魔法少女リリカルなのはZ   作:りおんざーど

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回想そして

 「はじめまして、保和歩栄(ホワブロン)です。よろしくお願いします」

 

 保和歩栄(ホワブロン)

 それが今世での俺の名前だ。読み方はカタカナにするとホワブロンになる。

 

 特典には“サイヤ人”としての力を望み、それが叶えられたのだ。そして、サイヤ人らしい名前にしようと必死に頭を捻って考えだした結果がこの名前だ。

 

 自己紹介をすると同時にだが、目の前で静かに座っている生徒達を見ていく。

 

 パッと見てみると、異常というものなどは存在していないと思える様なクラスだ。ただ深く考えずに見た場合は、そして大人しくして、学生生活を送るのであればだが。

 

 ジッと生徒達を見ている俺の姿は、目の前の皆にとっては多分だが緊張しているのだろうと解釈してくれていると、そう思いたいものだ。

 

 「それじゃあ、ブロン君。あそこの空いている席に座ってくれるかな?」

 

 沈黙に耐えかねたのか、このクラスの教師は窓際にある空席の場所を指差して移動を促してくる。

 

 俺はその言葉に従って、その席へと向かい歩き出す。

 

 歩き、移動をする度に、すれ違っていく生徒達は珍動物でも見るかの様に凝視をしてくる。

 まあ、それは仕方がない事なのかもしれない。

 ただでさえ転校生というものは珍しい存在だ。況してや他の学校と比べて、この聖祥大学附属の小学校では希少種といった程に珍しいものなのだから。

 

 そして予想通りというべきなのか、何といって表現をすれば良いのだろうか。その子ども達の中には小学生では無さそうな雰囲気を放ち、おおよそ出せないであろう表情をしている男子生徒が2人居た。

 

 1人は平々凡々と言って良いようだ。大人しそうで、黒髪に黒目の少年だ。その瞳はどこかしっかりとしていて、芯が通って綺麗な輝きを放っている。

 

 もう1人の方は銀色でサラサラとした感じの髪をした少年だ。そして、彼の瞳は槍の先端部であるかの様に鋭い。周りの女子を見る目がいやらしく、男子に対しては敵意というものが丸出しである様に思える。だが彼のその様子には、何処か違和感のような何かを感じる。

 

 「(どうせ魔法で姿を変えているのは気付いているだろうし……あちらから来るのを待つかな)」

 

 「それじゃ、授業を始めるわね」

 

 席に着くと同時に、先生はチョークを手に取り黒板に文字を書いていく。

 

 手にしていたランドセルを横に置き、そこからこの授業に対応している教科書とノートに、筆箱を取り出していく。

 

 言われたページを開き、黒板に書かれていく文字をメモしていく。

 

 前世でも習った事があるだろう内容なので、それほど苦労もなく理解をする事が出来る。逆に、それが原因で退屈にも感じられる。

 

 「(今となっては簡単に出来るが、最初の頃は大変だったな……)」

 

 などと、鉛筆でノートに文字を書きながら少し目を瞑る。

 

 去年の事が今でも直ぐに、昨日の出来事であるかの様に思い出す事が出来る。

 

 

 

 

 

 ATMからお金を引き出した後にコンビニから出た俺は、デバイスに示されていた住所を思い出し、その場所に向かった。

 

 先ほど居たコンビニからはそれ程距離という距離は無く、10数分程度歩けば簡単に着いてしまう程に近かった。

 

 街灯の光、ビル等から発せられている光、コンビニなどの店から出ている光、住宅から漏れ出ている暖かな光。街には沢山の明かりが灯っていて、安心感を与えてくる。人工的な光ではあるが、前世での生活で馴染み深いものを感じてホッとしているのだ。

 

 「此処が、俺の家か……」

 

 目の前には2階建ての一軒家が建っている。それ程大きくもなく、小さくもない。何の変哲も無いであろう住宅だ。

 

 周りの家からは明かりが出ているのだが、この家からは出ていない。

 

 「当たり前か……」

 

 違法魔導師と思われる存在はあの施設を研究の為で、この家を仮拠点のように扱っていたのだろうか。

 

 そんな事を妄想しながら右手を差し出して、俺はドアにある取手を掴み、家に入ろうとする。

 

 「……え?」

 

 可怪しい。何かが変だ。鍵は確かに差し込んで回し、解錠をした筈なのだ。

 

 そうである筈なのに、一向に開こうとしないのだ。

 

 手元をよくよく見てみると、その手は取手部分を強く握り潰していた。

 

 「あれ……? 嘘、だろ……」

 

 身体的な力を上手くコントロールする事が出来ていないのか。

 

 それは綺麗に、そして見事に潰れてしまっていた。拉げた上に、千切れてしまっている。完全に、完璧に取り返しのつかない程に壊してしまっているのだ。

 

 「(やっちまった……ああ、やっちまった。どうすれば……)」

 

 唇が真っ青に、顔色は徐々にではあるが土気色へと変化していく。

 

 無断での借用とはいえ、自分の所有物でも無いものを、他人の家を壊してしまったのだ。

 

 その認めたくない事実から、現実から目を背けてしまいたいという強い欲求が出て来る。

 

 だがそんな事はもちろん出来ずに、自身を強く責めてしまう。

 

 ――もう少し力を弱めて握るという事は出来なかったのか、と。

 

 「落ち着け、KOOLになれ。……素数を数えよう……素数は1と自分の数でしか割ることの出来ない孤独な数字……私に勇気を与えてくれる……」

 

 ――2…3…5…7…11…13…17…19…………。

 

 心のなかで数え上げていき、深呼吸をする。息を強く吸い、大きく吐き出す。

肩は上下して、白い息が吐出される。

 

 「不思議なものだな……。まさか本当に落ち着くとは……」

 

 先程まで心のなかに救っていた自責の念は消えるということは無いのだが、確実に小さく、そして大人しくなる。面白い程に落ち着き、乱れていた心は徐々にだが冷静さを取り戻していく。

 

 「あ! こういう時は業者にでも頼めば良いのか」

 

 

 

 

 「これでもう大丈夫です。他に何かありましたら此方に連絡の方を……」

 

 差し出された名刺を受け取る。

 

 目の前でにこやかな笑顔を浮かべている業者の人間。

 

 暗示がしっかりと効いているのか、想像していたそれ以上に親身になって対応をしてくれる。

 

 何も無いよりは、機械的なものよりは余程良いのかもしれないのだが、少しばかり気持ちが悪く感じられる。それ程の懇切丁寧なのだ。

 

 仕事を終えて帰っていくその人を見送り、見えなくなった途端に俺は細心の注意を払いながらドアを開く。また壊してしまわない様に。

 

 現在の時間は午前10時だ。

 

 昨夜は外で過ごすのが嫌なので、この家の中の座標を割り出して、其処に転移をする事で中に入って寝たのだ。中からならば開ける事は出来るが、外からは出来ないというのは非常に困ってしまう。

 

 青年の姿へと変身をして、業者へと連絡をしていたのだ。

 

 開いたドアを潜り、玄関に出る。

 

 家の中はとても綺麗なもので、掃除がなされているのか生活感と清潔感がある。

 

 「(誰か生活をしているのか……?)」

 

 ヒトの気配というものが一切感じられないのに、そういった事実がある事に首を大きく傾げる。

 

 何処に何があるのか、どのような設備があり、どのようにして使うのかを理解する必要がある。

 

 俺は先ず、近くにあった台所から見ていく事にした。

 

 3槽式の流し台に換気設備。

 加熱調理機器であるコンロや食器洗い機に冷蔵庫などの必需品が揃えられている。

 食器棚には沢山の皿に、加えてコップ。スプーンやフォーク、箸なども入っている。

 冷蔵庫の中は空っぽで、食材を買い揃えて、備蓄していく必要があるだろう。

 

 次にリビングだ。

 薄型で大きなテレビに、大きな机。そしてガラス製の引き戸がある。その引き戸を開くと小さな庭が目に入る。これは玄関の横にある空間だ。

 

 洗面所には大きな鏡が設置されていて、上半身をしっかりと映しだしてくれている。

 電気を付ける事も出来て、歯磨きや身嗜みの整えをしたりするのに重宝するだろう。

 

 風呂場に敷かれている床はタイルで、和洋折衷で深く広い浴槽が置かれている。

 その大きさの為に入れるお湯の量によっては、首の辺りまで浸かる事も、足を思いきり伸ばす事も出来るだろう。

 

 玄関の目と鼻の先にある階段を登れば2階へと行く事が出来る。

 

 2階は特にこれといって目に付くものは存在していなかった。

どの部屋を見てもベッドと机しか置かれていないのだ。

 

 「さて、と。食事にでもするかな……」

 

 いろいろと家の中を見て回っていると、時間というものはあっという間に過ぎていく。時計を見てみると時間は午後6時に、言い換えると18時になっていた。

 

 沈んでいく太陽が放っている光が、窓から家の中に差し込んできている。

 

 「(だけど料理とか一切と言っても良いくらいした事無いな。どうしよう……)」

 

 前世では、食事などの準備はすべて親任せにしていた。

 20歳を過ぎていて、いい年をしているにも関わらず、一人暮らしをする訳でもなく、何をするでもなくただ無作為に日々を過ごしていた所為なのだろうか。

 全くと言ってそういった知識などは持ちあわせてはいないのだ。

 

 料理をしたというのは、前世での中学生の頃に家庭科の授業であった調理実習の時くらいだろうか。

 

 今の俺には料理が出来ないのだ。

 ならば、出来るようになってしまえば良い。

 意識を集中させて、“レアスキル”を発動させる。

 

 閲覧し、記録する情報は4つだ。

 1つ。この世界に存在する料理のレシピ全てに関する知識。

 2つ。基本的な作り方に加えて、簡単なアレンジの仕方。

 3つ。材料が足りない時に使える代用の野菜などに関する知識。

 そして4つ。栄養バランスに関する知識。

 

 創りだすのは1つのスキルだ

 知識内に存在している料理を失敗する事も無く、調理出来るだけの手腕と技術。

 

 「冷蔵庫には何も入ってないよな……買いに行くしかないか」

 

 スキルの創造を終え、意識は再び思考を始める。

 

 その言葉通りに、冷蔵庫の中には野菜などの食べ物と呼べるものが1つも保存されていないのだ。

 

 「何を作るのかも考えないといけないし……」

 

 この家の鍵を閉め、外に出る。

 

 太陽はその姿の殆どを地平線の向こう側へと隠していて、夕焼け空から夜空へと変わろうとしていた。

 

 

 

 

 お惣菜のコーナーでは独特なBGMが流れている。

 時間が時間なのか、その場に置かれている商品の殆どは値引きのシールが貼られていた。

 だが、これといって食べたいと思えるものが見付からない。

 

 「お菓子か……」

 

 歩いているとチョコレートやおかきなどが並べられている場所に出る。いろいろなお菓子が置かれていて、俺は思わず食玩の方を見てしまう。

 

 「(前世では、少ないお金でおもちゃ目当てにして買っていたな……)」

 

 手にしている買い物かごを地面に引き摺りながら歩いて行く。その中には気に入った食玩とジュースだ。

 

 「あとは夕食の分と保存しておく分だな」

 

 そう言いながら野菜が置かれているコーナーを目指す。

 

 包装されて棚に置かれている野菜を眺めていると、横や後ろの方から「あら~、お遣いかしら。偉いわね~」などといった言葉が聞こえてくる。

 

 それを聞いて、今の俺の姿を思い出した。小学生の低学年と同じ年令の姿と身長をしているのだ。

 

 幸いにもこの時間帯だと学校の授業も終了していて、外を出歩いていても問題は無い時間だ。

 

 「(しまった……。変身魔法を使うのを忘れていた。後の祭りだけど、高校生くらいの姿に変身しておけば……)」

 

 悔やんでも仕方が無いとはいえ、それでも悔やんでしまうのもまた人間というものなのだろう。

 

 俺はそう思いながらも、気持ちを切り替え、周りの視線と言葉を気にしながら今日の晩御飯の事を考えていく。

 

 「人参にじゃがいも、タマネギか……」

 

 目の前に存在している野菜を手に取り、数秒程考える。これらの野菜はいろいろな料理に使う事が出来るのだ。どう料理をするのか。何が食べたいのかを。

 

 その野菜をかごの中に放り込んでいき、レトルト食品などが置かれているコーナーへ移動する。

 

 並べられているものの中から中辛と記載されているカレールーを掴み、インスタンコーヒーと一緒にかごに入れる。

 

 その他にも牛乳や食パンなどが入っていて、重量はとてもではないが小学生の力では持ち上げるのに一苦労なほどだ。

 

 だが、今の俺は魔法で身体能力を強化している為か、それほど苦に感じはしない。ズリズリと引き摺りながらレジへと移動し、上の台へと乗せる。

 その光景に、店員や買い物客を始めとした周囲の人々はひどく目を丸くしていた。

 

 

 

 

 買い物を済ませ、帰宅する。

 

 商品を沢山入れて膨らんでいる買い物袋を台所の机と置く。

 

 「検索を始めよう。キーワードはカレーライス、レシピ……」

 

 意識を深くまで潜らせて、集中していく。外から聞こえてくる車が通る音などは耳に入ってこなくなる。

 

 手には一冊の分厚い本が握られていて、それは開かれている。だがそのページには何も書かれてはおらず、真っ白だった。

 

 「なるほど、こうして作っていくのか」

 

 開いている本を見つめながら頷き、材料を用意していく。じゃがいも、人参、タマネギ、牛肉、カレールー。カレーを創りだすのに使う、実にオーソドックスな食材だ。

 

 実際のところ、本には何も記載はされていない。だが、スキルメイカーで創りだした能力の効果のお陰で、文字が書かれているように調べた情報が見えるのだ。他のヒトには見えることの無い文字が、俺の瞳には映し出されているのだ。

 

 

 

 

 「これで、完成かな……」

 

 検索した情報を参考にして、出来上がった。

 

 カレーからはスパイスの香りが漂ってきて、部屋に充満していく。

 

 食器棚から取り出した皿に、よそっていく。

 

 そういているとチンッと軽快な音がなり、トースターから良い具合に焼けてトーストになったパンになった。

 

 カレーライスにしたかったのだが、生憎と米の方は買っていなかったので諦めるしかなかった。

 

 コップの中に牛乳を注いでいく。

 

 「この世の全ての食材に感謝をこめていただきます」

 

 手を合わせて、食事の挨拶をする。

 

 手に持っているスプーンでカレーのルーを少し掬い、口に持っていく。

 

 鼻の近くに持って来ている所為なのか、スパイスの香りがより強くなっていき、鼻孔をくすぐる。

 

 「はむ……」

 

 口の中を程好い辛味が広がっていく。どうやら無事に、上手く作る事が出来たみたいだ。

 

 カレーライスの方が食べ慣れている。というよりもルーだけだはなくて御飯と一緒に食べていることの方が圧倒的に多いからなのか、大きな違和感がある。

 

 「というか、調理している時にでも少しずつ味見すれば良かっただけなんだよなぁ……」

 

 そうは言ってみるが、始めての1人での料理だったのだ。それに強く集中していたのだから、それを忘れていて。そんな事を考える余裕すらも無かったのだから仕方が無いだろう。

 

 横に置いてあるパンを手に取り、それを千切る。その千切ったパンの一欠片を、カレーに付けて口に運ぶ。

 カレーのルーが付いているその部分は少しフニャッとした感じだ。其処以外の付いていない箇所はトーストの焼けた部分で、サクッとした感じをしている。カレーパンとはまた違った味と食感をしている。

 

 また、スプーンで掬って食べる。その中には一口サイズの野菜も入っていて、調理時よりも小さくなっているような気がする。熱によって溶けてし、崩れてしまったのだろうか。時間をもう少しだけでも掛けていればより小さくなっていたのかもしれないが、それを待つだけの忍耐力は俺には無く、止めてしまったのだ。

 

 「だがこれで良い。これで良いんだ……」

 

 コップへと手を伸ばして、牛乳をゴクっと喉を鳴らしながら飲んでいく。カレーが出来上がるまでの間だが冷蔵庫の中に入れていたからか、冷えている。

 

 それが、カレーの辛さで温められた身体を急速に冷ましていく。それでも少し、口の中には辛さが残っている。

 

 「久し振りに感じるな。カレーを食べて、牛乳を飲むのが……」

 

 ――こんなにも幸せを感じさせるなんて。

 

 ジンワリといった感じに涙が滲み出てくる。溢れるほどに溢れ出て来そうになる。

 

 実際のところ感覚的にはそれ程の時間は経過していない筈であるのに、かなりの時間が過ぎ去っているかのように思えてしまう。

 

 スキルのお陰で失敗をする事も無く料理をする事が出来るのだが、それはとても難しいものだ。これ程に大変で面倒なことを母さんは毎日の様にしてきたのかを100%では無いが、理解する事が今ならば出来る。同時に、そのことに対して自然と深く感謝をしていた。

 

 食べ物に対して、それをつくりだす大地に、それを育むのを手伝っている農家達に。そして何よりも、料理をしてくれていた母さんに対して。

 

 両目からはポタポタと大粒の涙が大量に出て、カレーに落ちていく。

 

 口に運ぶと、実際はそんな事などはない筈なのだがとても、とてもしょっぱく感じられた。

 

 

 

 

 皿洗いというのは、料理と同じで全くした事が無かった。これもまた、家庭科の調理実習時にしてみた時以来だ。した事が殆ど無いので、割らないようにとしっかり気をつけながら入念にこすり洗っていく。だが洗剤を買うのを忘れていたので、綺麗に洗える様になるのは後日になってしまうだろう。

 

 「こんなものかな」

 

 そう言い、全ての食器を水洗いし終えて手を止める。

 

 季節は冬だ。だからなのか、水で濡れている手はとても冷たく感じられる。悴んでもいて、上手く動かす事が出来ない。

 

 「そういえば、ずっと感じていたけど……」

 

 この“海鳴市”には魔力というものを持っているだろう存在はゴロゴロと無数に存在している。数にすると318人くらいだろうか。今は世界中のあちこちから感じられる。しかも、その感じている魔力の殆どがかなり大きなものだ。その存在が魔力と同時に放っている気もまた巨大だ。転生直後の時はそれよりも多く、ざっと7708人くらいは居た筈だ。

 

 「転生者同士で潰し合っているのか……?」

 

 感じている大きな魔力は別々の場所に、最低でも2つ程が同じに存在している。そして、不思議なことに片方が小さくなり、消えていっているのだ。お互いに攻撃をし合って、殺しあってでもいるのだろうか。大きな力が爆発的に大きくなったかと思えば、一気に小さくなって嘘みたいに消えていく。残っている方もまた、余力が少ないのか魔力と気がかなり小さくなっている。そして、それは別の大きな魔力に消されていく。

 

 「(自称“オリ主(オリシュ)”といでもいう奴らの仕業か……)」

 

 彼等にも魔力を探知する能力はあるだろう。

 強く大きな魔法というのは使っていないが、姿を変えるのには行使しているのだ。

 その微細な魔力を感知するほどの転生者が居るかもしれない。自身には無くても、デバイスなどの道具による補助で気が付いても可怪しくはないのだ。

 

 「はぁ……」

 

 考えただけでも憂鬱な気分になってしまい、大きな溜め息を吐いてしまう。

 溜め息を吐く度に幸せというものが逃げていくというが、それは本当なのだろうか。

 

 「早速か……この考え自体がフラグだったか」

 

 大きな魔力を放っている存在が此方へと、俺に向かって移動をして来ているのが感じられる。十中八九、それは転生者で間違いが無いだろう。

 

 無断で借りているとはいえ、手に入れたばかりの自宅を壊してしまう訳にはいかない。

 

 俺は急ぎ、鍵閉めなどの戸締まりをして外に出る。

 

 走って移動をしているのだが、あちらも同じ方向へ。確実に追い掛けて来ている。接敵してしまうのも時間の問題だろう。

 

 「何!?」

 

 別方向からもまた同じ様に魔力が此方へと向かって近付いて来る。

 

 それに対して俺は思わず大きく舌打ちをしてしまう。

 

 転生者と思しき存在と戦うのはこれが始めてであり、苦戦をしそうなのだ。それが2人も同時にだというのならば余計にだ。それに此方は転生が完了して1日も経過をしていない。自身の持つ力を完全にコントロールが出来ていないのだから完全に不利な状況だろう。

 

 「このままじゃ不味いな……」

 

 走っている道路から進路をずらして公園へと向かう。

 

 空には月が浮かんでいるのか、地上を照らしている。街灯の光もあるので、とても明るいものだ。

 

 だが、明かりが照らされていない場所も確かに存在していて、その影になっている上に海に面している場所で一旦止まる。

 

 全身の気をコントロールしながら体外へと徐々に放出していく。

身体はスゥッといった感じに宙へ浮かび、海に向かい飛行する。

 

 相手の方も飛行魔法などを使っているのか、建物などを気にする事もなく移動して、確実に距離が縮まっている。

 

 「此処らで良いだろう」

 

 ある程度飛んで、海上の途中で停止する。

 

 この場所ならばそれほど人的被害や物理的被害という者は発生する事は無いだろう。強いて挙げるとするならば、海中で生きている魚などの生物たちに甚大な被害が出るかもしれないというくらいか。後は、そう……津波が発生するなどだろう。

 

 話が通じる善良な存在なら良いのだがと考えていると相手側の1人が到着する。魔力の移動を感知していたから分かってはいたが、もう一人も別方向から飛んで来る。

 

 前者の方の見た目で一番最初に目には入ってくるのは鮮やかなほどに綺麗な金髪だ。目付きは鋭く、斬れ味の鋭い抜身のナイフの様だ。何処か危うさというものが感じさせてくる。

 

 後者であるもう一人の方もまた、同じ様に金髪をしている。前髪が長く、目が隠れているのが原因か、何を考えているのかが想像出来ない。

 

 「殺してやる、邪魔なモブ共は全員……」

 「えっと……君の邪魔なんてしないから、手を引いてくれないかな?」

 

 予想通りというか何と言うのだろうか。刃のような目をしている少年は、自分が世界の中心にして廻っているのだと思い、そう豪語している様な存在に思える。

 だが、そんな彼の様子には、何処か違和感がある。

 

 彼の魔力が大きく変動していく。

 頭以外の部分が光りだす。そして、その光が晴れた後には、金色の鎧を装着している彼の姿があった。

 

「“バリアジャケット”か……」

 

 バリアジャケットとは読んで字の如く防護をしてくれる服だ。いろいろな衝撃から、環境から自身の持つ魔力が保つ限り、ある程度は身を守ってくれる特殊なフィールドを形成している。

 

 俺の提案は、その防護服であるバリアジャケットの展開により、バッサリといった感じに言葉も無く断られてしまうかたちに。

 

 強い緊張が疾走る。

 

 ――此処は既に戦場であり、殺し合いをする為の場所なのだ。

 

 そういった事をしたくはないのに、何故か理解し、悟ってしまった。

 

 鋭い目をした少年が、剣の形をしたデバイスを展開して突っ込んで来る。

 

 「――おっと」

 

 剣を大きく上から下へと向けて振りかざしてくるのを、横に身体をズラして避けてみせる。

 

 目の前に居る彼の動きはとても速いと言えるレベルなのだろう。

 だが、そんな彼の動きがとても遅く見えてしまう。そう感じてしまうのだ。

 

 避けられたのを見て、彼はもう一度、その剣を振るう。

 空気は切り裂かれ、邪魔な相手である俺に向かって一刀両断しようと言わんばかりの勢いで斬り掛かってくる。

 

 俺は、右手に気を集中させて、同じ剣のような形をしたエネルギーの塊を創りだす。それで、次々と来る斬撃をいなしていく。

 

 「クソッ」

 

 なかなか斬る事が出来ない事に対して、苛立ちを募らせていく彼。表情は大きく歪んでしまっている。

 

 近くに居る事で、彼の金髪はより綺麗に見える。

 

 そして、可怪しな事に気が付く。目が紅いのだ。充血をしているかの様な程に深い赤色であり、虚ろな瞳をしているのだ。

 

 彼の動きには、怖い程の気持ちが乗っている。だが、動きがぎこちない。まるで、何かに操られているかの様にだ。

 

 「…………」

 

 もう一人の方の少年は、一歩も動こうとはしていない。ただジッとこちらを見つめているだけだ。まるでこの戦闘が終わるまで手は出さないとでも言う様に。そんな彼の様子は、とても不気味なものに感じられる。何を考えているかが分からないというのは、其れだけでこれ程に迄恐怖を与えてくるのか。

 

 「(速めにケリをつけるかな……。時間も遅い。早く寝たいしな)」

 

 ジッと見てきている彼がいつ介入してくるかも想像が出来ない。常に身構えておかないといけなくなる。

 

 それよりも先に、目の前の刀を振り回している少年を倒してしまった方が速いだろう。

 

 そして何よりも此方には経験というものが全くと言って良いくらいに無いのだ。自身の持つ特典の力を振るう事も初めてだと言っていいくらいであり、多対一や長時間の戦闘などは無理であろう。だからこそ短期決戦に出るべきなのだ。

 

 放出している気を一基に増大させ、横に振られた剣を避け、懐に潜り込む。

 

 「ハアッ!!」

 

 彼の、その御腹に気を込めた気合をぶつけ、吹き飛ばす。距離は一瞬にして、最初に出会った時の2倍ほどにも離れる。

 

 「ダリャリャリャリャリャリャリャリャアアアァァァッ!!!」

 

 気を両手の平に集めていく。その集めた大量の気を、吹き飛ばした彼に向けて高速で放っていく。

 

 連続して飛んで行く無数のエネルギー弾は、彼等の目では追う事も、対応をする事も出来ない程のスピードであり、次々と命中していく。

 

 その威力は大地を削り、山を砕く程のものだ。

 

 それは、彼の身体を同じように削っていき、粉々にして、跡形も無く消し飛ばす。そして其処に居た彼は寒空の下で、そのDNAの一片も残さず完全消滅した。

 

 「あとは……」

 

 残っているのは、ずっと見ているだけだった少年1人だ。

 

 彼は変わった様子もなく、此方を静かに見つめてきているだけだ。それが、正体不明の強い不安と恐怖を感じさせ、増幅させていく。

 

 「おい! 用件が無いのなら帰らせて貰うけど」

 

 その言葉に反応したのか、彼の表情は変化する。

 

 にこやかで、人を惹きつける笑顔をしている。やけに整った顔をしており、同姓であるのだが、その顔に見惚れてしまう。

 

 それなのに、そんな表情であるにも関わらず、その顔には造り物であるかの様な違和感を、不気味さを感じさせてくる。怪しくあり、妖しくもあり、危ういようは雰囲気を放ち、醸し出しているのだ。

 

 「なんだ……?」

 「フッ」

 

 彼は口を大きく歪ませて、此方を見て嗤う。すると同時に彼の姿は、その場所から消え失せる。

 

 「クソ!!」

 

 予備動作も無しにかなりのスピードで突っ込み、飛んで来る彼の動きに意表を突かれてしまい、此方の対応が遅れてしまう。

 

 何処から出したのか、手にしたナイフが俺の顔を掠めていく。

 

 その腕の動きはヒトが簡単になせる様なものでは無い。骨も、関節などの身体構造を無視しているかの様にジグザグとし動きをしている。曲がらないであろう方向に曲がったりとしているのだ。

 

 斬られて、パラパラと離れていく数本の髪の毛が変色していく。黒色から白色へと変わっていくのだ。そして、跡形も無く消滅していった。

 

 「――何!?」

 

 身の危険を感じて、回避という行動を選択していなかったらどうなっていただろうか。避けた事は正解だった様だ。

 

 彼の顔は、先程見せたものと比べ、大きく変化して、その表情は大きく歪んでいた。笑顔であるというのには何の変わりもない。だが、喜びによるものなのか。それとも歓びなのか。はたまた悦びなのかは分からないが、酷くとても歪んでしまっている。

 

 そして嬉々とした感じに、止まる事無く次々と攻撃をしてくる。その様は、まるで望んでいた強敵に会えたとでもいうかの様に。

 

 「危ねっ!」

 

 必死に避けようと動くが、その理解も予想もする事が出来ない相手の能力に対して、恐怖を抱いてしまっているのか身体が上手く動かない。

 

 その次々と迫り来るナイフによる攻撃は服を斬り刻んでいく。

 

 「波っ!!」

 

 気を開放して、彼を吹き飛ばす。

 

 近くでそのナイフを振り回されると困るのだ。

 

 少しでも掠ってしまうとどうなるのか。気にはなるのだが、試そうという気持ちは出て来ない。後が無くなってしまう様な気がするのだ。

 

 「さて、どうするか……」

 

 口にするまでもなく決まっている。早々に終わらせて、グッスリと寝たいのだ。

 

 前世では平気だったのに対し、今世では肉体年齢が若いからなのか、夜遅くになると急激に、強力な眠気に襲われてしまうのだ。

 

 健全な生活を送ることが出来る。そう言ってしまえば良いことなのかもしれない。

 

 だが、したい事が出来る時間が限られるのだ。だからこそ時間を大切にして、有意義に過ごしてみたいものだ。

 

 「悪いが、終わらさせて貰う」

 

 俺はそう言いながら、先の彼を倒した時と同じ様に右手に気を集中させていく。集まっていくその気は、ヒトという存在を簡単に壊し、殺せてしまう様なものなのかという疑問を感じさせてしまう程に温かい。

 

 「――波アァ!!!」

 

 集めたその気を一気に開放する。掌を砲身の様に見立てて、光線の様にして一直線に、目の前に居る金髪の少年へと向かっていく。その光は、彼の身体を包み込み、潰していく。ゆっくりとだが、確実に、原子レベルに分解していき、溶ける様に消滅させていく。

 

 自身の生命が消失して死ぬという事に恐怖を抱くべき場面である筈なのだが、そんな状況にも関わらず、彼は大いに満足そうに顔を綻ばせながら消えていく。

 

 「終わった、か……。あ、あ、あぁ……ああ、あ……」

 

 戦いが終わり安堵をすると同時に、急に恐怖というものが自身に強く襲い掛かって来る。ヒトを殺してしまった事に、殺した事に。消し去った事に。そして何よりも、自分に対して戸惑いと強い恐怖を抱き、感じていた。

 

 「(殺ってしまった……本当に……? 生命を、奪ってしまった……!?)」

 

 その事実は現実はどうしようもない程に重く、心のなかにズシンとのしかかって来る。

 

 奪ってしまったのだ、命を。彼等の命を、だ。

 

 そうしないと、そうしていない他無かった。

 そうでもしないと殺されていたのは自分の方だ。

 

 それであっても、そう言い聞かせても、心のなかに存在している重い何かは居座り続ける。

 

 そして、自分の持っている力の強さ。それがどういったものなのか。そのこわさを知った。

 

 それと同時に、それらの気持ち以上に気付いてしまった。

 

 その殺し合いをしていた時に、彼と同じ様に笑っていた事に。心が踊っていた事に気が付いたのだ。

 

 サイヤ人の血というものがそうさせた。そう言ってしまえば片がつく上に、どれだけ楽になるだろうか。

 

 だけど、そういった風に割り切るという事は出来ず、俺は呆然として立ち尽くし、恐怖に震えるしかなかった。

 

 「…………」

 

 ふと自分の手を、手の平を目にしてみる。それが、真っ赤な血によって塗れているかの様に見えてしまい、更に強く自身を責め立てて来る。

 

 「うわあああああぁぁァァァ!!!」

 

 大きな叫びとともに、髪は逆立ち、緑かかった金色の光を放ち始める。その光は、月以外の光源が存在せず、真っ暗な海上を真昼の様に明るく照らす。

 

 瞳からは次々と涙が溢れ出きて、天を仰ぎ見て、獣の如く、ただただ悲しみと恐怖、そして怒りにより、寒空の下で吠え続ける事しか出来なかった。

 

 

 

 

 どれくらいの時間をこの夜空の下で、じっとしていたのだろうか。

 

 鳥肌が立ってしまっている。寒さによるものなのか、恐怖によるものなのかは、今の俺には考え、判断をする事が出来ない。

 

 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 呼吸音と心臓の脈打っている鼓動音がはっきりと聞こえて、やけにうるさく感じられる。

 

 息は、低い気温によって白く目に見えるカタチで吐出されていく。

 

 「取り敢えず……帰ろう。寝て、明日になれば…………」

 

 自身の乱れている心を落ち着かせる様に、そう言い聞かせる様に声に出す。

 

 それが現実からの逃避行動であるという事を理解しながらも、そう呟いて、自宅への方向に向けて、飛んで行く。

 

 冬の夜空で吹いている風は、肌を切り裂くかと思えてしまうとても冷たく感じられた。

 

 

 

 

 目の前には暗闇が広がっている。何も見えない、感じる事すらも出来ない程の深淵だ。

 

 突然、視力が奪われてしまうのではないかと思ってしまう程の強烈な光が迸る。

 

 そして、何処からともなく聞いた覚えのある声が聞こえてくる。

 

 「……お前の所為だ」

 

 「お前が()ったんだ……」

 

 「お前の所為で死んだんだ!」

 

 「お前が俺達を殺したんだ!!」

 

 閉じていた目を開いてみると、見覚えのある少年が2人佇んでいた。

 

 その2人の身体は大きく欠損していて、片腕に片足、頭部の半分が失われている。綺麗だった金髪は見事に汚れていて、その上にはベットリと鮮やかな程の赤さをしている血が付いている。

 

 その2人は此方を見つめながら言葉を口に出していく。まるで、それが呪詛の様に、そして自分という存在を責めて、否定をしてきているかの様に感じられた。

 

 

 

 

 「あああああああああああああぁあぁぁ!!!」

 

 大きな声を、悲鳴をあげると同時に目を覚ます。

 

 自分以外は誰も居ないその部屋の中で、その叫びは大きく反響し、耳のなかで木霊していく。

 

 「知らない天井だ……いや、俺の家か」

 

 悪夢を見てしまった所為なのか、身体は汗でビッショリと濡れていてとても気持ちが悪い。

 

 カチッカチッと一定間隔で時計の秒針が時間を刻みながら動いている。表示されている時刻を見てみると、17時を過ぎたところだった。

 

 どうやら7時間以上も寝てしまっていた様だ。

 

 窓からは、オレンジ色に光り輝く太陽の光が差し込んで来ている。

 

 「もう一度……もう一度、シャワーでも浴びよう」

 

 金色に光り逆立っていた髪は、いつの間にか変身魔法使用時のものである黒色の髪へと戻っていた。

 

 

 

 

 戸締まりをして、外をブラブラと出歩く。

 

 フラフラとした足取りで、ボーっとしながら歩いていると人気の無い公園に辿り着いた。この時間帯だと、遊んでいたであろう子ども達は帰宅をし始めている。その為に、元気にはしゃぎ回る子ども達の姿は、もう此処には無い。

 

 「はぁ……」

 

 大きな溜め息が零れ出てしまう。

 

 目を閉じると、それだけであるのに、夢で見た彼等の姿が浮かび上がる。

 その姿を思い出す度に、吐き気が起き、胃がキリキリと痛み始める。

 

 「(可笑しいな……病気になる筈のない身体なのに…………)」

 

 目尻には大きな涙が溜まっている。それは、次第に溢れ出て、ポタポタと地面に落ちていく。

 

 「俺が……俺が……」

 

 自身を責め立てていると、横に誰かが座るのが感じられた。

 

 その人も同じ様に、大きな溜め息を零す。

 

 彼の手には2つの缶コーヒーが握られていて、その内の1つを「飲むか?」と言って、俺に向かって差し出してくる。

 

 「頂きます……」

 

 本来ならば、普段の俺ならば見知らぬヒトから何かを貰うという行動は良くないと、自身を咎め、断っていただろう。

 

 だが、今の俺にはそんな事を考える余裕も無く、気にする事も無く、そのまま受け取る。

 

 タブに指を掛けて、蓋を開ける。開くと同時に、缶コーヒー特有の甘ったるい匂いが鼻に向かい漂ってくる。

 

 「「ゴクゴクゴク……」」

 

 隣に居るおじさんとほぼ同時に、喉を鳴らしながら飲んでいく。

 

 「「ハハッ、ハハハハハハハハ」」

 

 思わず、笑ってしまう。しかも隣に座っている彼も一緒に、だ。

 

 同じタイミングで笑った事で、より一層大きく口を広げて笑う。

 

 どうでも良い事なのに。

 いや、どうでも良い事だからなのだろうか。

 

 それがとても面白く、大切で、貴重で、尊く感じられて、自身の意志とは関係なく、また涙が溢れ出てくる。

 

 「(強くなりたいな……)」

 

 2度とこのような気持ちを抱かずに済む様に、他の誰かにもさせない様に。

 

 その為にも、もっともっと修行をしいていかないといけないだろう。

 

 見上げた空は、涙で滲んでいる。だが、それはとても綺麗なオレンジ色の夕暮れで、清々しいものに感じられた。

 

 

 

 

 

 「(あの時は後悔するしか、懺悔するしかなかったな……)」

 

 同じヒトとうい存在を殺してしまった事に負の感情を抱き、感じる事しか出来なかった。

 

 時間が経つに連れて、それらに関する記憶も、感情も薄まっていった。

 

 それでも、時々ではあるが、思い出したかの様にして同じような夢を見てしまうのだ。

 その都度、心のなかで謝りはするのだが、それだけでは無い。

 その度に強く思うのだ。

 ――すまない。そして、ありがとう。と。

 

 食事などで食べているものは当たり前となっている。なんとなしに、なんとなくで生命とは尊いものだと思っていた。漠然と理解をしているつもりだったのだ。だが、これを通して、あの出来事のお陰で命の重さというものを実際に感じる事が出来た、知る事が出来たのだ。

 

 「(今となっては、大切な思い出であり、体験だな……)」

 

 鉛筆を手のなかで回しながら、誰に言うでもなく、聞き取れない程の小さな声でそう呟く。

 

 チャイムが鳴り響くと同時に、授業は終了。

 そして、生徒たちが集まり、質問攻めにしてきた。




普段することもなくダラダラと過ごしているのですが、思いついた内容を文字にすることに苦戦し、時間が経過しました。
悩み、入力したくせに結局何の面白みもないクソみたいなものになってしまいましたが。

やっぱり思いついたことを文章にすることがとても難しい。
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