魔法少女リリカルなのはZ   作:りおんざーど

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闇の書の闇を破壊しろ 喰らえっトリプルブレイカー!!

 大地が、空が、大気が大きく震え、揺れ動いている。

 

 脱出に成功したフェイトを迎え、なのはとユーノ、アルフ、雄介、志蓮、ドゥーム、竜人、ゾイルの9人は、ある一点を真っ直ぐに見据えている。

 

 そこには、黒いドームのようなものが海から浮き出ており、その全てが膨大な魔力の塊である事を理解出来た。

 

 その魔力量はかなりのもので、リンディやエイミィ、アリサとすずか達を含めたアースラ内から観ている者にもモニター越しですら威圧感と恐怖を与えてくる。

 

《闇の書の主、防衛プログラムとの分離、完全にしました!》

《皆……黒い淀みが、暴走が始まる場所になる。クロノ君が近付くまで、無闇に近付いちゃ駄目だよ!》

「う……はい!」

 

 エイミィからの言葉に、目の前に対して尻込みをしながらも大きな声で応えるなのは。

 

「あれが、闇の書の闇の部分か……映像で見たものとはやはり違うな」

 

 黒いドーム状になっている淀みを見下ろしながら、ゾイルは静かに腕を組み、考えていた。

 

 ゾイルには、クロノやリンディよりも強く上の権限を持ってはいるが、エイミィの言葉を聞くまでも無く、動く気は全く無かった。

 

「(彼奴は何をしているんだ……? かなり離れた場所に居る事は理解るが、一体何をしている……いや、何を気にしているんだ……?)」

 

 それよりも、この場に保和歩栄が居ない事を気にしていた。

 

「管理者権限発動……」

「防衛プログラムの進行に、割り込みを掛けました。数分程度ですが、暴走開始を遅延出来ます」

 

 闇の書の闇である暴走プログラムは、改変というよりも改悪を受けすぎた為に、管制人格や管理者権限では、最早止める事が出来ない程の状態になっていた。出来たとしても、動きなどを少し制限掛けるだけだ。

 

 そして、今彼女達自身に出来る事は、闇の書から切り離して、その暴走するプログラムを――ウイルスと化したそれを破壊及び消去する事だけ。

 

「うん。それだけあったら、十分や」

 

 リインフォースからの報告に、頷くはやて。

 

 この場に居るのは何人で誰が居るのかは判らないが、それでも自分やリインフォース、そして彼女等と、外に居る皆が力を合わせれば何とかなるという確信を、はやては何故か自然と確信のように感じていた。

 

「リンカーコア送還、守護騎士システム破損修復……おいで、私の騎士達」

 

 はやての言葉に従い、彼女を囲うようにして周りに4色の小さな光が現れる。

 

 その光が強くなり、なのは達とは離れた場所にあるビルの屋上に4つの魔法陣が展開する。

 

 その魔法陣から、浮き出るようにして4人の守護騎士達が甲冑を纏った状態で姿を現した。

 

「――!?」

 

 なのは達の居る空中付近で、爆発に似た閃光が疾走り、そこにはやてとリインフォース、そして守護騎士達が転移をして来る。

 

 4人の守護騎士は外側を向いており、主である八神はやてを護るようにして待機している。

 

「我等、夜天の主の元に集いし騎士」

「主ある限り、我等の魂、尽きる事無し」

「この身に生命ある限り、我等は御身の元にあり」

「我等が主、夜天の王――八神はやての名の元に」

 

 姿を見せたシグナムにシャマル、ザフィーラ、ヴィータを見て、顔を綻ばせるフェイトとなのは、そして竜人。

 

「リインフォース、私の杖と甲冑を」

「はい」

 

 はやての身体を白い光が覆う。

 それは、白や金の装飾が成されている黒いインナーとなり、光が弾ける。

 そして、白と青の柄を持つ黒色と金色をした剣十字型の魔導杖が出現、それを掴み取る。

 

 場を覆っていた光の壁がガラスのように砕け、弾け飛び、中からはやてが姿を現す。

 

「「――はやてちゃん! / はやて!」」

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 なのはと竜人の声に、すずかとアリサからの通信による音声に応えるようにして、はやては笑顔を浮かべた。

 

「夜天の光よ、我が手に集え! 祝福の風――リインフォース、セエエエエットアップーーッッ!」

 

 腰に掛かるようにスカート状のローブが、上半身に白を基調としたジャケットが展開され、それを纏うはやて。

 彼女の髪の毛の色が白に、瞳の色も青へと変色をし、白色の帽子を冠る。

 その全てに、黒と金色の装飾がなされている。

 背中には、純粋に魔力だけで構成された黒い翼が3つ生える。

 

 髪の色、そして瞳などは変化したが、それ以外には変化は無く、融合事故を起こしていない事が理解出来る。

 

「はやて……」

「すみません……」

「あの……はやてちゃん……私達……」

「ええよ……みんな理解ってる。リインフォースが教えてくれた。そやけど、細かい事は後や。今は……お帰り、皆……」

 

 申し訳無さそうにするヴィータとシャマル、謝罪をするシグナム、そしてザフィーラに心から言葉を述べるはやて。

 

「はやて! はやて!」

 

 今までの分も含め涙を流しながら抱き着くヴィータを、優しく受け止めるはやて。

 

「なのはちゃんとフェイトちゃん、雄介君等もごめんな……家の子達がいろいろと迷惑掛けてもうて……」

「ううん……」

「平気……」

「あ、俺等は省略すっか……」

 

 家族の代表として、謝罪をするはやて。

 そんな彼女達を受け入れ、笑顔で迎え入れる。

 

「竜人兄ちゃん……ただいま」

「ああ……お帰り」

 

 互いに笑顔を浮かべるはやてと竜人。

 

 今の竜人はImperial Dragon fighter modeの状態ではあるが、リインフォースから聞いている為に、はやては驚く事も気にする事も無かった。

 

【Zustand erreicht worden ist. Es wird die Verriegelung zu lösen】

「――え!?」

 

 その機械音声と共に、竜人の身体が白く輝く。

 

 黒かった身体、そして赤く大きな翼が白く変色し、輝く。

 手には、白の大剣握られている。

 

 その総ては白銀だと言えるものであり、神々しさを感じさせる。

 ただただ綺麗だという言葉が浮かび上がり、巨体であるにも関わらず味方には威圧感などといったものは微塵も感じさせなかった。

 

「すまない……水を差してしまうんだが……時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。時間が無いんで簡潔に説明する。あそこの黒い淀み……闇の書の防衛プログラムが、あと数分で暴走を開始する。僕等はそれを、何らかの方法で止めないといけない。停止のプランが、現在2つある」

 

 到着を済ませたクロノが、上空から降下し、合流を果たす。

 

「1つ……極めて強力な氷結魔法で停止させる。2つ……軌道上に待機している艦船アースラの魔導砲――アルカンシェルで消滅させる。これ以外に、他に良い手が無いか? 闇の書の主とその守護騎士達に訊きたい……」

 

 皆を見渡しながら自身の持つプランを提案し、他に何か無いか尋ねるクロノ。

 

「ええと……最初のは多分、難しいと思います。主の無い防衛プログラムは、魔力の塊みたいなものですから」

「凍結させても、コアがある限り再生機能は止まらん」

 

 シャマルとシグナムの説明は正しく、効果は薄い。いや、無いと言っても良いだろう。

 膨大な魔力だけを凍結させるのは無理な話であり、空間を切り取って凍結させる事も難しい。

 出来たとしても、中に存在する魔力が内側から無理矢理にでも溢れ出し、凍結魔法が解除。再び暴走を開始する。それまでの時間は、数分と無いだろう。

 

「アルカンシェルも絶対駄目! こんなところでアルカンシェル撃ったら、はやてと竜人の家までぶっ飛んじゃうじゃんか!」

 

 破損していたデータを修復した為なのか、過去に見た記憶があるのか。

 腕で☓印をつくり、大きく強く否定の意志を示すヴィータ。

 

「そ、そんなに凄いの……?」

「発動地点を中心に……直径で1,000km規模の空間を歪曲させながら……反応消滅を起こさせる魔導砲……て言うと大体理解る?」

「えっと……空間を歪曲? 反応消滅? 1,000kmっていうのもよく理解らないし……」

《反応消滅ってのはね――》

「――ア、アリサちゃん!?」

 

 ユーノからの説明に難しい言葉が出て来て、困惑をするなのはに、通信で説明をするアリサ。

 

《ええと……1,000kmは、日本列島の半分近くかな……》

「ありがとう、すずか……」

 

 日本列島の北端から南端迄の距離が、大体で約2,500kmとされている。

 

 その半分が抉らえたように消滅したらどうなるだろう。

 

 そして何よりも、皆が住んでいる場所なのだ。想像だけであってもしたくはない。

 

「私もそれ反対!」

「同じく! 絶対反対!」

「僕も艦長も使いたく無いよ。でも……あれの暴走が始まったら、被害はそれより、遥かに大きくなる」

 

 反対するなのはとフェイトに対し、沈鬱な表情で言葉を返すクロノ。

 

「暴走が始まると、触れたものを侵食して、無限に広がっていくから……最悪の場合、この世界自体が……」

《はい、皆! 暴走臨界点まで、あと15分切ったよ! 会議結論は、お早めに!》

 

 ユーノによる捕捉説明、そしてエイミィからの報告によって、場の空気がより重くなる。

 

 だが、そんな皆とは正反対に、雄介、志蓮、ドゥーム、ゾイルの4人はニヤニヤとした笑顔を浮かべている。

 

「――な、何だ君達はさっきから……何か手があるなら」

「別に……何でも無いですよ」

 

 竜人を除いた雄介達転生者組のおちゃらけた雰囲気とは反対に、必死に頭を悩ませる皆。

 

「――ああっ、何かごちゃごちゃ鬱陶しいなあ! 皆でズバッとぶっ飛ばしちゃう訳にはいかないの!?」

「あ、アルフ……これは、そんなに単純な話じゃ……」

 

 意を決したというより、イライラを爆発させるかのように叫び出すアルフの言葉に、この場の空気が一変をしようとしていた。

 

「ズバっと……ぶっ飛ばす……」

「ここで撃ったら、被害が大きいから撃てへん……」

「でも、ここじゃ無ければ……」

 

 頭を悩ませていた3人の少女は、妙案が思い付いたのか、顔を綻ばせる。

 

「クロノ君! アルカンシェルって、何処でも撃てるの?」

「何処でもって? 例えば?」

「今、アースラに居る場所」

「軌道上……宇宙空間で!」

 

 戸惑うクロノ等を余所に、なのはとフェイト、はやては自信満々といった風に、口にして、宇宙へと指を向ける。

 

《管理局のテクノロジー、舐めて貰っちゃあ困りますなあ! 宇宙だろうが! 何処だろうが!》

「おい……ちょっと待て、君等……まさか……」

「これで、正解だよね? 雄介君?」

「――ああ! 大正解だっ!」

 

 なのは達3人とエイミィの言葉に驚くクロノ。

 

 場に居る守護騎士達は呆然としてしまっていた。

 

《何ともまあ……相変わらず、物凄いと言うか……》

《計算上では、また実現可能ってのが、怖いですね。でも……これも、彼等(転生者)の世界での作品に登場人物として出てる私達が成し遂げた事なんでしょうか?》

《そうかもしれないわね……》

 

 何度も何度も計算をし直してみるが、実現可能という結果になる事に対し、ただ素直に驚嘆と感心をするしか無いリンディとエイミィ。

 

《クロノ君、こっちのスタンバイ、OK! 暴走臨界点まで、あと10分!》

「実に個人の能力頼りで、ギャンブル性の高いプランだが……まあ、やってみる価値は、ある! と言うよりも、これがベストなのかもしれない……異論はあるか? ゾイル特務執務官?」

「無い」

 

 エイミィの報告を受け、ゾイルへと質問をするクロノ。

 

 計算結果から出た実現可能の数字、そしてこの案を雄介達が大正解だと言った事から、クロノはこのプランの実行を決める。

 

「防衛プログラムのバリアは、魔力と物理の26層式。先ずは、それを破る」

「バリアを抜いたら本体に向けて……私達の一斉砲撃で、コアを露出」

「そしてら、ユーノ君達の強制転移魔法で、アースラの前に転送!」

《あとは、アルカンシェルで蒸発、と……》

《上手くいけば、これがベストですね》

 

 はやてとフェイト、なのはにリンディがプランのお浚いをする。

 

 先程クロノが言った言葉でもあるが、エイミィの言う通り、上手く事が運べば大丈夫だろう。

 

「(だが、何かが引っ掛かる……ブロンが居無いからか、それとも……)」

 

 これだけの戦力があれば、ギャンブル性などは無く、防衛プログラムを消し去る事などは簡単に出来てしまうだろう。

 

 だが、ゾイルの胸からは不安という2文字は消え失せなかった。

 

「提督、見えますか?」

《ああ、良く見えるよ》

 

 クロノはグレアムに通信を繋げ、その様子をサーチャーを通して観えるようにする。

 

「闇の書は、呪われた魔道書でした。その呪いは、幾つもの人生を喰らい……それに関わった多くの人生を狂わせて来ました。あれのお陰で、僕も……母さんも……他の被害者遺族も、こんな筈じゃ無い人生を進まなくちゃいけなくなった。それはきっと、貴方も……リーゼ達も……」

 

 クロノの声は暗く重いものだ。

 

 だが、クロノの瞳は、目は確かに真っ直ぐに前を見ている。見据え続けている。

 

「失くしてしまった過去は、変える事が出来ない」

【Start up】

「だから今を闘って、未来を変えます!」

 

 グレアム達から受け取ったカードが、青と白の杖になり、それをしっかりと掴み取るクロノ。

 

《アルカンシェル、チャージ開始!》

()()()

 

 衛星軌道上で待機をしているアースラに搭載されている大型魔力炉が唸りを上げて、魔力を上昇させていく。

 

《暴走開始まで、あと2分!》

「あ……なのはちゃん、フェイトちゃん。竜人兄ちゃんに雄介君、志蓮君、ドゥームさん、ゾイルさん。シャマル」

「はい、7人の治療ですね。クラールヴィント、本領発揮よ」

【Ja】

 

 はやての言おうとしている事を察し、前に出るシャマル。

 

 シャマルがクラールヴィントに口吻をすると同時に、魔法が発動する。

 

「静かな風よ、癒やしの恵みを運んで」

 

 緑の魔法陣が展開され、なのは達7人を緑色の光が包み込んだ。

 

 見る見るうちに、擦り傷や掠り傷、僅かではあるが流血をしていた箇所が塞がっていく。

 

「湖の騎士、シャマルと風のリング、クラールヴィント。癒しと補助が本領です」

「凄いです!」

「ありがとうございます、シャマルさん!」

 

 静かなる癒しの効果で、負傷した箇所は完治し、体力と魔力が回復。そして、バリアジャケットが修復された。

 

 素直に驚嘆の意を示し、感謝の言葉を口にするなのはとフェイトに対して、シャマルは笑顔で応える。

 

「あたし達はサポート班だ。あのうざいバリケードを上手く止めるよ」

「うん」

「ああ」

 

 アルフとユーノ、ザフィーラの3人は既に準備が完了している。

 

「――始まる」

 

 皆の戦闘準備が完了したのと同時に、黒い淀みの周囲に、15もの黒い魔力の柱が海の底から昇り、その黒い淀みもまた同様に上昇をする。

 

「夜天の魔道書を……呪われた魔道書と呼ばせたプログラム……闇の書の、闇」

 

 聖夜への鐘が鳴り渡り、天から地へと勇気が試される時が来た。

 

 その黒い淀みが晴れ、中から闇の書の闇が姿を現す。

 

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■__________!!!!】

 

 姿を現した闇の書の闇は、生物の融合体と呼べる異形な見た目をしている。

 守護騎士等(ヴォルケンリッター)が募集をして来た生物の全ての特徴を併せ持っているのだ。

 

「「――チェーンバインド! / ストラグルバインド!」」

 

 アルフとユーノが魔力鎖で闇の書の闇を縛ろうとするが、その縛った部分である触手部分をトカゲの尻尾のように切り離す闇の書の闇。

 

「縛れ! 鋼の軛! っていやあああああああああああっ!!」

 

 本来の鋼の軛は拘束魔法ではあるが、応用して、闇の書の闇にある触手部分を薙ぎ、斬り裂いていく。

 

 スパっと触手が斬れはするが、再生をして、新しい触手も顔を出す。

 

「ちゃんと合わせろよ、高町なのは!」

「ヴィータちゃんもね!」

 

 ヴィータの呼び掛けに、応えるなのはの顔は真っ直ぐに目標を見据えながらも、嬉しそうな表情をしている。

 

「鉄槌の騎士、ヴィータと鉄の伯爵グラーフアイゼン!」

【Gigantform】

 

 カートリッジが排莢され、通常のHammerformからGigantformへと形を変えるグラーフアイゼン。

 

 ヴィータの魔力が増大し、鉄の伯爵がそれに応える。

 

「轟天、爆砕っ!」

 

 振り上げると同時に、ハンマーヘッドがヴィータ自身の10倍近くになり、それに合わせて柄も伸びる。

 

「――ギガント、シュラアアアアアアアアアアアアアアアアクッッ!!」

 

 更に巨大化したハンマーヘッドは、闇の書の闇を陰の中に収める程の大きさになる。

 

 かなりの大きさを誇ってはいるが、魔力による身体能力の強化などで、ヴィータ自身にはそれ程の負担は掛かってはい無い。

 

 目一杯に振り上げたそれを、思い切り振り下ろして叩きつけるヴィータ。

 

 空気を裂き、唸りを上げながら、闇の書の闇に向けて放たれたそれは、闇の書の闇を護るバリアの1枚を叩き割った。

 

 その衝撃によって闇の書の闇の大きな身体は海の中に少し沈み込み掛け、海面を大きく揺らす。

 

「高町なのはとレイジングハート・エクセリオン! 行きます!」

【Load cartridge】

 

 4発ものカートリッジが連続でロードされ、排出、そしてレイジングハートに魔力で構成された光の翼が生える。

 

「エクセリオン、バスタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

【Barrel shot】

 

 照準と弾道安定、そして発車直後の暴発や拡散を防止がなされ、不可視のBindが闇の書の闇の動きを封じ込める。

 その際に、なのはへと向かって来ていた多数の触手は、衝撃波に飛ばされる。

 

「――ブレイク……シュウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥトオオオオオオオオーーッッッ!!」

 

 魔力の塊である光球にチャージされた魔力が臨界に達し、4発のBusterが同時発射される。

 

 その後に、中央にある魔力球が4発のBusterに追い付く程のスピードで発射され、合計4発もの砲撃が闇の書の闇にぶつかる。

 

 爆発と閃光、それによる衝撃と共に闇の書の闇のバリアがまた1枚砕かれる。

 

「剣の騎士、シグナムが魂、炎の魔剣レヴァンティン。刃と連結刃に続くもう1つの姿」

 

 レヴァンティンの柄頭に、鞘が引っ付き、連結をする。

 光を纏い、その剣と鞘は大弓へと姿を変えた。

 

【Bogenform】

 

 魔力で出来た弦を掴み、矢もまた魔力で構成する。

 

「掛けよ、隼!」

【Sturmfalken】

 

 狙いを定め、真っ直ぐに放たれたそれはバリアに直撃し、爆発を起こす。

 

 爆発と同時にバリアの1枚が粉々に粉砕した。

 

「フェイト・テスタロッサ、バルディッシュザンバー……行きます!」

 

 バルディッシュから3発分のカートリッジが排莢される。

 

 Zamber状態のバルディッシュを振り回し、その斬撃波で闇の書の闇の触手を斬り裂く。

 

「撃ち抜け、雷神!」

【Jet Zamber】

 

 振るうと同時に、紫雷を纏った金色の魔力刃が大きく伸び、闇の書の闇をバリアごと一刀両断する。

 

 だが、全てのバリアを破った訳では無く、闇の書が両断された身体を再生。

そして、残りの22層ものバリアを一気に張り直す。

 

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■__________!!!!】

 

 闇の書の闇は、痛みを訴えるかのような悲鳴を上げながら、触手から魔力砲撃を放つ準備に入る。

 

「――滅竜奥義・改、紅蓮爆雷刃ッッ!!」

 

 雄介が右手に炎を、左手に雷を纏わせて両腕を螺旋状に振るって、その放たれた魔力砲弾の全てを爆雷炎で粉砕する。

 

「お前自身に意志という意志は無くいから仕方が無いかもしれないが……これまでに為出かした事は地の理では生温いかもしれんな――」

 

 手にした三層の円柱型の剣――乖離剣を手にし、闇の書の闇を見下ろす志蓮。

 

 その3層の筒がゆっくりと回転を始める。

 

「――ならば、天の理しかあるまいて」

 

 その回転は次第に速くなり、魔力を内包した疾く強力な風を起こし始める。

 

 空気中に浮遊している魔力(マナ)の大部分を巻き込んで、異常だと言える程にまで圧縮されていく。

 

「原初を語る。元素は混ざり、固まり……万象を織りなす星を生む!」

 

 この剣が生み出すそれは、あらゆる生命が存在しなかった頃の原初の地球が記録されたものだ。

 

 地球を識るこれは、この場にいる者に遺伝子に刻み込まれている記憶から恐怖と畏怖を与える。だが、味方である皆には同時に、絶対の信頼と安心感も感じさせた。

 

「フハハハハハハハ! 原初の理を知り、死して拝せよ!」

 

 巻き起こされる殺人的な凶風と、魔力と畝る大気によって構成されているものの余剰エネルギーである赤い帯が大きくなっていく。

 

「――天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)ッッ!」

 

 放たれたそれは、膨大な現代の魔力(オドとマナ)、そして神代の魔力(エーテル)を含んだ真空波だ。

 

 放たれた真空波は本来、空間を斬り裂くもの。

 

 その特性故に11ものバリアと世界そのものとなっている結界を、紙のように容易く斬り裂いてしまう。

 

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■__________!!!!】

「――広域結界」

 

 破壊された結界を、再び張り直すゾイル。

 

 その破壊力を目にした転生者以外の皆は、驚きと恐怖を感じずにはいられなかった。

 

「おっと、少しはしゃぎ過ぎたか?」

「全くだ……では、次元世界最強の幻想種である龍の力を見せようじゃないか。なあ、竜人?」

「――え? 俺は兎も角、お前は――!?」

 

 不思議そうにする竜人等を余所にして、ゾイルの身体は見る見るうちに大きくなっていく。

 

 紅い肌と鱗を持ち、大きな翼に尻尾、爪、口。ギラリとしたトカゲのような瞳。

 人と変わらぬ姿だったそれは、既に面影が1つも無く、何処からどう見ても龍そのものだ。

 

 竜は、この地球に於いて幻想種の頂点に位置する存在だ。

 そして、龍ともなれば神的存在でもあり、最強であり、無敵でもある。戦う相手にする必要すら無い、戦えば、挑んだ側が必ず身を滅ぼす事になる存在。

 

 ミッドチルダなどの次元世界で、地球とは違い、姿を消す事無く君臨し続けている稀少古代種の真竜とは比べ物になら無い程の存在。

 

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■__________!!!!】

 

 自由の女神や今の竜人すらも超え、120mをも誇るその巨躯に、その身から放たれている圧倒的な魔力と気の大きさに、闇の書の闇は、志蓮の攻撃と同様の脅威を感じたのか、威嚇をするように叫ぶ。

 

「行くぞ、竜人!」

「――あ、ああ! オメガ……」

 

 龍となったゾイルの口元には周囲を焦がす程の炎のフレアが溜まり、深夜から昼のような明かり具合へと変えてしまう。

 

 龍人は、初期化という意味を持つinitializeのデジ文字が刻まれた白の大剣を振り上げる。

 

「――ブレエエエエエエエエエエエエエドオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 解き放つ力が剣となって突き抜けて行く。

 

 振り下ろされたオメガブレードは、触れた相手を初期化してしまうものだ。

 

 だがそれでも、バリアを張っている相手に届く事は無かったが、ゾイルの放った龍の息吹(ドラゴンブレス)は弾丸となり、2人の攻撃は残っていた11ものバリアを易易と貫き、壊した。

 

「盾の守護獣、ザフィーラ! 砲撃なんぞ、撃たせんっ!」

 

 数十mもあるライトペリウィンクルの光の魔力軛が、再び砲撃に入ろうとする闇の書の闇の触手や本体に突き刺さり、瞬間的ではあるが、動きを完全に封じ込める。

 

 だが、その瞬間だけで十分だった。

 

「彼方より来たれ、ヤドリギの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け」

 

 はやての前方に黒い霧が発生する。

 

 展開した魔法陣を中心にして、黒い霧の中から7本の光の槍が出て来る。

 

 1本の槍を囲うようにして6本の槍が浮遊している。

 

「――石化の槍、ミストルティン!」

 

 振り下ろされた剣十字の杖に従って、闇の書の闇本体に向かって飛んで行く。

 

 命中した箇所から石化し、それが全身迄広がっていく。

 

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■__________!!!!】

 

 大きな声で叫びながら、ヒトに似た部分だった箇所は崩れていく。

 

 だが、石化は直ぐに解かれ、別の場所から何かの動物の頭らしきものが生み出され、外に出て来る。

 

 その姿は、最早言葉で表現をする事は出来ない。動物の継ぎ接ぎだらけ、ただの集合体と言えるような有様だ。

 

「何だか……凄い事に……」

《やっぱり、並の攻撃じゃ通じない! ダメージを与えたそばから再生されちゃう!》

「だが、攻撃は通ってる! プラン変更は無しだ!」

 

 クロノの言葉通り、闇の書の闇を護るバリアの全ては壊し、その本体に与えようと放った攻撃は確かに通っていた。

 

「これなら、ブロンが来る頃には決着が着いてるだろうな!」

 

 闇の書の様子や攻撃の通りようを見て喜ぶ雄介。

 

「行くぞ、デュランダル!」

【OK, Boss】

「悠久なる凍土、凍てつく棺のうちにて、永遠の眠りを与えよ」

 

 クロノの足元に魔法陣が展開され、その直下から闇の書へと向けて海の水が凍っていく。

 

「熱吸収……」

 

 ドゥームの足下にある海水もクロノの足下にある海水と同じように凍り始める。

 

 辺りには氷や霰といったものが降り、低かった気温がより低く。氷点下へと一気に下がる。

 

「――凍てつけ!」

【Eternal Coffin】

 

 結界内にある海全てと闇の書の闇本体を氷漬けにする。

 

「――第四波動おおおおおおおおおーーーーっっっっ!!!!!」

 

 だが、ドゥームの放った第四波動が氷を砕くのと同時にそれらも全て解除され、大きく身体を震わせる闇の書の闇。

 

「行くよ、フェイトちゃん! はやてちゃん!」

「「――うん!」」

 

 なのはの言葉に、大きく、強く首肯く2人。

 

【Starlight Breaker】

 

 自身の中に存在する魔力(オド)と、皆が使い終わった事で空気中に浮遊している魔力の残滓となったものを魔力(マナ)へと戻し、杖であるレイジングハートの先端部へと収束させていく。

 

 魔力(オド)魔力(マナ)は、彗星や流星のように尾を引きながら引き寄せられ、その桃色の光球は一瞬で、なのはの身体を隠す程に大きくなる。

 

 なのはは、自身の中にあるリンカーコアをフルに廻転させて、魔力(オド)を高め、収束からの砲撃という方向性を持たせて、レイジングハートの先端へと移動させる。

 

 魔力(オド)の持つ特性に引っ張られ、魔力(マナ)もまた同様の効果を得る。

 

 レイジングハートから残りのカートリッジが全て排莢され、魔力の底上げがされる。

 

「全力全開……スターライトオオオオオオオオオオオオッッ……」

「雷光一閃っ……プラズマザンバアアアアアアアアアアーーーッッ……」

 

 フェイトもなのは同様に、自身の魔力(オド)と外にある魔力(マナ)を使い、使用する魔力を集め、高めていく。

 

 バルディッシュからは、魔力の込められたカートリッジが残っている分だけ全て排莢される。

 

 Zamber formであるバルディッシュの魔力刃と、フェイトと足元にある魔法陣の間には、紫雷が疾走っている。

 

 そして、空から降ってきた紫の落雷が、魔力刃の上に乗り、魔力と威力が上乗せされる。

 

 それだけでは無く、なのはとフェイトの2人は、気も同時に、それぞれ運用して、巨大な魔力球と魔力刃に込めている。

 

「ごめんな……」

 

 剣十字の杖の金色に輝く十字部分に、魔力が集まっていく。

 

 なのはのStarlight Breaker同様に、足元と放射面の2枚の魔法陣が展開される。

 その足元にある方は円形であり、ミッドチルダ式。そして放射面である方は正三角形であり、古代ベルカ式だという事が理解出来る。

 

「おやすみな……」

 

 例え何人もの人々を苦しめ、その人生を狂わせてきた存在であろうと。

 

 夜天の魔道書を闇の書足らしめた憎まれるべき存在であろと。

 

 それでも、家族である事に変わりは無い。

 

 消す事に抵抗は無いが、他に何か方法が無かったのかと思うばかりだ。

 

 瞳を閉じ、そして意を決して、もう1度目目を開く。

 

 最後の、闇の書の闇である暴走プログラムの最後をこの目で看取る為に。

 

 家族である自分のこの手で、終わらせる為に。

 

「響け終焉の笛、ラグナロク!」

 

 放射面である古代ベルカ式魔法陣の各頂点上に黒雷を纏った3つの巨大な白い魔力球が生成される。

 

「「「――ブレイカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーッッッ!!!!」」」

 

 なのはからはStarlight Breaker exが、フェイトからは雷光を伴った強力な一撃であるPlasma Zamber Breakerが、そしてはやてからはそれぞれ効果の異なる3連の魔力砲撃が放たれた。

 

 この一瞬が、歴史(とき)が、幾つもの過去(よる)を超えて、未来の地図である神話の1ページに変わる。

 

 絆を胸に抱き、星光の紋章(しるし)を掲げ、未来に繋がる(フレア)を振り翳して、聖なる力が放たれる。

 

 時空(とき)を超えて刻まれて来たであろう悲しみの記憶が今、解き、砕かれた。

 

 視界の全てを奪い去り、目を灼く程の強烈な閃光。

 

 耳を劈く程の轟音が鳴り響く。

 

 3人の少女から放たれたトリプルブレイカーによって、結界を壊しかねないと危惧する程の衝撃が疾走り抜ける。

 

 これが、ゾイルでは無く、局員が張った結界であったら、簡単に壊れてしまっていただろう。

 

 虹色に輝く魔力の柱と輪が発生させ、大きく爆発をする闇の書の闇。

 

 海面は大きく揺れ、海底から海水は上昇して、大きな津波となる。

 

【Eternal Coffin】

 

 海面と、波となった海水だけが凍り付き、砕け、元の海となる。

 

「本体コア、露出……捕ま、えた!」

 

 大きな爆発を起こす中で、Pendelformに変形したクラールヴィントの円形状となっている紐の間が空間を繋ぐ鏡となり、そこに闇の書の闇のコアが映し出された。

 

「――長距離転送っ!」

「――目標、軌道上!」

 

 シャマルが、コアを捕まえている間、ユーノとアルフがアースラが待機をしている空間の直ぐ近くへと強制的に転移させる。

 

 ユーノとアルフの魔法陣が、シャマルの旅の鏡である鏡内にある闇の書の闇のコアを挟む形で展開され、転移が開始される。

 

「「「――転送っ!!」」」

《コアの転送、来ます! 転送されながら、生体部分を修復中! 凄い速さです!》

《アルカンシェル、バレル展開!》

 

 アースラの下部に搭載されているアルカンシェルの先端部に、3つの環状魔法陣が展開される。

 

 それは次第に大きくなり、前方へと移動をしていく。

 

 真ん中に存在する1番大きな魔法陣の真ん中に、大きな魔力球が発生する。

 

《ファイアリングロックシステム……オープン!》

 

 空中に、火器管制機構が浮遊するように出現する。

 

《命中確認後、反応前に退避します! 準備を!》

()()()()()

 

 リンディの命令を受け、チャージを続けるアルカンシェル。

 

 アースラの大型魔力炉で生み出されるエネルギーの一部も、アルカンシェルへと流れていく。

 

 確実に当て、忌まわしき過去の払拭。そして、未来へと向かう為に。

 

 転移をし、地上から衛星軌道上まで上昇をし続ける途中でさえも、再生を続ける闇の書の闇のコア。

 コアを覆う生体部分は、畝りながら、動きながら、巨大化し、分裂し、増殖し、巨大化し、分裂し、新しい生体部分を造り出し、巨大化し、分裂し、増殖し。

 それを何度も何度も繰り返していく。

 

 火器管制機構の中にある鍵穴に、専用の鍵を差し込と、それは赤く光る。

 

 転移を完了した闇の書の闇のコアは、既に大きさを30m近く迄取り戻している。

 

《――アルカンシェル、発射!》

 

 差し込んでいる鍵を撚ると同時に、アースラ下部の管理局最大級の魔導砲であるアルカンシェルから超巨大な魔導球が発射される。

 

 最後の抵抗だと言わんばかりに再生をし続けている闇の書の闇へと真っ直ぐに向かって行き。

 

 大きな爆発を起こす。

 

 地上からも、その爆発は目視する事が出来た。

 

 大きな爆発を起こし、爆発地点からリング状の光が4度放たれる。

 

《効果空間内の物体、完全消滅……》

 

 そのエイミィからの報告を受け、皆が喜びと安堵を感じようとしていた時、異変は起きた。

 

《――嘘っ!?》

《どうしたの? エイミィ?》

《目標の消滅は、確認しました。しかし……ヒトのような存在が。いえ、ヒトとは全く違う存在が、突如出現!》

 

 その報告に、祝砲を上げても可怪しくは無かった空気が一変をする。

 

《映像を!》

 

 リンディに従い、アースラ内のモニターに、グレアム達の居る部屋のモニターに、そして、なのは等の居る場所に空間モニターが展開され、その様子が映像となって映し出される。

 

 そこには鼠が居た。

 

 銀色の鉄で出来た鎧を纏った、二足歩行の鼠が。

 身長は5mといったところだろうか。

 

 その鼠からは、かなりの気と魔力が放たれている。

 

 その禍々しい気と魔力から、信じたくは無いが……信じざるを得ないが、その場に居る鼠が闇の書の闇のコアを吸収したであろう事は簡単に想像出来た。理解出来た。理解するしかなかった。

 

「御馳走様でした。美味しかったですよ。でも、ちょっと寂しいものですね。闇の書の魔力を得た変わりに、身体は変質して、あっちに戻れないようになってしまうなんて……これでは、三途の川の水を溢れ返させても、生きていけるかどうか……」

 

 人語を解す鼠。

 

 そして、三途の川の水という言葉。

 

 その鼠が放った言葉から、はやてと竜人、そしてヴォルケンリッター等以外の皆は理解出来た。

 

《いけない! 直ぐに回避運動をっ!》

 

 そのリンディの放った言葉と同時に、ヒト型の鼠の瞳が怪しく紅く光る。

 

 そして、その鼠の掌から大きなエネルギーの塊が奔流となってアースラへと放たれる。

 

《――急いで!》

《――そんな、間に合わない!》

 

 

 悲鳴に似たリンディとエイミィの言葉を裏切るようにして、アースラの前に大きな赤い壁が立ちはだかる。

 

「――アースラは堕とさせんっ!」

 

 豪炎を壁のようにして放ち、鼠から出たエネルギーの奔流を防ぐゾイル。

 

 だが、咄嗟の事でモヂカラを使用してい無い為に、その壁はあっという間に砕かれ、その身が奔流に呑み込まれてしまう。

 

「――ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!」

 

 身を削り取り、焦がしていくそのエネルギーの直撃を受けて、悲鳴を上げる事しか出来ないゾイル。

 

「やりますね。その身で艦を守り切るとは……」

 

 感心する鼠の視線の先には、宙に力無く浮かび、漂っているゾイルの姿があった。

 

 彼の身体は灼け溶け、見るに堪えない程のものだ。

 

《――直ぐに、収容を!》

「そう言えば……自己紹介がまだ、でしたね。外道衆12呪皇が1人、鉄鼠。闇の書の闇のコアの露出……お疲れ様でした」

 

 ニヤニヤとした笑顔を浮かべているのか。顔にある髭が上へと向いて、口元が歪んでいるのが観える。

 

「艦を沈めるのは簡単ですが、それではつまらない。どうでしょう? 今から、地球全体に、三途の川の水を流し込みます。私は月で待っていますので、月に来るか、それとも溢れ出した三途の川と無数のナナシ連中の相手をするか……」

 

 その言葉と同時に、姿を消す鉄鼠。

 

 その数秒後に、地球の彼方此方から紅い水が溢れ出て来て、そこから数え切れ無い程のナナシ連中が顔を出し始める。

 

《ゾイル特務執務官の収容、完了しました!》

「――艦長!」

《何かしら? クロノ執務官?》

 

 溢れ出した三途の川の水は止まらず、世界中を覆うようにして広がり始めている。

 

 数時間も経てば、地球は現生物の住める環境では無くなり、外道衆等の住む死の星となってしまうだろう。

 

 だが、今の皆には戦うだけの力が無い。

 闇の書の闇のコアを露出させ、衛星軌道上に転移させた事で、力を使い果たしたと言っても言い状態なのだ。

 

 あったとしても、モヂカラが扱えない以上、ダメージを与える事は出来無のだ。

 

「エリクサーだ。これを飲め」

 

 志蓮が、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から無色透明の液体の入った小瓶を人数分取り出す。

 

《――志蓮君!?》

「おい! これ出したら、不味いんじゃ無いか? グレアム提督達も見てるし……」

 

 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中には、管理局が黙っている事が出来無くなるようなものが無数、収められている。

 

 このエリクサーもそうだ。

 体力と魔力(オド)、そして身体に出来ている傷がどのようなものであろうとも、その全てを完全回復させてしまう効果を持っている。

 

 知ってしまえば、どうなる事か。

 

「そんな事は、どうだって良い! 俺達にしか出来ないだろ!? これを止める事が……」

 

 飲む事に抵抗を感じている皆に、イライラしながら叫ぶ志蓮。

 

「――えいっ!」

 

 はやては、その瓶を口元に持っていき、思い切り良くその液体を口に含む。

 

 ゴクリと喉を鳴らし、動かして流れていくそれは、食堂を通過した直後に効果を発揮した。

 

「――あっ、美味しい! て言うか、凄っ! さっきまであんなに疲れてたのに、一瞬で回復してもうた……」

 

 はやての行動に釣られるように、竜人が、ヴォルケンリッター等がそれを飲み干す。

 

 それと同時に、彼等が消費した魔力(オド)と体力の全てが回復し、顔から疲れが吹き飛んだ。

 

 だが、シャマルは「私の役割が……ポジションが……」といった風に、少し落ち込んでいるようにも見える。

 

「ったく、こんな時に何やってんだ!? ブロンの奴は……」

「この場に居ない奴の事をとやかく言っても仕方無いだろ? 今は、この状況をどううするかだ……」

 

 この絶望的な状況に対し、体力と魔力(オド)を回復させたところで、世界存亡の危機的状況に変化は無い。

 

『――聞こえるか? 皆?』

「――おい! 今、何処で油売ってるんだ?」

 

 突如、皆の頭の中に直接声が響き渡る。

 

 その声に対し、雄介はしびれを切らしたように、溜まっていたものを吐き出すように物凄い剣幕で叫び出す。

 

「お、ま、え、なああっ! こんな大変な時に、何をやってやがるんですかあ、この野郎! こっちは大ピンチだってのに――」

『大体の状況は理解してる。今俺は、シェン……いや、界王神様んとこに居んだ。あとちょっとで儀式が終わるから、それまでの間、皆でどうにかしてくれねえか?』

「――それが出来ないから、こう言っ――」

『天照達にも救援は出してあるから、後は頼む!』

 

 その言葉を最後にして、念話が切れた。




まだ終らない……。
もう少し……もう少しなんだ……。
あと少しで……もうちょっと……もう25日になってしまう。
明日中に終わらせれば……。

ああ、サンタさん……どうか私に小説を書くのに必要な能力の全てを下さい。
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