「やはり……破損は致命的な部分にまで至っている」
鉄鼠を倒す事に、そして消滅させる事に成功した俺達はアリサとすずかの2人を乗せたまま、アースラで管理局本部へと次元航行を開始。
到着後に、意識を失っているはやてを本局にある医務室へと連れて行った。
なのはとフェイト、雄介の3人はあれから直ぐ、ドゥームがフラグメントである
後に残されたのは、眠り続けているはやてと疲れきった状態にある俺達だけだった。
「防御プログラムは停止したが、歪められた基礎構造はそのままだ」
今、医務室に居るのははやてと竜人、
「私は……夜天の魔導書本体は……遠からず新たな防御プログラムを生成し、また暴走を始めるだろう」
静かに、落ち着いた口調で自身と魔導書の状態を話すリインフォース。
その言葉には、何処か諦めのようなものが感じられた。
「やはりか」
「修復は出来ないの?」
「無理だ。管制プログラムである私の中から……夜天の書本来の姿は、消されてしまっている」
「元の姿が判らなければ、戻しようも無いという事か?」
「そういう事だ」
その事を予想はしていたのか、取り乱すという事はない。
シャマルの質問に力無く否定し、ザフィーラの言葉を肯定するリインフォース。
「主はやては……大丈夫なのか?」
「何も問題は無い。私からの侵食も完全に止まっているし、リンカーコアも正常作動している。不自由な脚も、時を置けば自然に治癒するだろう」
「そう、それならまあ……良しとしましょうか」
リインフォースから聴かされたはやての身体的状況が良くなっているという言葉に、守護騎士である4人が胸を落ち着かせ、口を開く。
「ああ、心残りは無いな」
「防御プログラムが無い今……夜天の書の完全破壊は簡単だ。破壊しちゃえば、暴走する事も2度と無い。変わりに、あたし等も消滅するけど……」
「すまないな、ヴィータ」
「――巫山戯るなよ……それなら、はやてはどうするんだ? お前らが消えちまったら」
「こうなる可能性があった事くらい、皆知ってたじゃんか……」
消える事を認め、諦めかけている4人の守護騎士に声を荒げそうになる竜人。
そんな竜人に対して、諭すように落ち着いた声でヴィータは話す。
そう……皆、こうなる事は予想していた筈なのだ。理解をしていた筈だったのだ。
だがやはり、いざこうなってしまうとその覚悟も殆ど意味を成さなくなる。出来たばかりの家族を失うという恐怖に、強く怯えてしまう。
「――いいや、違う。お前達は残る」
だがそこに、竜人とは別の理由で、違う考えを持っている存在が――リインフォースが口を開く。
その言葉に皆、彼女へと顔を思わず向け、その言葉を耳にする。
「――逝くのは……私だけだ」
「――巫山戯んじゃねえ……それこそ、巫山戯んじゃねえよ。お前だけが逝くなんて、許せる訳がねえだろ」
また大きく荒げた声を出しそうになるが、はやてへの気持ちで踏み留まる。
いや。声の大きさや語調はそうだが、愛する妹の為に、そして自分の為に口を開く竜人。
「だが、私の身体はもう……」
「諦めるな、とは言わねえよ。でもな……それは最後まで足掻いてからだ」
「足掻くだと……?」
竜人の言葉に、皆が眉間に皺を寄せる。
「俺の手にしている力は少し特殊でな、データの海に潜る事が出来るんだ……」
「データの海に?」
「そう。だから、リインフォース……お前の身体の中に潜り込んで、データの残骸を集める。邪魔をする悪性プログラムなんて、ぶっ飛ばしてやるよ」
竜人の放ったその言葉は、僅かな光明となった。
だがそれでも、ほんの少しというだけだ。かなり小さな光であり、今にも消え入りそうなもの。
そんな光だが、それでも
「そうか……なら、駄目元で頼む。もし、無理だったなら……」
「理解ってるよ。だが、ちゃんとはやてに話せよ……もう隠し事はしないでおこうぜ」
消える覚悟は完了してはいるが、それでも命への執着、生きたいという気持ちはあるものだ。
竜人の提案に、リインフォースは乗る事にした。
12月25日早朝。午前6時30分過ぎくらいだ。
地球とは離れた次元世界になのはとフェイト、はやて、ユーノ、クロノ、アルフ、シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ、リインフォース、雄介、志蓮、ドゥーム、竜人、そして俺の16人は居る。
はやての意識が回復すると同時にしっかりと事情を説明して、同意を得る。
管理局員であるクロノやリンディ、エイミィの3人とゾイルと俺達にも了承を求めて来たので、それを了承したのだ。
その了承をしたリンディはというと今管理局本局に居り、ゾイルとは何故連絡が取れないでいる。
「という訳で、始めようか……」
地面に古代ベルカ式の魔法陣を描いてある。
その中に、ゆっくりとした足取りで入っていくリインフォース。
やはり、怖いのであろう。
大きく強い緊張感を抱いたまま、魔法陣の真ん中へと進む彼女。
「なあ、俺にも考えがあるんだけどさ」
「何だ?」
「俺の、いや神達の宝物庫にある神話型デバイスの1つを使ってみたいんだ」
そう言いながら、志蓮は金色の光の中から変わったかたちをした杖を1つ取り出す。
その杖からはやはり、かなりの
「この杖は、な……あらゆる呪いや魔法、魔術によって生まれた損傷を零に戻せるんだ」
「なら、試してみようか? リインフォース」
「はい」
折角の提案という事もあり、それを承諾する八神家。
「それじゃ、いくぞ。
リインフォースから差し出された夜天の魔道書と、彼女本人を対象にして志蓮は真名を解放してその杖で魔法を発動させる。
優しさと温かさを感じさせる光を放ちながら、本来あるべき姿、元々の姿を算定し、その状態へと戻すように働き掛ける。
だが――。
「何かが邪魔をしている……? 一体何が?」
それは、極小なものだが、僅かながら気による感知でも気付く事が出来た。
「やはり、中に入るしか無いのか……」
他に手段は無いのだろうか。
「じゃ、中に入るわ」
俺が考えようとした隙に、竜人はImperial Dragon Paladin Modeとなり、その身体をバーコード状へと変化させていく。
そのまま、リインフォースの身体の中に消えるようにして、60mもの巨体は入っていった。
「リインフォース? 身体に異常は無いか?」
「いえ、今のところは大丈夫です」
「何かあったら、言うんやで」
「はい、有難うございます。我が主」
身体の中に自分では無い何かが、異物が入るというのはどういう感覚であり、どういう気持ちなのだろうか。
取り敢えず、竜人が悪性プログラムを消去して、バラバラの残骸となってしまっている夜天の書に関するデータを拾い集めるのが完了するのを待つしかないだろう。
「ここは一体……?」
リインフォースの身体を構成しているデータの中に潜り込んだ竜人は今、はっきりと言うと道に迷っている状態だ。
データが光のようになっており、その光が道を生み出している。
だが、その道は入り組んでおり、迷路のようになっている。
そしてその道の外には、深い深淵のような暗い闇が存在しているのだ。
「…………」
落ちてしまえばどうなるのか。考えるまでもないだろう。
背中に存在しないはずの汗が流れるような感覚を味わいながら、ゴクリと唾に似たなにかを呑み込む竜人。
「さ、先を急ぐか……」
前に目を向けるとそこには、悪性プログラムが生み出したものだろうか。データで構成されているモンスターとしか呼べないもの達が存在していた。
その数は尋常じゃ無く、無数に存在している道で、壁のように点在している。
そして、その奥には4つの膨大なデータ――かなりの巨体を誇るモンスターが3体存在しているのが見える。
「アルカディモンに、アルゴモン、ディアボロモンだと……待て、俺は何故知っている……? 前世の記憶か?」
3体ともかなり強力なデジタルモンスターだ。
その3体は究極体であり、超究極体と呼べる程の力を持っている。
この3体が、闇の書の闇としての力の原因なのだろうか。
「――だとしても、やるしかない!」
周囲に存在している繭のような身体を持つモンスター――インフェルモンに似たバグの塊を吹き飛ばしていき、その3体の巨大なデジモンへと向かっていく。
今、
もう戸惑う暇は、残されてないだろう。
手にしているオメガソードには初期化の効果があり、触れると同時に多数のインフェルモンを消去していく。
そのまま前進を続けていくが、ディアボロモン似た存在の胸部にあるほうとうから無数のエネルギー弾であるカタストロフィーカノンが放たれる。
「この程度でっ!」
白い翼をはためかせて、回避。移動をするが、その先にはアルゴモンが待ち構えている。
急制動をかけて、その場から急いで離脱をする。
だが、また別の存在であるアルカディモンが邪魔を仕掛けてくる。
3体共かなりの速さと力を持っており、ギリギリで対処出来ているだけだ。
「――ッ!?」
アルカディモンの胸から、膨大なデータ量を持つエネルギーが放たれる。
その攻撃を何とか回避。いや、放たれる前に、危険を感じ取り、何とか避ける事に成功させる竜人。
避ける事に成功はしたが、その一部がオメガブレードに触れる。
アルカディモンが放つゴッドマトリックスは、触れた対象を0と1の分解し、自身へと吸収してしまう恐ろしい技だ。
だが、それほど恐ろしい技であるにも関わらず、オメガブレードは、そのゴッドマトリックスによるエネルギーすらも逆に、0と1の状態に分解し返し、初期化してみせた。
「成る程な……これならっ――!!」
今の竜人の身体はデータへと変換され、構成されている。だから、先ほどの攻撃をもろに受けてしまうと消滅してしまうだろう。
だが、オメガブレードで斬り裂く事で逃れる事が出来る事を知り、竜人はアルカディモンへと光速で向かっていく。
「――喰らえええええええええええええええええええええっっーーーーーーーーーー!!!」
オメガブレードを大きく振り翳し、アルカディモンへと斬り掛かる。
だが、その攻撃は避けられてしまい、ディアボロモンのカタストロフィーカノンとアルゴモンの攻撃を受けてしまう。
「――ッグアアアアアア!?」
身体に疾走る強烈な痛みを無視して、その2体にオメガブレードを振り翳す。
だが、呆気無く避けられてしまい、反撃を受ける。
「このままじゃ……」
時間はあまり掛けられないだろう。
外では皆が待っており、何よりも家族の一員であるリインフォースが苦しんでいるのだ。
早めにケリをつたいが、3体のプログラムは超究極体レベルの力を持っており、単独での3体同時撃破は難しい。
「――レイジ・オブ・ワイバーンッッ!!」
何処からとも無く龍のかたちをしたエネルギーが飛来し、そのエネルギーの奔流が3体の悪性プログラムへとぶつかり、爆発する。
「な、何だ……? 新手か?」
顔を向けると、そこには赤と銀の鎧を纏った騎士がいた。
甲冑には綺羅びやかな印象を与える金の装飾が施されており、赤のマント、そして額と甲冑の胸部には緑色の宝石が埋め込まれているのが見える。
手には、
「……幻想の騎士……」
「この戦い、旋風将メディーバルデュークモンが力を貸そう。共に行くぞ、インペリアルドラモンパラディンモードよ!」
その言葉と同時に、メディーバルデュークモンの姿は消え去るが、その姿を表すと同時にアルゴモンに斬り掛かっていた。
メディーバルデュークモンの持つ最強魔槍デュナスは、アルゴモンの腕を容易く斬り裂いてみせた。
「何をしている? 家族を救けるのであろう?」
「――あ、ああ」
一体、目の前にいるメディーバルデュークモンは何者で、何が目的なのか理解らない。
もしかすると、仮面の男だったリーゼ姉妹と同じように、こちらを利用しているだけなのかもしれない。
そういった考えが竜人の頭を過ぎるが、直ぐにその考えは消え去る。
利用されるのであれば、逆にそいつを利用してやるつもりで行動すれば良いのだ。
利用されてしまったのならば、少し痛い目を見てもらうように仕返しをすれば良いだけなのだ。
気持ちを切り替えて、目の前の3体の悪性プログラムであるアルカディモン、アルゴモン、ディアボロモンを強く睨み付ける。
「共に行くぞっ、インペリアルドラモンパラディンモードよ! ファイナル・クレストーーーー!!」
最強魔槍デュナスでのメディーバルデュークモンの攻撃と同時に、竜人はオメガブレードを振り翳す。
「――オメガブレエエエエエエエエエエエエエエエドオオオオオオオオオオオオーーーーーー!!!!!!!」
今の竜人の頭の中は、ただ、目の前に存在している存在を――家族の身を脅かす存在を吹き飛ばす事だけで一杯だ。
竜人の想いに応えるようにして、オメガブレードの刀身が白銀の光となって伸びる。
渾身の力と速さを込めて、それが威力へと変換されていく。
伸びた光刀身は、3体の大きな悪性プログラムを見事に斬り裂き、そのデータを初期化してみせる。
ロイヤルナイツという組織の始祖の力が、闇の書の闇であるコアを砕いてみせた。
それと同時に、竜人のいる空間が大きく揺らぐ。
「不味いな、崩壊が始まっているのか……速く、見付け出さないと――!?」
探しに行こうと身体を振り向かせると同時に、3体の悪性プログラムだったものの残骸が1つに纏まっていく。
そしてそのデータは、探そうとしていた夜天の魔道書のデータだった。
だが……。
「――これじゃあ、意味が無いな……」
データの方は完全では無いが、その殆どは修復出来ない程に壊れてしまっている。見付けて、夜天の魔道書の頃のデータだと理解る程度になった事は奇跡にも近いだろう。
「くそ……助けてくれて感謝する、メディーバルデュークモ――!?」
歯噛みしながらも、そのデータを回収する。
そして振り返りはしたが、そこには既に、メディーバルデュークモンの姿は影も形も無かった。
「悪い、結局駄目だった……データは見付かったけど、破損していて、元に戻りそうには……」
「いや、謝る必要は、無い……」
謝る竜人に対して、リインフォースは慰めの言葉を掛ける。
だが、当のリインフォースの方が辛く、苦しい思いをしているだろうに。
「主はやて」
「どうしたん? リインフォース?」
「私の身体はあまり長く保ちません。ですが……」
言葉を詰まらせるリインフォースに対し、静かな瞳で見詰めるはやて。
俺達もまた、彼女達の会話に割って入る気は無く、静かにしている。
どれだけ保つのだろうか。
リインフォースの身体の中には、悪性プログラムの塊は殆ど存在していない。削除出来たと言って良いだろう。
だが、その身体は既に原型を留めては居らず、戻す為の希望も失われた。
存在し続けているのが奇跡的な事もあり、長くても今年度末には逝ってしまうだろう。
「ですが、私は……主はやてや皆に救って貰った事、感謝しています。短い間ですが、精一杯生きていきます。宜しくお願いします、主はやて」
「こちらこそよろしゅうな、リインフォース」
「さてと、それじゃあクリスマスパーティーだあああああああっっ!!!」
身体に出来ていた傷も完治させた雄介は、大きな声で元気に叫ぶ。
その声に、この場に居る俺と志蓮、ドゥーム、ゾイル、竜人が応えるようにして叫び返す。
はやてもまた元気に応え、シャマルは周りの勢いに押され、誘われるようにして小さく応える。
他の
クロノの方は呆れながらも、後始末だったりといった事に頭を悩ませる。
「アースラスタッフも、アースラの修理が終わったら、好きなようにして良いぞ!」
《《《――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!》》》
俺の言葉を聴いた事で、通信による音声ではあるが局員の皆が盛り上がっているのが聞こえて来る。大き過ぎる声が重なっている為に、音割れを起こしているような感じだ。
エイミィも同様に声をあげており、クロノの方は「仕方無いか」といった風な感じだ。
「提督はどうなさいますか? リーゼも」
《辞めておこう……》
《私達もちょっと……》
クロノの誘いを、やんわりと断る3人。
グレアム達3人は声だけをクロノにだけ伝えており、他の皆には気付かれないでいる。
《まあ、パーティーをする前に、休む必要があるし、家に帰らないとね》
エイミィのその言葉と同時に、俺達の足下に大きな魔法陣が発生。
そして、その魔法陣が光り、俺達全員はアースラ内部へと転移をした。
「そう……うん。理解った……報告、有り難う。今日は、家でゆっくり休みなさい。私も、明日には帰るから」
管理局本局に存在する通路を歩きながら、携帯機器を使用してフェイトからの報告を受けるリンディ。
横には、リンディの同僚であり同期のレティ・ロウランが並び歩いている。
2人の横には、中庭のような空間が設けられており、草木が植えられていて、人工に光によって明るく照らされている。
「フェイトちゃんから?」
「うん。魔導書本体の消滅は今は大丈夫だけど、遠からず起きるかもって……それでも、はやてちゃん達と半年は一緒に居られるんですって……」
「そう……」
暫く通路を歩いているとエレベーターに辿り着き、上に行くようにボタンを押す。
「グレアム提督の件は、提督の希望辞職って事で手打ちみたいね。故郷に帰るそうよ」
「まあ、具体的なのはクラッキングと捜査妨害くらいだし、それくらいよね……」
上からの命令であるなら仕方は無いが、辞職をする程の事でも無いと思っているのか、リンディはレティに問い掛けるように話す。
「はやてさんの事はどうなるのかしら?」
「今まで通りに援助を続けるって……あの娘が1人で羽撃ける歳になったら、真実を告げる事になるだろうって」
「……そう」
はやての事を気に掛けるリンディに、グレアム本人から聴いていたのかレティは説明をする。
その説明を聴いて、少し物憂げな表情を浮かべながら応えるリンディ。
「貴女もこれで、御主人への報告に行けるわね。
「来週、クロノとフェイトさんとドゥームさん、アルフも連れて5人で」
「何て報告する予定?」
「そうね……」
レティの質問に、少し考え込むリンディ。
だが、リンディは直ぐに笑顔を浮かべて応える。
「多分、
「そっか」
そんなリンディに連られるようにして笑顔を浮かべ、レティは頷いた。
アースラで次元間移動をし、地球の衛星軌道上へと転移をする。
そこから観える景色は、既に赤いものでは無かった。
緑と青の2色。三途の川が溢れ出る前の地球へと、その時の状態へと戻っているのだ。
戦闘の余波で壊れてしまっていたビル街やヒビ割れ削れてしまっていた大地も含め、その全てが時を戻されたかのように修復されている。
「綺麗……」
感嘆の言葉が発せられる。
誰が呟いたのかは判らないが、皆同じ気持ちだという事が表情から察する事が出来た。
「俺達がこの
今地球で活動しているヒトや他の動物達はいつもと変わらない日常を送り続けている。
ほんの少し前まで眠らされていたというのに。そして、その間に何があったのかなんていうのは知らない。理解らないだろう。
少し寂しいというか、哀しいというのか。何とも言葉として表現し辛い感情が胸に渦巻く。
「それじゃ、元いた場所に転送するよ」
エイミィの言葉と同時に、転送ポートが光りだす。
光がその場を支配し、一瞬で消え去る。
目を開くとそこは、はやてにあてがわれている病室だった。
早朝という事もあり窓からはほんのりと明るい陽光が射し込み始めている。
廊下の方からは、もう目を覚ましている人達や看護師のものなのか、声などが聞こえて来る。
「それでは、主はやて……一旦、家に戻ります」
「私達も帰らないとね」
「それじゃあ、また後でな」
リインフォースを入れた
八神一家と別れ、アリサとすずかの2人とも別れる。
残されてるのは8人だ。
「事件、終了かな……」
「うん」
「でも……ちょっと寂しいかな」
雪が道路に降り積もっていく中で、俺達8人はゆっくりと歩いている。
ほんのちょっとの間の出来事である筈なのに、身体は酷く疲れているのか重く感じられる。
足を進める度に、積もっている雪にくっきりとした足跡が出来上がる。
なのはとフェイトの2人は俺達6人の先を歩いており、耳に届いてくるなのはの声はどこか疲れと言うよりも物悲しさを感じさせた。
そんななのはに、フェイトは静かに手を差し出して、そっと握る。
「クロノが言ってた。ロストロギア関連の事件はいつもこんな感じだって。大きな力に惹かれて、哀しい事が連鎖していく」
「うん」
そんなフェイトの言葉を、俺は流す事が出来ず、胸を貫いてくるような錯覚に陥る。
大きな力に惹かれたというのは自分もそうだろう。特典という力を、サイヤ人などの力を望んだのだから。
そしてその望み力を手にした結果、この世界は大きくかたちを歪め始めている。
「私、局の仕事を続けようと想うんだ。執務官になりたいから……母さんみたいな人とか、今回みたいな事とか……少しでも止められるように。なのはは? なのはは、何か考えてる? これからの事」
「私は、執務官は無理だと思うけど、方向は多分、フェイトちゃんと一緒……ちゃんと使いたいんだ。自分の魔法」
既に考えていたのか、なのははフェイトの言葉を受けて笑顔で応える。
それに対してフェイトもまた、なのはへと笑顔で返す。
目指す地点は同じだが、その過程や方法は違うとう事だろう。
雄介も志蓮もドゥームも少女等2人と気持ちは同じなのか、言葉は不要だった。
皆必死に今を生きている。生きているんだ。
俺もそうするべきなのではないのだろうか。
原作通りの展開に無理矢理持って行こうとする必要はなく、今を必死に変えるように、生きるとう事を努力すべきなのでは。
「ユーノ君、折角戻ってきてくれたのに、殆ど一緒に居られなかったね」
「全くその通りだ」
「ずっと調べ物だったからね」
フェイトとアルフ、ドゥーム、志蓮の4人と別れ、なのはと雄介、ユーノ、俺の4人は家へと向かい歩いている。
なのはの言葉に雄介が肯定し、それに対してユーノは苦笑しながら応えた。
「ユーノ君、この後は?」
「うん……局の人から、無限書庫の司書をしないか? って、誘われてるんだ。本局に、寮も用意して貰えるみたいだし……発掘も続けて良いって話だから、決めちゃおうかなって」
無限書庫での闇の書についての調査がどれだけ手際良く、効率良く行われていたのだろうか。
探索魔法と読書魔法の両方を同時に使える人材が欲しいという理由もあるだろう。
実力を認めて貰い、そして職に困らないというのは幸せな事かもしれない。
「本局だとミッドチルダよりは近いから、私は嬉しいかな」
「本当?」
「うん!」
なのはのその言葉を聴いて、ユーノの顔が綻ぶ。
家に帰るとそこは、暗く静かなものだった。
例えどんな時間になろうとも、帰宅時間が遅くても顔を出して煩いくらいに喋り出す人物がいないのだ。
そう。もう、ここにはいないのだ。
「…………」
【Maître】
「大丈夫だ……」
誰もいない静かな廊下を歩き、2階にある自分の部屋へと向かう。
照明は点いておらず、机の上に置いてある携帯電話のメール着信を教える光が小さく主張しているだけだ。
〈今日、ちょっと時間あるかな? 午前中、アリサちゃんと一緒にはやてちゃんのお見舞に行って……それから、家でクリスマス会をしようかなって思ってます。来てくれると嬉しいな〉
すずかからのメールだった。
今日は既に12月25日。世間もクリスマス気分で賑わっているだろうか。
メールの文面にはなのはやフェイト、雄介達も誘っている事が記載されている。それぞれ個別に送ったようだ。
「これまでの事や転生者について、ちゃんと説明しないとだな……」
自身の右手へと目を向けて、そっと呟く。
すずかとアリサの2人は、此方側に巻き込んでしまったのだ。
まあ、最終的には話すつもりだったのだから、丁度良い機会だと自身に言い聞かせる。
「――くそっ」
一瞬の事だが、その右手が血塗られているように真っ赤に見えた。
まだ、未だにマッドの身体を貫いてしまった感触などがこの手に残っている。
「そういや鉄鼠の奴……」
あれだけの力を誇っていた鉄鼠の最期、そして消える直前に吐いた言葉。
それもまた、同時に胸を悩ませる。
――自分というものを失う恐怖を味わいながら、仮初の平和の中で暮らし続けていくと良い。
それがどういう意味なのか、なんとなくだが理解出来るような気がしている。
「特典……」
映像で観た志蓮の一瞬の変貌。時々感じる暴力的な感情。昨日から今日に掛けての伝説の超サイヤ人としての暴走。
大き過ぎる力である特典からの影響を受けているのではないのか。
まだ情報などは足りなく、確証というものは無い。
だが、そうなのかもしれないという考えが浮かび上がって来る。
「……やめよう。これ以上は考えたところで」
振り解き、払い除けるようにして首を左右に強く振る。
時計を見ると、時刻は8時過ぎだ。まだ、時間はある。
すずかに誘いを受けるという返事を送った後に、階段を降りて1階へ。そしてそこから、エレベーターで地下26階へと向かう。
エレベーターの扉が開くと同時に、身を乗り出してみる。
初めて来た時と同じように真っ暗で、機械が作動している音が耳に届いてくる。
「…………」
真っ直ぐに歩いて行き、GNドライヴが置かれている場所へと到着する。
緑色の粒子が舞い、空間を照らしている。
その光で、周囲に置かれている機械群の姿がハッキリと見えた。
どれが何でどのようにして使うものなのかは、初見では理解らないだろう。
だが、
複数の機械を見渡していると、1つの計器と機械に釘付けになってしまう。
「記録データ……?」
そこに表示されているのは、何かを記録したものだった。
「12月25日、複数回の次元震……」
どうやらこの機械は、次元震を観測するものらしい。
そして12月25日、今日観測されているという事は、鉄鼠との戦闘によって発生したものを記録したのだろう。
「12月8日……確かこの時」
レイジングハートとバルディッシュが新たなシステムであるカートリッジシステムなどを搭載し、なのはとフェイトの元へと戻った。そして、ヴィータやシグナム達との2度目の戦闘をした日だ。
この戦闘時に、マッドが何かを言っていた事を思い出す。
――何か、結界外で大きな魔力と空間の歪みが起きたみたいだが……。
「5月、27日……」
プレシア・テスタロッサが、ジュエルシードを暴走させた時。
「4月26日、4月3日……」
ジュエルシードが地球へと落ち、ユーノがそれを追ってきた時期。そして、ジュエルシードの暴発で、レイジングハートとバルディッシュが破損した時期でもある。
データを遡っていくと、無数の記録が残されている事に気付く。
「9年……前……」
この時点で、かなりの数の次元震がほぼ同時に起きていたという情報が出ている。次元断層が起きたり、世界が崩壊をしなかったとう事が奇跡だろう。
「確か、なのは達が誕生した時……」
前世から持ち越している知識と記憶から出て来る情報は、なのはとユーノ、アリサとすずか、はやてが誕生した年代だ。
そして雄介と志蓮がこの世界で第二の生を受けて、誕生した年でもある。
「11年前……」
ドゥームが生まれた年だ。
「まだデータが足りないけど、これでほぼ確定なのか……」
9年前に起きただろう無数の次元震は、転生者が誕生した事で起きたという事。
特典を所持し、この世界に転生をする度に次元震は起きてしまう。
「頭が痛くなるな……」
病気になる筈のない身体を持っているにも関わらず、脳内の血管が広がり痛みを感じる。
【Maître】
デバイスからの呼び声に意識が強制的に戻される。
ポケットに入れている携帯電話は、メールを着信したのか光を明滅させている。
「ありがとう、えっと……」
【S'il vous plaît appelez comme vous voulez】
「それじゃあ、リュミエール……」
【Qu'est-ce?】
「出掛けるか?」
【Oui, nous allons le faire】
携帯電話を開くとすずかからの返事を着信しており、そろそろ集合の時間だという事を教えてくれている。
再びエレベーターに乗り、地上へと足を向けた。
「ヤハ、ウェ……?」
集合場所に向かう前に、俺は神殿へと舞空術で移動をしていた。
神殿に着陸をすると同時に、中に入るがそこにはヤハウェの姿が無かった。
「やっほー、ブロン!」
「お疲れさん」
そこに居たのは見覚えのある2人。
天照は、こちらに向かってジャンプをして抱きついてくる。
その様子を目にしたオーディンは「やれやれ」といった風な表情を浮かべている。
「離れてくれないかな?」
「ええ~? 良いじゃん、別に……役得でしょう? 神様とこんなに親密になれるヒトなんてそんなに居ないよ?」
天照の慎ましやかな胸が顔に当たり、息が苦しい。
だが、何処か安心感を感じさせるものがあった。
「本当にお疲れ様……よく頑張ったね、有り難う……」
天照の華奢な身体は心なしか震えているように思える。
「お前等も頑張ったじゃねえか……その言葉、そのまま返すぜ」
「うん……だけど、本当に心配したんだよ」
「………」
「弄り甲斐のある子が居なくなるんじゃないかって」
「…………」
その言葉を耳にして、思わず天照を突き飛ばしそうになる。
「(まあ、良いか……)」
口ではこういった事を言ってはいるが、内心では先に述べた言葉の方を強く感じている筈だ。
俺の存在を感じるように、離さないようにしているみたいに抱きしめている力は強くなっているのだから。
「オーディンもお疲れ様」
「いや、俺は……」
「取り敢えずの脅威は去ったけど、まだ幾つかの脅威は残っているだろうからさ……お疲れ様っていう言葉は違うかもしれないけど……この言葉しか思い浮かばないな」
フゴフゴといった風な感じでしか喋れないが、俺の言葉を理解したのか、オーディンは照れているのか頬をポリポリと掻いている。
天照は、少し名残惜しそうな態度を取りながらも俺から離れる。
苦笑いをしながら俺は言葉を口にした。
「すずかの家でクリスマス会をするんだけどさ、来ないか?」
「私達は、辞めておくよ。まだ、力の方が完全に回復してないし……さっきの言葉……まだ何かが起きるんでしょ?」
「…………」
天照の言葉に、俺は黙り込んでしまう。
沈黙は是。
これを肯定と受け取ったのか、天照とオーディンの顔に少し翳りが見えた。
「まあ、君は楽しんできなよ! 今度機会があるなら、また誘ってね」
「ああ……」
神殿から出、地上である下界へと降り立つ。
時間が時間なので誰かに見付からないように、Mirage Hideを使用して空間に溶け込む迷彩を発生させ姿を消して舞空術で集合場所へと移動する。
「「おはようございま~す」」
「――あっ! なのはちゃん! フェイトちゃん!」
海鳴大学附属病院にバスで移動し、なのはとフェイト、雄介と志蓮、ドゥーム、俺の6人ははやてのいるであろう病室へと足を向ける。
挨拶をして部屋に入室すると同時に目に入ってきたのは、シグナムに抱きかかえられながら車椅子に乗ろうとしているはやての姿だった。
ヴィータとシャマルは、それぞれ荷物を持ちながら準備が出来るのを待っている。
リインフォースとザフィーラ、竜人は八神家から直行するのだろうか。
「どうしたの? もう退院?」
「残念。もう暫くは入院患者さんやよ」
「そうなんだ……」
フェイトの質問に笑いながら応えるはやて。
闇の書の闇を除去した翌日、直ぐに足の麻痺がどうにかなるという訳ではないのだから当然だろう。
「まあ、もうすっかり元気やし、すずかちゃん達にお見舞いはお断りしたよ。クリスマス会直行や!」
「そう」
外に出る事が出来る程には回復した事に対し思わず笑顔になる。
はやてが何気なく口にした言葉通り、皆でクリスマス会を過ごす事が出来るようになった。家族揃って、友達やその家族と元気に過ごせるという事がどれだけ幸せな事なのか。
「昨日はいろいろあったけど、最初から最期までほんまありがとう」
「ううん」
「気にしないで……」
はやての感謝と謝罪の言葉に、なのはとフェイトの2人は笑顔で応える。
「そうそう、気にする必要なんて無いさ……持ちつ持たれつ。困った時はお互い様で、助け合うものだろ?」
なのはとフェイトの言葉、そして雄介の言葉を聴いて、はやてや守護騎士の3人は笑顔を浮かべる。
「魔導師を続けるのか? いや、なるつもりなのか?」
「うん。リインフォースも精一杯生きるって言ってくれたし、あの娘や皆がくれた力やから……」
志蓮の質問に対し力強く、笑顔で応えるはやて。
「それに、今回の件で、私とシグナム達が、管理局から保護観察受ける事になったし」
「そうなの?」
「まあな……」
「管理局任務への従事とうかたちでの、罪の償いも含んでます」
「クロノ執務官やリンディ提督、ゾイル特務執務官達がそう取り計らってくれた」
なのはの質問にヴィータが応え、それに対してシャマルとシグナムが補足をする。
俺が家にいる間に、皆頑張ってくれていたという事に感謝せざるを得ない。
「(全く、特務執務官補佐の自分が動かないでどうするんだよ……)」
「任期は結構長いんですが……はやてちゃんと竜人と離れずにいられる、多分、唯一の方法だって」
現在の管理局法などで、どうにかしようとすると方法は限られてくる。況してや、家族全員が一緒にいられるようにするのであれば。
だが、管理局は慢性の人手、人材不足という事もある為にこういった手段を取る事が出来たのだろう。
「私は嘱託扱いやから、なのはちゃん達の、後輩やね」
はやての言葉に、2人の少女は笑顔を浮かべる。
これで、この事件は収束を迎えた……闇の書事件は取り敢えずの解決をしたという事になるのだろう。
だがまだ、闇の書の闇が生むであろう事件が残ってる筈だが。
「はやてちゃん! 今日はちゃんと帰って来てね! 約束よ!」
「はい! 約束です!」
準備を終え、部屋を出ると同時に、はやての担当医である石田幸恵に外出の許可を求めた。
少し離れた場所から2人の会話をしている様子が見る事が出来る。
「今朝、大変だった?」
「ああ。遅くに外に出ていた事がバレて、シグナムとシャマルが滅茶苦茶怒られてた」
なのはの質問に応えるヴィータ。
早朝でのアースラからの転移後、病院の外に出る時に俺達の姿が視られたという事だろうか。
「怖い先生なんだ……」
はやてとシグナム、シャマルに対して念を押すようにキツく言い聞かせている幸恵の姿を目にし、フェイトは思わず呟く。
「でも……良い先生だ」
ヴィータの言葉通り、その幸恵は良い先生であり、優しい人物なのだろう。
幸恵がはやてを医者だからという訳では無く、1人の人間として心配をしている事が理解出来た。
「お待たせ」
車椅子に座るはやての言葉を聞いて、出入り口へと向かう。
だが、フェイトとシグナムの2人は静かに向かい合い、動かないでいる。
「…………」
「…………」
両者の瞳は鋭くそれぞれを真っ直ぐに貫いている。
だが、そこからは敵意といったものを微塵も感じさせはしなかった。
「テスタロッサ」
「はい、シグナム」
「預けた勝負……|何〈いず〉れ決着をつけるとしよう」
「はい、正々堂々。これから何度でも」
フェイトの言葉を受けて表情は和らげ、その綺麗な金髪を優しく撫でるシグナム。
フェイトの方もまた、それを笑顔で受け入れた。
「なのはとフェイト達、はやて達ともう直ぐ到着だって。はやて達も含めて、皆で打ち明けたい事があるってさ」
「うん」
携帯電話に届いているメールを見て、アリサはすずかへとその文面を軽く読み上げる。
「ま、なのは達が秘密にしたい事なら、別に秘密のままでも良いんだけどね。教えてくれるってんなら、ちゃんと聴きましょう」
アースラ内で、ゾイルから説明を受けたという事もある。
だが何よりも、彼女達が自身の意志で話そうと思った時に聴こうという考えが浮かぶだけの余裕が出来たのだろうか。
そこには、半年前に話してくれない事に対してやきもきしていた姿はもう無い。
あるのは友達を信じているとう気持ちの表れだけだ。
「うん。フェイトちゃん達との出会いの話から聴かせてもらえると、嬉しいかな」
そんなすずかの言葉に同意を示すかのように、笑顔で首肯くアリサ。
「全部聴かせてくれたら、なのはちゃん達ともっともっと仲良くなれるような気がするから」
「うん。そうだね」
笑顔を浮かべながら、皆を待ち続けるアリサとすずかの2人。
「えっと……それで、なのはちゃんとフェイトちゃんはどういう風に逢ったの?」
「えっとね……」
今の今まで黙り続けていた事に罪悪感や申し訳無さを感じてはいるが、それ以上にこれ以降は隠し続ける必要の無い事や大好きで仲良しな友達と一緒に笑い合える事に感謝を感じずにいられない。
すずかの質問に対し、なのはとフェイトは照れながら説明をしていく。
どのようにして出会ったのか。
どのようにぶつかり合ったのか。
どのようにして理解し合う事が出来たのか。
「そっか……」
プレシアとアリシアの話になると同時に、空気が少し重くなる。
だが、フェイト自身は割り切る事が出来たのか……優しい笑顔を浮かべている。
それにつられるようにして、この場に居る皆が同様に笑顔となる。
「……魔法についても説明しないとな」
それぞれの魔法との出会い、そしてそれがどんな力なのかをザックリと簡単に説明してみせる。
フェイトとアルフはミッドチルダの魔法について、シグナムとシャマルは古代ベルカ式について。
「古代って事は、近代もあるって事?」
「ええ。私達は、まだその魔法体系を使用する者達と出会った事は無いですが」
アリサの疑問に、笑顔でシャマルは応える。
近代ベルカ式の魔法技術は存在しており、それは古代ベルカとミッドチルダの技術のハイブリッド。ミッドチルダ式の魔法技術をベースにして、古代ベルカ式の魔法をエミュレートし、再現した魔法体系。魔法陣は古代ベルカ式のものと同じだ。
「で……あんた、じゃなくて……貴女はフェイトの使い魔っと」
「アルフで構わないよ」
「道理でねえ……見付けた時は大怪我をしていて、なのはが知り合いの犬だからと言って一緒に行ったし……フェイトがここに引っ越して来た時は子犬フォーム? だったし……見覚えのある訳だわ」
アリサの言葉に、苦笑いを浮かべざるをいないでいるアルフ。
「で、本題なんやけど……」
「転生者について教えて欲しいなって」
はやてとなのはの言葉に同意をするように、フェイトとアリサ、すずか、アルフ、守護騎士の3人は転生者組へと目を向ける。
「えっとだな……俺達には前世での記憶があるんだ」
「俺には無いけどな」
思い付く限りで説明をしていく。
推測だったりする事もあるからか、チグハグとしており可怪しな部分があるだろう。そして、しっかりとした根拠が無い事や知らないでいる事もあるだろうから、話せない事もある。
出来得る限りで、転生者について解説をする。
「ここは、俺達にとってはアニメや漫画、ゲームの世界だったんだ。だけど、この世界に転生をした」
雄介の言葉に、皆は余計な茶々を入れるという事はせず聴き入っている。
自分達いる世界がアニメなどに出て来る世界だったという事に驚きを隠せないではいるが、それ程取り乱す様子も無い事に驚きと安堵を俺は覚える。
「前世の記憶を持ったまま、もしくは手放した状態で輪廻転生じみた事をした、と」
「そう。前世では創作物だったが、ここはそれに限りなく近い……似た世界だと思うんだよ、俺は」
アリサの確認するかのような言葉を肯定し、自分の考えを少し話す志蓮。
「そして転生をする際に、特典と呼べる特殊な力を手にする事が出来るんだ」
「雄介君の場合だと、その特典が滅竜魔法って事?」
「そう。この世界ではどう風に生まれたかは判らないけど、俺の前世での世界では、FAIRY TAILという漫画、アニメに出て来た魔法なんだ」
なのはの言葉に、笑顔を見せながら応える雄介。
「志蓮君のは?」
「俺か? 俺のは、
「俺はNEEDLESSという作品に出てくる超能力に似た力」
「俺はデジタルモンスターに出て来るデジモンという存在が持つ力……だった筈……」
すずかの質問に対して志蓮は応え、ドゥームも竜人も自身の特典について話す。
「っちゅう事は、皆アニメか何かに出て来た力を特典として持ってると……」
「まあ、そうだな……大抵の奴等は、既存の作品から欲しいものを選ぶだろうさ」
はやての言葉には、否定をするような要素は全く無いと言えるだろう。
竜人は、ポンポンといった風に軽くはやての頭を叩きながら口を開いた。
4人が自身の持つ特典についての説明を終えると同時に、皆は俺の方へ目を向ける。
「サイヤ人だ……ドラゴンボールシリーズに出て来る」
自分だけが黙っているという事は出来ない気がして、簡単に説明をする。
説明を始めると同時に、自身に掛けている変身魔法を解除する。
「変身、魔法?」
「姿が変わった……?」
「ブ、ブロン君が不良に!?」
鉄鼠との戦闘時に、不可抗力で見せてしまったこの姿。
金髪、右目が
「使い魔でも無いのに尻尾があるなんてねえ……そう言えば、アカマタん時にも見せてたっけ?」
「……ああ」
アルフの言葉に苦笑しながら同意する。
「ええと……ブロン君? 触っても良いかな?」
「構わないぞ」
ユラユラと揺らしている尻尾が気になるのか、なのは達少女組が俺の尻尾に群がり始める。
サワサワといった風に触れる感触は、こそばゆいと言うのかくすぐったいというのか。
自身が、手入れのようにして洗っている時には感じられないような感触を暫くの間、味わう事になった。
何だかんだと言いながら、時間は経過していく。
時間はあっという間に夕方となり、はやては病院に戻らないといけない時間が迫る。
皆と別れ、帰る道の途中で俺は皆に話さずに居た事で頭を悩ませていた。
鉄鼠の放った「自分というものを失う恐怖を味わいながら、仮初の平和の中で暮らし続けていくと良い」という言葉。
特典によって魂などが何らかの影響を受けてしまうという危険性。
マッドの残したデータに載っていた次元震などのデータ。
これらを話せずに帰路に着いている。
「どうすれば良いんだ……?」
話せば自分は楽になるかもしれない。だが、皆に必要以上の不安や負担を掛ける事になるかもしれない。
話すべきだったのか、話さないでいた事が正解だったのか。
答という答が存在しないであろう疑問、そして悩みを抱えながら、誰も居ないであろう家へとトボトボと足を動かした。
間に合わなかった(泣)。
25日中に投稿出来ると思っていた俺の姿は、お笑いだったぜ。腐☆腐。
約44分オーバーか……だがまあ、取り敢えずはA's編は終了です。
来年にTHE BATTLE OF ACESとTHE GEARS OF DESTINYの出来事について妄想した事を書いて投稿します。
上手く行けばStrikerS、そしてその間の出来事を妄想したものを投稿出来るかもしれない。
まあ、今までの事を考えたら無理だろうけどな。
それじゃ、この小説を読んで時間を無駄にした皆さん……残り少ない日数を出来る限り悔いの無いように過ごし、良いお年を迎えて下さい。貴方が良ければですが、また来年に逢えれば逢いましょう。