたアームは取り払われ、プレシアの歩く後に飛びながら続いていく。

 

 「私達の旅を……邪魔されたくないのよ。……私達は旅立つの……忘れられた都、アルハザードへ」

 

 21個のジュエルシードがプレシアの周りを浮遊し、飛び散っていく。

 

 「この力で旅立って……取り戻すのよ。全てを!!」

 

 そんな彼女の瞳は狂気に取り憑かれているかのようにより大きく見開かれていた。

 

 《――言いたいことは其れだけか?》

 

 

 

 

 「言いたいことは其れだけか?」

 

 プレシアの言葉を耳にし、雄介は口を開く。

 

 《何ですって?》

 「言いたい事はそれだけかって聞いてるんだよ?」

 《それがどうしたの?》

 「お前は勘違いをしているようだから、いろいろと教えてやろうと思ってな」

 「雄介……くん?」

 《良いわ。御教授願おうかしら……》

 「まず1つ。同じ人格の生命体は決して生まれない。記憶を模写した所でそれはあくまで記憶……記録、データベースだ。魂まで同じとういわけではない。もしお前がそれに気付いてればな……」

 

 思いの外饒舌な雄介。

 普段はおちゃらけた感じで巫山戯る事の多い奴だが、今回は違うようだ。

 

 「2つ目。いや、これは違うか……お前が気付こうとしてないだけなのか」

 《…………》

 「その身体ではアルハザードに辿り着いてもそれだけだ、直ぐに死んでしまう。アリシアを蘇らせても、お前が死ぬと無意味だ」

 《黙りなさい……》

 「最後に……。もし全てが上手くいってアリシアが蘇り、お前の身体が保ったとしても、だ。それでアリシアは喜ぶのか?」

 《喜んでくれるわ……あの娘は》

 「子供ってのは案外鋭く聡いものだ。お前が隠している事、直ぐに気付くだろうさ。そして何て言ってくるだろうなあ?」

 《黙りなさい……》

 「ママなんて大っ嫌い!」

 《黙りなさい!!!》

 

 そのプレシアの叫びと同時に大きな揺れが発生する。

 アースラ全体が大きく揺れ、辺り一面に赤いランプが灯る。

 

 「次元震です。中規模以上!」

 「“ディストーションシールド”を」

 「ジュエルシード21個始動。次元震更に強くなります」

 

 ブリッジ内に、アースラ内にて警戒のアラームが五月蝿いくらいに強く大きく鳴り響く。

 耳を劈くその音はそれだけそれが危険なモノだという事を教えてくれている。

 

 「転送可能な距離を維持したまま、影響の薄い空域に移動を!」

 「りょ、了解です」

 「このままだと次元断層がっ!!」

 

 

 

 

 「アル……ハザード……」

 「バカなことを」

 「クロノ君!?」

 「僕が止めてくる。ゲート開いて!」

 

 急ぎ、モニター室から出て転送ポートへと向かうクロノ。大きく揺れる船体に構いもせず、クロノは廊下を走り続ける。

 

 「アルハザード――失われた禁断の技術が眠る土地。其処で何をしようっていうんだ……自分が無くした過去を取り戻せるとでも思ってるのか。どんな魔法を使ったて過去を取り戻すことなんか出来るもんか!」

 

 

 

 

 「私とアリシアはアルハザードで失われた過去の全てを取り戻す」

 

 プレシアの笑いは時の庭園の中を寂しく、そして強く大きく広がり響いていった。

 

 彼女自身、目に涙を浮かべている事に気付くこと無く。




投稿完了。

短期間で2話投稿とか此れ前もしたような。

体調が崩れるとかいうフラグにならないように気を付けないと。

ていうか生活リズムが狂って狂って…もう嫌だ。

愚痴っても仕方ないですね。

そろそろ内容的には無印の終盤です。

無理せず、自分のペースで、思いついた事をてきとうに執筆していこうと思います。

それでは
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