なのは、魔法との出会い
森の中なのだろうか。
訂正しよう、公園だ。
生い茂った木々の間には人工的に造られた道が存在していて、其処は並木道なのだろう。
そして其処には小学生くらいの年齢であろう男の子1人の姿があった。何処かの民族衣装の様な服を着ていて、赤く球体の宝石に似た何かを手にしている。
彼は何かを探しているのか辺りをひたすらに見渡している。
焦っているのか、額には汗が流れていた。
「…………」
そんな少年を、草むらからそっと見ているものが居る。
その存在にはカタチというものがこれといって決まってはおらず、常に変化し、流動をしている。変わらないのは、その不気味に光っている赤い瞳の様なものだけだ。
動いた。
その謎の存在は、少年に向かって跳んで行く。まるで飢えた肉食の猛獣が草食動物である獲物を狙って捕らえようとしているかの様に速く鋭い動きをしている。
「
それを予期していたのか――彼は慌てる事もなく、静かに呪文を呟いていく。
宝石を握っている方の手を前にかざし、目の前に跳び出して来たその存在へと向ける。
彼の手の先には、緑色に光り輝く円形の魔法陣の様なものが浮かんでいる。
その光は、木々により暗い影を落としている周囲を月明かりよりも強く照らしていく。
黒い影である謎の存在はその魔法陣に向かって、出していたスピードを保ったままで勢い良くぶつかり、散らばっていく。
彼の宣言通りの封印は完了されず、黒い影は四方に飛び散って移動をしていく。まるで、その場から逃げていくかの様に。
「逃しちゃった……追いかけ……なく、ちゃ……」
そう言いながら、少年は力無く地面に倒れ込んでしまう。
握っていた赤い宝石には紐が付けられていているが、手からコロコロと零れ出てしまう。
「誰か、僕の声を聞いて、力を貸して……魔法の……力を……」
そのまま、小さな身体は眩い光に包まれていく。
その光が晴れた後にはヒトの子では無く、イタチの様な小動物の姿があるだけだった。
「始まったか……ああ、始まっちまった……」
自宅の就寝用にと決めた部屋である自室の中で、俺は誰に言うでもなく、ただそう呟いた。
つい先日に、微弱ながらも“次元震”が起きたのだ。
次元震とは次元世界レベルで起こる災害の1つだ。
そして、次元世界というのは異世界などを含んだ世界の上位構造。
そしてその次元震の直後に、大きな魔力の塊が21個も此処海鳴市へと落ちてきた。世界と世界の間である次元空間を超えて転移をしてきたのだ。
そして、その後追う様にしてもう1つの魔力が。その魔力の発信源には気も同時に存在していて、感じる事が出来た。その事からヒトか、何かしらの生命体だという事だけは理解し判断をする事が出来る。
そして、無作為に放たれた魔法による念話だ。
21個の大きな魔力の塊は、十中八九ジュエルシードだろう。
これらの事からすると概ね原作通りに時間が進んでいっている、出来事が起こっているという事が分かった。
「雄介や志蓮は介入するのかな……」
時刻は午前5時だ。
ベッドから出て、洗顔をする。
冷たい水がパシャリと顔に当たり、重い目蓋を、目をパッチリと開かせ、頭が覚醒をする。
そして、腕に装着しているデバイスを操作してバリアジャケットを展開する。
展開したバリアジャケットの見た目は実に地味なものだ。何せ、ジャージなのだから。
格好良いのを着たいとは思うが、そういったものをつくりだすセンスは俺には無く、泣く泣く上下共に黒色のジャージにしたのだ。
地下にある修行室へと、エレベーターを使用して移動する。
電気を付けると、目の前にはただっ広い空間がある。
「はあああああああああああぁぁ!!!」
その空間の真中へと移動をして、気を開放すると同時に、その空間は大きく揺れ始める。大きな地震が起きている時と同じ程の大きさの揺れ具合だ。
左手に装着している腕輪型のデバイスには1000という数字が表示されている。
これは、自身に掛かっている重力を1000倍に引き上げているという事を表している。
そんな高重力下という環境であろうとも、修行の成果が出ているのか難無く、不自由無く身体を自在に動かす事が出来る。
「だりゃりゃりゃりゃりゃ……だりゃあああああ!!!」
勢い良く突き出していく腕の動きによって手は槍や刀の様に鋭くなり、空気を切り裂いていく。
既に目視ではその動きを追う事などが出来る範囲を大きく超えていて、無数の残像が走っているのを確認出来るだけ。辛うじて腕だと判断をする事が出来る程度だ。
「よし。組手だな」
「ああ」
真・四身の拳でつくりだした3体の分身体と向かい合う。
見つめ合っているのはほんの一瞬だけであり、姿が消え失せる。
「おらああああああっ!!」
分身の1体の顔を強く殴る。
すると、その分身体は壁の方へと吹き飛ばされていく。だが、その壁に打つかる前に身体を回転させ体勢を立直おしながらも壁を地面に見立てて、此方へとかなりのスピードで跳んで来る。
相手はその分身体だけ無い。
もう2体の分身体は左右から手を伸ばし、殴りかかってくる。
それに慌てる事無く落ち着いて、身体をずらしていく事で、最小限の動きをしながら回避をしていく。全身に気を巡らせて、分身体が放っている気を追っているので、対応をする事など造作も無い。
左右、そして前方からのパンチとキックが顔や腹、足へと向かって飛んで来る。
「はああああああああああああああっ!!!」
気合砲で、その3体の分身体を吹き飛ばし、それぞれに向かって掌から気弾を打ち込んでいく。命中したのか、大きな爆風と煙が発生する。
だが、それ程大きなダメージは受けていないだろう。分身体に宿っている気は健在であり、言う程小さくはなっていないのだから。
「流石に、こんな短時間で決着はつかないよな……」
この間の出来事は、一分も経過などはしていないのだ。当にほんの一瞬の攻防である。
「「「「はあああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」」」」
分身体を含め、俺は気を増大させ
先程のエネルギー弾の爆発によるものよりも大きな風が空間内を疾走りまわる。
修行室に設置されているライトよりも、より強く明るい光が身体の内から出ている。
「行くぜ……」
最早、目で追う事などは不可能だろうスピードで攻撃をし、防御や回避をしていく。
空中でぶつかり合う度に、大きな衝撃が発生する。此処が地上なのだとしたら、大地が捲れ上がっていたかもしれない。ぶつかり合う都度に発生する衝撃と音は巨大なもので、限られた空間を大きく震わせていく。
その鋭い攻撃は、ある程度のダメージは耐え得る筈のバリアジャケットを易易と削り、千切り取っていく。
この空間は、他の場所と、地上や地中と繋がっていると同時に、繋がってはい無い。大地を割り、砕いてしまう程の威力を誇る衝撃などを吸収し、緩和していく。その為に、外である空間には何の影響も出ないのだ。
「「かーー」」
「めーー」
「はーー」
「めーー」
「「「「波あああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」」」」
両掌から放たれる膨大なエネルギーの塊は大きく、広大ではあるが限られた広さであるこの空間を強く照らし、その場を支配していく。
その耳の鼓膜を破るかと思えてしまう程の轟音が身体中を強く叩いていき、狂風は気でコーティングをしている堅い肌をゴリゴリと削っていきながら擦り傷を次々と生み出していく。
「自分の分身とはいえ、これは参ったな……」
音と風は治まり、光が消えていく。
そして目の前には、自身と同じ様に両足を床に付けて立っている3体の分身体が居た。
ピピッとデバイスからアラームである軽快な電子音が鳴り始める。
「もう時間か」
真・四身の拳を解いて、深く息を吐く。
大きく身体を動かしていた為に、ドクドクどいった心臓の鼓動は通常時よりも速く強い。広く静かな空間の所為なのか、その音をハッキリと感じ取る事が出来る。
デバイスを操作して、自身に掛けている1000倍の重力を解除し、時計を表示する。その針は午前6時を指していた。
「今日の午前における修行はこれにて終わり……だな」
今の俺は
浴室で、シャワーを浴びる。
ノズルから吹き出てくるお湯はとても心地が好く、修行による汗を綺麗に洗い流してくれた。
だが、出来たばかりである擦り傷がしみ、鈍く強い痛みが疾走る。
身体に出来ている傷は、ナノマシンによる再生力をも越える程のものだ。常人よりも遥かに優れた再生能力を誇ってはいるが、完全に塞がるには時間が掛かるだろう。傷は再生をしている途中でもあり、直視をするのにはそれなりの覚悟が必要なものだ。
「ッ!! これだけの傷、誤魔化すのは難しいな……虐待だとか思われても困るし、変身魔法で消しておくか」
浴室から出ると、制服に着替え、朝食と弁当の準備をする。
「朝御飯はいつも通りにトーストで良いかな……弁当はどうしようかな……?」
本来サイヤ人というものは戦闘民族だ。
戦うという事を生業としているが為に、エネルギーを大量に消費する。故に大食漢なのだ。だが、俺の身体は人工的に造られていて弄られていたからなのか。それ程に迄エネルギーの消費をする事も無くて、少食で済んでいる。それでも前世と比べると、2倍以上は食べる様になった。
稀少技能を使用して料理のレシピや栄養バランスについての知識を得たが、結局のところ料理という料理をしたのは転生をした翌日だけだ。面倒臭くなってしなくなってしまったのだ。そんな面倒な事を毎日の様に行なっていた母親の凄さと偉大さが身に沁みてくる。
いろいろとしていると、時刻は午前7時25分になる。そろそろバスが来る時間だろう。
「行ってきます」
分身体を2体程残して、外に出る。
皿を洗ったりしているのか、家の中からは水の流れている音が外に漏れでていた。
「おはよう。なのは、雄介」
「おはよう」
「おはようなの、ブロン君」
元気良く挨拶をする。1日の始まりなのだ。不貞腐れて暗く過ごすよりも、景気良く楽しくいきたいものだ。
そうしていると、バスが来た。
俺達の通っている私立の学園であり、附属の小学校なのだ。送迎のバスがあり、登下校時に利用をする事が出来る。
前世ではこういった体験も想像すらもした事などは無かったので、初めての時は少なからず興奮をしたものだ。
「おはよう。アリサ、すずか」
「「おはよう」」
バスの中に入ると、後ろの席に座っている2人の少女の姿が目に入ってくる。
昨日と同じ様に、朝の挨拶をしながら彼女等の方へと移動をし、近くの座席へと座る。
そして他愛もない会話を広げていく一方で、俺達転生者である2人は“念話”で密かに会話をしていた。
『気付いたか?』
『ああ……始まったみたいだな』
マルチタスクを使用し、なのは達との会話、そして雄介との念話といった感じで、同時に別々の事をこなしていく。
マルチタスクというのは基本的にパソコンのものと同じ様なものだ。複数の思考行動と魔法処理を並列で行う技能。ヒトにはこういった並列処理は向いてはいなくて、作業効率は大きく低下してしまう。だが、リンカーコアを所持しているヒトはそのデメリットが働かない。というよりも働き難い特異性がある。だからこそ、飛行魔法を使用しながら、他の魔法を使う事が出来るのだ。
念話とうのは、伝えたい事を伝えたい相手にだけ、どれだけ離れていようとも言葉を伝える事が出来る魔法の一種だ。
これらは魔導師としては基本中の基本の魔法と技術なのだが、使えるのであればとても便利なものだ。習得しておいて損は無いと言って良いだろう。
「………」
走っていたバスが停止し、ウィーンといった音を鳴らしながらドアが開く。
生徒達は、そのドアを潜り外へと出て行く。俺も同じ様に外へと出て、前を向く。
目の前には校門が存在している。着いたのだ、学校に。
俺達は他愛も無い会話を続けながら、教室へと歩き続けた。
「将来か……」
昼休みには屋上で集まって昼食を摂るのが日課となっている。
外だという事もあり、時々吹いてくる風が頬を撫でていき、心地良く感じられる。
「アリサちゃんとすずかちゃん……もう結構、決まってるんだよね?」
「家は、お父さんもお母さんも会社経営だし。いっぱい勉強して、ちゃんと後を継がなきゃ……ぐらいだけど……」
「私は機械系が好きだから、工学系で専門職が良いかなと思ってるけど……」
なのはの質問に、それぞれが持っている将来の地図を広げながら口にしていく。
言葉にはしたが、それはあくまでも予定の様なもの。今のところそういった考えをしているというものだろう。
「そっか……2人とも凄いよね。ブロン君は?」
「未定だな」
自宅警備員だなんていうのは、この空気だと口が避けてしまっても言えないだろう。
介入するかすらも決めかねていて、漠然と静かに過ごしたいと思っているだけなのだから、将来も何もないだろう。
それに、小学生が将来のプランというものを考えて組み立てていくとういのには少し無理があるだろう。そう思っていたが、彼女等にとってはその様な事は無いらしい。
「でも、なのはは喫茶翠屋の二代目じゃないの?」
「うーん、それも将来のヴィジョンの1つではあるんだけど……」
アリサのその言葉に、なのはは頷きながらも、何かが違うと言いた気な様子を見せている。
「驚いた……」
「何に?」
「なのはがヴィジョンなんていう言葉を知っているなんて……」
「にゃああぁ!!」
茶化す雄介に、猫の様に叫びながら怒るなのは。両手をグーにして雄介を叩いているが、微笑ましい光景でありポカポカといった擬音が似合いそうだ。
「したい事は他に何かある様な気もするんだけど、まだそれが何なのかハッキリしないんだ……わたし、特技も取り柄も特に無いし……」
「バカちん!!! 自分からそういう事言うんじゃないの」
自己を否定的に捉えてネガティブな発言をするなのはに、アリサはレモンを彼女に向けて投げつけながらキツめの言葉を言う。
「そうだよ。なのはちゃんにしか出来ない事、きっとあるよ」
「確かにそうだな。だがな、アリサよ」
「何よ……?」
アリサとすずかの言葉に同意をしながら、雄介は少し眉間に皺を寄せて、口調が強くなる。
「食べ物を投げたりと、粗末に扱うのはダメじゃないか」
「あ……」
彼の瞳を見るとわかるのだが、実際にはそれ程怒ってはいない。
だが、なのはの事を思っての言動ではあると理解はしていても、見過ごせなかったのであろう。レモンを投げるという行動が。
アリサは素直に謝ると同時に、再び騒がしく盛り上がっていく。
「…………」
そんななかで、志蓮は彼女等を見ながら黙り込み、モクモクと食事をしていた。
夕方になり、学校も終わって下校中だ。
夕焼けによる陽光が公園を優しく照らしている。
「今日のすずか…ドッジボール、凄かったよね」
「うん、格好良かったよね」
「そんな事無いよ」
アリサの発言になのはは同意し、それに対してすずかは照れながらも否定をする。
「流石は俺の嫁だな」
「嫁はともかくとして、確かに凄かったな」
志蓮の言葉をスルーして、雄介は彼女等の会話に入っていく。
雄介にも言われた事により、すずかの顔は赤くなり、先程よりも照れてしまっている。
踏み台を演じているという事を知ってからなのか、彼の行動と彼女等の反応が面白くあり、微笑ましく感じる。
時には、腹を抱えて笑い転げそうになる時もあるのだ。
「Be quiet!!」
ワンワンと吠えている散歩中の犬に対し、アリサはそれに噛み付く様に大きな声を出して対抗をする。
それに驚いたのか、負けを悟ったのか。吠えていた犬は一気に大人しくなり、頭を垂れる。
そんなペットの様子を見て、飼い主の人は首を傾げていた。
暫く歩いていると、目の前に並木道が出て来て、続いている。
其処を指差して、アリサは言った。
「ああ、こっちこっち。此処を通るのが塾への近道なんだ。……ちょっと道悪いけど
」
アリサの言葉に導かれる様に、俺達は足を進めていく。
木々の枝々により出来た隙間を夕方特有の陽の陽光が射し込んできて、程良い明るさを与えてくれている。
『ブロン、此処って……』
『お前の考えている通りだと思う。彼奴が居る場所だな……多分…………』
俺と雄介は念話で、この場所についての確認をする。
横を見てみると、なのははこの場所に見覚えがあるのか、ソワソワとしていて何だか様子がおかしい。
「どうしたの、なのは?」
「大丈夫……?」
その様子を見て心配し声をかけるアリサとすずかに大丈夫だと応えるなのは。
『……助けて』
「ふぇ?」
だがそこに、頭の中で聞き覚えの無い他人の、少年の声が響き渡る。何とも言えない妙な感覚だ。
その声に対し、なのはは思わず進めていた足をピタッと止めてしまう。
『……ファミチキください』
『此奴、直接脳内にっ……!?』
「なのは?」
「今、何か聞こえなかった?」
『来たぞ、雄介』
『そのようだな、ブロン』
目と目で通じ合うとう訳では無いのだが、俺と雄介はアイコンタクトをしながら念話で会話をする。
因みに、なのはに聞こえているそれは無作為に飛ばされているものだ。
俺達が使っている念話はチャンネルを絞って、特定の人物……要するに俺からすると雄介だけへ、雄介からすると俺だけに向かって念話を飛ばしているのだ。
「何が……?」
「何か声みたいな……」
「別に」
「聞こえなかったかな……」
アリサとすずかが気づかないのは仕方が無いだろう。彼女等2人の体内にはリンカーコアが存在していないのだから。
なのはは、それでもその声が気になるのか周囲を見渡していく。
本来ならば、木々の葉が擦れて聞こえてくるざわめき程度だと考えて、済ましていただろう。
だが、なのはにとってそれは、頭に、脳内に直接語りかけてくるものなのだ。無視をするなんていう事は出来ないだろう。
そんななのはの様子を見て、アリサとすずかの2人も同じ様に周囲を用心深く見渡していく。
『助けて』
声がする。これで2回目だ。
なのはは、その声のする方へと駆け出していく。それが、其処が何処なのかという事を理解しているかの様に。
「多分、こっちの方から……あっ!」
ある程度走っていると、目の前には小さな動物が居た。その動物はうずくまっている。
駆け寄ると同時に、なのはの気配に気が付いたのか、顔を上げる動物。だが、その様子は何処か弱々しい。
そしてその動物の首の辺りには、赤い宝石の様な玉の首飾りがあった。
「どうしたのよ、なのは……急に走りだして」
「見て。動物……怪我してるみたい」
追いついた俺達は、なのはが抱きあげているその動物の存在に気が付く。
すずかの言葉通りで、その小動物は怪我をしている。
致命傷では無いがそれであっても怪我をしているという事に変わりは無く、かなり衰弱をしている。
「うん、どうしよう……」
「動物病院へ行くべきだろう」
極めて冷静に、落ち着いた感じに雄介は言う。
その言葉に、アリサは持っている携帯電話で執事である鮫島さんに連絡をして、動物病院を探させる。
「淫獣……」
志蓮がボソッと小さな声で言っている様だが、無視をする雄介。
幸いにもなのは達には聞こえていない様だ。
『それは、あくまでも二次創作で言われていただけのものだから……』
“鮫島”さんからの連絡が来て、動物病院の場所が判明する。
俺達は、その教えて貰った場所にある病院へと、急いで走りだした。
「怪我はそんなに深く無いけど、随分と衰弱してるみたいね。きっと、ずっと一人ぼっちだったんじゃないかな」
その言葉に安心をするなのは達3人娘。
連絡も、予約もしていなかった筈なのだが、快く診察をして貰えた事に感謝だ。だが、もしかすると鮫島さんがこの“槙原動物病院”に予約をしておいてくれたのかもしれない。
「先生。これってフェレットですよね? 何処かのペットなんでしょうか……?」
「一目でフェレットだと分かるなんて凄いな」
「フェレットなのかな……? 変わった種類だけど……それに、この首輪に付いているのは宝石なのかな?」
『デバイスなんだよなぁ……』
俺と志蓮にだけ聞こえる様にと、念話をしてくる雄介。
先生が手を差し伸べると同時に、横たわっていたフェレットは目を覚ます。
「起きた……」
フェレットは周囲を見た渡して、なのはへと目を向ける。
「なのは。見てるよ」
「うん。えっと……ええっと……」
どうして良いのかが分からないが、取り敢えず恐る恐ると手を差し伸ばしていくなのは。
そんななのはの行動に対して、フェレットはペロッと小さな舌で指先を舐める。
その行動に驚きはするが、反応を返してくれる程度に元気になったのを見て嬉しかったのか、3人娘は顔を綻ばせていく。
その一方で志蓮は、強く、キツく、威嚇をするかの様にして睨みつけている。
「暫く安静にした方が良さそうだから、取り敢えず明日まで預かっておこうか?」
「はい、お願いします」
先生のその言葉に、俺達は元気良く応え、甘える事にした。
「そろそろ行かないと遅れてしまうぞ」
「やばっ! 塾の時間」
俺と雄介と志蓮は行かないが、なのはとすずかとアリサは塾に行かないといけない時間になっていた。
「それじゃ、院長先生。明日、また来ます」
手を振りながら動物病院を後にし、先を急ぐ彼女等。
背中に背負っているランドセルが、走っている彼女等の動きとシンクロして上下に激しく揺れ動いていた。
夜。
良い子はそろそろ布団の中でグッスリと眠りに入る時間帯だ。
そんな時間に、自身の持つ携帯電話へとなのはからの一斉送信によるメールが送られて来て、着信をする。
「なになに……フェレットは預かる事が出来る様になった、か…………」
そのメールに記載されている内容の確認を済ませると同時だろうか。無差別に飛ばされているであろう念話が頭の中に届いてくる。
『聞こえますか? 僕の声が聞こえる貴方、お願いです。僕に少しだけ力を貸して下さい』
意識そのものに直接語りかけてくるその声は、どこか緊張感を、そして緊迫感を感じさせてくる。
『お願い、僕のところへ。時間が、危険が……もう……』
そこで念話が途切れてしまう。だがそこに、入れ替わる様にして雄介からの念話が届く。
『始まったけど……。どうする?』
その質問に対して、俺は前に答えたものと同じ回答をする。
『様子見かな……俺から介入するつもりは無いし。危なそうなら、俺も出るけどな……』
『分かった。僕は行くよ』
念話による会話を中断する。
雄介の気が、先程の念話の発信源である槙原動物病院に向けて移動していくのが感じられる。
そこになのはの気も、そして志蓮の気も移動をしている事に気が付く。
「(イレギュラーである俺達転生者の存在により、何かしらの変化が起きてなければ良いんだけど……)」
こういった考えなどをフラグだと言うのだろうか。だが嫌な予感は、考えは全くと言って良いくらいに、一向に頭から離れなかった。
無差別に飛ばされていた念話を受け取り、家から無断で抜けだしたなのは。
その発信場所である動物病院に到着すると同時に封時結界が展開される。
「また、この音?」
展開される時に鳴る、その聞きなれない音に対し、なのはは耳を押さえる。
気が付くと、窓から逃げ出したのか、夕方に預けていた筈のフェレットが走っていた。処置の際に使われた包帯が巻かれているのだから、その時のフェレットで間違いは無いだろう。
「あ、あれは」
走るフェレットに対し、何かが追いかけている。その何かは勢いがあり過ぎたのか、そのまま敷地内にある木にぶつかってしまう。
フェレットは何とかそれを回避する事が出来たのか、回避時にジャンプした勢いのままでなのはの方へと跳ぶ。
跳び込んできたフェレットを受け止めて、抱きしめるなのは。
「何々? 一体何?」
「来て……くれたの?」
そのフェレットの言葉に慌てふためいてしまうなのは。言葉を、日本語を話すフェレットが目の前に存在しているのだから、それは仕方が無い事なのかもしれない。
「■■■■■■■■■!!!!」
木にぶつかっていたその何か――形を持たない存在――は低く、そして大きく深い唸り声をあげる。その声により、病院などの建物にある窓ガラスが次々と割れていってしまう。
其処から、フェレットを抱えたままで逃げ出す様に走りだして、離れていくなのは。
この状況を説明して貰う様になのははフェレットに対し。走りながら問いかける。
「その……何が何だか分からないけど、一体何なの? 何が起きてるの?」
「君には資質がある。僕に少しだけ力を貸して」
「資質?」
「僕はある探しものの為に此処では無い世界から来ました。でも、僕1人の力では思いを遂げられないかもしれない。だけど、迷惑だとは分かってはいるんですが、資質を持った人に協力して欲しくて」
そう言いながらなのはの腕の中から飛び出し、道路に降り立つフェレット。なのはの方へと顔を向けながら、再度口を開く。
「御礼はします、必ずします。僕の持っている力を貴女に使って欲しいんです。僕の力を、魔法の力を」
「魔法?」
突然の事に、言葉に戸惑いを隠せないでいるなのは。
だがそれと同時に、困っている誰かを放ってはいられない自分も存在している事に気が付く。
そこに、空から先程の謎の存在が迫り、落ちて来る。
「
何かが、その言葉と同時に、謎の存在に降り注ぎ、貫いていく。
「無事か!? なのは!!」
「志蓮君!?」
その彼の姿を見て、金色に光り輝いている鎧を装着している事に、彼の使っている不思議な力に驚き、戸惑うよりも先に助かったのだという安心感を感じた。
「淫獣……早くなのはに“レイジングハート”を渡すんだっ!! 俺が時間をk――」
全てを言い終える前に、謎の存在の攻撃により、彼は遥か遠くへと吹き飛ばされてしまう。
その言葉にする事が出来ない何とも呆気無い退場は、なのは達に一瞬だけとはいえ、時間が止まった様な錯覚を与えた。
「……どうすれば良いの?」
「これを」
気を取り直してそう言いながら、フェレットは首輪に付けていた赤い球体の宝石を口で咥え、なのはへと差し出す。
「(暖かい)」
その宝石は何か熱を放っているかの様に、彼女自身のなかに存在している何かと共鳴をし、共振をしている様に震え、光り輝いている。
「それを手に、目を閉じ、心を済ませて、僕の言う通りに繰り返して」
覚悟を決めて目を閉じ、そしてその紅玉を強く握り締める。
「良い? いくよ」
「うん」
「“我、使命を受けし者なり”」
「われ、使命を受けし者なり」
その言葉に、呪文に反応をするかの様に、手の中にあるその宝石はより強く輝きを放っていく。
謎の存在である黒い影は、待つという事などはもちろん無く、突っ込んで来る。
「“契約のもと、その力を解き放て”」
「えっと……契約のもと、その力を解き放て」
「風は空に、星は天に」
「“風は空に、星は天に、輝く光はこの胸に”」
「「“そして不屈の心は”」」
不思議な事に頭の中に知らない筈のワードが頭に浮かび、なのはは自然とその呪文を口にしていた。
「“この胸に。この手に魔法を。レイジングハート、セットアップ”!!」
【Stand by ready set up.】
大きなピンク色のの光がなのはを中心にして広がり、包み込んでいく。天を貫いて、上空に存在している雲を突き破り、それは強烈な光を放っている。暗い結界内を、その魔力は強く辺りを照らしている。
「なんて魔力だ……」
その光は魔力そのものであり、なのはの、彼女の保有している魔力の多さを物語り、証明している様だ。
突っ込んで来ていた黒い影は、その光り輝く膨大な魔力に跳ね返され、吹き飛ばされる。
「落ち着いてイメージして。君の魔法を制御する魔法の杖を……そして、君の身を守る強い衣服の姿を」
「そんな、急に言われても。……えっと……えっと」
戸惑いと焦りを同時に感じてはいるが、その気持を抑え、目を瞑って意識を集中させていく。
先ずは杖の方だ。白い部分を基軸にして、上の先端部分が黄色、赤い玉が存在していて、下部の方はピンク色。それは何処か、ファンタジーの世界に出て来る魔法使いの手にしている杖よりも、SFの世界に出て来る兵器の様に機械的な印象を与えてくる。
次に衣服の方だ。こちらも杖と同じ様に白色を基調としている。青色の裾に、赤い宝石の装飾、そして胸元には赤いリボンがある。
「取り敢えず……。これで!」
赤い宝石であるレイジングハートに口吻をして、手の平にのせる。そして着ている服が、上着が、そして下着が分解されていく。玉の部分であるレイジングハートが大きくなり、それを中心にして杖が虎竹されていく。何処からともなく部品が出現し、想像した通りの杖が出現した。分解された服の変わりに、白色のバリアジャケットが構築されていき、なのはを包んでいく。そのバリアジャケットの見た目は、自身が通っている小学校の制服の影響を強く受けているのが見受けられる。
「……成功だ」
なのはのその姿を見て、フェレットは安心をし、一息を吐く。
「ふぇ? ふえぇ!?? うそ? な、何なのこれ?」
自身の姿が変わったという、その事に驚き、戸惑う暇を感じる暇も無く、その黒い影はなのはに襲い掛かって来た。
何とか文章にし投稿できました。
やはり難しいです。
こんな感じに展開する、したいと考えていても上手く書けない。
しっかりと場面場面の想像が出来ていないのかな?