魔法少女リリカルなのはZ   作:りおんざーど

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倒せ、鉄鼠を! 初めての元気玉

 両者の拳がぶつかる度に、空間が大きく揺らぎ、激しい光の明滅と音が繰り返されていく。

 

 滑空をしていると、それに従うかのように紅い水が割れて大きな波を起こす。

 

「ブロン君! 本当にブロン君なの!?」

「――お、お前等! 逃げろっ! 此奴は、お前等が束になっても勝てやしない!」

 

 驚くなのは達の声が耳に届き、そちらの方へと顔を向ける。

 

 何時の間にか、皆が同じ場所におり、俺もまたそこに引き寄せられるように移動をしてしまっていた。

 

 後ろからは、鉄鼠が迫って来ている。

 

 つまり、仲間である皆のところへと誘導してしまった事になる。

 

「お前、その髪……」

「話は後にしろ! 奴が来るっ!」

 

 俺の変化に気付いて驚きを隠せないでいる皆だが、俺の方は皆を構っていられる程の余裕は1つも無い。

 

 背後からは、化物と呼べるレベルの力を持つ存在が両手に凶器を持ちながら迫って来ているのだから。

 

「――うぐぁ!?」

「――きゃああっ!?」

 

 一瞬で、皆が吹き飛ばされていく。

 

 皆を飛ばしている鉄鼠の動きを、完全に捉える事が出来ていない。

 

「くそっ、俺の判断ミスだ……はああああああああああああああああああああーーっっ!!」

 

 俺は気を開放して、皆を攻撃し続けている鉄鼠へと向かっていく。

 

 鉄鼠の方もこちらに気付いたのか、俺へと拳を向ける。

 

 気と魔力(オド)の両方、そしてモヂカラを込めた拳と魔力が込められた拳がぶつかり合い、衝撃が身体を疾走り抜けていく。

 

 痛みに耐えながらももう片方の拳で殴り、鉄鼠の方も同じように行動を取って殴り返してくる。

 

 脚や膝をぶつけ合い、それらを拳や腕で防御するといった事を何度も何度も繰り返す。

 

「(一々気にしてはいなれない、っていうかそんな余裕が無いな……気を配るのは、皆と地球に対してだけだ)。かああ、めええ……」

「大ナナシ連中!」

「――な、何!?」

 

 両掌に気を溜めていると、鉄鼠が叫ぶのと同時に海中から大ナナシ連中が姿を現す。

 大ナナシ連中だけでは無く、大ノサカマタも顔を出して来た。

 

 こちらの気を溜めさせないつもりだろうか。

 

 虚を突かれてしまった事で、チャージしていた気は霧散し、鉄鼠の拳を真正面から真っ直ぐに、腹に受けてしまう。

 

「――ぐはっ!?」

 

 吐血しながらも、何とか鉄鼠を視界に納め続け、気功波を放つ。

 

「痒い……」

 

 たった1回手を振り払うだけで、鉄鼠はこちらの気功波を打ち消してしまう。

 

「も、もう1度やるっきゃねえ……かああああ、めえええええ、はああああああ――」

「そんな時間は与える訳が――な、何をする!?」

 

 こちらが気を溜めているところに、邪魔をしようとする鉄鼠。

 

 だが、鉄鼠の動きは皆が発動している拘束魔法で封じ込められている。

 

「こんなバインド、直ぐに……」

「今のうちに!」

 

 感謝の言葉を口にしている暇は当然無く、その変わりに気を溜め続ける。

 

「めええええええ……」

「ケイジングサークル!」

 

 鉄鼠を囲うようにして、淡い緑色の魔力輪が展開される。

 魔力光と声からして、ユーノが放った魔法だろう。

 

「こんな輪っかがどうしたと――何!?」

 

 鉄鼠は輪の中から出ようとするが、その輪に触れた瞬間に、鉄鼠の身体を構成している鉄が少し切れてしまう。

 

「――波ああああああああああああああああああああああああああああああああーーーっっ!!!」

 

 溜めに溜めた気と魔力(オド)、モヂカラを鉄鼠へと向けて放つ。

 

 放ったかめはめ波は魔力を込めている事が原因なのか、聖王だという証拠である魔力光の虹色に光っている。

 今の俺にはそれを気にしている余裕は無い。

 

 放ったと同時に、鉄鼠を拘束していた魔法は解除された。

 

「Absorption」

 

 鉄鼠がそう呟くと同時に、俺の放ったかめはめ波は鉄鼠の腕の中に吸い込まれてしまう。

 

「俺と同じような事を!?」

「別に驚く事は無いだろ? 俺は闇の書の闇の力も持っているんだ……当然、募集機能もある」

 

 驚く雄介を目にし、嗤いながら応える鉄鼠。

 

 リンカーコアからの魔力募集では無く、かめはめ波に込めた魔力を吸収したのだろう。

 

「Sammlung」

 

 やけに綺麗な発音をした鉄鼠のその言葉と同時に、ユーノ、クロノ、アルフ、はやてとリインフォース、雄介、志蓮、ドゥーム、竜人のリンカーコアが身体の中から飛び出してしまう。

 それは勿論、俺も例外では無く、身体から虹色に光り輝くリンカーコアが無理矢理摘出されてしまう。

 

「……ぅ……っう……き……貴、様……」

「言っただろう? 闇の書の機能を持っていると。Sammlung」

 

 2度目のその言葉に従って、外に出ていたリンカーコアが鉄鼠の身体に吸い込まれていく。

 

 10の光が吸い込まれていくのと同時に、その光が飛び出た時と同様の強烈な痛みが身体を疾走り抜ける。

 

「く、くそっ……たれ……」

 

 リンカーコアから魔力が募集された事で、痛みが引くのと同時に大きな疲労感が押し寄せて来る。

 

 舞空術で飛行をしているから、浮き続ける事は出来ている。

 

 だが、彼女達2人だけは違った。

 

 夜天の書の主として覚醒をして直後だという事、先程までずっと闇の書の闇に躰を蝕まれていたはやては、今行われた募集を機に、気を失ってしまう。

 

 ユニゾンをしていたリインフォースも同様に、魔力が限界近くまで抜き取られた事で飛行魔法が使用不可になり、1人だった状態から元の2人へと戻ったと同時に紅い海へとその身体を堕としていく。

 

「――はやて!?」

 

 救けに行こうとするヴィータ達ヴォルケンリッターだが、大ナナシ連中がそれを邪魔する。

 

「邪魔、すんなああああああああああああっっ!!」

 

 ありったけのカートリッジを消費し、Gigant formであるグラーフアイゼンで、大ナナシ連中を力の限り吹き飛ばす。

 

 明確なダメージを与える事は出来ないが、堕ちて行くはやてとリインフォースから遠ざける事には成功した。

 

「――はやてちゃん!」

 

 シャマルがはやてを、シグナムがリインフォースを抱え、保護する事に無事成功する。

 

 が、それと同時に竜人と雄介、クロノとユーノも同様に海へ堕ち掛けるが、何とか踏み留まる。

 

「やはり、闇の書が1度募集した者には無意味ですか……」

 

 残念そうな表情を浮かべてなのはとフェイトに目を向ける鉄鼠に対して、俺等は疲労困憊になりながらも、強く睨み付ける。

 

「お前等は、アースラへ退避していろ」

「けどよ……」

「さっさと行け! 俺を困らせるな!」

 

 皆には申し訳無いが、怒鳴るようにして言葉を口にする。

 

 近くに居て貰えたら、一緒に闘ってくれたらどれだけ心強いだろうか。

 

 だが、そうは言っていられない程の状況だ。

 そんな事は出来無い程に、強力な相手なのだ。

 

 ハッキリと言ってしまえば、今の自分でも勝てないという事は理解が出来る。

 

「行くぞ、皆……シャマル」

「だけど――」

「――私達では、役に立てない……ハッキリ言うと足枷になってしまうだろう」

「また……なんだね……」

 

 シグナムの言葉を聴き、転移魔法の準備に入るシャマル。

 

 なのはとフェイトの2人は、非常に申し訳無さそうな、そして悔しそうな表情を浮かべている。

 それは彼女達2人だけではなく、ユーノとクロノも、他の皆も同じだ。

 

 アースラへの次元転送が開始される。

 

 魔法陣が展開され、俺以外の皆がその魔法陣の中に居た。

 

「そのまま、行かせると思うか?」

 

 だが、鉄鼠の放った言葉と魔法によってそれは妨害されてしまう。

 

「――なのは!!? 雄介!!?」

 

 なのはと雄介の左胸に、大きな穴が開かれる。

 

 2人は驚愕の表情を浮かべた侭、海中へと没した。

 

 紅い色をしている海水だからなのか、2人の血が昇って来ている様子が見え無い。

 

「……よ、くも……よく、も……」

 

 目の前が真っ赤に染まる。

 

 肩が震え、息が激しくなり、鼓動が速くなる。

 

 周りから発せられている声も、音も……その全てが遠くへ、聞こえなくなってしまう。

 

「――うわああああああああああああああああああああああああああーーーっっっ!!!!」

【Sir】

 

 真っ先に動いたのはフェイトだった。

 

 制止しようとする相棒(バルディッシュ)の声は、届いていないのか、悲鳴のような叫びを上げながら鉄鼠へと向かっていく。

 

 だが当然、鉄鼠との実力差もあり、フェイトの攻撃は届かず、彼女は鉄鼠の攻撃を真正面から受けてしまう。

 

「ごめん……なのは……」

「「――フェイトオオオオオオオオッッ!!!?」

「――テスタロッサ!!」

 

 冷静さを失っていた事もあり、2人と同じようにして海に沈んでいくフェイト。

 

「――ブ、ブロン……?」

「う、うぅ……うわああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!!」

 

 切れた。

 俺の体の中で、なにかが切れた……決定的な何かがブチッと切れてしまったような気がした。

 

 真っ赤に、そして真っ暗な視界の中で、自身の身体が変異していく事だけは理解出来た。

 

 全身から、目を灼いてしまうのではと思える程に眩い緑色の閃光が迸る。

 身体に存在する内蔵以外の筋肉という筋肉が、限界近く迄肥大化及び膨れ上がっていく。

 翠色だった目は真っ白と言うよりも白目と言えるような状態になり、髪の毛もまた、金色から緑色へと変色をする。

 

 先程まででも世界を壊しかねない程に強力且つ強大な力を放っていたが、この変身によって更に凶悪なものに変化した。

 

 変化に気付いたのは、志蓮と竜人、ヴォルケンリッター、鉄鼠だった。

 

「――な、何だ……あの変化は……? まさか……」

 

 驚愕と動揺の言葉を口にする鉄鼠。

 

 鉄鼠の声は心なしか震えており、怯えているかと思えるような様子だ。

 

「お、おい……ブロン?」

 

 音のする方へと振り向いてみる。

 

 そこには、何かが居た。

 そこに居る何かの姿は大きく歪んでおり、朱く禍々しいものに見える。

 聞こえる音は、耳を澄ませれば何者かの声だという事だけは何とか判別し、聴き取る事が出来る程度のもの。

 

「気が高まる……溢れる……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーっっ!!!!!!!!!」

 

 身体の底から力が溢れ出て緑色のオーラとなり、そのオーラから無数の強力なエネルギー弾が四方八方へと飛んで行く。

 

 そのエネルギー弾は、建物は勿論、大ナナシ連中や大ノサカマタの身体を削り取り、風穴を空け、ナナシ連中を消滅させていく。

 

「これだから嫌なんですよ、サイヤ人は……転生者は……」

「うわああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!」

 

 無性に周りに存在するもの全てを壊したいという気持ちに、御し難い程に強烈な破壊衝動が押し寄せて来る。

 いや、御す事が出来ず、憎しみと怨嗟や力そのものによって振り回されている。

 自身を制止しようとしている存在も……そして何よりも、5人を堕とした存在を壊したくて、破壊したくて堪らないと言った気持ちで一杯になる。

 

「止めろ、ブロン! 落ち着けえぇっ!」

「――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーっっっ!!!!」

 

 思わず、暴走する自分を止めに来たであろう存在を殴り飛ばしてしまう。

 

 その存在は痛みによる悲鳴を上げて、紅い海面を割りながらかなりの距離を吹き飛ばされていく。

 

「ここは、退がるべきなのか……?」

 

 5人を堕とした存在の放っているであろう音は、しっかりと聴き取って判別する事は出来無い。

 だが、それがどういった意味であり、どういったつもりで口にしているのかは何故か理解する事が出来た。

 

「逃が、さない……」

「――ケイジングサークル」

 

 逃げようとする存在が、魔法を発動させ、魔力輪が俺の動きを封じ込めるように展開される。

 

「こんなもので、この俺を止める事は出来ぬぅ!!!」

 

 力尽くでそれを破り、逃げている存在へと向けて掌から連続で魔力を込めた気弾を放ち攻撃をする。

 

 放たれた虹色の気弾は撃ちだされると同時に散弾銃の弾のように変化し、その存在の四肢へと喰い付くように向かっていく。

 

「――ぅぐあああああぁ!!?」

 

 それでも尚、その存在は身体を引き裂かれるような痛みに耐えながら逃げていく。

 

「逃がさないと、言った筈だあああああああああああああああああああ」

「――天の鎖よっ!!」

 

 だが、金色に歪んだ空間から鎖が飛び出し、俺と俺から逃げる存在の動きを止める。

 

 引き千切ろうと必死に身体を動かしてみるが、千切れるどころか、ダメージが入っている様子は無い。

 逆に、より一層強く締め付け、こちらの力を奪いに来ているかのように感じられる。

 

 それが癇に触り、俺はただひたすらに叫びながら身体を動かす事しか出来無い。

 

「落ち着け、ブロン……っつぅ……」

「ここからは、私に任せて貰おうか」

 

 何処から、何時現れたのだろう。

 別の音がする方へと顔を向けると、そこにはまた、先程までは居なかった別の何かが居り、必死に藻掻き続けている俺の方へゆっくりとした足取りで近付いて来る。

 

「どうしたブロン? そんなに怒って……エネルギーの無駄遣いをしているんじゃ無いのか? だから、もっとカルシウムを取れと言っていたんだ」

 

 目の前のそれが口にしている音は聞き取れ無い事は変わらない。だが、何かこちらを馬鹿にしているのではと思えてしまう。

 

「安心しなさい。なのはも雄介も、フェイトも無事だ……無事なんだ」

「――離せええええええええええええええええええええええええっっ!!!!」

 

 耳に届く音の持っているであろう意味は理解らず、ただただ自分の邪魔をする存在、自身を縛っている鎖を壊そうと必死に身体を動かす。

 

 だが、当然鎖が引き千切れるという事は無く、目の前の存在は続けて何かを話す。

 

「だから、戻って来い。怒るのは良いが、周りに当たるな。まあ、我慢しろとは言えないが……自分でだって理解しているだろう? こんな風に、周りに当たり散らしていても無意味だとう事を……無駄だという事を」

「これを外せええええええええええええええええええええええええっっ!!!」

「頭を冷やせ、ブロ――!?」

 

 鎖に縛られながらも滅茶苦茶に動かし振るっていた俺の拳が、腕が……目の前の存在の腹を通過する。

 

 腕には、真っ赤な血が付着しており、その存在から流れ出る血が、海の底へと落ちていく。

 

「……頭を冷やせ、ブロン……お前の力は……お前の持つ力は、そんな事をする為のものじゃあ無い筈だ……お前の欲しかった力は……お前の求める力は、そんなものじゃ無いだろう?」

 

 その存在から聴こえて来る音が、次第に小さくなっていく。

 その存在が持っていた熱が急速に失われていき、冷たいものになっていく。

 

「お前の怒りや悲しみは尤もだ。だから、私がそれを引き受けよう……俺が持って行こう……だから」

「…………」

 

 何時の間にか涙が頬を伝い、濡らしていた。

 

 朱く歪んでいた視界は、何時も通り綺麗とは言えないが、鮮明なものへと戻る。

 耳に届いている音は、ハッキリとした声に戻り始める。

 

「1人で抱え込むな……家族なんだから、兄である私を少しは頼ってくれ」

「……ま、っど……?」

「ああ……」

 

 掠れた声で、消えかけている声で、応えてくれるゾイル。

 

 彼の身体を通っている俺の腕を、ゆっくりと、これ以上のダメージを与えないようにそっと彼の身体から抜き取る。

 

「俺、は……」

「何も言うな……大体は理解しているつもりだから」

「でも……さ……」

「確かこの世界には、あの世がちゃんとあるんだよな? なら、そこで好きなだけお前の様子を観て、笑わせて貰おう。お前から、好きなだけデータを取らせて貰おう……――ごふっ!?」

 

 マッドの口から、大量の血液が吐き出される。

 

 バリアジャケットである山吹色の道着の一部が、彼の血液で赤黒く染まる。

 

「感情で拳を振るうのは良い……だけど……感情に振り回されるのだけは止めろ……気を付けるんだ……良いな? ブロン……」

 

 瞳を閉じ、上下していた身体の動きは止まる。

 冷たくなっていた身体は、完全に冷えきってしまい、重くなる。

 発せられていた微弱な気は完全にこの世から消え去り、あの世へと瞬時に移動した事を感じ取る。

 

「ブロン……」

 

 俺の身体を縛っていた天の鎖は粒子になり、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)内部へと戻る。

 

 声を掛けてくる志蓮に顔を向け、力無く笑顔を見せて応える。

 

 マッドの遺体を、真っ紅に染まっている海の中へと送る。

 

 ゆっくりと沈んでいく家族の遺体を見送り、涙を拳で拭い取る。

 

 海が紅一色だという事もあってか、少しと経たず、堕ちて行く身体は見えなくなる。

 

「ありがとう、マッド……お陰で目が醒めたよ」

 

 ヒトを殺したのは、これで3度目だ。

 

 1度目と2度目は、転生後に目覚めてからだ。

 

 そして今回。

 家族をこの手に掛けてしまったのだ。

 

 ハッキリと言ってしまえば、自分を責め続けてしまいそうになる程に、罪悪感とそれによる重圧感を感じてしまう。

 

「転生者が1人死んだか……いや、殺したんですね」

「そうだな……」

 

 鬱ぎ込んだままでいると、あの世から観ているであろうマッドに申し訳がたたない。と言うよりも、笑われてしまうだろう。

 

 嗤う鉄鼠へと目を向けて、一睨みする。

 

「さて、と……覚悟は良いか? 俺は、今さっき出来た」

【Il va commencer le dispositif. Knuckle forme】

 

 マッドから貰っていた指輪型のデバイスが光り輝き、腕先から拳までを覆うガントレットへと変形をする。

 そのガントレットには回転式のカートリッジ弾倉が備えられており、自動的に魔力と気、モヂカラ、GN粒子がそれぞれ100発ずつ分がカートリッジに込められていき、それを読み込む。

 

【Toute l'énergie que je mis fin à la cartouche. Lumière de sainte Saiyan, il a été commencé terminée】

「ルミエド・セイント・サイヤン……聖なるサイヤの光か……」

 

 膨れ上がっていた筋肉や白目は元に戻っており、先程と見比べた場合、かなりスマートな印象を受けてしまうだろう。

 だが、ガントレット型のデバイスを装備しているからか、腕の辺りが太く見える。

 だからと言って、アンバランスだという事も無い。

 肩や膝、肘部分にはプロテクターのようなものが装備されている。

 

【Bonjour, maître. Qu'en est-il de l'humeur?】

「悪く無いな……不思議だ。ピッタリと、自分の身体の一部のようだ……最初からそうであるかのように……」

 

 縛り付けられている鉄鼠へと目を向けて、拳をつくり、構えを取る。

 

 デバイスからは、GN粒子だろう緑色の粒が放出され続けている。

 

「開き直りですか? 全く、これだから転生者は……」

「お前の言う通り、俺達転生者は外道なのかもしれないな……」

「――何!?」

「前世では穀潰しだったし、ついさっき家族を手に掛けたからな……だが俺は今、これ以上外道に堕ちる訳にはいかない。堕ちるつもりは無い!」

 

 鉄鼠が、自身を縛り付けていた天の鎖を無理矢理引き千切る。

 千切れた鎖は粒子状になり、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中へと転送される。

 

「もし、外道に堕ち掛けようとも……外道に堕ちたとしても、きっと何とかなる……皆が止めてくれる。そこから救い上げてくれる……俺なら、そうする。だから……信じる!」

【TRANS-AM】

 

 放出されているGN粒子の生成量が一気に増大し、圧縮率も上昇する。

 それら全てがデバイスと道着へと付着し、その黄色に近い山吹色から赤く変色する。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!」

「――っぅうげぇ!?」

 

 繰り出す拳は、光の速度を超えて亜神速とでも呼んで良いだろうか。

 いや、最早神の目ですら追い付けないであろう速さであり、適した言葉は浮かび上がっては来ない。

 

 抉り、穿ち付けていく度に、鉄鼠の身体が削れていく。

 

 だが、闇の書の闇の魔力を使用している為に、鉄鼠の身体は削れると同時に修復されていく。

 そして修復された箇所は、耐性を持つようにしてより強固なものへと変わっていく。

 

「無駄なんですよ、無駄……攻撃すればするだけ、それに対しての防御力が増していくだけ……止めたらどうで――ぅぐぁあ!? ぐぎ!? ぐごっ!?」

 

 声にならない声である叫声を上げながら、鉄鼠の身体を構成している鉄が長く、鋭くなり、増殖していく。

 

 身体の内側から飛び出て来るかのようにして、鉄が飛び出して、鉄鼠の身体を変えていく。

 

「――ド、ドウイウ事ダ? コレハ一体!?」

 

 鉄鼠の身体が変化を続け、内包されている禍々しい魔力が、邪悪な気が暴走を始める。

 

 それに呼応するようにして空間が歪められていき、空が割れ、虹色の異空間が再び多数の雲の隙間から顔を覗かせる。

 

「暴走……? 自爆みたいなものか……俺の、モヂカラを込めたかめはめ波を吸収したからな。まあ、当然か……」

「どうするつもりだ? て言うかこの空、これどうなってるんだ?」

「――この気……ゾイルか」

 

 今起きている現象の説明しようとしたその瞬間、アースラから知っている気と魔力が転移をして来るのが感じ取れる。

 

 ゾイルだ。

 

「身体は大丈夫なのか?」

《そうだよ! あんなにボロボロだったんだから、もう少し休まないと――》

「――気にする事は無い。見ての通り、傷はもう1つも無い」

 

 こちらの質問に、エイミィも同意をする。

 だが、自身の傷一つ無い身体を見せるゾイル。

 

 ゾイルの身体は鉄鼠の攻撃を受けて、焼け爛れていたと言える状態だった筈なのだ。

 そんな状況から直ぐに回復をしたという事は驚きを隠せずにいられない。

 だが、そんな事が無かったかのような健康体と呼べる身体状態になっている。

 

 寧ろ、それまでと比べてより強固と言うよりもガッシリとした身体になり、放たれている気は比べ物にならない程に上昇しているように感じさせる。

 

「それよりも、だ……この裂けた空から見えている異空間、と言うより亜空間をどうにかしないとな……」

「また、同じ事を繰り返す必要があるのか……?」

 

 大きく溜め息を吐きながら、志蓮は金色の剣の形をした神話型デバイスを手にする。

 

 鉄鼠から放たれている膨大且つ強力、暴力的な程に強大な魔力と気の大きさと量によって空間が歪められた故に出て来たものだ。

 それを、顔を覗かせている亜空間に繋がる箇所を塞ぐには、鉄鼠に理性を取り戻させるか、鉄鼠の放ち続けているそれらよりも大きな力を放つ必要がある。

 

「ぼ、僕達も手伝おう」

「いや、お前達はアースラに、なのはと雄介、フェイト、ドゥーム、はやてとリインフォース、竜人の7人を連れてアースラに戻ってくれ」

「これは、俺達転生者が招いた結果だ……だから」

 

 予想ではあるが、転生者の誰かが侍戦隊シンケンジャーに出て来るモヂカラを特典として手にして、この世界に外道衆が出現したのだろう。

 

 もしこの考えが合っているなら、俺達も例外では無いだろう。

 

 現に、この世界には界王神達が存在しているのだから。

 

「だが……」

 

 魔力が募集され、消耗した状態での戦闘は避けるべきだろうが、相手や状況がそれを許しはしないだろう。

 募集されずに居たゾイルと、魔力などの供給可能なデバイスを持つ志蓮と俺の3人なら問題無く戦闘出来る。

 

 そういった考えからクロノの言葉を一蹴しようとしてしまいそうになるが、その言葉を呑み込む。

 

「5人をアースラへと連れて行った後に、手伝ってくれ」

「理解った」

 

 こちらの言葉を理解と了承をしたのか……クロノとユーノ、そして守護騎士(ヴォルケンリッター)の計10人は、アースラへ転移をした。

 

 裂けている空から、目の前で未だに姿を歪なものへと変え続けている鉄鼠に視線を向ける。

 

 地獄に存在している針の山のような姿に変わり果てた鉄鼠を目にして、思わず哀れみと憐憫のような気持ちを抱いてしまう。

 

「さてと……やりますか」

「ああ……アルティミット・バインド」

「I am the bone of my sword」

 

 ギシギシと音を立てながら動き続ける鉄鼠の身体に生えている無数の鉄柱。

 

 鉄鼠の身体に生えている鉄柱に、バインドから動きを封じ込める為に縛と束というモヂカラが流れ込む。

 それによって、全ての鉄柱が1つに纏め上げられる。

 

 内側からそのバインドを破ろうとしているのだろうが、大きな音が鳴り響くだけであり、全く破れる気配は無い。

 

「Steel is my body, and fire is my blood. I have created over a thousand blades. Unknown to Death. Nor known to Life. Have withstood pain to create many weapons. Yet, those hands will never hold anything」

 

 辺り一面が――空間が歪み始め、切り取られていく。

 

 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)内に貯蔵されている神話型デバイスの魔力が同時且つ一気に解放され、志蓮の魔力(オド)を底上げしていく。

 

 一定の座標間を捕捉し、そこに王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の宝物庫とは違う空間へと塗り替えていく。

 

「So as I pray, Unlimited Blade Works」

 

 志蓮のその言葉がーー詠唱が終了すると同時に、一定範囲の空間が別のものへと完全に変化する。

 

 その空間は、燃え盛る炎と、無数もの剣が大地に突き立っている荒野であり、空には巨大な歯車が浮かび回転している。

 

 突き立てられている無数の剣からはジュエルシード21個分の魔力が赤子にすら思える程の魔力が発せられている。

 

 見方によってはとても寂しい空間であり、面白い空間でもある。

 

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)……」

 

 志蓮の背後の空間が歪み、金色の光が周囲をより一層明るく照らす。

 

 その光からは、剣や槍、斧などの神話型デバイスが顔を覗かせている。

 

 そしてその光は、鉄鼠の身体を囲うように移動をする。

 

 固有結界を展開するのには、膨大な魔力(オド)が消費されてしまう。

 空気中に浮遊している魔力(マナ)を吸収して、リンカーコア内で魔力(オド)と一緒に方向性を持たせて放出しようが、それだけでは展開すらも出来無い程だ。

 

 志蓮個人の持つ総魔力量は平均値の7倍と多い部類に入るが、それでも足り無い。リンカーコアから魔力が募集されてしまった状態なら、尚更だ。

 だが、宝物庫内に存在しているデバイスから魔力供給を受ける事が出来、それによって固有結界を展開出来るようになるのだ。

 

「――射出っ」

 

 顔を覗かせていた武器の全てが、無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)内の刀剣類全てが鉄鼠へと向けて光速で放たれる。

 

 鉄鼠の身体は鉄で構成されてはいるが、射出された武器の全ては膨大な神代の魔力(エーテル)が込められており、気と魔力(マナ)魔力(オド)、モヂカラが込められており、簡単にその身体を斬り裂き、貫いて傷付ける。

 

「あらら、バインドが切れてしまったか……すまない……バインドを斬ってしまって、すまない……」

「気にする事は無い」

 

 だが、世界そのものを壊し続けて来た闇の書の闇の力を持っているからか。鉄鼠の身体は直ぐに再生してしまう。

 

「やっぱ、この程度の攻撃じゃあ無理か……世界を――宇宙1つどころか2つ位を簡単に壊せる程の力じゃあ無いとな……」

 

 こうしている間にも、三途の川の水はこちらに出て来ている。

 そしてその速さは、鉄鼠の力の暴走によって加速し始めているであろう。

 

 この場に居る3人の魔力(オド)と気が上昇していく。

 

「――波アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーッッッ!!!!」

 

 皆が思い思いでそれを解き放って、鉄鼠へと攻撃をする。

 

 膨大なエネルギーの奔流が、鉄鼠の全身を呑み込む。

 

「やったな……」

「ああ。だが……」

 

 光が晴れると同時に、鉄鼠の姿は完全に視え無くなっていた。

 

 だが、歪で禍々しい魔力と気は消失していない。

 小さくはなりはしたが、それでも魔力と気は残留しており、それがかたちを得ようとしているような気がする。

 

「2の目か何か、か……?」

「やっぱ、そう簡単にはいかないよな」

 

 ヒト型の鼠だった姿から、針の山へ。そして、そこからも大きく姿を変える。

 

 鉄鼠の姿はヒト型へ戻る。

 身体の骨組みが丸見えであり、その全てが金属で構成されている。1つ1つの金属は常に流動しており、その全てに生命があるかのようだ。

 身体の大きさはそう……目測で大体160cmと小さくなっている。

 

「助かりましたよ。貴様達のお陰で、俺はこうして意識を取り戻す事が出来た。ほんの少し力が小さくなったが、気にする事は無い程度……お礼に殺してやろう」

 

 その言葉と同時に、鉄鼠の腕がゾイルの方へと向かって伸びていく。

 

 鉄で出来ている身体の筈なのに、それが伸びている事に驚きを隠せない。

 

「成る程……かなりの速さだ。だが」

 

 ゾイルの生命エネルギーが、彼の背後にヒト型となって現れる。

 

「パワーアップをしたのは、何もお前だけじゃ無い」

 

 その幽波紋(スタンド)が、鉄鼠の腕を殴り飛ばして、攻撃方向を逸らす。

 

 その黄金の幽波紋(スタンド)から繰り出された拳には、それ程の力は込められてはいない。

 どちらかと言うと、鉄鼠が繰り出した腕による攻撃を逸らしたというべきなのだろうか。

 悪意や敵意そのものを、ゾイルに対して働くそういったものを完全に無効化しているのではと言える様子だ。

 

 その現象を目にし、「信じられない」といった風とまではいかないが、訝しむ鉄鼠。

 

「貴様達外道衆に、幽波紋(スタンド)の効果はそれ程働かない……無意味だという事は理解している。だが、俺が出している幽波紋(スタンド)は、貴様を攻撃した訳では無い」

 

 不思議がる鉄鼠に対し、静かに応えるゾイル。

 瞳の方もまた、彼の放つ言葉と同じく静かなものだ。

 

「お前のターンは終わったよな? なら、次はこちらのターンだ! その心臓、貰い受けるっ! ――刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)ッッ!!」

 

 背後の空間を金色の光で歪ませ、その中から朱色の魔槍を手にする志蓮。

 

 その真名を解放すると同時に、神話型デバイスである刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)が、鉄鼠の心臓に当たる部分の座標を探し当てる。

 槍先だけが鉄鼠の心臓の中に転移すると同時に、残された槍の柄部分が槍先の場所に引っ張られるように移動をし、槍先と柄が再び引っ付いて元の槍になる。

 

 三途の川の水と同じ赭色の血を流しながらも、その槍を自身の手で抜き取る鉄鼠。

 

「――ちっ……コアを破壊しても駄目か」

 

 その志蓮の言葉通り、貫かれた筈の鉄鼠の心臓は即座に修復する。

 鉄鼠の身体を構成しているコアは、心臓では無いようだ。

 

「――ンバッ!!」

 

 鉄鼠の鉄掌から、放射状に漆黒のエネルギー波が放たれる。

 その中には無数の鉄破片が紛れており、避けようとするゾイルを除いた俺達2人の身体に無数の傷を付けていく。

 

「――暗弱(あんじゃく)! 闇弱(あんじゃく)! 怯弱(きょうじゃく)! 虚弱(きょじゃく)! 孤弱(こじゃく)! 柔弱(じゅうじゃく)! 惰弱(だじゃく)! 軟弱(なんじゃく)! 薄弱(はくじゃく)! 貧弱(ひんじゃく)! 羸弱(るいじゃく)! 劣弱(れつじゃく)! 弱い、弱い、弱ああああああああいーーーーーッッ!!!!!」

 

 骨にヒビが入る。骨が割れる。骨が砕かれる。

 内蔵に傷が付く。内蔵に穴が空く。内蔵が破裂する。

 

 鉄鼠によって身体中が、これでもかと言わんばかりに殴り付けられていく。

 

『ゾイル、志蓮……時間を稼いでくれないか?』

『どういうつもりだ?』

『元気玉を使う』

 

 その1言だけで十分だった。

 

 ゾイルと志蓮の2人は、鉄鼠へと向けて攻撃を開始する。

 

 俺は両腕を空へと高く上げ、周りに居る気を持つ存在へと語り掛ける。

 

「(この地球でまだ生き残っている者達よ、海よ、大地よ、空よ、空気よ……地球外に居る生命ある皆……頼む。ちょっとずつだけで良いから、元気を、気を分けてくれ)」

 

 目を閉じ意識を集中させる事で、太陽系に存在している生物達の気を強く感じ取る。

 

 

 

 サーチャーも固有結界内に存在しているお陰なのか、アースラからでもその様子を観る事が出来た。

 

 モニターには、腕を上げ続けながらじっとしているブロンの姿が映し出されている。

 

「な、何をしているのかしら?」

「じっとしてたら、唯の的になっちゃうよ」

「志蓮とゾイル、さん? の方はどうなってるのかも理解らないし……」

 

 モニターに映し出されているのはブロンだけであり、その映像を観ている皆は心配し、祈る事しか出来ない。

 自分に出来る事を探してみるが、今のところ――現状では何も出来ない事が悔しく、歯噛みして。

 

 

 

「(良いぞ……その調子だ。ドンドン増えろ……もう少しだから頼む……)」

 

 微量な、雀の涙と呼べる程のものだが、気がゆっくりと両掌へと集まっていく。

 その集まって来る気は、温かく、生命の証である事を教えて来る。

 

 集まって来る気は次第に大きくなっていき、固有結界を強く照らし始める。

 

「ゴールド・エクスペリエンス・アルティメット・レクイエム」

 

 長ったらしく言い難い名前をしたゾイルの幽波紋(スタンド)――黄金の風が奏でる鎮魂歌は鉄鼠が放つ攻撃を無力化して、本体であるゾイルを、そして俺を同時に護ってくれている。

 だがそれでも、全ての攻撃を防げているという訳ではない。

 

【GN field】

 

 GN粒子を消費し、張り続けているGNフィールドが、ゴールド・エクスペリエンス・アルティメット・レクイエムが対処仕切れないでいる攻撃から俺の身体を護ってくれており、辛うじてダメージを負わずに済んでいる。

 

「(まだ足り無い……)カートリッジ、ロード!!!」

【Il va lire l'ensemble de la cartouche. Cartouche magie, la cartouche de gaz, modèle cartouche Djikara, ondule cartouche, cartouche de particules GN …… 100 tirs vaut le lire était!!!】

 

 俺の叫びに応えて、搭載されている全てのカートリッジをロードする。

 

 無茶な事であり、無理をしている事は理解出来るが、必要な分が足りず、スキルを創り出す余裕も無い。

 

「……王律鍵バヴ=イル」

 

 その光の中から、金色に光り輝く巨大な鍵のようなものを取り出す。

 それは独りでに動き、何かの鍵が解除される音が鳴る。

 その音と同時に、志蓮の背後は、金色の光の変わりに赤色の光が浮かび上がり、模様を描いていく。

 

 志蓮は刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中に入れ、背後の空間を金色の光で歪める。

 

 そしてもう一度空間が黄金に歪み、折神の全てが姿を現して、鉄鼠を攻撃していく。

 

 折神は、モヂカラの塊だと言える存在であり、外道衆である鉄鼠の身体に明確なダメージを少しずつだが、確実に与えていく。

 

「……っっぅ……もう、沢山だああああっっ!!! お前等を相手するには飽きたし、これ以上やり続けるとこの星が壊れてしまう。いっその事、壊してやろう!! そうだ! この訳の理解らない空間ごと地球を破壊してやるっ!! 何もこの星や世界に拘り、固執する必要は無いのだからなああああっっ!!!」

 

 攻撃を続けながら上空へと飛翔し、背中から新しく別の鉄腕を創り出す鉄鼠。

 

 上空へと向けたその新しい腕にある指からは、黒く禍々しい魔力の込もった球が発生し、一気に膨張する。

 その大きさは、鉄鼠の身体の26倍はあるだろうか。

 

 結界内は、その黒い球体によって、大きく影を落として、真っ暗と言えるような感じだ。

 

「よし! もう良いぞ!」

 

 その言葉に、ゾイルと志蓮の2人は鉄鼠から離れる。

 

「――喰らえええええええええええええええええええええええええーーーっっっ!!!!!」

「――な、何だ!?」

 

 固有結界内を壊しかねない程に大きくなった元気玉は、鉄鼠へとゆっくりと迫っていく。

 

 その大きさと光はかなりのもので、実際の大きさは月よりは小さいが、太陽が近付いてきていると言える程の迫力を感じさせる。

 

 鉄鼠の創り出していた黒い魔力球はあっという間に元気玉に呑み込まれ、消滅してしまう。

 

「――う、うぐぁ……こんな、こんなもの……こんな……ものおおおおおおおおっっ!!!」

 

 必死に押し返そうとする鉄鼠だが、少しずつ地面を削りながら押されていく。

 

「おいおい、こんな状況にも関わらず……」

「マジかよ……元気玉は悪の気を持っているような奴は触れない筈だろ」

「…………」

 

 驚きを禁じ得ないでいる雄介と俺。

 

 そんな2人に対し、内心の方は理解らないが、冷静な様子を見せるゾイル。

 

 元気玉の攻撃を耐えながら、鉄鼠は鉄爪を俺達3人それぞれへと向けて伸ばしていく。

 

 だが、鉄鼠の身体は元気玉に呑み込まれるのと同時に、溶けるように鉄爪も消失する。

 

「――な、何だ!? 何だ、それはあああああああ!?」

 

 鉄鼠が驚愕に表情を歪め、こちらを睨んで来ている。

 

 それと同時に力が抜けたように鉄鼠の身体が地面へと深く沈み、元気玉に呑み込まれていく。

 

 爆風と共に閃光が疾走り、それに耐え切れ無かったのか、固有結界が崩壊を始める。

 

 強烈な風と光が治まると同時に、鉄鼠が姿を現す。

 

「――こ、これでも、駄目なのか……?」

「いや……」

 

 無駄に終わってしまったのではと思えたが、元気玉は、確かに鉄鼠にダメージを与えており、鉄の身体は誘拐し、ボロボロになっていた。

 

 赤く、白く変色をさせて融解を続けている身体を動かして、鉄鼠は赫の瞳でこちらを射抜くように観ている。

 

「やって……くれました、ね……」

「お別れだ、鉄鼠」

 

 鉄鼠の身体は、その機能を確実に停止仕掛けている。

 放たれ続けていた膨大且つ強力で禍々しく歪な魔力と気は、既に消えかけている。

 

「まあ、良いでしょう……最後に、1つ……」

 

 溶け、そして崩れ続けている身体で、途切れ途切れに言葉を口にする鉄鼠。

 その言葉は呪詛のようだ。

 

「――自分というものを失う恐怖を味わいながら、仮初の平和の中で暮らし続けていくと良い」

 

 盛大に、呪うようにして大きく口を開きながら嗤い続ける鉄鼠。

 

 鉄鼠の身体と魔力や気の全て、そして魂が消滅をしても、その嗤い声だけは少しの間、耳の中を反響し、こびり付くように残り続けた。




あと1話……あと1話でA's編は終了の予定だ。
この1話の内容は頭の中にあるが、まだ文章化出来ていない。速くしないと……。

まあ、その後にはPSPのゲームでお馴染み? のTHE BATTLE OF ACESとTHE GEARS OF DESTINYでの出来事を書く。
その為に今、妄想中だ。


楽しみにしている読者は居ないと言える程度で、雀の涙よりも少ない数だろうが、それでも書き続けるぞ。
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