魔法少女リリカルなのはZ   作:りおんざーど

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帰ってきた2機の相棒達 叫べ、新たなる名前を!

 12月5日午前6時335分。

 保和家地下24階。

 

「…………」

 

 なのはは意識を深いところへと潜らせ、集中をしている。

 彼女の身体のなかから僅かながらも魔力が出、それが両手のなかに目に見えるかたちとなって出て来るがそれも一瞬の事。

 その小さな魔力の塊はあっという間に霧散し、消えてしまう。

 

「まだ、駄目みたいだな」

「そうだね……」

 

 リンカーコアから魔力の大部分が募集され、数日の間ではあるが魔力の使用に制限が掛かってしまったなのは。

 何事も無く、これといった問題も起こる事が無い侭に時間は経過し、小さくなっていたリンカーコアは修復され、元の大きさに戻りつつある。

 だが、まだ本調子では無いのか上手く魔力を結合させる事は出来ないみたいだ。

 

「それなら……」

 

 もう一度、両手の中へと魔力を集中させていく。今度は魔力だけでは無く、気も含めてだ。

 

 みるみるうちにして、その桃色に光り輝くエネルギーの塊は小さな球形へと変化していく。

 

 5分ほど時間が経過したが、それが消えるという事は無く、維持をし続ける事が出来ているみたいだ。

 

「そんなに(りき)むなよ、って言っても無理なのかな」

「私は大丈夫だから」

 

 なのはの横の方では、フェイトが木刀を手にして素振りをしている。

 こちらの言葉を流しながら、フェイトは只管バルディッシュの代わりである木刀を振り続ける。

 

「それにしても、気って凄いね。魔法での身体強化した時の力がまるで、赤ん坊みたいに感じる」

「そうか? 結局は使い方だしな……ベクトルや使用方法、操作方法とかが違うだけだぞ。アルカンシェルやロストロギア(古代遺産)などの技術とかを使用すれば、これ以上の力を扱えるようになるし」

 

 木刀が振られる速さはとてつもなく、残像が見える程のものだ。

 上下に振られる度に、空気を斬り裂く音が閉鎖されている空間内で響いていく。

 

 なのはもフェイトも、2人とも先日の戦闘で負けた事が相当に悔しかったのだろうか。何も出来ずという事は無いが、大事な友達を守れなかった事が。闇の書の守護騎士達との間に存在する力の大きな開きを感じ取って。

 

「さて、と……それじゃ、お前等。全員で俺に攻撃をしてこい」

「え?」

「どうしてだよ?」

「今のお前等じゃ、デバイスを強化しても敵うかどうか怪しい。だからこその組手だ。俺は諸事情で戦闘に表立って参加出来ない。あと、自分より強い奴とやり合う時もあるだろうし、少しはマシになる筈だ。それに……」

 

 ――俺達転生者が知っている正史と呼べるものとは違う方向へと進んでいっており、ヴォルケンリッターも強くなっている。

 

 ――他の異常事態(イレギュラー)などが起きて、予想外のものが出て来る可能性も存在している。

 

「それに?」

「何でも無い、気にするな。それじゃ、始めるぞ」

 

 その言葉と同時に、俺は彼女等へと向けて気弾を発射する。勿論威力は抑えてあり、回復魔法を使用すると直ぐに塞がる様な傷が出来る程度の威力でだが。

 それでも、何もせずに真正面から喰らってしまうと、強烈な痛みを感じると同時に気絶をしてしまうだろうが。

 

「な、何をするんだよ!」

「始めると言った筈だ」

 

 繰り出される無数のエネルギー弾を思い思いの方法や手段を用いて回避していく皆。

 

「避けてるだけじゃ、意味が無いぞ。彼奴等はこの攻撃よりも速く強い威力のものを繰り出してくる可能性がある。と言うかお前等、さっさと反撃して来いよ!」

「そんな事言われてもよお」

「避けるだけで精一杯だよおっ」

 

 天井付近から床へと降り注いていく気弾のシャワー。

 俺は抗議の言葉を無視して、それらを下に居る彼等に対して執拗に、容赦という感情を捨て、次々と連続発射していく。

 

 転生者であるが為に身体能力が高いのか、雄介と志蓮、ドゥームは反撃をするという事は難しそうではあるものの、避けるという行為自体には余裕が生まれ始めてきている。

 

 なのはとユーノの方は彼等程では無いが、避ける事に成功をしている。

 

 そしてフェイトとアルフだ。

 彼女等は、俺の想像をしていたものよりも動きが速く、爆風に煽られながらも回避をしていく事が出来ている。

 

「(本当は雄介達も前に出て戦うというのは止めるべきなのかもしれない。だけど、話を聴く限りでは謎の相手――転生者らしき奴――と戦ったとか……)。ほら、次行くぞ!」

「止めてくれ~!」

「勘弁して~」

 

 傷1つ付かない訓練場の中で、来る時に向けて訓練を続けていく。

 

 青く光り輝く無数の気の塊が、その場に居る俺以外の皆を吹き飛ばしていった。

 

 

 

 教室の中に居る生徒等は、教壇に立っている教師を前にして静かにしている。

 だが次の教師の放った言葉に、生徒等は騒ぎ始める。

 

「さて皆さん、つい先週急に決まったんですが、今日から新しい友達がこのクラスにやって来ます。海外からの留学生さんです。フェイトさん、どうぞ!」

「――失礼します!」

 

 その教師の言葉の後に、扉が恐る恐るといった感じで開かれて、フェイトが教室の中に入ってくる。

 彼女の動きはとてもぎこちなくて、ゼンマイ仕掛けのロボットのようにカチカチとした、ガチガチといった感じをしている。

 見知らぬ場所、なれない環境、そして衆人環境の前であり、その複数の視線が自分に集中しているのだから緊張してしまっても仕方が無いだろう。

 

 だが、そんな中でも、見知った者達が居てくれるというだけでも十二分に勇気などの気持ちが湧いて出て来るものだ。

 

 教室に入ったフェイトを見て、周りの生徒達が先程よりも大きくザワザワと騒ぎ、どよめき始める。

 

「あの……フェイト・テスタロッサといいます。宜しくお願いします」

 

 自己紹介が終わり、生徒達による笑顔での拍手が教室内に響き渡る。

 その瞬間、緊張が薄まり安心をしたのか。フェイトは柔らかな笑顔を浮かべた。

 

 

 

「ねえ、向こうの学校ってどんな感じ?」

「わ、私、学校には……」

「すげえ急な転入だよね? なんで?」

「いろいろあって……」

「日本語上手だね。何処で覚えたの?」

「前に住んでたとこって、どんなとこ?」

「えと、あの、その……」

 

 次々と、矢継ぎ早に繰り出されていく数々の質問に対し、フェイトは戸惑い、しどろもどろになりながらも何とか答えていく。

 だが、生徒達の好奇心は治まるどころかより一層加熱していき、より沢山の質問が寄せられていく。

 

「フェイトちゃん、人気者」

「でもこれはちょっと大変かも」

「しょうがないわね……はい、はい! 転入初日の小学生をそんなに皆でワヤクチャにしないの!」

「アリサ……」

「それに質問は順場に! フェイト、困ってるでしょ!」

 

 見かねたアリサが彼女等の方へと向かい、質問攻めをしていた生徒等に注意をする。

 すると、それは鶴の一声の様にして、騒ぎ立てていた生徒達は静かになる。そして、質問をする順番を相談し始めた。

 

「向こうの学校ってどんな感じ?」

「えっと……私は普通の学校には行ってなかったんだ。家庭教師というかそんな感じの人に教わってて」

「へえ、そうなんだ」

 

 順番を決めたは良いが、それでも訊きたい事は沢山あるのだろう。

 フェイトに対して次々と質問が投げかけられ、アリサはその仲介役をする。

 

「どうしたんだ、ブロン?」

「いや何……俺の時もあんな感じだったかなと思ってな」

 

 他の学校でさえ、転入生とう存在は稀であり、珍しく感じられるものだ。

 況してや、この学校は偏差値などのレベルが高く、並大抵では入る事は出来ない。だからこそ、余計に珍しく感じられる筈。

 そして転入して来たのが、可愛らしい少女なのだ。興味を抱かない方が可怪しいのかもしれない……そのように思えてしまう程の様子だ。

 

「そうだったな、確かにあんな感じだったか」

「あの時のお前は魔力を無駄に出していたし……喧嘩を売っているのかと思ったぐらいだぞ」

「そ、そうか?」

 

 あの時アリサは、今の様に仲介役を買って出てはくれなかった。まあ、志蓮に対しての対応で大変だったのだろうから仕方が無いだろう。

 

「何だかな……。(何時まで経っても俺は……。こんな小さな事で気持ちを乱れさせてしまうなんてな。まるで拗ねている我儘な小さな子供みたいだな)」

 

 そうこうしているうちに、休み時間終了を告げるチャイムが鳴り響く。

 訊きたい事を一通り訊き終えた生徒も、まだ質問をしたい生徒も皆、それぞれの自分の席へと向かい座る。

 そして2分と経たずに教師が教室へと入室して、授業が開始された。

 

 

 

《クロノ君、駐屯所の調子はどう?》

「機材の運び込みは済みました。今は、周辺探査のネットワークを」

 

 ある程度の作業は終了し、クロノは休憩がてらに空間モニターを使用してレティ・ロウラン提督と通信をしていた。

 

 レティ・ロウラン。彼女は、クロノの母親であり上司でもあるリンディの同僚であり、友人でもある。

 

《そう。ご依頼の武装局員一個中隊は、グレアム提督の口利きのお陰で指揮権は貰えたわよ》

「有難う御座います、レティ提督」

《それから、グレアム提督のとこの使い魔さん達が逢いたがってたわよ……可愛い弟子に逢いたいって》

「リーザ達ですか……。その、適当にあしらっておいてくれますか?」

《わかったわ。それじゃ、程々に頑張ってね》

「はい。レティ提督お方も」

 

 空間モニターを通しての通信を終了させる。

 それと同時に廊下の方からエイミィが部屋へと入って来る。

 

 数十冊の本を抱えながら、ブロンの方も遅れて入室をして来る。

 

「クロノ君。どう? そっちは?」

「武装局員の中隊が借りられた。捜査を手伝って貰うよ。そっちは?」

「良くないね。昨夜もまたやられてる。今までより少し遠くの世界で、魔導師が十数人、野生動物が約四体」

「野生動物?」

「魔力が多い大型生物……」

 

 エイミィが投影型のキーボードを操作する事で、空間モニターには募集されたであろう動物と同種のものが写されている写真が映しだされている。

 

「リンカーコアさえあれば、ヒトで無くても良いみたい」

「当に形振り構わずだな……」

「でも、闇の書のデータを見たんだけど……何なんだろうね、これ?」

 

 映像が闇の書のデータが記載されているものへと変わる。

 

「魔力蓄積型のロストロギア……魔導師の魔力の根源となるリンカーコアを喰って、そのページを増やしていく」

「全ページである666ページが埋まると、その魔力を媒介にして真の力を発揮する。次元干渉レベルの巨大な力をね」

「で……本体が破壊されるか、所有者が死ぬかすると白紙に戻って別の世界で再生する、と……」

「様々な世界を渡り歩き、自らが生み出した守護者に守られ、魔力を喰って永遠を生きる。破壊しても何度でも再生する、停止する事の出来ない危険な魔導書」

「それが闇の書……」

 

 守護騎士プログラムによる4体の守護騎士―ヴォルケンリッターが存在し、それを守護している。

 そして、謎の竜人の存在もあるのだ。

 

 守護騎士4人と竜人の捕縛。運が良ければ、上手く事が運んだ際にはそのまま闇の書の主を捕縛する。

 

 だが、守護騎士は古代ベルカ式のカートリッジシステムを使い熟している強者等。

 そして、破格の強さを誇る筈の転生者である雄介等を軽くあしらった竜人という大きな壁。

 

 捕獲をする事が難しく、完成してしまえば止める事が困難どころかこの星への被害に対して目を瞑りながら闇の書に対処しなければいけない可能性もあるのだ。

 そして何よりも転生者という存在が居る事が悪影響を及ぼして、更に厄介な事に成り得る可能性もある。

 

「私達に出来るのは、闇の書の完成前の捕獲?」

「そう。あの守護騎士達を捕獲して、更に主を引きずり出さないといけない」

「まあ、それが難しいんだがな」

「ところで、ゾイル。君は何をしてるんだ?」

「見れば分かるだろ? 読書だよ、読書。この世界の娯楽は素晴らしいと思わないか? ミッドチルダにも多少は入ってきているが、それでは足りない。是非、買って持って帰ろう。そして布教をしよう」

 

 ゾイルの熱の入った目と言葉に気圧されながら頷くクロノ。

 

 ゾイルの手には漫画が、そしてスタープラチナ・ザ・ワールドの手にはライトノベルと思しき文庫本が1冊ずつあり、次々とページを捲りながら黙読をしている。その速さは速読の範囲に収まるものでは無く、捲ったと思ったら直ぐに次のページに捲っているといった風であり、床には読んだ後のものなのか無数の本が山積みされている。

 紙を捲る度に、風切り音が鳴る。

 

「ク、クロノ君……ほ、本が……」

「ああ、浮いているな」

 

 エイミィは宙に浮いている本を、独りでにページが捲れていく本を見て、驚きを隠せないでいる。

 

 クロノの方も同じく驚いている。

 だが、その理由はエイミィのものとはまた別の理由だ。

見えているのだ。薄ぼんやりとではあるが、スタープラチナ・・アルティメットが。その存在を視認する事が出来ているのだ。

 

 幸いと言って良いのかクロノとエイミィの2人はスタンドである幽波紋(スタンド)に関する知識を少しではあるが持っている。

 その為に驚いたのはほんの一瞬だけであり、直様気を持ち直す。

 

 だが――。

 

「(こちらを見ているのか?)」

 

 スタープラチナ・アルティメットは本へと向けていた目を、クロノの方へと一瞬ではあるが向けた。

 少なくともクロノにはそう見えた。

 

 睨んできた訳では無い筈なのに、クロノは、純粋な力の塊であるそのスタープラチナ・アルティメットの一瞬の行動に対して大きな恐怖と畏れを感じ、目を背けてしまう。

 

「どうした、クロノ?」

「嫌、何でも無い……」

 

 再びスタープラチナ・ザ・ワールド・アルティメットの方へと向けると此方へ一瞥する事も無く、ただただ本を読んでいる。

 

「で、ゾイル君はどう思う? 闇の書の事」

「そうだな……あれはかなり厄介なロストロギアだ。だが……あれが闇の書にかいへ……なって、そう呼ばれる様になったのは……まあ良い。助力はするが、解決そのものはしない」

「ああ」

 

 先ほど感じた気持ちを振り払い、誤魔化すようにして話を戻すクロノ。

 黙読をしながら、言葉を返し頷くゾイル。

 

「それにしても驚いたな……」

「何がだ?」

「この本さ。前世で読んだのと同じものだ」

「それの何処が可怪しいの?」

「この本は本来なら、俺の元居た世界での年代的には2年前に発売されている筈のものだ。そして、この世界とは別の世界だから存在していなくても可怪しくは無いのだが」

「存在し無かった筈のものが存在している……その本の著者も前世の記憶を持っているという事か?」

「それって」

「ああ……」

 

 記憶の摩耗によって、一言一句全てが同じかどうかは判別も判断、そして断定は出来ない。

 だがそれでも、大まかな内容などが前世で見たであろうものと一致している。記載されている作者名や出版社名などの名称迄もが。

 発売時期などがただズレているだけであれば良い。

 だが、そうで無いのであれば。

 

「逢ってみたいものだな……」

 

 

 

「フェイトちゃん、初めての学校の感想はどう?」

「歳の近い子がこんなに沢山居るのは初めてだから、何だかもうグルグルで」

「まあ、直ぐに慣れるわよ、きっと。ブロンだってそうだったでしょ?」

「お、そうだな」

「うん、有り難う。だと良いな」

「よお、お前等」

「兄さん」

「ドゥームじゃないか、どうしたんだ?」

 

 廊下を歩いていると目の前から見知った顔が近づいて来た。

 

 ドゥーム・テスタロッサだ。

 今の彼は、俺と同じ様に変身魔法を使用している。と言っても少し変化しているだけで、額の水晶を消した。というよりも見えないようにしただけというべきだろうか。

 

「こんにちは」

「ああ。こんにちは、だな」

「ちょっと、雄介! 失礼じゃ――」

「構わないよ。俺からそう呼んでくれと頼んだからな……そうだな。君達にもお願いしようかな」

「それはちょっと……」

「そうか……では改めて。と言うか、引っ越しの時には挨拶が出来なかったからな。俺の名前はドゥーム……ドゥーム・テスタロッサ。フェイトの兄だ。宜しくな」

 

 ドゥームは、俺達と違って1つ上の学年だ。

 

「何だか、奇妙な……新鮮な感じだな。フェイトと離れて活動をするというのは」

「そう、だね」

 

 何から何まで、何時如何なる時もとまではいかないが、殆ど一緒に行動をしていたのだ。

 母親であるプレシア・テスタロッサの命令を受けた時は勿論、それ以外の時でも。

 

「兄さん、学校の方は?」

「良いところだと思う。平和で、伸び伸びと安心して暮らせる良い国だ。そしてこの学校……生徒皆が楽しそうにしている。教師の教え方もリニスに引け劣らない程に優しく理解り易いし。お前はどうなんだ、馴染めそうか?」

「皆優しくて、直ぐに馴染めるかな……」

「そうか。それは良い。是非、フェイトと仲良くしてやってくれ」

「「「はい」」」

「言われなくても」

「あ、当たり前だ。嫁に優しくするなんて当然の事だろう」

 

 廊下の窓から見える外は中庭になっていて、其処には沢山の生徒が楽しそうに話をしたり、遊んだりしている。

 

 開かれている窓から心地の良い軟風が吹き入れ、髪がなびき、その冷たい風が肌を撫でていく。

 

「その……質問何ですが、リニスって?」

「家庭教師のような立場の人かな……。いや、家庭教師というよりも家政婦?」

「ああ。教室でのやり取りで出てきた家庭教師みたいな人って、そのリニスって人の事?」

「うん。そうだよ」

 

 リニス。

 テスタロッサ家で飼われていたミッドチルダの山猫の名前だ。

 フェイトの姉であるアリシア・テスタロッサとよく遊び、プレシアが家に帰ってくるのを待っていた。

 そして、次元航行エネルギー駆動炉ヒュードラの暴走。それにより、アリシアと山猫としてのリニスの生命が消えたのだ。

 アリシアの遺体は保存され、彼女の細胞を使用してフェイトとドゥームが生まれる。

 リニスはプレシアにより使い魔としての第ニの生が与えられ、フェイト達の面倒を見る事になった。

 約束された期限が来るまでの間……そして――。

 

「授業に遅れる様な事はするなよ」

「うん。理解ってる」

 

 軽く言葉を交わし終え、ドゥームはゆっくりとした足取りで離れていく。

 

 俺を含めたフェイト達は、ドゥームが離れていくその後姿を見送った。

 

 

 

 風芽丘図書館。

 

 柔らかな夕陽が射し込んできていて、中で読書をしている人達を優しく照らし、包み込んでいる。

 

 俺は本を借りに来ている。「私も行くから一緒に行かない?」というすずかの好意い甘え、月村家の所有する車でこの図書館へと連れて来てもらったのだ。

 

 周りの人達は読書をしたり、勉強をしたりと、それぞれ集中をしている為かとても静かなもので、聞こえて来るのは本のページを捲る音と文字を書く際に出る筆音、そしてキーボードなどを叩いているであろうタイピング音くらいだろうか。

 

「はやてちゃん!」

「――あっ! すずかちゃん!」

 

 目当ての本を手に取ると同時に、すずかは知り合いを見付けたのか横の方へと首を向けて声を掛ける。

 呼ばれた彼女はそれに気付いたのか応えるようにしてすずかの名前を呼び、付き添いであろう女性は足を止めた。

 

「すずかちゃん、今日は何借りたん?」

「うん、童話の本なんだけど。何だかちょっとジンとくる感じ本なの」

「あ、童話、私も好き。面白そうやね」

「読んでみる? 1巻がまだ、棚にあったよ」

「うん! 後で見てみる」

「はやてちゃんも童話好きなんだ!」

 

なのは達と居る時と同じくらいに愉しそうにしているすずか。

その様子を見てみると、目の前の彼女とも親友の様な関係なのだろうと感じ、思える。

 

「(と言うか、どう考えても八神はやてだよな……シグナムも居るし……ああ、接触してしまったよ……)」

 

 元々正史通りに闇の書から彼女等を救い出すというのは考えていた。

 だが、接触をしてしまったが故なのか、その考えと気持がより一層強くなる。

 放っては置けないのだ。知り合いとなった今では余計に。実際に会い、見てしまったが故に。

 

「で、すずかちゃん……其処に居る子は、もしかして」

「友達の保和歩栄君。図書館に行こうとしていたらしくて、私もちょうど行こうと思ってたから、誘ったの」

「そっか……なら」

 

 そう言いながら彼女は此方へと顔を向ける。

 

「始めまして。八神はやて、いいます」

「始めまして。保和歩栄だ。ブロンで良い」

「なら、ブロン君で。私の事もはやてで良えよ」

 

 茶髪であり、おかっぱ頭で合っているのだろうか。

 柔らかな感じの関西弁で喋り、車椅子を使用している。

 そして、自分から名乗ったのだ。

 知識内に存在している特徴と合致している。

 これで、彼女が闇の書の主であり、今回の事件のキーパーソン、知識内に存在していた八神はやてと同一人物と呼べる娘だと断定をして良いだろう。

 

「…………」

 

 こちらの様子を静かにうかがっているシグナム。

 

 俺は今、魔力を微量消費しながら変身魔法を使用している。

 その事に気が付いて警戒をしているのか。

 それとも、ただ単純にはやてを気に掛けているだけなのか。

 その両方である可能性もあるだろう。

 

 表立って何かをしてこないというのは、目の前には主であるはやてとその友人であるすずかが居り、その2人に対して配慮をしている為なのか。

 

「シグナム」

「はい」

 

 はやての呼びかけに応え、此方へとゆっくり近付いて来るシグナム。そして、お互いに自己紹介を終え、軽く握手をしてみる。

 

 彼女の身体はベルカの騎士を名乗るだけの事はあって、かなりの力があるのを感じ取る。

 女性という事もあり、身体は少し細い。だが強靭な筋肉が付いており、動きも他のヒトとは違う。

 

 プログラム体であるというのにも関わらず、彼女の身体からは体温と心臓の鼓動などが感じ取れる。

 やはり、ヒトと対して変わらない。身体が炭素で構成されているか、データが元になっているかの違いだけだといったふうだ。

 

「(……何故俺はこんな事に気付くんだ? どうして、こんな事に関する知識なんて全く無い筈なのに……)」

 

 シグナムを見て、気付いた事に疑問を感じながらもはやてとすずかの方へと目を向ける。

 

「すずかちゃんと同じで、何も訊かへんのやね」

「訊いて欲しいのか?」

 

 そう言う八神はやては、足が悪いのか車椅子を使用している。

 前世の知識を頼りにすると、闇の書が影響を与えている筈だ。

 

「別にそういうんや無いんやけど……」

「気にするな。俺は何も気にしていない」

「優しいんやね」

「俺が優しい? 違うな。間違っているぞ、はやて。すずかは兎も角として、俺の場合はただの偽善だ」

 

 そう。

 自分が傷付くのが嫌であり、怖いだけなのだ。

 ちょっとした小さな事であろうとも、他者を傷付ける事と自身が傷付く事の両方を恐れているのだ。

 だからこそ、当たり障りの無いであろうとも思える事を言い、行動する。

 それが傷つけ傷付く事もあるが、結果的に、たまたま自身にとって良い方向へと向いているだけ。

 そしてそれがもし、結果が自身にとって悪い、嫌な方向へと向いてしまうとどうなるのだろうか。

 

「(考えるな……そんな事を考えても無駄なだけだ。時間的にも精神的にも)」

「どうしたん?」

「顔色悪いよ」

「いや、何でも無い……」

 

 一度浮かび上がった考えは頭の中から消えるという事が無く、留まり続ける。

 そういったものを隠すようにして、彼女達からの心配の声に対して簡単に応える事しか出来なかった。

 

 

 

「有難う御座いました」

「なのはー!」

「検査結果どうだった?」

「無事完治!」

「こっちも完治だって」

 

 なのはの体内にあるリンカーコアの大きさが完全に戻った。

 

 そして、ユーノとフェイトの手には修復が終了したレイジングハートとバルディッシュが。

 

 なのはに自身の完治が完了した事を教える様に、レイジングハートがキラリと光る。

 

「良かった」

「有り難う、フェイトちゃん、ユーノ君、アルフさん」

「まあ、無事で良かったよ」

「また頑張ろうね、レイジングハート」

【Of course, my master】

「それじゃあ、僕はエイミィさんに連絡するね」

「うん、お願いするね」

 

 

 

「そう……良かった! 今、何処?」

《2番目の中継ポートです。あと10分位でそっちに戻れますが》

「そう。じゃあ戻ったら、レイジングハートとバルディッシュについての説明を――」

 

 ユーノとエイミィが空間モニターを通して、報告を兼ねた会話をしていると、突然にエイミィの居る駐屯所のなかでけたたましく警報が鳴り始める。

 

 その警報の原因を探ると、空間モニターにはとある地点の座標が表示されていた。

 

「――こりゃ不味い! 至近距離にて緊急事態!」

 

 

 

《都市部上空にて、捜索指定の2名を捕捉しました! 現在、強装結界内部で対峙中です》

「相手は強敵よ。交戦は避けて、外部から結界の強化と維持を!」

《了解!》

「現地には執務官を向かわせます」

 

 

 

 結界内で、10名の武装局員、そしてヴィータとザフィーラが向かい合っている。

 

「管理局か……」

「でもチャラいよ、此奴等。返り討ちだ!」

「だが、警戒はしておけよ。もしもの事があれば主が――」

「わーってるよ。はやてには笑顔でいて欲しいもんな……」

 

 ヴィータがグラーフアイゼンを握り攻撃をしようとした時、局員全員が道を開けるようにして後ろに退がり始める。

 

「――上だ!」

「スティンガーブレイド、エクスキョーションシフトッ!」

 

 ザフィーラの言葉に反応して、上を見上げるヴィータ。

 だが、攻撃の準備が既に完了していたのか、刃の形をした100もの魔力弾が彼女等に向けて降り注いていく。

 

「――っちぃ!」

 

 魔力弾が命中し、大きな煙が発生する。

 

「少しは通ったか?」

「いや、駄目だな。気を抜くなよ」

「分かってるよ」

 

 大量に魔力を魔力弾に込め消費したのか、クロノは肩で息をしている。

 煙の向こうにある魔力と気はそれ程の変化を見せておらず、相手の2人が未だ健在である事を理解させて来る。

 

「ザフィーラ!」

「気にするな。この程度でどうにかなる程、軟じゃ無い!」

 

 煙が晴れると、何事も無いかの様にザフィーラとヴィータが居る。

 ただ、変化と言えば、ザフィーラの腕には3本の魔力弾が刺さっている位だろうか。どうやら防御をして、腕に刺さってはいるが難無く耐えた様だ。

 そして、ザフィーラは腕に力を入れ、刺さっている魔力弾を粉砕してみせた。

 

「凄いな。少し力を入れるだけで刺さっている魔力弾を壊すなんて」

「あんなの、君にも出来るだろ」

「ああ、まあな。だが、並大抵の魔道士には出来ないだろうさ」

 

「この前のとは違う奴らだな」

「彼奴、かなり強いぞ」

「ああ」

 

 ヴィータとザフィーラの目は、真っ直ぐにゾイルを貫いている。

 数々の戦いをしてきたであろう彼女等には、正体迄は理解からずとも柱の男であるゾイルが強敵だという事が、戦わずとも一瞬で理解をする事が、そして感じ取る事が出来た。

 

「アルティッミット・バインド……」

 

 そのゾイルの言葉と同時に、ヴィータとザフィーラ彼女等2人の動きを封じる様に、要腕と両脚に鎖状のBindが巻き付く。

 

「クソッ、解除出来ねえ」

「かなり難解で入り組んだプログラムなんだ」

「安直な名前だと言う事は重々理解しているが、効果は折り紙付きだ。どれだけ藻掻いても、今の状態だとどうしようも無い。大人しくしていろ。そして捕縛されろ」

「誰がするかよ!」

【Explosion】

 

 ヴィータのその言葉に応える様に、グラーフアイゼンから薬莢が飛び出て、彼女の魔力が増大し、大きくなる。

 

「ほう……」

 

 無理やり引き千切る様にして、自身とザフィーラの動きを封じていたBindを解除した。

 それを見て、ゾイルの口の両端が自身の意志とは関係無く釣り上がる。

 

「どうだ!」

「ふむ。威勢だけでは無い、か……。改良の余地があるな……」

 

 グラーフアイゼンが排莢をした薬莢が、地へと落ちていく。

 かなりの高度で飛行をし続けている為に、落ちていった薬莢が地面に打つかる音は聞こえて来ない。

 

「……お前、何処かで会わなかったか?」

「何だ? プロポーズか?」

「ち、ちげえよ」

 

 ヴィータはゾイルを見ていると、何かが頭のなかで引っ掛かっている様な気がしていた。

 それが何故なのか、一体何なのかという事は理解が出来ないでいる。

 

 グラーフアイゼンを握る手に汗が出る。

 

「そうだな……。俺とお前達はかなり昔に数度……何度か会っている」

「何……!?」

 

 柱の一族として生まれ、一族を滅ぼし、かなりの年月が経過した。

 そして最後の柱の男として次元世界を渡り歩いている時だ。ゾイルはヴォルケンリッターと戦闘をした事があった。

 まあ実際のところは戦闘というよりも、ゾイルが近付いて来る虫を払ったかのように一瞬でケリがつき、ヴォルケンリッターが撤退をして行っただけなのだが。

 

「(だが……その時よりも強くなっている気がするな)」

 

 向かい合っている両組は強く視線を交わし、睨み合っている。

 その重く苦しい緊張を切り裂く様にして、エイミィからの通信がクロノとゾイルに入る。

 

《武装局員、配置終了! OK、クロノ君、ゾイル君!》

「了解!」

「了解した」

《それから今、現場に助っ人を転送したよ!》

 

 

 

「レイジングハート!」

「バルディッシュ!」

 

 彼女等2人の少女の手には修復が完了したデバイスが乗せられている。

 

 マスターである少女等二人の言葉に応える様にして、宝石部をキラリと光らせるデバイス達。

 

「「セーット、アーップ!」」

【 Order of the setup was accepted】

【Operating check of the new system has started】

【Exchange parts are in good condition, completely cleared from the NEURO - DYNA - IDENT alpha zero one to beta eight six five】

「こ、これって……?」

 

 だが、いつもの様にバリアジャケットの展開、そしてデバイスの変形が行われない。

 

「今までと、違う……」

《2人共、落ち着いて聴いてね。レイジングハートとバルディッシュは新しいシステムを積んでるの》

「新しいシステム?」《その子達が望んだの。自分の意志で、自分の想いで! 呼んであげて、その子達の新し名前を!》

【Main system, start up】

【Haken form deformation preparation: the battle with the maximum performance is always possible】

【An accel and a buster: the modes switching became possible. The percentage of synchronicity, ninety, are maintained】

【Condition, all green. Get set】

【Standby, ready】

「レイジングハート・エクセリオン!」

「バルディッシュ・アサルト!」

【【Drive ignition】】

 




すまない……2~3ヶ月の間に投稿すると言っておいて、結局出来無くてすまない……。

時間を無駄に掛けた癖に、相変わらず構成も、文体も、表現も滅茶苦茶ですまない……。

その所為で、読み難い作品ですまない……。

つまらない作品ですまない……。


とまあ、謝罪は置いておいて。
何とか書き続けています。雲隠れをするつもりはありません。


それなりに日数が経過してしまいましたが、リーゼロッテ役だった松来未祐さんが亡くなられたそうですね。
訃報を耳にした時、かなり落ち込んでしまいました。
今更感はありますが、どうか安らかに、といった気持ちと想いで一杯です。

不謹慎かもしれないですが、「安らかに」という言葉を言ったり聞いたりすると、ヴァルヴレイヴのワンシーンが浮かび上がって、吹き出しそうになってしまいます。
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