魔法少女リリカルなのはZ   作:りおんざーど

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破れる結界 そして、なのはがっ!

なのは達が、赤いバリアジャケットを纏っている少女と戦っているビル街とは別の場所。

 

雄介は其処で得体のしれない存在と対面をしていた。

知識内、そして記憶内に存在している原作には出て来なかったものが目の前に居るのだ。

 

「お前も転生者なのか……?」

「…………」

「……だんまりかよ」

 

軽く質問を投げ掛けてみるも耳に届いていないのか、それともただ無視をしているのか、相手は無言を貫いている。

 

蒼色のがっしりとした両足。

胴は深い緑色の外殻の様なもので覆われている。

両腕は大きく黒色をしていて、白い爪がやけに映えている。

肩にはスパイクの様なものが付いていて、頭部は赤い。

背中には白い羽が生えている。

身長は、目測で5m程度もの巨躯。

その姿はまるで――

 

(ドラゴン)……いや、竜……ヒト型の飛竜(ワイバーン)か何か、か?」

 

口を開かない対面者に、苛立ちを隠せないでいると、目の前の竜人は姿を消した。

 

「――ッ!?」

 

天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の恩恵か、空気の異様な流れを感知し、急いで身体を右へと移動させる。

 

自身が慣れない舞空術を使用して浮いていた場所には、姿を消していた筈の竜人が存在しており、その大きな腕を振りかざしてくる。

 

「っこの野郎!」

 

雄介は避けながら右手に炎を灯して彼へと殴りかかるが、その拳はかなり大振りなもので簡単に避けられてしまう。

 

「あ、あれ……?」

 

相手は回避をしながらも雄介の腕を強く掴み、そのまま上から下へと向けて勢い良く投げ飛ばす。

 

雄介の身体は縦に回転をしながら、ビル街の間を突き抜けていく。

そのスピードはかなりのもので、衝撃波が発生して、ビルに設置されている窓ガラスを粉々に割っていく。

 

落ちていく無数のガラス破片が、尚も回転を続けている雄介の身体を映している。

 

ガラス破片はより小さなものに割れていきながら落下し、コンクリートで出来た地面へと落ちていく。

もし下にヒトや犬猫などの生物がいたとしたらそれは、死へと誘う透明な雪だと感じたかもしれない。

 

「痛てえ……」

 

雄介は、瓦礫に埋もれてしまっている自身の身体を起こして、その周りにあったコンクリートの塊を吹き飛ばす。

そのままの勢いを保ったまま大きく両の腕を上にあげて、相手に向けて大きく口を開いた。

 

「雷炎竜の……咆哮オオォッ!!」

 

大きく開かれたその口からは、膨大な熱量を誇る炎が吐出される。

そして、その炎の周囲には雷が渦巻いていた。

その電撃が付随した火炎は、上空でぼうっと浮かんでいる竜人へと真っ直ぐに飛んで行く。

 

「――何!?」

 

その鉄をもドロドロした状態へと簡単に溶かしてしまう炎の塊を、目の前の竜人は白く鋭い爪を使い一太刀で切り捨てたのだ。

 

斬られて分けられた火球は左右へと飛び、ビルに命中。

その跡には2つの大きな穴を作り出し、その周りをビリビリとした電撃が帯電している。

 

目の前の竜人は無言のままで雄介の方に向かい、じっとした状態で見ている。

ただ静かに、真っ直ぐな瞳で見下ろしてきている。

 

「強いじゃないか……」

 

――自分は滅竜魔導士だ。

なら、目の前の竜もどきをも倒す能力を持っている筈。

だが目の前の相手は、今の自分よりも強いだろう。

ブロンに教えて貰った舞空術は使えるが、生憎と練習はしていない。慣れていないのだ。

だが――

 

「――考えるだけでもウズウズと、メラメラしてくる。こういう時って何て言うんだっけ、か……? ……そうだ、あれだ。……燃えてきた」

 

その言葉通りに、雄介の身体は大きな炎に包まれていく。

燃え続けている炎と飛び散る火花により、周りは夜とは思えないくらいに明るく照らされて、周囲のコンクリートと鉄筋を、夏場のアイスの様にドロドロに梳かしていく。

 

足が付いている、接地しているコンクリートを強く蹴り、空で飛んでいる竜人へと一直線に向かっていく。

 

それをヒラリと、容易く躱してしまう竜人。

 

だが雄介は肘から炎を噴出させ、相手の避けた先へと身体を向ける。

 

「――これなら!」

 

その握りしめた拳は見事に命中して、竜人の左腕に当たる。

 

「…………」

「見たか!」

 

だが、その無理矢理な方向転換が原因なのか身体は錐揉みをして、フラフラと不安定に飛行してしまう。

 

竜人はその隙を見逃さず、腰部から伸びている二対の砲身を手で支え、雄介へと向けて魔力弾を放った。

 

「――うわあああ!」

 

 

 

2人の少女が睨み合っている。

 

フェイトの手にはバルディッシュが握られていて、魔力刃はビリビリと爆ぜ、結界内を照らしている。

 

「民間人への魔法攻撃……軽犯罪では済まない罪だ」

「なんだてめぇ? 管理局の魔導師か……?」

「……時空管理局“嘱託魔導師”、フェイト・テスタロッサ。抵抗しなければ弁護の機会が君にはある」

 

普段の優し気で、控え目なものとは違い、フェイトの声は低く感じられる。

正体不明の相手に対して警戒をしているのか、それとも――大事な友達である高町なのはが傷つけられた事に対して思うところがあるのか。

 

「同意するなら、武装を解除して――」

「――誰がするかよ!」

 

フェイトの進言を一考すらもせずに拒否し、赤色のゴスロリを着た少女はその場から離れていく。

 

「ユーノ……なのはを、お願い」

「うん」

 

フェイトは傷ついたなのはをユーノに任せ、逃げた少女を追いかけていく。

 

その2人の少女の姿は一瞬にしてなのはの目の前から消え、残されたのは横に居るユーノと力無く倒れてしまっている彼女自身だけだった。

 

「ユーノくん……」

 

なのはの呼びかけに頷きながら、ユーノは自身の持つ魔法を使い彼女の傷を癒していく。

 

なのはのバリアジェケットは本来、重ね着の様に2重になっている。

だが、今の彼女のバリアジャケットの上の部分である白い防護服が破壊されている。

再構成されないところから見ると、相当に大きなダメージを負ってしまっている様だ。

 

「フェイトの裁判が終わって、皆でなのは達に連絡しようとしたんだ。そしたら、通信は繋がらないし……局の方で調べたら広域結界が出来てるし。だから、慌てて僕達が来たんだよ」

 

ユーノは話しながらも回復魔法を使い、なのはの傷は見る見るうちに塞がっていく。

だがダメージが大きい為に完全な回復とはいかず、なのはの顔色はまだ青く、悪い。

 

「そっか……ごめんね。ありがとう」

「あれは誰? 何でなのはを?」

「わかんない。急に襲ってきたの……」

「でも、もう大丈夫。フェイトも居るし、アルフも居るから」

「アルフさんも?」

 

 

 

「バルディッシュ!」

【Arc Saber】

 

自身の相棒である戦斧を振りかざし、魔力刃を目の前に居る少女へと飛ばす。

 

魔力刃は大きく回転をしながら、上空に浮いている少女の方へと向かって真っ直ぐに飛んでいく。

 

「グラーフアイゼン!」

【Schwalbefliegen】

 

少女は4つの鉄球を宙へと浮かべ、ハンマー型のデバイスであるグラーフアイゼンで、その4つの弾を打ち出す。

 

その4つの鉄球は真っ直ぐとフェイトへと向かい、互いに出した攻撃は打つかる事無くそれぞれの術者である2人へと向かっていく。

 

「障壁!」

【Panzerhindernis】

 

少女の前に真紅に輝くバリアが展開される。

それは、回転を続けながら相手を切り裂こうとしているArc Saberを軽々と防御してしまう。

 

フェイトの方は飛んで来る4つの鉄球を回避するが、誘導弾なのか彼女に向かって追尾をしてくる。

 

「――っ!」

「バリアアッ、ブレイク!」

 

防御に成功した赤い服の少女に向かい、下から殴りに掛かるアルフ。

アルフの攻撃はほぼ奇襲であったにも関わらず、防御されてしまう。

それでも少女の想定したものよりもアルフの攻撃は強力なものだった為に、障壁を粉々に粉砕され、少女はその場から後退をする。

 

フェイトの方も飛来してくる4つの鉄球を誘導し、お互いをぶつけ合わせて回避に成功していた。

 

「――このっ!」

 

障壁を破られ後退をした少女は、助走を付ける様にしてアルフの方へとグラーフアイゼンを振りかざす。

アルフは障壁を張るが、少女はその障壁ごとアルフを勢い良く吹き飛ばす。

 

「――ん!?」

【Pferde】

 

少女の両足が魔力の渦巻で包み込まれ、フェイトの攻撃を高速で回避する。

そこにアルフが少女の脚へとBindを、Ring Bindを使い、動きを封じようとするが、それすらも避ける。

だが少し掠っていたのか、Pferdeは解除される。

 

「はああああっ!!」

 

勢い良くバルディッシュを振りかざして攻撃を試みるが、少女はバルディッシュに発生している魔力刃では無くて柄の部分とグラーフアイゼンの柄をぶつけてそれを防御してみせた。

 

防御されたが、フェイトは力を入れてバルディッシュで相手のデバイスを押し、動きを封じようとする。

 

 

 

「アルフさんも来てくれたんだ」

「クロノ達もアースラの整備を一旦保留にして、動いてくれてるよ」

 

なのはとユーノはビルの屋上で、フェイト達の戦闘を観ている。

彼は兎も角として、今の彼女にはそうする事しか出来なかった。

 

 

 

「アレックス……結界の解析、まだ出来ない?」

「解析完了まで、あと少し」

 

アースラ艦橋に存在する空間モニターは、テレビが出す事のある砂嵐の様な音を鳴らしながら、彼等の知識には無い言語を映し出している。

 

エイミィ・リミエッタを始め、艦橋内で解析作業をしている局員達には緊張と焦りを感じ、ややヒステリック気味な声をあげながらも、もう1つのモニターに映しだされている少女達のサポートの為に作業を続けていく。

だが、その作業の進行度は芳しく無い。

こうしている間にも、なのはを助けに行ったフェイト達は苦戦をしているかもしれない。

 

「術式が違う、“ミッドチルダ式”の結界じゃ無いな……」

「そうなんだよ……何処の魔法だろう、これ?」

 

リンディ・ハラオウンやクロノ・ハラオウンはモニターを睨み付けている。

彼等に出来る事は、直ぐに解析が終了して、戦っている少女等の援軍を送る事が出来る様になるのを待つ事だけだ。

彼女等にはそれが歯痒く感じられていた。

 

そんな彼等の中で、ゾイル1人は静かに、落ち着いた感じで、未だ音も映像も乱れているモニターを見詰めている。

この先にどの様な事が起きるのかを理解しているかの様だ。

 

「これも君の知っている通りの展開なのか、ゾイル?」

「ああ、そうだ。だが、少し可怪しい」

「何が可怪しいの?」

 

作業が完了するのを待ち、見守りながら、リンディはゾイルの言葉に対して質問をする。

 

「フェイトとなのは達が向き合って、やり合っている相手に問題は無い。だが、問題は雄介の方だ……転生者の可能性が大きい」

 

今のゾイルの頭には、戦闘をしている雄介と同様の疑問と考えが浮かび、支配していた。

 

 

 

「これはフェイトの気と魔力か……? アルフとユーノも……。そうか、来た……来てくれたのか。これなら」

 

戦闘に参加をする事無く、俺は自宅で彼女等の戦いの様子を魔力と気の増減加減で想像していた。勿論魔力と気を最小限に抑えてだが。

そうしないと、相手側に仲間が居て、その仲間が此方に来る可能性が存在しているからだ。

 

――今直ぐにでも瞬間移動を使用して、戦闘をしている彼女等の元へと駆けつけ、サポートをしたい。

 

そんな気持ちではち切れそうではあるが、シェンの言葉を思い出して、何とか踏み留まる事が出来ている。

 

下手に介入をすると何が起きるのか分からない。

藪をつついて蛇が出て来るかもしれない。

それどころか全く別の、大きなヒト喰い狼を起こしたり、稀少古代種が出て来て暴れてしまう程の危険性があるのだ。

 

「だが、雄介の方は……相手の方がかなりのやり手の様だ。今の俺は参加出来ない……頼む、頑張ってくれ」

 

俺はただただ目を閉じて、祈る事しか出来なかった。

出来る限り何事も起きず、最低限の被害で済み、皆が無事で居る様にと。

 

そして、申し訳ないという気持ちもまた浮かんで来る。

この先に起きるであろう事を、人的被害を、更に先の出来事の為に見逃そうとしているのだから。

 

 

 

空中での戦闘を続けている少女達。

 

金色と赤とオレンジの光が線を引きながら度々ぶつかっては離れてを繰り返している。

遠くから見るとそれは、まるで小さな花火が上がっている様に思えるだろうか。

 

「このっ!」

 

赤い服の少女は、ハンマーを振りかざしてフェイトへと攻撃を試みるが、アルフの魔法で動きを阻害され、少女は空中で動きを止められてしまう。

アルフの魔法の効果で少女の両脚、両腕にRing Bindが発生して完全に動きを封じられる。

脱出しようと軽く藻掻いてはみるが、強固なつくりと複雑なプログラムで成り立っている魔法なのか、魔法を解除して脱出をする事に苦戦してしまう。

 

「終わりだね……名前と出身世界、目的を教えて貰うよ」

 

動きを封じる事に成功したフェイト達は、目の前の少女へと質問を開始しようとする。

 

だが、少女は身体に力を入れると同時に、体内の魔力を徐々に増大させていく。

 

「何かヤバイよ……フェイト!」

「――っ! うわあっ!」

 

突如、下の方から別の人物が登場して、フェイトへと攻撃をする。

 

フェイトは咄嗟の判断で、バルディッシュの柄の部分で防御をし、相手の攻撃により発生した大きな反動に抵抗をせずに後退をする。

 

「シグナム?」

 

「うおおおおおおおっ!」

 

アルフの方もまた、別の人物による攻撃を防御する。

最初の攻撃である左側への攻撃を防ぐのに成功するが、次いでの足による攻撃は防御出来ず、脇腹に当たって吹き飛ばされてしまう。

 

「レヴァンティン、カートリッジロード」

【Explosion】

 

フェイトを吹き飛ばした女性が手にしている剣型のデバイスから薬莢の様なものが、カートリッジが噴出される。

其れと同時に、彼女の魔力が、デイバイスから放たれている魔力が一気に増大する。

剣の刀身は膨大な熱の魔力で出来た炎を纏っていて、チリチリと火花を周囲に撒き散らしている。

 

「紫電一閃! はああああっ!」

「――ぁ!?」

 

剣を振るう女性の攻撃を相棒であるバルディッシュの柄の部分で防御するが、相手の女性が使用しているデバイスの切れ味が鋭く、バルディッシュは綺麗に真っ二つになってしまう。

 

【Defensor】

 

自身の主であるフェイトへの攻撃を、自律思考で防御魔法を発動させて守るバルディッシュ。

だが、完全な防御をするという事は出来ず、大きな爆発を起こしながらフェイトは吹き飛ばされてしまう。

 

「フェイトッ!!」

 

アルフは飛ばされてしまったフェイトの身を案じ彼女の元へと行こうとするが、もう1人の介入者である男性に行く手を阻まれてしまう。

 

「こんのぉっ……」

 

 

 

「フェイトちゃん……アルフさん……」

「不味い……。助けなきゃ! 妙なる響き、光となれ、癒しの円のその内に、鋼の守りを与えたまえ」

「え!?」

「回復と防御の結界。なのはは絶対……此処から出ないでね」

「うん」

 

なのはを中心にして、ユーノは印を結び、高位結界魔法であるRound Guarder Extendを展開する。

確認の為に出した言葉に対し彼女が頷いたのを見届けると、ユーノは上空で戦闘をしているフェイト達の元へと移動する。

 

 

 

「“熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)”!!」

 

無数の魔力弾を、光の盾が塞いでいる。

その盾には花の花弁の様なものが付いていて、数十発もの魔力弾を受ける度に1枚ずつ剥がれていく。

 

「し、志蓮!?」

「何してるんだよ……」

「お前……」

 

雄介の前へと立ち、志蓮は防御を続けていく。

花弁の枚数も少なくあと2枚となり、撃ち続けられている魔力弾による衝撃で自身の意志とは関係無く後退してしまう。

 

「…………」

 

「わかってるさ……滅竜奥義・改 紅蓮爆雷刃っ!!」

 

雄介の右手には炎が、左手には雷が纏っていて、そのまま目の前の竜人へと一撃を放つ。

その攻撃は見事に命中し、竜人の身体を燃やし、炎と雷で灼いていく。

そして、それらが爆発をして大きな煙が発生した。

 

「やったか……?」

「バカ野郎! フラグを建t」

 

攻撃は直撃し、大きな煙がモウモウと立ち籠めている。

だがその煙の中から雄介の放ったもとは別の電撃が飛んで来た。

 

「「――うわあああああっ!!」」

 

余りの速さに、雄介はその電撃を飲み自身の力に変換する余裕も無く、彼等は回避を選択する事しか出来ない。

そして煙が晴れる前にその中から別の攻撃が、白く鋭い爪がワイヤー状に伸びて、雄介と志蓮へと向かっていく。

それは彼等の身体に絡まり、動きを封じてしまった。

 

「クソッ……何だよ、これ?」

「抜け出せねえ……」

 

抜け出そうと足掻けば足掻く程にそれは身体に食い込んでいき、煙が晴れると同時に竜人は、その爪を振り回して、ワイヤーを解除する。

当然だが雄介達の身体も一緒に振り回され、コンクリートで出来たビルの中を通り、それらを打ち抜き、砕きながら飛んでいく。

 

 

 

 

「どうしたヴィータ……油断でもしたか?」

「うるせえよ! こっから逆転するとこだったんだ!」

 

紅い服を着た少女ヴィータは、シグナムに対し不貞腐れた様な声を出しながら顔を背ける。

シグナム達の助力により必要が無くなったのか、ヴィータが先程出していた大きな魔力は既に収まり、消えていた。

 

「そうか……それは邪魔したな。すまなかった」

 

ヴィータの態度に対しシグナムは落ち着いた様子で対応をし、彼女の動きを封じているRing Bindを解除する。

 

「だがあんまり無茶はするな。お前が怪我でもしたら、我らが主が心配する」

「わーってるよ……」

 

シグナムと呼ばれた女性。

彼女はピンク色の髪でロングストレートのポニーテールをしている。

彼女の手には剣型のデバイスであるレヴァンティンが握られていて、凛々しく、若く強い女騎士の様な印象を与えてくる。

 

「それから、落とし物だ……破損は直しておいたぞ」

「……ありがとう、シグナム」

 

シグナムは、ヴィータの頭の上にポンっといった感じに“のろいうさぎ”の人形が付いている赤い帽子を置く。

それは、なのはの魔力砲撃により吹き飛ばされてしまったものだ。

 

「状況は実質3対3……1対1なら我ら“ベルカの騎士”に――」

「負けは無え!」

 

その言葉と共に彼女等は戦闘をしているフェイト達の方へと向かう。

 

だがその途中、ヴィータは自身の持ち物を確かめる。

 

「――あれ!? 闇の書が……無い!」

 

確かに持って来て、先程まではあったのだ。

だが、今の彼女の手にはそれが、あるべき筈のものが無かった。

 

 

 

「大丈夫?」

「うん。ありがとう、ユーノ」

「バルディッシュも……」

 

崩れたビルの中、ユーノはフェイトのとこへの移動を完了し、彼女の身を案じる。

だが、怪我という怪我はしてはおらず、何故かほぼほぼ無傷だと言っても良いくらいだった。

 

「大丈夫。本体は無事……」

 

上と下に、真っ二つに斬られてしまった相棒を手に取り、金色の宝石部分を見、安堵をするフェイト。

 

【Recovery】

 

フェイトの言葉に応える様に、バルディッシュは自身の修復を開始と同時に完了させる。

上と下へと真っ二つに斬られたが、上の部分の方が下の部分をつくりだし、修復される。

下の部分の方は、放置ではあるが。

 

「ユーノ……この結界内から全員同時に外に転送……いける?」

「うん。アルフと協力できれば……なんとか」

「私が前に出るから、その間にやってみてくれる?」

「わかった」

 

 

 

『アルフも良い……?』

『ちょっとキツいけど、なんとかするよ』

 

アルフと戦っているのは、白い髪で青を基調とした“防護甲冑”を着た筋骨隆々とした青年だ。

彼もまた、アルフと同様で頭部に動物の耳の様なものが付いてい。

彼もまた、何かの動物を素体にした使い魔なのだろうか。

 

 

 

【Photon lancer】

 

フェイトの周囲に、金色に光り輝く4つの魔力弾が形成される。

 

「レヴァンティン、私の甲冑を……」

【Panzergeist!】

 

シグナムの身体から大きな魔力が滲み出ている。

それはまるで鎧の様であり、魔力自体が服の様に彼女を覆っている。

 

「撃ち抜け、ファイアッ!」

 

4つの魔力弾が一直線にシグナムへと飛んでいく。

だが彼女はピクリとも動かずただ目を瞑るだけで、回避も防御もしようとはしない。

魔力弾は見事に命中、直撃をするが、真っ直ぐに当たる事は無く、それはそれぞれ別の方向へと逸れ、弾き飛ばされていく。

 

「――っ!?」

「魔導師にしては悪く無いセンスだ。だが、ベルカの騎士に1対1を挑むには……まだ足りん!」

 

一瞬にしてシグナムはフェイトの目の前から消える。

彼女は右から直進、そして左折をしてフェイトへとレヴァンティンで斬り掛かる。

フェイトはその攻撃をDefenserで防ぐが、シグナムの斬撃は強い。そもそもDefenserは攻撃を防御するのでは無く、逸らす事が目的のものだ。真正面から受けたその攻撃で、障壁は紙の様に容易く破られる。

 

「っ……」

「はあああっ!」

 

障壁は破られたが柄の部分で攻撃を防御する。

今度は先程よりも高魔力でのコーティングをしているので簡単には斬られない。

 

お互いにそれぞれの得物に力を込め、反動によって大きく後ろへと退がる。

 

レヴァンティンにより、カートリッジがロードされる。

 

「レヴァンティン、叩き斬れ!」

【Jawohl】

 

再度のシグナムの攻撃がフェイトへと向かう。

バルディッシュの柄で受けるが、炎を纏っている刀身から繰り出される斬撃は更に強力なものになっていて、バルディッシュに大きなダメージを与える。

そのまま耐える事が出来ず、フェイトは背後に存在しているビルへと吹き飛ばされてしまう。

 

 

 

「はああああっ!」

「――ッ!」

 

グラーフアイゼンを使いユーノへと殴りかかるヴィータ。

ユーノの方もそれに対し防御魔を使用し、それと同時に結界の外への転送の準備に取り掛かる。

 

『転送の準備は出来てるけど、空間結界を破れない……アルフ!』

 

 

 

『こっちもやってんだけど、この結界滅茶苦茶硬いんだよ!』

 

アルフは動物形態へと姿を変えていて、相手の方もまた同じく動物形態をしている。

青年の今の姿からすると、アルフと同じ狼を素体にしたものだろう。

 

跳び掛かり、脚や爪での攻撃、牙で噛み付くなどを試みてはみるが、お互いの攻撃は当たる事が無く、牽制として行なっている様なものだ。

 

 

 

【Nachladen】

 

レヴァンティンに新しいカートリッジが装填される。

 

「(あれだ……あの弾丸……あれで一時的に魔力を高めてるんだ)」

「終わりか? ならばじっとしていろ、抵抗しなければ命まではとらん」

「誰が!」

 

ふらつく身体を立たせ、フェイトは上空に居るシグナムに相対する様に宙を飛ぶ。

 

その様子に感じるものがあったのか、シグナムはレヴァンティンを構え直す。

 

「良い気迫だ。私はベルカの騎士、“ヴォルケンリッター”が将、シグナム……そして我が剣、レヴァンティン。お前の名は?」

「ミッドチルダの魔導師、時空管理局嘱託、フェイト・テスタロッサ……この子はバルディッシュ」

「テスタロッサ、それにバルディッシュか」

 

 

 

「助けなきゃ……私が、皆を助けなきゃ!」

 

上空では戦闘が繰り広げられており、それぞれの特徴を現す魔力光が光り、それが軌跡を描いて激しく明滅を繰り返している。

 

そんな状況に、ただじっとしているという事は高町なのはには出来なかった。

ダメージが大きいからなのか、少し動くだけでも身体に鈍く強い痛みが疾走る。

 

【Master, Shooting Mode, acceleration】

「……っ!」

 

なのはの意志に応える様に、レイジングハートは桃色に光る魔力翼を展開する。

レイジングハートのその行動は彼女を、彼女の行動を後押しするかの様だ。

 

「レイジングハート……?」

【Let's shoot it, Starlight Breaker!】

「そんな……無理だよ、そんな状態じゃ!」

【 I can be shot】

「あんな負担の掛かる魔法。レイジングハートが壊れちゃうよ!」

【 I believe master. Trust me, my master】

「…………。レイジングハートが私を信じてくれるなら、私も信じるよ」

 

レイジングハートの揺るがぬ決意に、主を信じる心になのはもまた同じく決意をする。

そして彼女は、ユーノに言われた結界の外へと身を乗り出す。

 

レイジングハートを空へと掲げ、彼女の目の前には大きな魔法陣が展開される。

 

結界の外に出たからなのか、Starlight Breakerを撃つ際に発生する効果によるものか。Round Guarder Extendは打ち消され、解除されてしまう。

 

『フェイトちゃん……ユーノ君……アルフさん、私が結界を壊すからタイミグを合わせて転送を!』

『なのは!』

『なのは、大丈夫なのかい?』

『…………』

『大丈夫! スターライトブレイカーで撃ち抜くから!』

 

アルフを始め、心配をしてくれる皆に応える為に。

レイジングハートを握り締める力が強くなる。

 

「レイジングハート、カウントを!」

【All right. Count nine, eight, seven, six, five, four……】

 

「あの魔力……」

「結界を壊す気か」

 

収束されていく魔力に、ヴォルケンリッターが気付く。

だが、妨害をさせまいと、フェイト達は目の前の相手に執拗に、自分に釘付けになる様に必死に攻撃をしていく。

 

【Three, three, three……】

 

傷の入ったCDを読み込むオーディオ機器の様に、壊れたラジオの様に同じ数字を数えてしまうレイジングハート。

レイジングハートにも大きなダメージが存在し、蓄積されているのだ。

 

「レイジングハート、大丈夫?」

【No problem. Count three, two, one……】

 

持ち直し、再びカウントの続きを始めるレイジングハート。

 

「「うわあああああああああっ!!」」

 

「「「「」――!?」」」

「「「…………」」」

 

なのはとレイジングハートが結界の破壊をする為にStarlight Breakerのチャージをするなか。

雄介と志蓮の2人がなのはの後ろを勢い良く飛んで行く。

そんな2人を追いかけて来る竜人。

だが、竜人は結界を壊そうとしているなのはに標的を変え攻撃の体勢に入る。

 

「「――させるかああああああっ!!!」」

 

なのはの背後へと巨大な爆炎の球が、黒と白の二振りの短剣が飛んでいく。

それが、竜人の放った電撃を相殺し、彼女を爆風で煽りながらも、直撃コースの攻撃を防いだ。

 

「今だっ」

「撃てえーっ!」

 

だが、更に彼女の砲撃を妨害する出来事が起きる。

 

腕だ。

ヒトの腕が、なのはの身体を貫いていた。

その手のなかには、桃色に、ピンクに光り輝いている小さな球体が浮かんでいる。

その球体から大きな魔力が発せられている。

そこから導き出されるのは、それが高町なのはのリンカーコアだという事だろう。

 

その光景は異常であり、非情であり、見ているだけでも非常に痛いものだ。

受けているなのは自身が感じている痛みは、それ以上に酷いものだろう。

 

「「…………」」

「なのはーっ!」

 

フェイトは、謎の魔法の対象になっている親友の元へと駆け付けようとするが、シグナムがそれを阻む様にして立ち塞がる。

 

 

 

「リンカーコア、捕獲。収集開始!」

【Sammlung】

 

なのは達の居る場所とは、遠く離れ、それでいて彼女等全員を視界に入れる事が出来る場所。其処に緑色の“騎士甲冑”を着た女性が1人居た。

その女性の言葉と共に、なのはの身体を貫通している手の内にある魔力球が小さくなっていく。

そして、それが小さくなっていくと同時に、書物型のデバイスである闇の書に文字が自動的に記載されていく。

 

 

 

【Count zero】

「スターライト……」

 

大きな傷みを感じながら、自身の身体に起きている不可思議であり、可怪しな現象に驚きと恐怖、そして痛みを感じながら、なのははレイジングハートを振りかざす。

 

「――ブレイカアアアアーッッ!!!!」

 

レイジングハートが振られると同時に、宙に浮かび待機していた大きな魔力球は高速で空へと放たれ、強固なつくりである結界を破壊した。




約一ヶ月ぶりなのかな。
ちょっとずつ書いて、何とかかたちに成ったから投稿。

誤字脱字も多くて、修正が大変。此れで大丈夫だと思い込んでいるから、間違っているのにそれに気付かないままで投稿してしまうなんて言う事も頻繁にある。
まあ、極力出て来ない様に、少なくなる様に気を付けてはいるけど。

また、書けたら投稿します。
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