魔法少女リリカルなのはZ   作:りおんざーど

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黒き龍の力の暴走 斬り裂け! コラプサー!

「はじめまして、と言うべきだろうか……なあ、八神竜人」

「俺を知っている? まさか、あいつの事も!?」

「当然だ、管理局の情報網を舐めるなよ。ちょいと調べれば出て来るんだよ」

 

 竜人と向かい合い挨拶と同時に軽く挑発をしてみせる。

 

 実際のところ、管理局の情報網を使用したのでは無く、稀少技能(レアスキル)を使用して知った事なのだが。別に言う必要は無いだろう。

 

 転生者についてはまだ知らないでいるなのはが側に居る。

 バレてしまったのなら説明をすれば良いだけなのだろうが、今はそんな気は無い。バレたくないのだ。

 

 雄介や志蓮からの話を聴いた限りでは、竜人もまた転生者の1人だ。

 守護騎士プログラム(ヴォルケンリッター)が転生者という存在を知っており、その強大な力についても気付いているのならば。

 

 もしそうであるなら転生者から募集をするだろう。既にしているかもしれない。

 そしてその結果、シェンから聴いた通りこの次元世界が崩壊をしてしまう可能性が大きくなる。

 前にも思いはしたが、それだけはなんとしても防がなくては駄目なのだ。

 

「お前も転生者なんだろ? 実は俺もなんだ」

「…………」

「そんなに警戒するなよ。あの娘の事は他の連中には話してはい無いし、今は特に何かちょっかいを出すつもりも無い」

 

 なのはに聞かれないように、そしてサーチャーに音を拾われ無いように細心の注意を払いながら、出来る限り小さな声で口にする。

 

「今は、だと……?」

「…………?」

 

 が、そのキーワードがいけなかったのか。竜人の声は低くなり、彼を包んでいた魔力は次第に大きくなっていく。

 

 空を力強く蹴り、懐へと拳を潜り込ませて殴りに掛かって来る竜人。

 

 それを焦る事も慌てる事も無く、片手でその拳を握り締めるかたちで受け止める。

 

 思いの外、竜人は力を入れていたのか。

 俺は握った手を解いてしまい、体勢を崩して吹き飛ばされてしまう。

 

「おー、痛てえ……」

 

 木々がクッションになってくれたのか、それほど強く身体は打ち付けられてはいない。

 拳を受け止めた掌が赤くなり、強い痛みを感じるだているだけだ。

 

 受け止めた方の掌に感じている痛みを和らげる為にもう片方の方で擦っていると、エイミィからの通信が来た。

 

《ブロン君! フェイトちゃんが! フェイトちゃんが!》

「落ち着け。何かあったのか?」

 

 声から察するに、フェイトに良からぬ事が起きたのだろう。

 そう……例えば、誰かによる不意打ちでリンカーコアを抜き取られてしまい、意識を失ったとか。

 

《フェイトちゃんのところに仮面の男が現れて、リンカーコアが……。さっきそっちの世界に仮面の男が居てた筈なのに……そんな速く次元転移が出来る筈無いのに》

 

 予想外の事であったのか、仮面の男の出現とフェイトが倒れた事に動揺しているエイミィ。

 

 次元転移を短時間で出来る程の手練なのか、それとも俺のように瞬間移動が出来るのか。

 だが、前世で見たアニメでの知識から、そういった事は無く別の理由がちゃんとある事を知っている。

 

 彼女を落ち着かせる為にゆっくりと話し掛ける。

 

「取り敢えず、フェイトとアルフ、なのはの3人をそっちに転移させろ。その後直ぐにフェイトを本局に護送するんだ」

「ブロン君は?」

「こっちの事は気にしなさんな。奴さん、興奮していてな……熱烈なアプローチを貰っているところだ」

 

 迫り来る両の拳を回避しながら、彼女に思い付く限りの事を伝える。

 

《了解しました、特務執務官補佐殿》

 

 何時も通りとまではいかないだろうが、エイミィはハッキリとハキハキとした声を出すように努めているように感じられる。

 

《ブロン、そいつはかなりの強敵だ。気を付けて事に当たれよ》

「誰に向かって言ってるんだ? サイヤ人は戦闘民族だ、舐めんなよ! 手負いの奴や臆病風に吹かれてる奴が来てもな……」

《なら、見せてくれ。お前の特典(サイヤ人)の力ってやつを》

 

 こちらからの仲間に対しての挑発に、雄介は見事に掛かり、志蓮は強く唇を噛んでいた。

 ドゥームの顔色はあまり良いとは言えないものであり、妹であるフェイトを心配している事が見て取れる。

 雄介の言葉と同時に通信は切られ、なのはの転移準備が開始される。

 

「ブロン君!」

「エイミィにも言ったけど、こっちは気にすんな。大丈夫だから」

「でも……」

「フェイトの方に付いて居てやれ。あと、彼奴等に対してのフォロー、宜しく」

「ブロ――」

 

 なのはの返事を聞き終える前に、彼女は強制的に転移された。

 

 彼女の姿が消えるのを確認すると同時に、殴り掛かりに来る竜人に対しての対応の仕方を考える。

 だが、それと同時にもう1つ気になる……気に掛かる事がある。

 

「……どうするかな……(今の雄介じゃ勝てないというのは自分でも知っていただろうから自分から行くとは言わなかったし、エイミィも指名しなかった。志蓮の方は手負いでもあるし……ドゥームはフェイトの方だけを見てて動こうとしなかったしな)」

「はやてには手を出させない!」

「(最善策からは判らないけど、前に出たんだ……募集されないように気を付けて戦わないと)」

 

 エイミィとなのはの方は大丈夫だろう。

 だが、問題は兄であるドゥームと使い魔であるアルフの方だ。2人はフェイトを大事に想っているのだから、どのような状態になっているか。

 ドゥームの方はこうなる事は知っている筈だから、覚悟はしているだろうが。

 

 目の前でこちらへと向けてひたすら攻撃をして来る竜人のように、怒り狂っているかもしれない。

 

「デスペラードブラスタアアアアッッ!!」

 

 腰部から伸びている2対の砲身から魔力弾が無数発射される。

 

 その速さは音速を超えており、最早亜光速に近いだろうか。

 

 だが、気と魔力で身体能力の全てを向上させ、相手の気と魔力及び放たれた魔力を追い続けている為に、難無く対処をする事が出来る。

 

 右手だけで、それら全てを弾き飛ばしていく。

 

 魔力弾が弾き飛ばされた先では大きな爆発が起こり、木々や草花は燃え、木々が薙ぎ倒されてしまっている。

 

「うわあああああああああ!!」

 

 その叫びと共に、竜人の姿はパイルドラモン似た姿からインペリアルドラモンファイターモードに似た姿へと変化する。

 

 その身体はかなり大きく、見上げざるを得ない。見上げても全体を視界に収める事は出来ない程だ。

 

「……仕方無いか。ショドウフォン、折神大変化!」

 

 それぞれ別々のエンブレムの形をした折神を合計5つ取り出して、その上に大の文字を書く。

 

 すると、その折神はそれぞれ大きくなる。

 

 五角形の形からライオンのようなかたちへ、正六角形の形から龍のようなかたちへ、円形からウミガメのようなかたちへ、正方形の形からクマのようなかたちへ、正三角形の形からサルのようなかたちへとそれぞれ変形する。

 

「(まだ大丈夫……あと数回は使える筈だ……)」

 

 壊れかけたショドウフォンを見遣り、自身に言い聞かせる。

 

 ショドウフォンの方は水虎に穴を空けられ使え無くなっていたが、もしもの為に修理は済ませていたのだ。

 

 獅子折神の中に入り、刀のモヂカラでシンケンマルを出して、それを操縦桿にする。

 

「――な、何だ!?」

「侍合体!」

 

 獅子折神の口に当たる部分から炎が吐き出される。

 

 龍人は両手で顔を守るようにし、それによって彼の視界は一瞬だけではあるが奪い去られる。

 

 突然の事に驚きを隠せずにいる龍人を余所にして、合のモヂカラが込められている侍ディスクをシンケンマルの柄にして、回転させる。

 

 獅子折神の下半身が開き、後ろ足が収納される。そして、下半身は元に戻り、前足がエンブレム時の場所に。獅子の頭部に当たる部分の下で胴体が折り曲がり。前後に分割されているヒトの頭部似た部分が起き上がる。

 次に龍折神だ。胴体後部が上に変形して接合される。尻尾と首部分をエンブレム時同様の場所に戻し、龍の頭部だけが一番上迄反る。

 続いて熊折神の前足と後ろ足が収納され、頭部が一番上迄反る。

 猿折神は展開していた腕が収納される。

 最後に亀折神だ。こちらもまたシンプルなものであり、ヒレが収納され、胴体を2つに開き、頭部を収納。文字の左側が書かれている方の株が180度回転をして腕が出て来る。

 

 そして獅子は胴体及び頭部、龍は左脚、亀は右腕、熊は右脚、猿は左腕に合体をしていく。龍折神の中から兜が飛び出て、それを両腕で掴み、頭部に装着させ、微調整をする。

 展開された鍬形の部分は金色であり、キラリと陽の光を反射させている。

 

 ダイシンケンが腰に装備される。

 

「シンケンオー、天下統一!! 戦場に今ぞ立つってね」

 

 そこには五色の巨人が居た。胴体は赤く、右腕は白銀、左腕は黄色であり、右脚は緑色に、左脚は青色。

 

 龍人と比べると、やや小さいがそれでも大きいという事に変わりは無いだろう。

 

「自分で動いた方が、戦った方が手っ取り早いし最良だろうけど……こっちの方がモチベーションが上がるかなってなあ!」

 

 腰に下げているダイシンケンを巨大な右手で掴み、左手は秘伝ディスクを巨大化せた秘伝シールドを手にしている。

 

「誰が、何が相手であろうとおお!!」

「熱くなり過ぎるなよ。こっちは話がしたいだけなんだ」

 

 大きな身体でありながら、それに見合わない程の速さで龍人から繰り出される攻撃。

 

 それを左手にある秘伝シールドで確実に防いでいく。

 

「ガアアアアアアアッッ!!」

 

 龍人の爪であるインペリアルクローから光の剣であるスプレンダブレードが発生し、こちらに斬り掛かってくる。

 光の剣という事もあり、それもまた亜光速に近い速さでの攻撃だ。

 

 それをダイシンケンで斬り結び、打ち合いをする。

 

 使用しながらではあるが、光が集まって出来ているスプレンダブレードと斬り合う事が出来るダイシンケンに対して驚きと感動を感じ、覚えていた。

 

 原作と言える侍戦隊シンケンジャーに出て来るものよりも、スペックは上になっている。

 

「話がしたいから戦闘行為を今直ぐ止めろなんて……まあ、そんなのは無理だろうな。一度倒して、落ち着いて貰うかな。ダイシンケン侍斬り!!」

 

 言葉に耳を傾け無いのであれば、仕方が無いと自身に言い聞かせる。

 

 シンケンマルを振り翳し、これに連動するかのようにシンケンオーもダイシンケンを龍人へと振り翳す。

 斬のモヂカラが込められたダイシンケンによって、龍人は斬り裂かれ、変身を解除する。

 

 その筈だった。

 

「――どういう事だ……? おい!」

 

 暴走しているように見せて、意志があったのか。龍人がダイシンケンの刀身を掴み攻撃を阻止して来たのだ。

 

 だが、こちらの呼びかけに反応を返す事も無く沈黙している。

 

 龍人はダイシンケンを強く掴んでおり、振り解く事が出来ない。

 

「いや……暴走しているな」

 

 綺麗な緑色や赤色、青色だった部分が次第に黒く変色をしていく。

 

 瞳は既に白目になっており、理性を手放している事を理解させた。

 

「さしずめ、ブラックインペリアルドラモンってか……? 俺を倒そうとする為に暴走してしまう程に彼女を大切に想っているのか。全く、やれやれだな……」

 

 先程よりも強く荒々しく、荒れ狂う程に激しく速い攻撃をして来る黒く変化した龍人。

 その攻撃はとてつもなく速い上に重く、シンケンオーはかなりの距離を飛ばされてしまう。

 

 吹き飛ばされるシンケンオーは巨体である為に、周囲の草木などを滅茶苦茶にしてしまう。

 

 龍人の身体の周囲を膨大な魔力が覆い、それはまるで黒いオーラのようになっている。

 そしてそれが、彼の能力を上昇させており、盾のようなものにもなっている筈だ。

 

「流石、恐怖の皇帝竜。しゃーなしだな……」

 

 志蓮の王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中から兜折神と舵木折神、虎折神の3体が次元転移をして来る。

 

「侍合体!!」

 

 頭部を分離した虎折神を中心に、変形した兜折神と舵木折神の胴体がそれぞれ両翼として合体し、兜折神の両足が兜折神と舵木折神の外側面に、虎折神の頭部を装着した舵木折神の尾鰭が尾羽としてそれぞれ合体し、虎折神の尻尾が変形した円形の前立てを装着した兜折神の上角が頭部として合体をする。

 

「ダイテンクウ、天下統一!! 超侍合体!!」

 

 超のモヂカラが込められている超侍合体ディスクをシンケンマルに装填して、回転させる。

 

 それにより、合体が完了したダイテンクウとシンケンオーが更に合体を開始する。

 シンケンオーの兜が外れ、背部に一部パーツを分離したダイテンクウが背負う様に合体し、胸部に2本の虎ドリルが装着され、頭部に左右に展開したU字形に変形をした尻尾の前立てを装着した虎折神の頭部が新たな兜として合体。

 

「テンクウシンケンオー、天下統一!!」

 

 龍人の攻撃を回避して、上空へと退避するように飛行をしてみせる。

 

 その動きは速く軽やかであり、ダイテンクウの素早さをそのまま使用出来ている事を見せ付けていく。

 

 降下して龍人に斬り掛かり、退避をする。所謂ヒットアンドアウェイの繰り返しだ。

 

 だが、音速の斬撃であるにも関わらず龍人のスプレンダブレードによって全てが斬り払われてしまっている。

 

 理性を手放している為に本能や直感だけで行動している筈なのに、これほどの動きが出来るという事に戦慄を覚えてしまう。

 

「手数が足りないのか、それとも……。侍武装!!」

 

 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)内からもう1つ、折神が飛び出して来る。

 

 恐竜折神だ。濃い赤色をしており、目が付いており、刀身には鋭い歯がある。

 他の折神同様に意志はあるが、この恐竜折神は特にそれが強い。

 

 操縦室へと転移をして来た恐竜折神の上に大の文字を書き、その恐竜折神はかたちはそのままにして大きさだけが変化、28m規模の大きさになる。

 そして、その恐竜折神の兜は冠らず、刀であるキョウリュウマルだけを武器として装備する。

 

「まあ、名付けてキョウリュウテンクウシンケンオー? かな……。なんか言い難いし、変な名前だよなあ……」

「ポジトロンレーザー」

 

 龍人は距離を取って右腕にあるレーザー砲から魔力によるレーザーを連射する。

 

 手にしているキョウリュウマルである恐竜折神が自身の意志で刀身を伸ばして、そのレーザーを次々と斬り裂いていく。

 

 ダイテンクウの持つ速さでテンクウシンケンオーとしての回避をしながらも、キョウリュウシンケンオーとしてのリーチと攻撃力をもって、龍人からの攻撃などに対応してみせる。

 

 それを目にして気に障ったのか、更に魔力を高めていく龍人。

 

 龍人の胸部にある龍顔の口が開き、砲塔がせり出て来る。次に、右腕に装備しているポジトロンレーザー砲を外して、その龍顔の砲塔へと嵌め込み、その砲身に魔力が集中していく。

 その魔力量は膨大という言葉すらも当て嵌まる事は無く、臨界点を超えて暴発し、爆発をしてしまうかと不安に思える程に集まっている。

 

 だが、そんな不安を嘲笑うように、膨れ上がっていく魔力。

 

「凄い魔力量だな……周辺の星々を巻き込んで破壊しちまいそうな程だ」

 

 その膨大な魔力により、嵐のような凶風が巻き起こる。

 その魔力量を感じ取り、思わず冷や汗が背を伝っていく。

 

 インペリアルドラモンファイターモードの放つ最大攻撃の威力は本来、地球型惑星を破壊出来る程度だった筈だ。

 

 だが、その黒い魔力球からはそれ以上のものを感じさせて来る。

 

「……ギガデス」

 

 その言葉と同時に、龍人の胸部にある砲口から圧縮魔力によって生み出された超重量級の暗黒物質がキョウリュウテンクウシンケンオーへと向けて発射される。

 

 暗黒物質の周りは強い風が発生しており、その風が暗黒物質の中へと誘うようにして地面に生えている草木を吸い込んで行く。

 

「全く……おそろしいものを。まるで小さなブラックホールみたいだな……」

 

 斬のモヂカラを込める事が出来る分だけ込め、巨大刀であるキョウリュウマルを強く、そして一気に振り下ろす。

 

 恐竜折神はまた自身の意志で刀身を伸ばし、その暗黒物質を容易く斬り裂いてしまう。

 

「終わりだ、キョウリュウマル空間一閃!!!」

「――!?」

 

 そのまま伸びた刀身は黒く染まった龍人を斬り裂き、龍人の変身は解除される。

 

 あとは空間ごと抉り取られた大地がクレーターのようにして残っており、そこには安心しているかのように優しい笑顔を浮かべたまま気を失っている少年の姿があった。

 

「――竜人!?」

「まさか、てめえ!」

 

 倒れている竜人の無事を確認する為に近付こうとすると、背後から聞き覚えのある声が耳に届いた。

 

 振り返るとそこに、転移をした筈のヴィータ、シグナムとザフィーラの3人の姿があった。

 

「落ち着け、ヴィータ」

「焦っては上手く事を運べない。先ずは竜人と彼奴を引き離す」

 

 飛び出ようとするヴィータを止めに掛かる2人。

 だが、その低い声や震えている拳が見えるところから必死に耐えているように思わせてくる。

 

 シグナムはレヴァンティンに手を持っていき、ヴィータはグラーフアイゼンを握り締め、ザフィーラは拳をつくりだしている。

 

「これじゃあ、まるで俺が悪者じゃないか……」

 

 俺はキョウリュウテンクウシンケンオーから降りて、彼等に顔を見せた。

 

 合体を解除したそれぞれの折神は、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中へと次元転移をする。

 

「お前は確か……」

「保和歩栄……数日ぶりといったところかな、シグナム」

 

 知り合いと出会った事に驚きと戸惑いを感じているシグナム。

 

「俺は別にお前らと事を起こす気はこれっぽちもな――」

 

 俺は言いたい事を言い終える事も出来ず、紅いハンマーであるグラーフアイゼンが此方へと迫り来る。

 

 難無く躱してみせるが、次にレヴァンティンの刃が空気を斬り裂きながらこちらへと近付いてきており、それを躱してもまた蒼い拳が殴りに掛かって来る。

 

「少しは……話を、聴け!!」

「すまないが、それは出来ない。お前が此処に居るという事はテスタロッサ同様に魔導師であり、管理局と関係のある存在だという事……」

「まあ、そうだな」

「主に近づくなとまでは言えん……だが、こちらの邪魔は出来ない程度には募集をさせて貰う!」

 

 繰り出される攻撃は避ける事自体は大して難しくは無く、それどころか簡単だと言える程の速さだ。

 

 だが、こちらには戦意が無い事に気が付かないのか。只管に、我武者羅に攻撃を仕掛けてくる3人の守護騎士。

 

【Explosion】

 

 カートリッジで増加させた魔力を乗せ、こちらへの攻撃がより一層強く速くなる。

 

「くそっ……何で、何で当たらないんだ!?」

「落ち着け、ヴィータ!」

 

 ただ闇雲に攻撃を仕掛けるヴィータにシグナムは声を掛けるが、それでも一向に攻撃方法などを変えないヴィータ。

 

 そんなヴィータとは対照的に、シグナムは相手である少年に対して疑問を感じ始めていた。

 

「(何故、攻撃を仕掛けて来ない……どういうつもりなんだ……)。――ヴィータ!?」

「無駄使いは避けたいけど、仕方ねえ!」

【Explosion】

 

 グラーフアイゼンから2個の薬莢が飛び出し、大きく形が変化する。

 ハンマーヘッドが巨大な角柱状のものに変形し、変形したハンマーヘッドの大きさはそれを持つヴィータの身の丈に等しい大きさだ。

 

「轟天爆砕!! ギガント――」

「…………」

 

 迫り来る大きな槌が視界を覆い尽くしながら迫って来ているが、別に慌てたり焦ったりといった気持ちにはならなかった。

 

「こいつ等もまた、大人しくさせた方が良いのかな……」

 

 大きな土煙が巻き起こり、その場に居る者の視界を奪い去る。

 

「――やったか!?」

「それはフラグという奴だ、ヴィータ」

 

 攻撃が直撃した事は、手の感覚で理解しているヴィータ。だからこそ、その言葉を口にしてしまった。

 

 ザフィーラの言葉を聞き、ヴィータは改めて前を見据え警戒をする。

 

「意外と軽いものだな……」

 

 煙が晴れていくのと同時に人影が見え、それが無事に立っているのが確認出来る。

 

 それを見て、3人は驚くと同時に身構える。

 

「良い攻撃だな、威力も申し分無い。……だが俺に対しては無意味だ」

「な!? あれを喰らってピンピンしてる……嘘だろ?」

 

 俺は、道着に付いた埃を手で払いのけながら3人を視界の中に入れる。

 と同時に、その場に存在する空気中の魔力(マナ)の流れや質が変異していくのが感じ取れた。

 

「――ッ!!」

 

 

 

「嘘っ!? あれを避けるなんて……」

 

 遠く離れた場所でシグナム等の戦闘を観て、隙を伺っていたシャマルは自身の持つ特殊な魔法である旅の鏡を使用して、目標のリンカーコアを募集しようとした。

 が、結果は失敗だ。

 

 攻撃魔法では無い為に、バリアジャケットを着ている相手には使えない。だが、その目的である少年は、そんなものを着用していないのだ。

 だから出来る。そう思っていたのに。

 

『シャマル』

「ごめんなさい、皆……失敗しちゃった」

 

 思念通話でこれからどうするかを話そうとし、顔を上げると、かなりの距離があるはずなのにも関わらず、その少年がこちらを見ているように見えた。

 目があったのだ。

 

「嘘……この距離でこっちが視えてるの?」

 

 なのはがヴィータに対してDivine Buster Extensionによる砲撃をした際の距離とは比べものにならない程であり、その時の3倍近くは離れた場所だ。

 

 魔力で視力を強化していたとしても、ヒトの身であるのならば、理論上などでなら兎も角、実際には出来ないであろう筈の距離だ。

 

『はじめまして。湖の騎士、風の癒し手よ』

「――!?」

『取り敢えず、こちらに戦闘の意志は無い。これは理解してくれるかな?』

「……ええ」

『ありがとう。それじゃ、こっちに来てくれ。早めに済ませたいだろ? 君達も』

 

 突然の、少年から自身に対しての思念通話が来た事に驚きはしたが、直ぐに気を取り直して応対する。

 

「(今は皆と合流する事を優先するべき……)」

 

 シグナム等の居る地点へと真っ直ぐに飛行を開始した。

 

 

 

「取り敢えず、落ち着いてくれて嬉しいよ」

「すまなかったな、そちらの言葉を聴かずに斬り掛かって」

「いえ、こうして向かい合い、話が出来ているんです。それだけで良いですよ」

 

 シグナムとザフィーラの方は、もう戦闘をする気は無いというのが理解出来る。

 

 だが、ヴィータの方は、まだ警戒をしているのかこちらを強く睨んでいる。竜人を守るようにして立っていて、手にはまだHammer formのグラーフアイゼンを手にしている。

 

 こちらへと合流をしたシャマルの方は、シグナムとザフィーラの様子を見て、問題は無いと判断したのだろう。警戒をしながらも柔らかな表情をしている。

 そして、気絶をしている竜人に対して治療の為に魔法を行使していた。

 

「単刀直入にいこう。俺は、お前達の主の正体と場所を知っている」

 

 その言葉に、シグナム以外の3人はより一層こちらを警戒する。

 

 当然だろう。管理局との繋がりがある人物が、主を知っているのであれば直ぐに管理局が動きだし、主に――少女に何かが起こる可能性があるかもしれないのだから。

 そして、その何かとは。彼等はその何かが起きないようにと、主である少女に黙り、主である少女との約束を破り行動をしているのだから。

 

「だが、彼女の事を管理局に話す気は無い」

「どういうつもりだ……いや、何が目的なんだ?」

「俺はお前等に頼みたい事があるんだ」

「頼みたい事だと……?」

「ああ。だが、その前に質問がある」

 

 そうだ。この質問をして、確かめてからではないと駄目だろう。

 彼女等が知っているのか、そうでないのか。

 

「転生者という言葉に聞き覚えはないか?」

「転生者?」

「何だよ、そりゃ?」

 

 竜人からは聴いてはいないという事だろうか。

 

 これで、彼等が進んで転生者から募集をするかもしれないという不安は解消された。

 だが、知らずに募集をしてしまう可能性があるという問題は、まだ残り続けているのだ。

 

「簡単に言うと大きな力を持った存在……お前達に理解り易く言うと、いや代表を紹介するとなると、俺やそこで気を失っている竜人がそうだ」

「竜人が?」

「他にも、竜人が今迄戦って来た奴等……滅竜魔導士、額に水晶がある男もそうだな。後は……」

「あの時……テスタロッサ達がデバイスを強化して来た時、ヴィータとザフィーラの動きを封じた男」

「そう。そいつもまた、転生者の1人だ」

 

 ざっくりと、簡単に紹介をしてみる。

 1人だけ、その特典である魔法について口にしてしまったが、問題は無いと信じたい。

 

「その、転生者? がどうしたんだよ?」

「転生者からの募集はしないで欲しいんだ」

 

 ヴィータの質問に対し、簡単に返答をする。

 

 その答に納得がいかないのか、理解が出来ていないのか、もう一度質問をして来るヴィータ。

 

「何で、転生者から募集したら駄目なんだよ? そんなに強くて大きな力を持ってるなら、あっという間にページが埋まって、はやてが助か――あっ」

「別に今更、主であるはやての事を隠さなくても良い。既に知っていると言っただろ? あと、その疑問についてだがな……」

 

 ここに来て答えに窮してしまう。

 自身の知っている事がこの世界に於いても当て嵌まっているのか、知識通りのものなのか。

 それとも、違う現象などによって闇の書が彼女(八神はやて)を苦しめているのか。

 それに……話したとして、彼等は信じるのだろうか。

 

「どうしたんですか? 急に黙って……もしかして、身体に異常でも?」

「いや、大丈夫だから」

 

 こちらを気に掛けてくれているのか、シャマルの心配する声に対して笑顔で応える。

 

 兎に角、こうして黙っていても進展はしないだろう。

 

「はやての病気、原因不明とされている麻痺は闇の書が原因だという事は知っているな?」

「ああ。だがそれがどうかしたのか?」

「信じられないかもしれないが、募集を完了させたとしても……彼女は、はやては救からない」

「……どういう事だよ!?」

 

 俺の言葉に、食って掛かるように声を荒げるヴィータ。

 

 俺はただ知っている範囲での事を、知り得る限りの事を正直に話すだけだ。

 

「闇の書のページが全て――666項ものページ全部が埋まると、闇の書内に存在するバグである闇の書の闇が反応、呼応して暴走。主諸共、その主の居る世界を巻き込んで破戒して、転生をする……」

「どういう意味だ? そんな事、信じられる訳無いだろう?」

「事じ――」

「――巫山戯んじゃねえ!!」

竜人(りゅうと)?」

 

 説明を捕捉しようとしたところに、まだ声変わりのしていない少年の悲鳴に似た声が聞こえて来る。

 

「冗談でも笑えねえぞ、それ……転生者だとか、そんなの知るかよ! ああ。確かに俺は転生者だ。だが、それ以外は何も知らねえ。俺の持つ力と家族の事しか知らねえよ。大体何だよ、闇の書の闇とかって!? はやてが死ぬ? 巫山戯るな! そんな事はさせねえ」

 

 滅茶苦茶だった。

 言っている事が全部、態度も。

 

 竜人は荒げた声で、俺の言葉を否定していく。駄々を捏ねる子供のように、それらを否定していく。

 

 大事に想っているのだろう、妹であるはやての事を。家族を。

 それだけは感じ取る事が出来た。

 

 だが、今の俺にはそれよりも別の疑問を感じていた。

 

「(どういう事だ? 転生者なんだから闇の書とかの知識もある筈だろ……これじゃ、まるで)」

 

 ――何も知らない。記憶が無いみたいじゃないだろうか。

 

 言いたい事の全てを吐き出したのか、竜人はその場から地球へと向けて多重転移を開始する。

 

 ヴィータは、彼の後を追いかけるようにしてこの場を離れようとするが、その前にこちらへと目を向けた。

 その瞳は真っ直ぐに、刃のように俺が敵を見遣り、貫いている。

 

 後に残されているのは俺とシグナム、シャマル、ザフィーラの4人だけだ。

 

 シャマルとザフィーラの2人もまた、先に行った2人を追いかけるように転移をする。

 

「正直に言うと、お前の言っている事は信じられない。嘘だとしか思えない」

「……だろうな」

 

 そう言い返す事しか出来なかった。今の俺には余裕が無かった。

 

「例えお前の言う事が正しくても、そうであってもだ……私達に思い付くのはこれだけだ。これしか出来ないのだ」

 

 相棒であるレヴァンティンを握り締め、こちらを真っ直ぐに見詰めるシグナム。

 

 彼女の瞳が揺れているように見えた。

 気持ちが揺らいでいるのだろう。

 不安に感じてしまっているのだろう。

 俺の不注意な言葉の所為で。

 

 だが、シャマルやザフィーラに悟られないようにしていた。

 現に、ヴィータと竜人が居る時にこんな事は言わずに、顔を向ける事も無かったのだから。

 

「これからも、主はやての良き友人であって欲しい……」

 

 そう言うと背中を向け、転移をするシグナム。

 

 木々が薙ぎ倒された中心にある大きなクレーターの真ん中で俺はただ1人、ポツンと残されてしまった。




書く事は出来るけど、上手くなれない……上達した気が全くしない
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