魔法少女リリカルなのはZ   作:りおんざーど

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ジュエルシード、封印!!

 「嘘……? 何なのこれ!?」

 

 服が変わり、見事に変身を果たしてしまった自分の姿を見て、大きく戸惑ってしまうなのは。

 

 黒い影に付いている2つの紅い瞳は、そんななのはの様子を真っ直ぐに見詰めている。

 

 「■■■■■■■■■■■!!!!!!」

 「ええぇぇ!?」

 

 その影が放っている大きな声に驚き、彼女は後退をしてしまう。だが、その背後には壁が存在していて、数歩後退りをするだけでぶつかってしまった。

 

 「えぇっ! これ何?」

 

 改めて自分の姿を、自分が着ている服と手にしている杖らしきものを見て、困惑する。

 

 「来ます」

 

 フェレットの言ったその言葉で、ハッと前を向く。

 

 黒い影は、なのはに驚いている暇を与える事も無く、勢い良く上へと飛び跳ねて、彼女に向かって急速に落ちてきた。

 

 【“Protection”】

 「んっ……んん……んんん……っ!」

 

 杖の先端分に存在している赤い球体が発光し、光が放たれる。その放たれた光は、なのはの前方に薄い壁の様なものを創りだし、展開をした。

 

 その壁は薄く見えるが、かなり強固なもののようだ。

 

 壁に阻まれ、自身で生み出した速さにより発生した衝撃で、影は破片となり、四散し、それぞれが民家の塀や道路に突き刺さっていく。その中の1つが電信柱に刺さり、電灯を大きく明滅させながら前に設置されている塀に向かい倒れてしまう。

 

 「えぇ……! ふぇええ……!!」

 

 日常生活の中では見る事が出来ないであろうその光景に対し、なのはは目を大きく見開いて戸惑う事しか出来ない。

 

 「僕等の魔法は、発動体に組み込んだプログラムと呼ばれる方式です。そして、その方式を発動させる為に必要なのは術者の精神エネルギーです」

 

 腕の中に居るフェレットの話を聞きながら、背後に存在している影に注意を払いながら、破壊されたその場所から離れていく。

 

 飛び散った影は、少ずつではあるが元に戻ろうとしている。

 

 「そして、あれは忌まわしい力の元に生み出されてしまった思念体。あれを停止させるには、その杖で封印して元の姿に戻さないといけないんです」

 「よく分かんないけど、どうすれば?」

 「さっきみたいに攻撃や防御などの基本魔法は心に願うだけで発動しますが、より大きな力を必要とする魔法には呪文が必要なんです」

 「呪文……?」

 

 なのはは大きく首を傾げ、オウムの様にその言葉を繰り返す。

 

 「心を澄ませて……心のなかに貴女の呪文が浮かぶ筈です」

 

 なのはは目を閉じて、意識を集中させていく。

 

 「■■■■■■■■■■■■!!!!!」

 

 再生が完了した思念体は、立っているなのはを見付け、勢い良く突っ込んで来る。

 

 本来ならば慌てる場面なのだろう。だが、今のなのはにはそう感じはし無い。不思議と静かで、落ち着いた心境をしていたのだ。

 

 【Protection】

 

 思念体から放たれた無数の触手の様なものを防ぎ、弾いていく。だが、その防壁にも限界というものが存在していて、2度3度と繰り返し叩きつけられていく触手による攻撃が原因でヒビが入り、魔力でつくられた盾であるProtectionは安々と打ち貫かれ、破られてしまう。

 

 「きゃああっ!!」

 

 破られてしまったその衝撃により、なのはの小さな身体は地面に強く打ち付けられ、彼女は数回程大きくバウンドをしながら道路を転がってしまう。

 

 「う、うぅ……」

 

 そのダメージにより身体はフラフラと、足はガクガクと震え、上手く立ち上がるという事が出来ない。

 

 そんななのはの目の前には思念体が居て、彼女に追い打ちを掛けるかの様にして迫ってくる。

 

 そんな状況と状態の中で、なのはの心には先程まで感じてはいなかった筈の恐怖というものが押し寄せてくる。

 

 「(誰か……助けて……。雄介君……ブロン君…………)」

 

 今のなのはに、高町なのはに出来る事は、目を閉じてただただ祈り続ける事だけだった。

 

 「“火竜の咆哮”っ!!!」

 

 思念体に向けて、膨大な熱量を誇る巨大な炎を辺り、焼いていく。ボウボウと燃える思念体は、身体を捻じり、捩って必死に身体を動かして身を焼き続けている火を振り払おうとする。

 

 「無事か……なのは?」

 

 聞こえてく来るその声は、純粋になのはの無事を確認しようとする優しいものだった。

 

 

 「ゆう、すけくん……?」

 「あいよ」

 

 なのはの、彼女のぼやけている視界に映っているのは小さい頃から一緒に居た幼馴染みの姿だった。

 その後姿は、燃え盛る炎に照らされている。

 

 「貴方は……?」

 「今は、そんな事なんてどうでも良い……」

 

 フェレットが言ったその言葉を聞き流し、雄介は目の前の思念体を睨みつける。

 

 雄介の目には、倒れている幼馴染みとその原因をつくりだしたであろう思念体しか入ってはいない。

 

 「先ずは此奴をぶっ飛ばす!!」

 

 その言葉には、彼の目には強い意志が存在している。大事な幼馴染みを、高町なのはを傷つけた目の前の存在を絶対に許さないという怒りが。

 

 

 

 

 「行くぞ」

 「■■■■■■■■■■■!!!」

 

 雄介が抱いている敵意に、闘争心に反応をしたのか、思念体は強く吠え、威嚇をしてくる。

 

 「うわああああああああぁぁぁっ!!!」

 

 雄介もまた、負けじと強く大きな声で咆哮をあげる。その声は大気を震わせ、民家にあるガラスを次々と粉々に割っていく。

 そして側に居たなのはとフェレットに畏怖と恐怖を、それと同時に何故だか安心感を感じさせた。

 

 「凄い魔力だ。彼女の方も凄いけど、彼は桁違いだ……」

 

 雄介の身体からはその膨大な魔力が滲み出ていて、炎となって彼の身体を覆っている。

 

 思念体についていた火は消え失せていたが、雄介の身体から出ている炎は先程以上に周囲を照らしている。

 

 「“火竜の鉄拳”っ!!!」

 

 雄介は拳に炎を纏わせて、強力なパンチを打ち付ける。その攻撃は見事にヒットし、思念体を吹き飛ばし、数メートル程もの距離を移動させる。

 

 道路である大地を強く蹴り、跳びかかりながら次の攻撃へと移る。

 

 「“火竜の鉤爪”!!」

 

 炎を纏わせたその足で、思念体を上空へと高く蹴り飛ばす。空へと飛ばされてしまった思念体は、何の抵抗をする事もなく、そのままの状態で嬲られ続け、落ちていく。

 

 「可怪しい……」

 

 その思念体の様子を見て、フェレットは訝しむ。

 

 そう、可怪しいのだ。

 暴走をしている思念体が、抵抗という抵抗をする事もなく、ただただ受け身でいるとう事が信じられないのだ。

 

 「…………」

 

 隣で座っている彼女、なのはと呼ばれた少女を横目にし、戦闘をしている少年の方へと心配をしながら目を向ける。

 

 「何も無ければ良いけど……」

 

 フェレットが呟いたその言葉は暗い空へと吸い込まれていく。

 

 「此奴、効いてないのか……?」

 

 これと言って、何の反応も見せずに殴られ続けている思念体を目にし、苛立ちを募らせていく雄介。

 

 思念体のその様子はまるで好機を狙っているかの様でいて、何かを学んでいるかの様にも感じられる。

 

 「(気にはなるが)。……このまま終わらせる」

 

 雄介は心の中に巣食っている懸念を振り払って、思念体へと突っ込んでいく。

 

 「火竜の」

 

 炎を拳に纏わせ、殴りにかかる。

 殴って殴って動きを封じ込め、封印をする。今の彼にはその事しか頭の中には無い。

 

 「――何っ!?」

 

 殴りにかかったその拳は、スルリと避けられてしまう。

 

 その思念体の持つ目は紅く不気味に光り、口は大きく裂ける。まるで雄介の攻撃など防御をする必要が無いと言って嘲笑っている様だ。

 

 「くそっ……もう1回だ」

 

 偶然だと自身へと言い聞かせ、再度突っ込んで行く雄介。だが、その拳は尽く躱されていく。

 

 「■■■■■■■■■■■■!!!!」

 

 思念体は、反撃開始だとでも言わんばかりに大きな雄叫びをあげながら触手を伸ばしていく。そして、その触手で雄介の身体を強く叩いていく。

 

 「くっ!」

 

 その攻撃は速く、鋭いものだ。

 

 打ち振るわれる触手を手で防御をしていく。

 

 それに対し、次々とその触手の数は増えていき、雄介は両手を目の間で×の形で組み、ガードをする事しか出来なくなる。

 

 無数の存在している触手の1つが、彼の足を掴み取り、空中高く放り投げる。

 

 「――え?」

 

 身体が宙へと高く舞い上がったかと思うと、雄介の目の前には思念体が居た。そしてそのまま、思念体は触手を束ね、彼の身体に対し強く叩きつけた。まるでそれは、先程の攻撃に対してのやり返しだとでも言うくらいに。

 

 「ぐふっ……」

 

 その強い衝撃に対し、雄介の意識は一瞬朦朧としたものになる。

 

 「雄介君っ!!」

 

 意識が回復をするのと同時に、大きな声で無事を確認しようとしてくる幼馴染みの声が聞こえて来る。

 

 「あの野郎……」

 

 立ち上がり、雄介は思わず悪態をついてしまう。彼の瞳は死んではおらず、闘士はまだ失われてはいない。だが思念体に対し、構える事はせず、ただ腕を組むだけだった。

 

 「だけど、どうするかな……今の俺には勝てないし。(……こんな事なら、イメージトレーニングでもしとくんだったな……)」

 「あの……。動きを封じてさえくれれば、封印が出来るのですが……」

 

 なのはとフェレットは、立ち上がった雄介の側へと移動をする。

 

 そんな彼等の行動を、思念体はただじっと見つめていた。

 

 「だけど、その動きを封じるっているのが出来ないんだよなぁ……彼奴、動きが速くてよ」

 

 瞳を見る限りでは闘志は失われてはいないのだが、雄介の言葉には何処か諦めとうものが感じられる。

 そんな雄介の弱気な言葉に、なのはとフェレットはシュンとしてしまう。

 

 「そう言えば、志蓮の奴は……?」

 「助けには来てくれたんだけど、あっちの方に吹き飛ばされていったの……」

 

 彼の無事を祈りながらも、飛んでいった方向を指さすなのは。

 

 「そっか……仕方ない。助っ人、呼ぶしかないかな……」

 「助っ人ですか?」

 

 フェレットの質問を聞き流し、雄介は意識の一部を念話の方へと向けていく。

 

 思念体は此方の様子を伺っているのか、全く動こうとはしていない。

 

 『もしもし、ブロン……?』

 『なんだぁ……?』

 『ボスケテ』

 「しょうがねぇな……」

 

 念話を終える事もなく呼び出した瞬間に、雄介達の目の間に1人の少年は到着をした。黒いジャージを着た男の子だ。

 

 

 

 

 「ブロン君……?」

 「そうだ」

 

 戸惑っているなのはに対し、俺は応える。

 

 目の前にはジュエルシードの暴走により出てきた思念体、後ろにはなのはに雄介、そして“ユーノ・スクライア”だと思われるフェレットだ。

 

 「早速だけど、彼奴の動きを止めてくれるかな」

 「貸し1つ……」

 「分かってるよ」

 「あの……」

 「どうした?」

 「失礼な事だとは理解しているんですが、貴方からは魔力と呼べる程の魔力を感じる事が出来ません……2人からは膨大な魔力を感じ取る事が出来るんですが……」

 

 フェレットのその声には期待と同時に、不安を抱いているという事を俺に理解させてきた。

 

 「言いたい事は何と無くだけど理解出来る……ま、見ておくと良いさ。魔法だけが全てでは無いって事をさ」

 

 そう言いながら、思念体へと目を向ける。

 

 身体が固定化されていない為に流動をしているが、目と口はしっかりと存在している。そして、その紅く不気味な両目は静かに此方を見ている。

 

 「何だ……? 此方が動くのを、戦闘態勢に入るのを待っていてくれているのか……? 随分と律儀で、紳士的じゃないか……。(やっぱりこうなったか……こうなってしまうという予想はしてたけど、避けられなかったのかな……)」

 

 そういった考え自体がフラグそのものなのか。前世からのものを含めて、日頃の行いが悪かったのか。考えれば考える程に、ネガティブな方向へと気持ちが傾いていく。

 

 「(その疑問は今は置いておくか)。……今は、目の前の此奴をどうするか。行くぞ……」

 「「――えっ!?」」

 

 その一瞬の出来事になのはとフェレットは目を大きく見開いてしまう。

 

 息を吐くとうい一秒にも満たない間にして、思念体の直ぐ側である前に移動をしていたのだから。

 

 「■■■■■?」

 

 そんな不思議な現象に、思念体の方も彼女等と同じ様に驚きを隠せないでいる様だ。

 

 「え? え? 何が起こったの?」

 「どういう事なんですか?」

 「高速で移動をしただけだよ。……目では捕捉出来ない程の速さで動いたんだ。光速じみた速さでね……」

 

 実際のところ、雄介自身にも理解をする事は出来ていない。だが、そういった解釈をし、表現をもって説明をする事しか出来ないのだ。

 そんな説明を受けても、なのはとフェレットは、やはり信じられない様だった。

 

 そうしている間にも状況というのは変わっていく。

 

 「■■■■!?」

 

 瞬きをする暇も無く、思念体の身体は凹んでしまう。

 

 攻撃を受けた側である思念体自身にも、何が起きたのか理解は出来ていない様だ。

 

 「今のは?」

 「さあ……? 僕にも分からない。ブロン……何をしたんだ?」

 「パンチとキックをそれぞれ26発ずつだ」

 「■■■■■■■■■■!!!」

 「おらあああぁぁ!!」

 

 思念体が飛ばしてくる無数の触手を避けながら、握り拳をつくり殴りつける。勢い良く振り上げられたその拳は、思念体に対して大きなダメージを確実に与えていく。

 

 その威力は山を軽々と割り、速さは目で追う事すら出来ず当たった後に気付く事しか出来ない。

 

 だが、それ程の高威力を誇っている攻撃を喰らおうとも思念体は直ぐに身体を再生させていく。

 

 「続けて……」

 

 右の掌から気弾を連射していく。それは地面――コンクリート製の道路――を抉り取り、思念体に当たって、10メートル近くもその場所から吹き飛ばす。

 

 「存外にしぶといな……」

 

 吹き飛んだ思念体の身体は所々欠けているが、1秒も経たずして再生を済ませてしまう。

 

 「動きが……」

 「さっきよりも遅くなっている……?」

 

 再生を続けながら闘っている思念体の動きは、雄介との戦闘時と比べて格段に遅く、ゆっくりとしたものになっていた。

 

 「……そうか!! 魔力が減っているんだ」

 「どういう事?」

 「思念体は、ジュエルシードに内包された魔力が暴走したもの。なら、再生するのにも、ジュエルシードの中の魔力を消費する。魔力とはエネルギーそのものだ。だから、消費された分だけ」

 「これなら……」

 

 「おらああああああっ!!!」

 

 力を込め、蹴り飛ばす。思念体はコンクリートの道路を削りながら、ブロック塀を壊しながら遠くへと飛ばされていく。

 

 思念体は、その与えられた大きなダメージにより、度重なる再生で沢山の魔力を消費した事により動く事が出来ないでいる。カタチを保っているので精一杯なのだろう。

 

 「今なら」

 

 フェレットのその言葉になのはは頷いて、頭のなかに浮かんでいた呪文を唱えていく。

 

 「“リリカル・マジカル”……封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード……ジュエルシード封印!!」

 【“Sealing mode” set up】

 

 レイジングハートから発せられたその言葉に従うかの様に杖は大きく姿を変えていく。杖上部に存在しているピンク色の部分から魔力で出来た光の翼が発生した。

 そして、杖の先端部分から魔力糸が飛び出し、思念体を縛り上げる。

 

 その思念体の頭の部分なのだろうか。そこにはⅩⅩⅠというローマ数字が浮き出てくる。

 

 【Stand by ready】

 「リリカル・マジカル……ジュエルシード、シリアル21……封印!!」

 【Sealing】

 

 その言葉が告げられるとまた杖からは無数の光が発生して、それは縛り上げられている思念体を貫いていく。

 

 「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!」

 

 その叫びは断末魔とうものなのだろうか。大きな咆哮をあげ、そして思念体は泡の様に消えていく。

 

 跡に残されたのは、凄惨な、そして同仕様も無い破壊現場だけだった。

 

 「あ!」

 

 崩れ去り、目の前に存在している瓦礫の中に一筋の光が放たれている事になのはは気が付く。

 

 「これがジュエルシードです。レイジングハートで触れて」

 

 フェレットに促されるままに、なのはは瓦礫の中にある青い菱型の宝石に近付いて行き、それに対してレイジングハートを翳す。すると、ジュエルシードは杖の赤く大きな玉の部分へと吸い込まれていった。

 

 【Receipt number ⅩⅩⅠ】

 

 光を放ちながらバリアジャケットが解除され、なのはの服は戦闘前の私服へ。家を抜けだした時のものへと戻る。

 

 そしてレイジングハートは杖の状態から、最初に見た時と同じ小さな宝石へと戻った。

 

 「あ、あれ……? 終わったの?」

 「はい、貴女達のおかげで……ありがとう」

 

 そう言い、崩れた瓦礫の上でドサッと倒れてしまうフェレット。

 

 衰弱しきっていた昼間と比べ随分とましになったが、病み上がりなのは確かで、フェレットはそのまま意識を失ってしまう。

 

 「ちょっと、大丈夫? ねえ?」

 「そのフェレットを連れて、此処から離れるぞ」

 「ブロンの言う通りだ」

 「どうして……?」

 

 思念体を倒して、暴走したジュエルシードを封印。

 

 事態が何とか収まった事に安心は出来るが、此処に居続けるというのは非常に不味い選択だと言えるだろう。

 

 「聞こえないのか?」

 

 まだ離れているからか、しっかりと聞き取る事が出来ない。だが、確かにピーポーピーポーといったサイレンの音が鳴り、段々と近付いて来ているのが感じられる。

 

 フェレットが展開したであろう結界は、そのフェレットが気絶をした事により、解除されている。

 結界により、人的被害というのは出ていないが、物理的被害は出ているのだ。それに対し、近隣住民の誰かが通報をしたのだろう。

 

 「も、もしかしたら……私達、此処に居ると大変あれなのでは……」

 「全く以て」

 「その通り」

 

 その言葉を聞いて、漸く事態が飲み込めたのか慌て出すなのは。

 

 「撤収!」

 「と、取り敢えず……ご、ごめんなさ~い」

 

 謝罪をしながらも、フェレットを抱きかかえてその場を後にするなのは。俺と雄介もまた、その後を追いかけるかたちで走りだした。

 

 

 

 

 人っ子1人すらも居ない静かな公園に逃げ着き、俺達は一息を吐く。

 

 息を切らしているなのはをベンチに座らせ、俺達は深呼吸をして落ち着きを取り戻す。

 

 「すみません……」

 「あ、起こしちゃった? ごめんね、乱暴で……怪我、痛くない?」

 

 目を覚ますと同時に謝罪をしてきたフェレットに対し、優しく声を掛けるなのは。

 

 「怪我は平気です……もう殆ど治ってるから」

 

 小さな身体を震わせて、自ら包帯を解いてくフェレット。怪我が治っているという事を見せる為なのだろうが、随分と器用なものだ。

 

 「ほんとだ……怪我の傷が殆ど消えてる……凄い」

 

 包帯を解いたフェレットを抱き上げ、所々怪我をしていたであろう箇所を確かめていくなのは。

 

 「助けてくれたお陰で、残ってる魔力を治療に回せました」

 「よく分かんないけど、そうなんだ……ね、自己紹介して良い?」

 「あ、うん」

 「えへん。私、高町なのは。小学3年生。家族とか仲良しの友達はなのはって呼ぶよ」

 「僕はユーノ・スクライア。スクライアは部族名だからユーノが名前です」

 「ユーノ君か……可愛い名前だね」

 

 そのなのはの言葉に照れたのか、下を向くユーノ。

 

 『ユーノがヒトの男の子だって気付いてないみたいだな……』

 『その様だ』

 

 2人の自己紹介を見て、此方も同じ様にして自身の名前を口にする。

 

 「僕の名前は上条雄介。雄介で良いよ」

 「保和歩栄(ホワブロン)だ。ブロンで良い」

 「そう言えば志蓮君は?」

 「彼奴なら無事だと思うよ」

 「そっか」

 

 なんと淡白で、おざなりであり、冷たい会話なのだろうか。自分で言っておきながらも、その言葉に、自分がどれだけは相手に対して興味が無いのかというものが感じられた。

 

 「すみません……貴女を……」

 「なのはだよ」

 

 謝るユーノを抱き上げながらも、もう一度自身の名前を言うなのは。

 

 「なのはさんを、皆さんを巻き込んでしまいました……」

 「あ、その……」

 

 そのユーノの謝罪の言葉に対し、なのはは戸惑いながらも笑顔で応える。

 

 「たぶん……私、平気。あ、そうだ。ユーノ君、怪我をしてるんだし、此処じゃ落ち着かないよね……取り敢えず、私の家に行きましょう。後の事はそれから……ね……?」

 

 なのはの言ったその言葉に、ユーノは頷く。

 

 

 

 

 高町家。

 

 静かに足を進め、なのはの家の近くへと歩いて行く。

 

 だが其処には、待ち構えていたのか、見覚えのある青年の姿があった。

 

 「おかえり……」

 

 その青年の言葉に、ビクッと竦ませ小さな身体をより小さくするなのは。彼女の足はピクピクと震えてしまっている。

 

 「お、お兄ちゃん……」

 

 なのはの兄の“高町恭也”さんだ。自爆をしたり、突拍子も無く何かを始めようと言い出したり、強制的に自害させられたりしそうな声をしている青年だ。スラリとしている上に、体格も良い。

 

 「こんな時間に何処にお出掛けだ?」

 

 なのはが出て行くところを見かけたのか、彼女の事を相当に心配していたみたいだ。

 

 「あの、その……えっと、えっと…………」

 「すみません、僕達が連れだして」

 「ほう……」

 

 応えに窮しているなのはに対し、雄介は助け舟を出そうとするが失敗してしまう。

 

 恭也さんの目が細く、鋭くなる。気の所為かもしれないが、少なからず殺気も感じられ、冷や汗が流れそうになってしまう。

 

 「あら、可愛い~」

 「お、お姉ちゃん?」

 

 そんな重い空気の中に、救いの手が差し出される。

 

 “高町美由希”さん。なのはのお姉さんだ。眼鏡を掛けていて、三つ編みをしている。

 

 「あら……なんか元気無いわね。貴女達はこの子の事が心配で様子を見に行ったのね……」

 「ええと、あの……」

 「気持ちはわからんでもないが、だからと言って内緒でというのは戴けない」

 「まぁまぁ、良いじゃない……こうして無事に戻って来てるんだし。それに、皆は良い子だから、もうこんな事しないもんね?」

 

 恭也さんに見えない場所で俺達に向かってウインクをし、フォローを入れてくれる美由希さん。後で、何かお礼をした方が良いかもしれない。

 

 「うん。その……お兄ちゃん、内緒で出掛けて、心配かけてごめんなさい」

 「「すみませんでした」」

 

 誠意が、申し訳なかったという反省の意が伝わったのか此方の謝罪を受け入れて許してくれる恭也さん。

 

 だが、精神年齢では上である此方が、年下に深々と頭を下げて謝るというのには少しばかり抵抗があった。それでも、俺達に対して心配をしてくれていたのだから、純粋に感謝をしておいた方が良いだろう。

 

 「はい、これで解決。でも可愛い動物ね~。母さんなんか……この子、可愛過ぎて悶絶しちゃうんじゃない?」

 「その可能性は否定できんな」

 

 美由希さんの言葉に、恭也さんは苦笑しながら返答する。

 

 俺達にも、なのはの母親である“高町桃子”さんの姿を、ユーノを見て悶絶している姿が簡単に想像出来て、笑ってしまう。

 

 「取り敢えず、お前達の家に、親御さんに連絡は入れるからな」

 

 楽しい気持ちで解散をする事が出来るかと思いきや、そんな事は無かった。

 

 まあ、自宅に待機している親も、自分の分身が変身をした姿なのだから問題は無いのだが。

 

 

 

 

 「なのは……昨夜の話、聞いた?」

 

 元気良く挨拶をするなのはに対し、アリサは何かを心配している様だ。

 

 「昨日、行った病院で車の事故か何かあったらしくて、壁が壊れちゃったんだって」

 「あのフェレットが無事がどうか心配で……」

 「うん……」

 

 アリサ同様にすずかも心配をしている様で、とても沈鬱な表情をする2人に対し、なのはは戸惑いながらも応える。

 

 「ええとね……その件は、その…………」

 「そっか。無事でなのはん家に居るんだ。で、あんた達は知ってた訳?」

 

 なのはが説明をするなかでタイミング良くなのか、悪かったのか俺と雄介は教室の中に入る。ランドセルを置き終えた俺達に、アリサは質問をしてきた。

 

 「俺はランニングをしてて、丁度、偶然にな……」

 「なのはが家を出て行くのが窓から見えてな……追いかけてみたら」

 

 昨夜、寝る前に念話を使用して、2人で用意をしておいたものを口に出す。

 そんな苦し紛れな回答に対し、アリサ達は何の質問を挟んで来る事も無く、話は進んでいく。

 

 「でも、凄い偶然だったね。たまたま逃げ出してたあの子と、道でばったり会うなんて」

 「「ねえ」」

 

 笑い合っているアリサとすずかに対し、なのははアハハと苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。

 

 「(嘘は吐いてない……嘘は吐いてない……。ちょっと、ちょこっと真実を暈しただけ…………)」

 

 そんななのはの様子を、彼女等2人は不思議そうに見つめていた。

 

 「そ、それでね……あの子、飼いフェレットじゃないみたいで……当分の間、家で預かる事になったよ」

 「そうなんだ」

 「名前付けてあげなきゃ。もう決めてる?」

 「うん。ユーノ君って名前」

 「ユーノ君……?」

 「うん。ユーノ君」

 「へえ」

 

 そう話をしていると、チャイムが鳴り響く。

 

 立って話をしていた生徒達、教室の外に出ていた生徒達は戻って来て、それぞれの席へと座る。

 

 暫くすると教師が来て、授業が開始された。

 

 

 

 

 「この前お話した通り、漢字は偏と旁で出来ています。それを組み合わせる事で漢字は、1つの文字でもいろいろな意味を持っているのです。それは、偏には偏の意味、旁には旁の意味があるからです。例えば…………」

 

 太陽の陽光が窓から射し込んでくる教室の中で、教師は漢字について説明をしている。

 

 俺は窓際の席なので窓から外の景色をチラチラと見ながら、黒板に書かれている事を模写していく。だが、先生の話は耳に入っては来ない。

 と言うよりも、聞いていないのだ。前世で学んで、覚えている事なので聴く必要性が一切感じられないのだから。

 

 『ジュエルシードは、僕等の世界の古代遺産なんだ』

 『ユーノか……』

 『古代遺産って……オーバーテクノロジーだとか、オーパーツだとかみたいな?』

 『そんな感じです』

 

 突然のユーノからの念話にハッとしてしまうが、それ程驚く事は無く、直ぐに平常心に戻って取り繕う。

 

 授業中ではあるのだが、マルチタスクによる処理が出来るので、しっかりと聞いている体を装って念話に集中出来るのだから問題は無い。まあ、当てられた時の為に聞いておくべきだろうが。

 

 だが、なのはの方は魔法を手に入れて直ぐとうのもあり、慣れていない様で、しっかりと授業を聞く事が出来ずにアタフタとしている様に見える。

 

 『本来は、手にした者の願いを叶える魔法の石なんだけど……力の発現が不安定で……。昨夜みたいに暴走して、使用者を求めて周囲に危害を加える場合もあるし…………』

 

 ユーノのその言葉を聞いて、なのはは昨夜に相対した思念体の事を思い出す。

 

 常に身体は流動していて、影の様に見え、紅い瞳に、大きく裂けた口。そして、その身体から放たれる無数の触手。その触手による攻撃は、コンクリートを簡単に粉々にしてしまう程の力を持っているのだ。

 

 「(確かに、あれは危険だな……。前世のアニメで見たものよりも遥かに強力になっていたし……)」

 『たまたま見付けた動物や人が、間違って使用してしまって……それを取り込んで暴走する事もある』

 『そんな危ないものが、何で家の御近所に?』

 『僕の所為なんだ……』

 

 シュンとしたトーンの声を出して、念話をしてくるユーノ。

 

 この街にジュエルシードが落ちて来た事に責任を感じているのだろう。

 

 『全部私のせいだ! ハハハハハッ! 全部私のせいだ!』

 『黙れ、雄介……』

 

 そんな俺達の茶番を聞き流し、話を続けていくユーノ。

 

 ユーノはチャンネルを絞っていないからか志蓮にも聞こえてはいるだろうが、口を挟んで来る様子は無い。

 

 『僕は故郷で、遺跡発掘を仕事にしているんだ。そしてある日、古い遺跡の中であれを発見して、調査団に依頼して、保管して貰ったんだけど……。運んでいた時空艦船は事故か、何らかの人為的災害にあってしまって。21個のジュエルシードは、この世界に散らばってしまった……。今まで見付けられたのは、昨夜のを含めて2つ』

 『あと19個か。あれ……? でもちょっと待って……、話を聞く限りでは、ジュエルシードはこの世界に散らばっちゃったのって、別に全然、ユーノ君の所為なんかじゃ無いんじゃ』

 『だけど、あれを見付けてしまったのは僕だから……。全部見付けて、あるべき場所に返さないと駄目だから……』

 『なんとなく、なんとなくだけど……。ユーノ君の気持ち、分かるかもしれない。真面目なんだね、ユーノ君は』

 

 強い自責の念、そして真面目さがユーノを動かしているのだろうか。だからこそ独りで、何も知らないこの世界に来て。暴走した思念体を単独で封印しようとしていたのだろう。

 

 だが、やはり1人で出来る事には限界が存在している。限られているのだ。そしてその事に気が付き、この世界の人に、魔法を使える素質を持っている人に、念話で協力を求めたのだろう。

 

 『ジュエルシードを発見したという事から考えるとお前の行動も原因の1つなのかもしれない。……だけど、それだけだ。事故が起きてしまったのは、その船の整備を怠っていた所為。本当に人為的災害なら、それを起こした奴が悪い。それだけだろ。別に、お前が気にする事なんて無いさ……。あまり自分を責めるなよ』

 『そうだよ(便乗)。気にするな、なんて言われても無理かもしれない。仕方が無いと理解はしているだろうけど、義務と責任は全くの別物だゾ』

 

 フォローと言える程のフォローなんていうのは出来はしないだろう。だが、ユーノの話を聞いて、想った事は直ぐに念話で吐き出してしまう。

 

 『ありがとう、皆……。昨夜は巻き込んじゃって、助けて貰って本当に申し訳なかったけど。この後は僕の魔力が戻るまでの間、ほんの少し休ませて貰いたいだけなんだ。……1週間……いや、5日もあれば力は戻るからそれまで――』

 『戻ったらどうするの?』

 

 そんなユーノの言葉を遮る様にして、なのはは彼に対して静かに、そして優しく問いかける。

 

 『また1人で……ジュエルシードを探しに戻るよ……』

 『それはダーメ』

 『だ、駄目って……』

 『私、学校と塾の時間は駄目だけど……それ以外の時間なら手伝えるから』

 『そうだぞ、1人で抱え込むなよ』

 『だけど、昨日みたいに危ない事だってあるんだよ』

 『それは此方のセリフだよ』

 

 なのはと雄介の言葉に、それでもと言うユーノ。

 

 だが、俺からすると、ユーノ方が危険な目に合ってしまうと思うとハラハラとしてしまうのだ。見捨てておけないのだ。

 

 『もう知り合っちゃたし、話も聞いちゃったもの……放っとけ無いよ。それに昨日みたいな事が御近所で度々あったりしたら、皆さんの御迷惑になっちゃうし……ね? ユーノ君、独りぼっちで助けてくれる人、居ないでしょう? 独りぼっちは寂しいもん……私にも御手伝いさせて』

 

 昔を思い出すかの様に目を細くするなのは。傍から見ると何の変哲も無い様に見える。だが、アリサとすずかは、そんななのはの変化に気が付いているのか、彼女の方を見て首を傾げている。

 

 『独りぼっちは、寂しいもんな……。いいよ、一緒にいてやるよ……』

 『だから黙っていろ雄介。』

 『困っている人が居て、助けてあげられる力が自分にあるなら、そのときは迷っちゃいけないって……。これ、家のお父さんの教え。ユーノ君は困ってて、私はユーノ君を助けてあげられるんだよね……魔法の力で』

 『……うん』

 『私、ちゃんと魔法使いになれるか、あんまり自信無いんだけど……』

 『なのははもう魔法使いだよ。たぶん、僕なんかよりずっと才能のある……』

 『そうなの? 自分では良く分からないんだけど。取り敢えずいろいろ教えて……。私、頑張るから』

 『さて、もうすぐ家に着くよ。取り敢えず一緒におやつ食べようか』

 『あ、うん……。ありがとう』

 『今日のおやつは何かな?』

 

 念話で会話をしながら過ごしているといつの間にか時間は経過していて、あっという間に下校の時間帯だ。

 

 アリサとすずかは「お稽古があるから……」と言って、先に帰っていた。

 

 そして俺達は、今日という日はこれと言って何も無いので、なのはの家に御邪魔する事になったのだ。

 

 学校の敷地から出て、ビル街を歩く。

 

 サラリーマンなどが歩いていて、携帯ショップを始めとしたいろいろな店からは沢山の機械が聞こえている。

 

 『そう言えば、雄介とブロン……。君達の力の事なんだけど……』

 『あ! それ、私も気になってた』

 

 ユーノの質問に、なのはも同調をする。

 

 『俺の力は、ユーノ……お前も気付いているかもしれないけど、魔法だ。で、その魔法の名前は滅竜魔法って言うんだ……』

 『滅龍魔法!? それって確か、“ロストマジック”だった様な……。どうやってそんな魔法を?』

 

 『企業秘密だ』

 

 『そっか……で、ブロンの方なんだけど』

 

 雄介は焦る事も無く、言葉をスラスラと述べていくが、俺の力の説明は少し気が引けてしまう。下手に説明をすると大変な事になってしまうだろう。そして、少ししかしないのであれば、それもまた上手く伝わらないだろう。

 

 「(聖王(かのじょ)の血を引いたクローンであるという事は隠しておいた方が良いだろう……。サイヤ人であるという事の方はどうすべきか)」

 『話したくなかったら、別に良いんだけど……』

 『話したくない訳じゃないんだけど、どう話せば良いのか……気って言っても理解出来るか?』

 『『気?』』

 『魔法とはまた別の力で、生命エネルギーの様なものなのかな……。魔法とは違って、此方は修行さえすれば誰にでも扱う事が、使う事が出来る様になるし……!!!』

 「「!!!」」

 『!!!』

 

 活気に溢れかえっている街並みを歩きながら、念話を使用して己の力について説明をしようとしていると、突然大きな魔力の波動を感じた。

 

 『ユーノ君、今のって?』

 『新しいジュエルシードが発動している。すぐ近く』

 『どうすれば?』

 

 決心をしたのは良いが、突然の事に慌ててしまっているなのはに、雄介は落ち着いて喋る。

 

 『魔力の発生源は神社の方だ……行こう。魔力を追って現地集合で良いか、ユーノ?』

 『うん、手伝って』

 

 

 

 

 「ユーノ君!」

 

 神社の下の方で合流を果たし、急いで現場へと向かう。

 

 だが、神社は眼と鼻の先だと言える場所にも関わらず、目の前には、その神社へと続くとても長い階段が存在していた。

 

 「どうしよう……」

 「なのは、乗れ」

 

 なのはを背中に乗せて、階段を駆け上がっていく。それなりのスピードを出しているからか、景色は引っ張られているかの様にしてグングンと目まぐるしく変化していく。

 

 本来ならば、登り切るのに5分はかかるであろうところを2分で登り終えた。

 

 雄介は方にユーノを乗せ、魔力で身体能力を強化したのか10秒とかからずに追い付いてきた。

 

 「なのは、レイジングハートを」

 「……うん」

 

 スピードを出していたからか、なのはは頭をフラフラとしていたが、ユーノの指示で、首に掛けてあるレイジングハートを握り締める。

 

 「■■■■■■■■■■■■!!!!」

 

 動物の大きな声が、唸り声が聞こえてくる。その声は地を這いずっているかの様に低く、轟いている。

 

 「現住生物を取り込んでいる」

 

 そのユーノの言葉を聞いて、よくよく目の前の存在に目を向けてみる。

 

 瞳は複数個あるものの、どこか見覚えのある特徴を兼ね備えている。日常生活のなかで、よく見かける動物だ。

 

 「犬か……」

 「わんわんお」

 「黙っていろ雄介」

 

 そのジュエルシードを取り込んでしまい暴走をしている犬は大きな犬歯を、牙を剥き出しにして、唸りをあげている。思念体の時と同様に瞳は紅く、ギョロリと此方を見据えてきている。身体の大きさは俺達の2倍程だろうか。

 

 「実体がある分、手強くなってる」

 「ふむ……。なのは、雄介。今回は2人で何とかしろ」

 「ふぇえええ!?」

 「何でだよ、ブロン!?」

 「俺が手伝えない状況だって起こり得る。例えば、複数の場所での発動時だ。お前ら、俺が居ないと何も出来ないんか?」

 「分かった」

 

 俺の言葉に、なのはは頷く。そして彼女のその静かで決意に満ちた返答に、此方も頷き返す。

 

 「(っべー……。したくないからって押し付けてしまった)」

 

 なのはに頷き返しながらも、俺は少し自身を責めてしまう。

 

 その気持を知ってか知らずなのかなのはは前に進み、雄介の方も渋々といった感じで前に出る。

 

 「なのは、レイジングハートの起動を」

 「ふぇ!? 起動って、何だっけ?」

 

 ユーノのその言葉に「何それ、美味しいの?」とでも聞きたそうな顔をするなのは。

 その様子を見て俺は「あちゃ~」といった感じに、思わず手を顔に当ててしまう。

 そうしている間に、犬の姿をした暴走体は突っ込んで来ている。

 

 「雄介、起動の邪魔をさせるな」

 「分かってるよ」

 

 雄介はその返事をすると同時に、炎を纏わせた拳で暴走体を殴りつける。

 

 その攻撃が当たった暴走体は、その大きな身体に似つかわしくない悲鳴をキャンキャンとあげながら飛び跳ねる。

 

 「我は使命を、から始まる起動パスワードを」

 「あんな長いの覚えてないよ~」

 「もう1回言うから、繰り返して」

 「分かった」

 

 だが其処に、雄介が殴った事で飛び跳ねた暴走体は標的を変え、なのはとユーノの方へと飛び掛かる。

 

 「しまった!」

 「きゃあああ!!!」

 

 なのはが悲鳴をあげると同時に、胸元にあるレイジングハートが光りだす。

 

 「レイジング……ハート……?」

 【Stand by ready set up】

 

 なのはの身体は光に包まれ、彼女は杖に変形をしたレイジングハートを手にする。

 放たれている光は壁となって、跳び掛ってきた暴走体を弾き飛ばした。

 

 その眩い光を、忌まわしそうに睨みつけている暴走体。

 

 「(パスワードも無しで、レイジングハートを起動させた!?)」

 

 レイジングハートが自律的にした事なのか。なのはの才能に反応をして、起動をしたのか。

 ユーノは、その事に驚きを隠せずに居た。

 

 どちらにしても、パスワード無しでの起動は、並大抵の魔導師では不可能だと言って良いだろう。

 況してや魔法と出会って1日ちょっとしか経過をしていない筈の少女が、それを行なったのだから。

 

 「なのは、防護服を」

 「え!?」

 

 それに対し暴走体はなのはの事を脅威だとみなしたのか、彼女へと向かい勢い良く跳び掛かる。

 

 【Barrier jacket】

 

 なのはの身体を包んでいた光は、より輝き、そして消える。その後には、白を基調としたバリアジャケットを着用したなのはの姿があった。

 

 暴走体は、そのまま突っ込んで行くが、なのはの周りには魔力で構成された防護フィールドが存在をしていて、ドームの様にして彼女を包む。それは盾となり、暴走体は一旦距離を取る様に、後ろへと跳ぶ。

 

 一息を吐く暇も無く、暴走体はなのはに向かって、鳥居の上から勢い良く跳び掛かる。

 

 【Protective condition all green】

 

 それもまた、発生した防護フィールドによって攻撃は見事に防がれ、仕掛けてきた暴走体を弾き飛ばす。

 

 「(あの衝撃をノーダメージで……。やっぱりだ。この娘、凄い才能を持ってる)」

 「痛た……って程痛くは無いかな。ええと、封印ってのをすれば良いんだよね? レイジングハート、お願いね」

 【All right. Sealing mode set up】

 

 魔力で構築された光の糸が暴走体を絡め取って、動きを止めていく。そして、その暴走体の額には、ⅩⅥとうローマ数字が浮かび上がっていた。

 

 【Stand by ready】

 「リリカル・マジカル……ジュエルシード、シリアルⅩⅥ……封印!!」

 【Sealing】

 

 縛り上げられる事で動きを封じられた暴走体は大きな悲鳴を上げると同時に、そのまま消滅した。

 

 そして消えた暴走体からは、取り込まれていた現住生物である犬と青い菱型の宝石であるジュエルシードに分離される。

 

 封印が完了した事で、ジュエルシードはレイジングハートに吸い込まれる様にして収納された。

 

 【Receipt number ⅩⅥ】

 「ふう……。これで良いのかな?」

 「うん、これ以上に無い位に」

 「上から目線ですまないが、初めてにしては良いんじゃないのかな」

 「終わったあぁ……」

 

 状況が終了した事に安堵をし、ヘナヘナと地面に座り込んでしまう雄介。

 

 なのはは肩で息をしているが、倒れていないのだから十分に凄いだろう。

 

 そして、其処に奴が来た。

 

 「ジュエルシードの暴走体は何処だああああああああああぁぁ!!!」

 「よ、志蓮」

 「志蓮君?」

 「誰が呼んだんだよ」

 「悪いな、俺が呼んだんだ。戦力は多いに越した事は無いからな」

 

 志蓮の姿を見てうんざりとしているなのはと雄介に、俺は正直に応える。

 

 なのはの方は仕方が無いというのは理解が出来る。日頃の態度が態度なのだから、これは当然の反応だろう。

 

 だが、雄介の方は知っているだろうにという言うのは野暮なのだろうか。

 

 「ちっくしょおおお……出遅れたああああぁぁ!!」

 

 志蓮の言動が演技なのだと知っているからか、どうしても邪険に扱うという事が出来ないのだ。

 

 なのはに雄介、ユーノと志蓮の3人と1匹の様子を見て、思わず吹き出しそうになってしまったのは内緒にしておこう。




やはり、上手く書けない。

しっかりと場面場面を想像できていないのか、知識が足りないのか。

描写をしっかりとしようと思うけど説明文のようになったり、表現を変えようと努力をするが結局同じ言葉を使ってしまったり。

取り敢えず書いていくしか無いのだが、書くのならもっとしっかりと書きたいものだ。
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