魔法少女リリカルなのはZ   作:りおんざーど

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プールで封印 更なる高みへ

 「そう。集中して、心のなかにイメージを抱いて……」

 「う~ん……」

 「そのイメージを手にした杖に……レイジングハートに渡して」

 

 此処は“海鳴臨海公園”。

 

 早朝だからなのか人が居らず、とても静かなものだ。

 

 目を瞑りながら、ユーノによる指示に従い、言葉通りにイメージをしようとするなのは。

 そして、身体のなかにある暖かいもの――魔力――を感じ取り、それを杖であるレイジングハートへと伝達していく。

 

 「うん。レイジングハート、お願い」

 【Stand by ready】

 「イメージに魔力を込めて、呪文と共に杖の先から一気に発動」

 「イメージを魔力に……。リリカル・マジカル、ええと……捕獲魔法発動!」

 

 なのはが唱えたその呪文に従うかの様にして、レイジングハートの先端部が強く光り始め、大きな爆発音が鳴る。

 

 「やった!? 成功?」

 「いや、してない!!」

 

 その慌てているユーノの声に驚いて、目を見開くなのは。

 

 「ふぇ? ああああ!!」

 「なのは? なのは?」

 「ううぅん……びっくした~」

 

 目を開いた先には、魔法の発動に失敗した事により大きく抉れている地面があった。

 

 「大丈夫?」

 「うん、なんとか。なかなか上手くいかないね」

 「いや。でも凄いよ。たった数日でここ迄出来る様になってるんだから」

 

 そんなユーノによる励ましの言葉に対し、実感を感じていないのか、なのはは少しばかり首を傾げる。

 

 「う~ん、そうなのかな? それにしても凄いよね……あの3人」

 「そうだね……」

 

 捕獲魔法の練習を一旦終了して、少し離れた場所で繰り広げられている彼等の戦闘訓練に目を向けるなのはとユーノ。

 

 

 

 

 「“鉄竜棍”!!」

 「はあ!!」

 「遅い……遅いよ」

 

 次々と雄介と志蓮から繰り出されてくる攻撃を、スルリスルリといった感じで俺は軽々と避けていく。

 

 彼等の攻撃は拳銃から放たれる銃弾と同等のスピードなのだが、戦闘力の違い、大きな差からか、とても遅く、スローモーションの様に見え、感じてしまうのだ。その為に、避けるのも、防御するのも、反撃するのも簡単に出来てしまう。

 

 「な! クソッ……これならああ!!」

 「どうだ!!」

 

 雄介の腕はノコギリ状の鉄に変化している。

 志蓮の手には、何かが握られている。何かというのは、目視では確認をする事が出来ないのだ。何かしらの魔法などを使用しているのか、その握っているものの全容を把握する事がなかなか出来ない。

 

 「(だが、まあ……“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”であり、“風王結界(インビジブル・エア)”だろうな……)」

 

 振り回される武器や腕による攻撃を、身体の重心をズラし最小限の動きで回避していく。

 

 もし第三者が見ているのだとしたら、俺の姿は立体映像の様になっていて、2人の少年は無駄に動いているだけの様に見えてしまっているだろう。

 

 そして、相手である雄介と志蓮側からすると、攻撃をしても手応えが無い。それどころか、すり抜けていっている様な感覚を味わっている事だろう。

 

 だが始めてからものの数分程度しか経過していない筈なのだが、彼等による攻撃は連携時の動きは格段に速やかに、よりスムーズになっていき、研ぎ澄まされ、徐々に隙が減っていっている。

 

 余裕だと思って一瞬でも余所見をすると、攻撃が当てられてしまうだろう。

 

 「(ここまでで良いかな)。……さて、休憩にしようか」

 「「はああぁ……」」

 

 雄介と志蓮は、同時にして大きな溜め息を吐く。それと同じタイミングで、2人はヘナヘナといった感じに脱力し、地面へと倒れてしまう。

 

 「なかなか良くなってるよ。攻撃のキレもスピードも速く、強くなってるし」

 「……よく言うよ、掠りもしてないのに」

 「全くだ」

 

 愚痴を溢す2人に、なのはとユーノが近付いて来る。

 

 「凄かったよ、3人共」

 「ありがとな。お前達もやるか? その気になれば、此奴等よりも強くなれるかもよ」

 「私にはあんなの無理だよ。目で追うのがやっとだし……」

 「僕の方も遠慮しておこうかな」

 

 余りにも大きな力の、レベルの差に対して笑う事しか出来ないなのは。ユーノの方もただただ、彼等の動きを視界に入れるだけで精一杯だったのだ。

 

 なのはから差し出されたタオルを受け取り、首などに流れている汗を拭いていく。このタオルは予め俺が持って来ていて、近くのベンチに置いておいたものだ。

 

 「さてと、休憩がてらにだが気について説明しようかな」

 「あ、それ気になってたんだ」

 「私も」

 

 初めてジュエルシードを封印した日の翌日から数日間ではあるが、今日の今日までずっと戦闘訓練。魔法の練習しかしてこなかったのだ。

 

 気についての説明をするにも、機会がなかなかなかったのだから。

 

 「気……というのは生命エネルギーの様なものだ。魔法とは違ってリンカーコアが無くても、リンカーコアを使う必要が全くない。だから、修行さえすれば誰にでも使える様になる

 

 説明を始めるとなのはとユーノ、そして雄介は興味津々だとでもいった感じの表情をし、聴き始める。

 志蓮の方はというと、興味が無いといった風なポーズをとってはいるが、意識は此方に向いている様に見える。

 

 「そして……気が此れだ」

 

 言葉による説明だけでは完全に理解をするというのは難しいものだ。だから彼等に見える様にして、俺は実際に掌に気弾をつくりだす。

 

 「使い様によっては身体能力の強化をしたり、空を自由に飛んだり、気弾……またはエネルギー弾をつくりだす事が出来る。その気弾が此れだ」

 「質問があるんだけど……」

 「構わないよ、ユーノ」

 

 小さな前片足を上に上げて、何かを聞きたそうに、知りたそうな感じを出しているユーノ。

 知りたいという欲求というのは、知的好奇心というものはとても強く、強力であり、大事なものである。時には自身に対して良い方向へ、時には自身に対して悪い方向へと働く場合もある。そして悪い方向へと働く場合、それは大概は恥をかくだけで済むのだが、大怪我をしたり、破滅してしまったりと、取り返しの付かない事になるケースもある。だが今回の、このケースは良い方向へと働くであろう事であり、此れを満たす事でそれは知識となり、知恵となり、今後に起きる何かしたに役立つかもしれない。

 

 「そんなに便利なものなのにどうして知られていなくて、使われていないのかな?」

 「知られていない理由は分からないな。存在していると知っていても使い方が理解出来ないから、同仕様も無くて広がらなかったのかもしれないね。それに便利だという印象が強いけど、とてもこわい力なんだ」

 「こわい?」

 「ああ。この力は簡単にものを壊す事が出来る。人を……簡単に殺す事が出来るんだ」

 

 説明をしていると、思わず拳を強く握り締めてしまう。頭の中には、2人の男の子の姿が。転生者だと思しき少年達を、ヒトを殺してしまった事を、命を奪ってしまった事を思い出してしまう。

 

 「大丈夫?」

 

 此方へと顔を覗かせるかたちで、言葉をかけてくくるなのは。意識はしていなかったのだが、苦しげにしていたのか、顔を酷く歪めてしまっていた様だ。

 

 「ああ……大丈夫だよ。ありがとう」

 「でも、魔法も同じだよ」

 

 少しマシになったのを見計らい、ユーノは話を続けていく。

 

 握りしめていた拳を解き、ユーノの言葉に対し、否定をする。

 

 「気っていうのは、魔法とは違うんだ。非殺傷設定なんていう都合の良いものなんて無い。常に殺傷設定なんだよ……」

 

 話をしていると、なのはの持って来ている携帯電話から設定したであろうアラームの音が、コールが鳴り響く。

 

 「朝御飯の時間だ」

 「じゃあ、今朝は此処までって事で」

 「有り難うレイジングハート。また、後でね」

 【Good bye】

 

 なのはの言葉と同時にレイジングハートは杖の状態から、宝石であるスタンバイモードへと戻り、宙から彼女の手の平へとゆっくり落ちていく。

 

 「はあ……。攻撃とか防御とかの魔法はコツを掴んできたんだけどな」

 「なのははエネルギー放出系が得意みたいだからね。元の魔力が大きい分、収束とか圧縮とか微妙なコントロールが苦手なんだよ」

 「その……それは私が力任せで大雑把な性格という事では」

 「えっ? いや、そうじゃないよ……」

 

 先程地面を大きく穿った失敗を省みて、なのはが大きな溜め息を吐く。

 

 それに対し、ユーノの解釈を聞いてのなのはの返事を聞いて、彼はしまったという感じで少しばかり狼狽えてしまう。

 

 「圧縮! 圧縮! 魔力を圧縮! なんて言いながらしてみたら上手くいくんじゃないかな」

 「にゃはは」

 

 そんな雄介のアドバイスに対して、志蓮を除いた俺達は苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。

 

 「でも、取り敢えずは大丈夫。少しは魔力が戻って来たから……捕獲とか結界の魔法は、僕がサポート出来るし。というか、僕がしないと……。皆出来ないみたいだし」

 

 使う事が出来るんだと言ってしまうのは簡単だ。だがそれを言ってしまうと、ユーノに役目は無くなってしまうかもしれない――要らない子扱いを受けてしまうかもしれないのだ。それを考えてしまうと、使えるという事を口にするのが憚られる。気が引けてしまう。

 

 「だけど、ジュエルシードの封印は僕の魔力では……」

 「大丈夫……それは私がバッチリやるから。大っきな魔力で攻撃と防御が得意な私が封印……補助魔法の得意なユーノ君は私の魔法の先生で、現場では封印のサポート。相性バッチリだよ」

 

 ユーノの自信無さ気な言葉に、なのはは彼を安心させる様に言う。

 

 「それに、俺達も居るし……な?」

 

 彼女の言葉に同意をし、志蓮に向かって念を押す雄介。

 

 「当たり前だ、嫁を守るのは当然だろ」

 

 思い出したかの様に慌てながら応える……そんな志蓮の様子を見て、俺は思わず吹き出してしまいそうになった。

 

 「だから、大丈夫。皆で一緒なら、ね?」

 「さ、帰ろう。今日も元気に朝御飯だ」

 「「朝御飯食べて、元気もーりもり!」」

 「うん」

 「それじゃ、またね」

 

 手を振りながら、それぞれの家の方向へと足を向けていく。

 

 

 

 

 

 なのは達の姿が消え、歩いているが、まだ早い時間だからなのか人一人すらも歩いてはいない。

 

 「1人での修行は夜しか出来なくなったけど、相手が居るというのは凄いな。戦闘力ではかなりの差がある筈なのに……危ないと思ってしまう時がよくあるし……」

 

 先程の公園での組手でヒヤリと流れた汗、当たると思い回避を選択した時の事を思い出す。

 

 「(相手はどうしようかな……。この世界で知っている人達じゃ、多分だけど相手にならないだろうし。だからと言って、他の世界の住人では強すぎるキャラが相手だと。ボコボコにされるだけだろうし)」

 

 自身を徹底的に痛めつけ、回復をさせていく事で大幅な戦闘力の上昇を図ってきた。体内に存在しているナノマシンのお陰で無茶をする事が出来たが、このままではいずれ限界が訪れてくるだろう。

 戦闘力の壁。

 寿命の壁。

 才能の壁。

 超サイヤ人に覚醒をしたといっても、そういったものは必ず来るであろうものなのだから。

 

 「(う~ん……。やっぱサイヤ人にはサイヤ人が一番かな)」

 

 

 

 

 

 脳内では、山吹色の道着を着ている人物が浮かび上がってくる。ツンツンとした特徴的な髪型をした英雄的人物。

 

 「お願いします」

 

 両手を合わせ、合掌しながらお辞儀をする。目の前の彼は、構えを取る。

 

 「それじゃあ、始めっか」

 

 お互いに、それぞれの構えを取り、一瞬だけではあるが静寂が訪れる。

 だが、それは一瞬だ。文字通り、一瞬なのだ。

 

 「はあああぁぁぁぁっ!!!」

 「だりゃあああああぁぁぁっ!!!」

 

 お互いの拳が、腕が、脚がぶつかり合う。

 

 その速さは、目で追う事が出来ない程のものではあるのは勿論、強さは、威力の程は山を、星をも簡単に削り取り、割り、砕き、壊してしまう程のものだ。

 

 相手の握拳が俺の顔を強く殴りつけてくる。

 

 お返しだと言わんばかりに殴り返し、蹴りを入れていく。

 

 それぞれが殴り蹴り合う度に、大きな衝撃が疾走り抜けていく。

 

 「お前え、強えな……。オラ、ワクワクしてきたぞ」

 

 記憶に残っている、彼のお決まりのセリフが発せられる。

 

 俺の顔はニヤけてしまう。

 それは実際に、その知っている言葉を聞く事が出来たからか。

 サイヤ人の血の所為か、実力の近い者同士での、強者との渡り合いが、闘い合いが愉しくて、此方も彼同様ワクワクしてきたからなのか。

 

 「俺も同じだ。……ワクワクしてきた」

 「それじゃ、第2ラウンド始めっか」

 

 その言葉と共に、彼の姿が目の前から一瞬にして消える。

 

 「グフっ!」

 

 腹の中心から体全体に向けて、強烈な衝撃と痛みが、攻撃が入り、広がっていく。腹を押さえながら、俺は数歩後ろに後退りをしてしまう。脚はガクガクと震え、今にも倒れてしまいそうだ。

 

 「クソったれ」

 

 思わず、大きく舌打ちをしてしまう。

 彼の動きは速く、複数の残像が影の様に見え、現れては消えていく。

 

 「(まるで動きが見えない……。目で追うのでは無く、気で追わないと。感じ取るんだ……気を……)」

 

 目を瞑り、意識を研ぎ澄ませていく。彼の気が高速で動き、俺の身体を殴り付けてくる。

 

 「がああぁっ!」

 

 相手の動きを、気を感じ取る事は出来た。だが、それだけだ。

 感じ取るだけで全く対応をする事が出来ていない。身体が対応すべきそのスピードに追い付いていない、追いつく事が出来ていないのだ。

 

 だが、大きく開いたその瞳には、赤いオーラの様なものが映った様に思えた。独特の音を鳴らしながら、残像を残しつつ、高速で動いている。

 

 「(あれは“界王拳”か……? どれぐらいの倍数なんだ? いや、今はこの状況をどう突破するかどうかを考えるべきだな)」

 

 超サイヤ人(スーパーサイヤジン)は使わない様にしている。

 当然だろう。もし使ってしまうと、それは修行では無くなってしまうと思うからだ。

 

 超サイヤ人(スーパーサイヤジン)は切り札の様なもの。今の相手の戦闘力ならば、簡単に捻り潰してしまう事も出来る程の戦闘力の倍加をさせるものなのだ。

 

 「(そこか……!)」

 

 動いている彼の気を追いかけながら、彼の行動を予測し、読んでみる。

 後ろへと振り向き、気を弾丸に見立てた“気合砲”で彼を強く吹き飛ばす。

 

 「よし」

 

 成功した事に、俺は思わずグッとガッツポーズを取る。

 

 吹き飛ばされた彼は直ぐに体勢を整え、再び高速で動き回る。

 

 「だけど……」

 

 吹き飛ばした事は、こんなものはただの時間稼ぎにしかならない。いや、実戦なら時間を稼ぐ事すらも出来ないだろう。

 

 「界王拳か……。此方も使えれば良いんだけどな」

 

 無い物強請(ねだ)りをしても仕方が無い。頭では、そんな事を理解しているのだが如何せん、出てきた欲望は簡単には治まらず、次第に大きくなっていく。膨らんでいく一方だ。

 

 「(どうすりゃ良い……? どうすれば使えるようになる……? 気をどの様にして爆発させるんだ……? どんな風にしてコントロールをすれば良いんだ……?)」

 

 自分の持っているものの何倍もの大きさを誇る気が此方に向かって、高速で近付いて来るのを感じ取る。

 そんな危機的状況であるにも関わらず、俺の頭のなかはやけに静かで、冷静なものだった。

 

 「こうかあああぁぁっっ!!!」

 

 殴りかかってきた彼の拳に対し、此方も同じく拳で対応をする。

 

 「何!?」

 

 その俺の対応に戸惑ったのか。対応をしてきた事に、界王拳を使った事に対してびっくりしたのか。彼は一瞬動きを止めてしまう。

 

 その一瞬だけで十分だった。

 

 「ハアアアアアアアアアッッッ!!!」

 

 自身の気を体外へと爆発させて、彼を遠くへと吹き飛ばす。

 近くに居た彼は防御の姿勢を取るも、そのままの状態で飛んでいく。

 

 「お互いの最高の技で決着をつけようぜ……」

 「……ああ」

 

 俺の言葉に対し、彼は体勢を立て直して真っ直ぐに見据えながら応える。

 

 「「かー」」

 

 両手首を合わせて手を開き、身体の前方に構える。

 その動きはとても滑らかであり、とても静かなものだ。

 

 「「めー」」

 

 そのまま腰付近へと両手を持っていく。

 お互いの動きに警戒をし、注意を払いながらじっと見つめあい、そして気をコントロールしていく。

 

 「「はー」」

 

 体内の気を集中させていく。

 

 目の前で構えを取って、此方を見ている彼。

 

 彼の気は段々と大きくなっていっている。

 

 「「めー」」

 

 互いの両掌に溜められた気は大きく強くなり、そして圧縮されていく。

 

 この戦闘は脳内でのイメージによるものだ。そうである筈なのに、想像力が強く、鮮明にハッキリと描く事が出来ている所為か、現実味を帯びていて、大きくて強烈なプレッシャーを感じさせてくる。

 

 「「波アアアアアアアァァッッ!!!!」」

 

 限界まで溜められたその気を気功波として、お互いに向けて発射する。

 それぞれが放ったかめはめ波はぶつかり合い、せめぎ合い、大きく空間を歪めていく。皮膚を、髪を毟り取ろうとしているのではと思ってしまう程の大きく強い風が発生する。

 

 「まだまだあああああああああぁぁぁぁ!!!!」

 

 ありったけの気を込め、全力全開のかめはめ波を目の前の彼へと向けて放つ。強大で強烈なエネルギーの奔流は、彼の姿を消してしまうかの様にして、より大きくなり、押していく。

 

 「…………」

 

 目を開くのに苦労する程の光が消え、煙がモウモウと立ち籠めている。

 その煙も晴れ、視界がクリアになると同時に、彼の姿が目に入ってきた。

 

 「参った……。オラの……負けだ……」

 

 目の前の彼は力を使い果たしたのか、大の字を書くようにして横になっている。此方も同じで、フラフラとしていて、今にも横になりたい程だ。

 

 「また、闘ろうぜ」

 「こちらこそ、頼みますよ」

 

 笑いながら、彼のその姿は霞の様に消えていく。まるで夢であったかの様に、幻であったかの様に。

 

 だが、消える際にも彼の顔は清々しい程に良い笑顔をしていたように思えた。

 

 

 

 

 「やばかった……」

 

 意識は完全に現実の方へと戻る。

 

 額には汗が流れており、先程のイメージでの戦闘の凄まじさを物語っている様だ。

 

 心臓はドクドクと大きく脈打ち、血液の流れがやけに速く感じられる。

 着ている服には何の問題も無いのだが、身体の彼方此方に擦り傷の様なものが、切り傷の様なものが見受けられる。なのは達と居た時には無かった傷だ。

 脳内での修行ではあるのだが、それが余りにもリアルであり、強いイメージなので身体にフィードバックし、実際に傷が出来てしまったのであろう。

 

 「実際には気を消費していないのに凄い疲労を感じるぜ……」

 

 身体に出来た傷は、ナノマシンの効果が働き、一分も経過しない間にすっかりと痕が残る事も無く塞がっていく。

 

 マルチタスクを運用してのイメージ戦闘だったので、帰り道で、電信柱にぶつかったり、躓いたりとする事は全く無く、無事に家へと辿り着く。

 

 

 

 

 授業が終わり、チャイムが鳴る。

 それと同時に元気な仲良し3人娘はほぼ同時に立ち上がる。

 

 「よし、授業終わり」

 「それじゃ」

 「待ち合わせの場所に」

 「「「「しゅっぱ~つ!!!」」」」

 

 

 

 

 「午前中だけ授業だと楽でいいわね、放課後一杯遊べるしさ」

 「うん、そうだね。今日のプールも楽しみ楽しみ」

 

 アリサのその言葉に同意の意を示すすずか。

 

 確かに授業が午前中だけで放課後が空いているのはとてもいいものだ。アニメを見たり、ゲームをしたりと好きなことが沢山出来る。

 

 「ちゃんと、水着持ってきた?」

 「もちろん」

 「泳ぐの好き好き」

 

 ―ー泳ぐのが好きだと言うがなのはよ、運動音痴じゃなかったのか? と、疑問に思うが口には出さないおいた方が良いだろうか。口は災いの元なのだから。

 

 「私は美由希さんかノエルさんに泳ぎ教わらなきゃ」

 「俺が教えてやるよ」

 「浮き輪使って良いみたいだからファリンに持って来て貰ってるよ」

 「それナイス」

 「ああ、浮き輪でプカプカも良いなぁ~」

 

 相も変わらず志蓮は無視をされている。好きで演じているのだから気にする必要がないのだろうが少しばかり不憫に感じられてしまう。

 

 “ノエル・K・エーアリヒカイト”。月村家で働いているメイド長だ。クールな感じの容貌をした大人の女性。

 

 “ファリン・K・エーアリヒカイト”はノエルさんの妹で、同じく月村家の専属メイド。

 

ノエルさんの方は“とらいあんぐるハート”3で出てきた“ノエル・綺堂・エーアリヒカイト”と共通点が多く見られ、働いている家が月村なのでこの姉妹は自動人形なのかも知れないが実際は良くわからない。

 

 地球人とはまた違うが気を感じ取る事が出来るので、“ドクター・ゲロ”が作った“人造人間”のようなものではないのだろう。

 

 それに彼女たちが自動人形であるのならば月村すずかと彼女の姉である月村忍は“夜の一族”という吸血鬼モドキのような存在だろう。

 

 考える必要もないと思い、皆と同じように接しているつもりだ。

 

 話していると車のクラクションが聞こえる。

 

 「すずかちゃん」

 「ファリン」

 

 車から降りてきたのは先程の話で登場したメイドのファリンだ。

 

 「アリサお嬢様、なのはお嬢様、雄介おぼっちゃま、志蓮おぼっちゃま、ブロンおぼっちゃま。お迎えに上がりましたよ」

 「ノエルさん」

 「有難うございます」

 

 開けられたドアから中に入っていく俺たち。

 

 「(やはり慣れないものだな……)」

 

 おぼっちゃまと呼ばれることは彼女たちと交友関係を築いてからは星の数とはいかないものの数えることが出来ないほど呼ばれ続けているが、くすぐったくあり、違和感を感じさせるのだ。

 

 

 

 

 「美由希さんは現地集合ですか?」

 「ユーノ君と一緒に」

 「なのは、ユーノとすっかり仲良しね」

 「ユーノ君、賢い子でいいよね」

 「うん」

 

 アリサとすずかの2人のその言葉にすっかり気を良くしたのか元気よく頷くなのは。

 

 「(動物をプールに連れて行くのは駄目なんじゃないのかなんて言える雰囲気ではないな……というかユーノはヒトだし)」

 

 ふと横を見ると雄介と志蓮は顔を青くしてグロッキーな状態になっていた。

 

 「死ぬ………」

 「川が……」

 

 雄介は滅竜魔導士なので仕方が無いとしても志蓮の方は何故か。ただ車酔いしただけだろう。

 

 俺はそっと彼らにエチケット袋を差し出すことしか出来なかった。

 

 

 

 

 「はい、すみません。周りに気をつけてくださいね」

 「「「ごめんなさい」」」

 

 飛んできたボールを掴み、少年たちに返し、はぁと溜め息を吐く高町恭也。

 

 「あ、恭也さんだ」

 「アリサ早いな」

 「はい。なのはとすずかは着替えてます」

 「そうか」

 「恭也さん…監視員姿、似合いますね」

 「そうか?」

 

 アリサの言葉に訝しむ感じで首を傾げる恭也。

 

 「アリサちゃーん、お兄ちゃーん」

 「恭也さん」

 「こんにちは」

 「こんにちは、恭也様」

 

 なのはは手を振りながら、すずか、ファリン、ノエルはその後ろに付く感じて来た。

 

 「雄介くん達は?」

 

 そのなのはの言葉に恭也以外の皆が首を傾げ周りを見渡す。

 

 「あいつらなら、彼処で…ほら」

 「いつの間に………」

 

 恭也が指をさしたその方向には既にプールの中に居る彼らの姿があった。

 

 

 

 

 「良いか……? 此処では気のコントロール、魔力のコントロールで身体能力の強化をするだけだ」

 「ああ」

 「周りに被害を出すわけにはいかないからな」

 「先ずはこの人混みを避けて恭也さんの所にどれだけ速く向かうか勝負だ。俺はハンデとして1分間此処に居る」

 

 その俺の言葉にムッとしたのかしかめっ面で雄介達は反対の言葉を述べる。

 

 「そんなものは要らない、全力で行こう」

 「そうだな、そうじゃないと修行にならない」

 「わかった……それじゃ行くぞ。5……4……3……」

 「2」

 「1」

 「「「0!!!」」」

 

 そのカウントを終えると同時に俺達は動き出す。

 

 水という抵抗があるにも関わらずサクサクとスイスイと泳ぎ、前に前に進み、タイルの部分に身体を出す。

 

 「(不思議だな。前世では全く泳げなかったのに自然に身体が動いている)」

 

 あっという間に俺は目標地点に到達する。

 

 当然の結果というか何というか1番は俺で後ろの方にどんぐりの背比べと言わんばかりに接戦している2人の姿が映しだされていた。

 

 「驚いたな…流石に速いじゃないか」

 「有難うございます」

 

 その恭也さんの言葉に照れながら素直に受け入れる。

 

 「「はぁ……はぁ……はぁ………」」

 

 全力で動いていた為か2人は大きく息を荒らげている。

 

 「おまたせ」

 

 競争を終えて、2人が息を整えていると美由希さんが到着した。

 

 「恭ちゃん、監視員姿似合う~」

 「うん……」

 

 どう返せばいいのかわからないと戸惑う恭也さん。

 

 「こっちはどう? 今年初の皆の水着姿は」

 「ビシッと決めてみました」

 「ああ、うんと…その……なんだ……」

 「セクシー?」

 「応っ」

 

 言葉に詰まっている恭也とは反対に志蓮は堂々とハッキリと答えた。

 

 「此処凄いね。流れるプールあるし、飛び込むプールあるし」

 「あっちにはお風呂もありましたよ」

 

 お風呂のあるプールとは。それはもうプールではなく単なる娯楽施設なのではなかろうか。

 

 『ユーノ、此処に』

 『うん……なのはは気付いてないみたいだけど…この場所には微かに魔力の残滓がある。誰かの強い願いと後悔……』

 『ジュエルシードがそれに反応しようとしているのかもね』

 

 念話で密かに俺とユーノ、雄介、志蓮で現状の確認をする。

 

 「ねえ、恭也さん。あれは何ですか?」

 「ああ、希望者が歌って踊れるステージなんだよ」

 「「「「「「えええええ!?」」」」」」

 

 その言葉に驚きを隠せない皆。

 

 志蓮の方は気にした素振りを見せないようにと装っていて皆ほど大きな声でのリアクションをすることは無かった。だが、その挙動からするとやはり気にはなる様だ。

 

 「こんな場所で歌ですか?」

 「いや、これが結構人気あるんだよ。ついさっきまで女の子たちが歌ってたし」

 「プールで歌というと水着だらけの水泳大会という感じですね」

 「お姉さま、何ですかそれ?」

 「昔そういうテレビ番組が」

 「えへへっ、誰か歌う?」

 「私はいいよ」

 「私もご遠慮」

 

 歌いたくないと拒否するなのはとすずか。

 

 「美由希さん? ファリンさん?」

 「ダメダメ。私、歌下手」

 「私なんてもっとですぅ~」

 

 大きく手を振りながら全力で否定し拒否の意を示す2人。

 

 「やはり此処は言い出した方が先陣を切られるべきでは……ね、アリサお嬢様」

 

 だが、このノエルの言葉によりアリサはほんの少し後悔することになる。

 

 「アリサの歌を聞いてみたい人?」

 「「「「「はーい」」」」」

 

 手を上げアリサに歌うように催促をしていく皆。

 

 「藪蛇だわ。これは何かの罠?」

 「粉バナナ」

 「ほら、受付はあっちだぞ。行っといでアリサ」

 「頑張ってアリサちゃん」

 「ファイトォ」

 「……良いわ、泳ぎの前の景気付け。ここは一発歌ってみせようじゃないの」

 

 半ば諦めたかのように、自分に言い聞かせるように大きな声で宣言をするアリサ。

 

 だがその目には自身のしでかしたことに対しての後悔と恥ずかしさを感じさせる。

 

 「仕方ない……俺が先に歌うからお前もちゃんと歌えよ」

 

 思わず助け舟とはいかないが放って置けずに口走ってしまう。

 

 「ホント!?」

 「それじゃ、行ってくるよ」

 

 ワーワーと元気に騒ぐ彼女たちをあとに俺は受付の方へと足を向けた。

 

 

 

 

 パチパチと拍手されるなかアリサへとバトンタッチをする。

 

 「頑張れよ」

 「ありがと。それと、なかなか良かったわよ」

 

 そう言いながら歩を進めていく彼女を見送り皆の居る場所へと戻る。

 

 「格好良かったよ~」

 「上手だったね」

 「ありがとう」

 

 ありきたりな労いの言葉を貰うがやはり照れてしまう。褒められると嬉しいのは誰だって同じだろう。

 

 「さ、アリサの番だぞ」

 

 その恭也さんの言葉で舞台に目を向ける。

 

 

 

 

 歌い終えた彼女に対して賞賛の拍手をする。

 

 「わぁ~、すご~い」

 「可愛かった~」

 「ちょっと気持ちよかったかも」

 

 照れながらも強気で、それでいて満足したというような態度を見せる彼女。

 

 「さ~て、それじゃ……」

 「プールですから」

 「泳ぎますか」

 「「「「「「「「」お~」」」」」」」

 

 

 

 

 「実はつい先日、着替えや水着を盗む変質者が出たらしくて……」

 「(着替え…水着…もしかして)」

 

 恭也さんと美由希さん、ノエルさんの会話を遠くから聴こえてくるキーワードが気になる。

 

 「(ドラマCDの話か……)」

 

 転生時の影響か原作である魔法少女リリカルなのはの内容を忘れかけている。

 

 だが、レアスキルの効果が働いているのか、キーワードを知り、それに対して知りたいと思うことさえ出来れば、疑問に思うことさえ出来れば簡単に思い出すことが出来るのだが。

 

 『ユーノ』

 『俺は少しこの辺りを散策してみようと思う』

 『そっか。気を付けてね』

 

 

 

 

 「次の見回りはボイラー室っと……流石にこんな場所に潜むような輩は居ないか」

 

 恭也は扉を開き中に進みながら様子を伺う。

 

 そこには人の気配はしない変わりに何かヒトではない、得体のしれないものの気配が感じられた。

 

 「誰か居るんですか?」

 

 そう聞くことしか出来無かった。

 

 ヒトではないと理解はしていても他に安全な確認のしようがないのだから。

 

 

 

 

 『もう発動している。外部からの刺激を受けて行動を開始するタイプなのか? 今の魔力で広域結界……つくれるか?』

 

 恭也がボイラー室に入ると同時にユーノはジュエルシードが発動したことに気がついた。

 

 『ユーノ君?』

 『なのは、ジュエルシードだ』

 『うん』

 『ごめん皆。折角のプールの最中なのに』

 『大丈夫。一蓮托生、勇気凛々。良いよ、何時でもOKだよ』

 『僕の方も大丈夫』

 『俺も大丈夫だ』

 『大丈夫だ、問題ない』

 『ありがとう』

 『レイジングハート、お願いね』

 【Stand by ready】

 

 

 

 

 「うわあああああぁぁ!?」

 

 ボイラー室に辿り着くと同時に発動したジュエルシードは恭也を飲み込んでいく。

 

 「恭也さん!? 広域結界展開っ!!」

 「ふわぁ、大っきい。水のお化け?」

 「ところでこいつを見てくれ……どう思う?」

 「すごく…大きいです…」

 

 茶番を繰り広げる雄介と志蓮を他所にユーノは申し訳無さそうに、それと同時に焦った感じで謝罪をしてくる。

 

 「ごめん、切り取り範囲が多くて中にまだ何人かヒトが居るんだ」

 「ダニィ!?」

 「えええぇ!?」

 「「きゃー!?」」

 「アリサちゃん? すずかちゃん?」

 「何、何。何なのこれ?」

 「水着を脱がそうとしてる」

 「■■■■■!!!」

 

 その光景を目の前にし、雄介と志蓮は思わず前のめりになってしまう。

 

 「命に危険ってわけじゃなさそうだけど、あれ何? どうなってるの?」

 「(見てはいけない…見てはいけない…見てはいけない)」

 「ユーノ君?」

 

 目の前のモノにどう対処すればいいのか分からにからか、ユーノの様子がおかしいことに気が付いたのか声をかけるなのは。

 

 「あ、その……想像なんだけど……あのジュエルシードを発動させた人間。捕まったっていう更衣室荒らしの人の願いと興味がカタチになったんじゃないかなと」

 「ほぇ?」

 

 理解できていないのか首を炊げるなのは。

 

 そんな彼女に優しく簡単に説明していく。

 

 「つまり……女の子の服を集めたいっていう願いだから……」

 

 辿々(たどたど)しく、自分ことではないのに申し訳無さそうに、気恥ずかしそうに説明をしていく。

 

 「「きゃーっ!!」」

 

 そのアリサとすずかが叫ぶと同時に彼女たちはプールの中に落ちてしまう。

 

 「な、何てことを……」

 「ひどい…水着だけ脱がせて放り投げるなんて」

 「返せっ!!! 戻せっ!!!」

 

 そんな悲痛な訴えにも動じずにカラダを動かす思念体。

 

 その大きなカラダの所為か局所的で小さな、だがヒトにとってはじゅうぶん大きな波が発生する。

 

 【Protection】

 「波が…避けてく」

 「当て身」

 

 流されてきた2人に対して手刀を当て気絶させる。

 

 「ブロン君、ナイス。これなら」

 【Barrier jacket】

 

 なのはに応えるようにレイジングハートはバリアジャケットを展開する。

 

 「趣味や興味は人それぞれですが、人様に迷惑をかける変質的行動は良くないと思います。という訳で」

 【Sealing mode set up】

 

 その言葉を発した彼女の目には怒りが宿っていた。どうやら御立腹の様だ。

 

 「■■■■■■!!!」

 

 そんな彼女に思念体は放っておいてくれと言わんばかりに大きな声をあげる。

 

 「リリカル・マジカル…封印すべきは忌まわしき器ジュエルシードッ!!! ジュエルシード、シリアル………あれ? 番号が読めない」

 「えっ? そんな!」

 「確かに読めないな……」

 

 そのジュエルシードは水の中にある所為か霞んで読むことが出来ない。

 

 「あの中に入って確かめてこようか?」

 「大丈夫。読めないけど取り敢えず封印っ!!!」

 【Sealing】

 

 レイジングハートから放たれた魔法の光が暴走体をかき消していく。

 

 「止まった?」

 「あれ? 大量の水着と下着は出てきたけどジュエルシードが出て来ない」

 「反応も消えてない……まさか…分裂してるのか?」

 「そのまさかだろうな」

 「取り敢えず、急いでその反応の方に」

 「うん」

 

 その言葉に従い急いで向かおうとするのだがユーノが倒れてしまう。

 

 「ユーノ君?」

 「大丈夫…ちょっとクラっときただけ」

 「魔力の使いすぎ? そうだよね……ユーノ君、ボロボロになるまで独りでジュエルシード探ししてて、怪我だって治ったばっかりで……乗って」

 「え?」

 「肩。私の肩はユーノ君の指定席。行くよ、ユーノ君、みんな」

 「うん」

 

 

 

 「「「「「「「「「「■■■■■■■■!!!!」」」」」」」」」」

 「うわ、沢山居る」

 

 どうやら逃げたジュエルシードの思念体は更に複数体に分裂した様だ。

 

 「分裂して増殖してる。止めて封印しないとまた増えちゃう」

 

 その分裂した思念体はまるで虫のようにワラワラと沢山そこに存在し、蠢いている。

 

 「どうすれば?」

 「大型の魔力砲で強制停止なんてまだなのはには無理だし……複数用のロックオン魔法も用意してないし……よし。僕が彼奴等の動きを止めて何とか1つに纏めるから、そしたらそこ」

 「駄目だよ。ユーノ君、そんなフラフラで無茶したら……。動きを止めて1つに纏めるんだよね。ちょうど今朝教わってた魔法の応用編だ……やってみるよ」

 

 杖を構え、目を閉じ意識を集中させていく。

 

 「イメージを魔力にのせて……」

 「■■■■■■■■■■■■!!!!!!」

 「こっちに気付いた。なのはを狙ってる……1度空に回避を」

 「残念、ユーノ君。空飛ぶ魔法はまだ教わってない」

 「ああああぁぁぁ、そうだったああ」

 「でも……大丈夫」

 

 そう話をしている間に魔力は杖の先端部に集まり、宝石部分は強く光っている。

 

 「なのは? 魔力が一気に収束して」

 「(流石、稀少技能が収束というだけはあるな……)」

 「捕獲魔法…魔法……」

 「■■■■■■!!!!!!!」

 「リリカル・マジカル……捕獲、そして固定の魔法……レストリクトロックッ!!!」

 「範囲対象の完全固定……収束系の上位魔法!!」

 「これでそのまま固まってて……行くよ、レイジングハートッ!!」

 【Sealing mode】

 「リリカル・マジカル……今度こそ」

 

 その呪文に呼応するかのように水で出来た思念体の中からジュエルシードが出てくる。

 

 「出てきた、17番」

 「うん。ジュエルシード、シリアルⅩⅦ……封印っ!!!」

 【Sealing】

 

 杖から放たれたその封印魔法は水にぶつかり、それらは水蒸気となって辺りに立ち込める。

 

 「封印……出来てない!?」

 「そんな!!」

 

 霧が晴れると同時に目の前には拘束魔法の範囲対象外に居たのか、抜け出したのか小さな分身体がまだそこに存在していた。そしてどんどんと分裂してあっという間に先程と同じ、それ以上の数にまで増殖した。

 

「“ギャラクティカドーナツ”だっ!!」

 

 大きな、とても大きく広いリング状の気を思念体を中心に発生させる。

 

 それはあっという間に小さく狭くなり、数えるだけで大変だった全ての思念体を一纏めにして動きを完全に封じてしまう。

 

 「なのは!」

 「本当に今度こそ…封印っ!!」

 

 なのはの放つその封印魔法はすべての思念体を光で包み込んだ。

 

 【Mode release】

 「ありがとうレイジングハート」

 【Good bye】

 

 周辺に存在したジュエルシードの魔力が消え去ったのを確認したのかレイジングハートはスタンバイモードへと戻る。

 

 「あっ。服と水着が戻ってく」

 「魔法が解けたから持ち主の所に戻るんだ」

 「そっか……良かった。でも、ジュエルシードもユーノ君が持っていたものを含めてこれで4つ……あと17個だね」

 「うん」

 「どうしたの、ユーノ君? グッタリして……。疲れた……?」

 「うん。(なのはの魔法のセンスってどうなってるんだろう……僕よりずっと大きな魔力に、凄い才能。だけど器用なのか不器用なのか全然わからないし、何より……見ていて危なかっしくてしょうがないんだ。なのはを見てると本当にドキドキする。怪我でもするんじゃないかとかいろいろと……やっぱり僕がしっかりして封印の手助けをしてもらうだけにしなくちゃ)」

 「まぁ、無事に解決したみたいだし……良かった良かった、だね? あっ。辺りも戻ってきた。バリアジャケット解除しなきゃ……ええと……出来た」

 

 ユーノの悩みに気が付くこともなくなのはは魔法の成功と封印が出来たことに安堵していた。

 

 「お疲れ、ユーノ君。バスケットで休憩しててね」

 「うん、ありがとう。(本当は僕が1人でやれたら良いんだけど……)」

 「そう言えば、お前…どうして直ぐに対応できたんだ?」

 「魔力を感じたんだよ…まだ封印できていないんだなって。」

 「でも私、確かにジュエルシードを狙ったよ」

 「多分なんだけど蜃気楼の1つだと思うんだよね……なのはの魔法の発動で辺りの温度と水の中の温度に大きな差が出来て、水の中にあったジュエルシードの幻が見えたんだよ」

 

 

 

 「あ、2人共起きた?」

 「御二人ともよくお休みで」

 「寝てた?」

 

 寝ぼけ眼を擦りながらアリサとすずかは周りに対して確認を取る。

 

 「はしゃいでたからきっと疲れちゃったんですねぇ」

 「どれぐらい寝てた?」

 「30分ぐらいですよ」

 「(何か非常にアレな夢を見たような気がするんだけど)」

 「(恥ずかしいし、言えないし)」

 「あ、なのは達は?」

 「あそこ」

 

 指をさした場所には浮き輪の上に居座っているなのは達が居た。

 

 「御二人が御休みでしたので浮き輪でプカプカのんびり背泳ぎ、だそうです」

 「ブロン君の方は流れるプールで流されるということは人生にも通じることだよななんて」

 「ハハッ。すずか、目醒めた?」

 「うん、もうパッチリ」

 「折角来たんだし、もうちょっと遊んで行こうか」

 「うん」

 

 アリサとすずかがなのは達の居るプールに向かった同時に監視員である恭也が水を滴らせながら歩いてくる。

 

 「あれ? 恭ちゃんどうしたの? びしょ濡れだ」

 「ボイラー室を見回ってたら派手な水漏れがあってお湯の濁流に呑まれた」

 

 その言葉通り服を含めて彼の全身は濡れている。だが彼の整った容姿も相まって文字通りに水も滴る良い男という感じだ。

 

 「お怪我とか無いですか?」

 「ああ、それは平気なんだが…廊下まで水漏れしてるので俺はこれから掃除の手伝いを」

 「大変ですね」

 「残業代も出るみたいだし、良しとするよ」

 

 彼は自身に言い聞かせるかのようにそう話した。

 

 

 

 「はあぁ……」

 

 呼吸を整える。

 

 腕に付けたデバイスは23:00をさしている。

 

 プールで走り、泳ぎ回り、ジュエルシード封印の手助けをしたのだが言うほどの疲れは感じていない。普段、毎日のように体力を大幅に消費する修行をしている所為だろうか。

 

 「“超界王拳”だっ!!!!」

 

 超サイヤ人(スーパーサイヤジン)の状態から更に界王拳を使う。

 

 纏っているオーラは金色から赤色へと変色する。

 その開放された気は密閉されたその空間を大きく揺るがせる。

 

 「やっぱ、すげぇ疲れるな……」

 

 戦闘力の倍数宣言なしだと通常時の75倍という大幅な上昇は可能だ。だが使用後はかなりの倦怠感が襲ってくる。

 

 超サイヤ人(スーパーサイヤジン)の状態でも身体に負担を掛けているのだ。そこから超サイヤ人ほどではないにしろ界王拳もまた身体に負担を掛ける技だ。これを重ね掛けをすることで大きな負担が身体にも精神にも襲ってくる。

 

 「だけど、これをものにすれば」

 

 今のところの最終目標は“ドラゴンボールGT”の“超一神龍(スーパーイーシンロン)”との戦闘時の“超サイヤ人(スーパーサイヤジン)4”“ゴジータ”だ。

 

 余りにも高すぎて、大きすぎる目標はまるで地球から宇宙の果てまで行くのと同じ様に感じられる。

 

 だが、出来無い訳ではない筈だ。

 

 最低でもフルパワー状態の超サイヤ人(スーパーサイヤジン)4孫悟空と同等の力は持ちたい。

 

 誕生時、戦闘力が2というサイヤ人としは最低部類だった彼も修行することであそこまで上り詰めたのだ。

 

 「だから……より強く、より速く、より先へ」

 

 そしてまた、アラームが鳴り響くまで修行に明け暮れるのだ。




主人公=作者、主人公は作者の自己投影した姿というのはその通りだと思う。

キャラクター全般に言えることだがその作品の作者にその描いたキャラクター性が、共通した部分が、一面性がないと書くことが、それどころか想像することも出来ないと思う。

それが見えているか、見えないかの違い。
それが表に出ているか、出ていないかの違い。
それに気付いているか、気付いていないかの違い。

と言ってもこれは私個人の勝手な考えで、解釈で、想像で、妄想なのだが。
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