「はああああああぁぁぁぁあああああ」
己の中に存在している気を爆発させ徐々に高めていく。その生命力である気はどんどんと大きくなり膨張する。
自身を中心にして身体から発せられるその大きな気は周囲の空気を大きく震わせている。
「かあああああああああああぁぁぁぁ……」
その、今解放可能な極限点にまで高めたその気は消え入るように小さくなっていく。
「――ダメか……」
先程まで周囲を明るく照らしていた金色で逆立っていた髪は黒色の髪へと、普段の髪型へと戻る。
「どうすれば良いんだ?」
目の前に見えている
「今はこれくらいにしておこうかな。今日は皆で温泉なのだからな…腐☆腐」
その言葉を終えると同時に持っていく荷物を準備し始める。
戦闘力や気の扱いは関係ないのだろうが動きは俊敏で正確。次々と必要だと思うものを入れていく。
「パンツやシャツなどの着替えは必須…シャンプーは必要ないな、其処にあるものを使えば良いんだし。タオルは入っている…あとは財布かな」
あっという間に準備を終え、靴を履く。
「行ってくる…後のことは」
「任せろ」
真・四身の拳で創りだした分身に家事を、買い物を任せて家を出る。
「行くか……」
『なのは、旅行中くらいはゆっくりしなきゃ駄目なんだからね』
『わかってるよ。大丈夫』
なのははユーノのその気遣いに感謝の言葉を返しながら月村邸に先週で出会った彼女の事を、もう一人の魔法少女のことを思い出していた。
「うぷ…吐きそう……」
「かゆうま」
そんななのはを余所に俺の横に座っている2人の少年は走りだして直ぐに車酔いを起こしていた。
「吐くなよ、絶対だぞ」
「それフリだよな? うぷ……」
「フリじゃねーよ。てか、なんで酔い止め用の薬飲んで来ないんだよ……“トロイア”使えよ」
「何回も使った所為か効果が無くなって………」
トロイアとは天の滅竜魔法の1つで対象のバランス感覚を養わせる事が出来る。だが、その魔法は使えば使うほど身体に抵抗できるのか効果が無くなっていくようだ。
「嗚呼……
雄介の横に居る志蓮はもう駄目なようだ。目は死んでいて唇は真っ青になっている。
「――エチケット袋は?」
「吐くなよ、袋用意するから我慢しろよ」
「うぷ…おえええええ」
「うぷ……もう駄目……もらいゲロしそう」
「やめろおおおおおおおおおっ!!」
何とか無事に海鳴温泉に辿り着く。
「大丈夫?」
「ああ」
「すまない」
雄介は勿論だが志蓮の方は酔った直後からか覇気が無く、声に力が感じ取ることが出来ない。
「あまり無茶をしないことだな」
「幼稚園に行ってた頃は車に酔って無かったのにどうしてだろう?」
その周囲の疑問に答える余力もないのか雄介は力無く項垂れている。
「取り敢えず部屋で横になってなさい」
「「――わかった」」
敷かれた布団にゴロンと横になる2人。
「さて、俺達は風呂に行こう」
その士郎さんの言葉を機にぞろぞろと部屋から出て行く皆。
『しっかり体休めておけよ』
『ああ』
『わかってる。あと、原作通りならフェイト達が来ているはずだ。気を付けて』
『了解した』
「「…………」」
今俺とユーノは女風呂の方に入っている。男湯の方に行こうとしたのだが首根っこを捕まれ連行もとい連れて来られたのだ。
原作通りなのかもしれないがとても居心地が悪く感じられ、その為に喋ることが出来ずただ口を閉じているしか無いのだ。
「お姉ちゃん、背中流してあげるね」
「ありがと、すずか」
「じゃ、わたしも」
「ありがとう」
姉妹の仲がとても良いということを感じさせてくる。
「ふふふ……じゃあ、あんたはわたしが洗ってあげるね」
そう言いながらユーノを抱きしめるアリサ。
「心配ないわよ。洗うの上手いんだから」
その腕の中でバタバタと暴れるユーノに対してアリサは大丈夫だと笑いかける。実はヒトだということを話したいがそれはこの先の展開の為にグッと我慢をする。
『ブ、ブロン…助けて』
その悲痛な救援サインを無視して俺は静かに移動し身体を洗い始める。
「ふぅ………」
『ハァッ☆』
前世ではそれほど気にしてはいなかったのだがどこから洗うか拘っている人はやっぱり居るのだろうか。
「…………」
ゴシゴシと入念に力を入れ過ぎないように気を付けながら出来る限り丁寧に洗っていく。
シャワーから出て来るお湯はその身体に付いている泡を綺麗に洗い流す。
「(尻尾を洗うのは……諦めるしか無いな)」
今は微量な魔力で変身魔法を使用して姿を変えているのだ。
このメンバーならこの事を知られても問題は無いのだろうがやはりと言うか何と言うか心のどこかで恐れているのか話すことが出来ない。
「(今話すべきでは無いということだろうか……)」
再度シャワーで身体に残っている汚れと泡を洗い流し、温泉に身体をゆっくりと入れ浸かっていく。その温かさは早朝にしていた修行の疲れを吹き飛ばしていく。
「(温泉か…入るのは前世を含めると久しぶりだな)」
前世では同居していた祖父母と共に良く温泉に行っていた。
いろんな風呂があり、良く足湯の方に行っていた気がする。お湯の中は気持ちが良いのだが水圧の所為か苦しく感じていた。その為に、あまり自分から温泉に入りたいという気持ちは無かった。
だが、今はサイヤ人の身体であり、ある程度の水圧ならば苦も無く耐え、慣れる事が出来るからかそんな事は無く思う存分温泉を楽しむ事が出来る。
「それじゃお姉ちゃん、お先でーす」
「はーい」
「なのはちゃん達と旅館の中探検してくるね」
「うん、また後でね」
「さ……行くわよユーノ、ブロン」
「キュ」
「わかった」
もう少し、じっくりと堪能していたかったが致し方がない。俺は渋々と温かいお湯の中から着替えを置いてある脱衣所へと向かった。
「卓球しない?」
「えー、卓球?」
「わたし御土産見たかったんだよねー」
「…………」
3人はとても楽しそうにそれぞれのしたいことを、行きたい場所を話している。俺は特にこれといったものが無いので黙っているのだが。
「はーい、おチビちゃん達」
その会話の中に別の声が入り込む。目の前に居る女性が話しかけてきたのだ。
「君かね? 家の
「え? え?」
真っ直ぐになのはの方へと向かう彼女。
「あんま賢そうでも強そうでも無いし、唯のガキンチョに見えるだけどね~」
「なのは、お知り合い?」
狼狽えるなのはを庇うように前に出て関係を尋ねるアリサ。
「知らない」
「この娘、貴方を知らないようですがどちら様ですか?」
「――アハハハハハハハハ……ごめんごめん人違いだったかな……知ってる娘に良く似てたからさ」
「なんだ、そうだったんですか」
その彼女の言葉に安堵するなのは。
だがアリサは変わらず彼女に対して警戒しているようだ。
「可愛いフェレットだね」
「はい」
「よしよーし、なでなで~」
フェレット形態であるユーノを撫でる彼女。
『今のところは挨拶だけね』
「――!?」
彼女からなのか突然の念話になのはとユーノは少し目を見開く。
『忠告しとくよ…子供は良い子にしてお家で遊んでなさいね。でないとオイタが過ぎるとガブっといくわよ』
『その言葉そのまま返すよ』
なのはに向けられてはいるのだろうが俺は思わず間に入り彼女に対して念話をする。
『――あんたは?』
『俺が誰であろうと問題ない…お前の主も子供なのだからそれはブーメランだぞ』
その俺の言葉を聞いたからか、言いたいことを言ったからか彼女はその場を後にして離れていく。
「なーにあれ!?」
「可怪しな人だったね」
「昼間っから酔っ払ってんじゃないの?」
「まあまあ、寛ぎ空間だしいろんな人が居るよ」
「だからと言って節度ってものがあるでしょ、節度ってもんが」
自身が絡まれた訳でもないのに怒っているアリサを宥めるなのは。立場が逆なのではないのだろうか。
『あー、もしもしフェイト……此方“アルフ”』
『うん』
『ちょっと見てきたよ、例の白い娘』
『そう、どうだった?』
『うーん? まーどうってこと無いね。フェイトの敵じゃないよ』
『こっちもちょっと進展……ジュエルシードの場所、大分特定できたよ。今夜には捕獲できると思うよ』
『んー、ナイスだよフェイト。流石わたしの御主人様』
『うん、ありがとうアルフ。夜にまた落ち合おう』
『そう言えばあの白い娘の所に妙な男の子が居てさ…わたしに念話してんだよ』
『男の子? もしかしてお兄ちゃんと戦ってた』
『なんかそいつすごい気迫でさ……ま、取り敢えず夜に』
『うん…夜にね、アルフ』
念話を終えて改めて湯船に浸かるアルフ。
「うーん」
伸びをしている彼女の頭には本来ヒトには無いはずのものが、犬の耳が付いていた。
「あら、ファリンちゃん。子供たちもう寝た?」
「もうぐっすり」
「ありがとね、ファリンちゃん」
「いえいえ、好きでやってることですから」
『ユーノ君、雄介君、志蓮君、ブロン君起きてる?』
『うん』
『勿論だ』
『ああ』
『起きてるぜ』
そのなのはの呼びかけに俺達は布団をゴソゴソと動かしながら念話で応える。
『昼間の人、この間の娘の関係者かな?』
『多分ね』
昼間の人というのはアルフのことだろう。念話での忠告、家の娘をアレしちゃってくれてなどといった言葉から魔法関係の存在だというのは予想することが出来る。
『また、この間みたいなことになっちゃうのかな……』
『多分……なのは、僕ね…あれから考えたんだけど……やっぱりここからは僕が』
『ストップ、そこから先言ったら怒るよ。ここからは僕1人でやるよ、これ以上皆を巻き込めないからとか言うつもりだったでしょ』
『…………』
『ジュエルシード集め、最初はユーノ君のお手伝いだったけど今はもう違う。わたしが自分でやりたいと思ってやってることだから。1人でやりたいなんて言ったら怒るよ』
なのはのその言葉は怒ると言いながらもどこかユーノのことを思っているのか優しさを感じ取ることが出来る。
『俺もそうだな』
『俺も俺も』
『同じく』
『少し眠っとこ、今夜にもまた何かあるかもしれないからね』
『うん』
そのなのはの言葉に俺達は目を閉じる。
静かになった部屋の中で俺はまた脳内でイメージトレーニングをすることにした。
「ふう……」
イメージするのはどのような衝撃にもどのようなモノにも耐えることが出来る空間。
相手は
「宜しくお願いします」
「お願いします」
俺の服装は孫悟空さんと同じ山吹色の道着だ。違いといえば丸の中に悟や界、亀などといった文字ではなく転生者の転という字が書かれている。
開始の合図などというものは無い。どちらかが動けばそれが試合の開始なのだから。
先に動いたのは悟飯さんの方だ。
まだ
「ダリャリャリャリャリャ」
右手、左手と次々と繰り出されるそのパンチを回避していく。目で追う前に気を感じ取ることでその動きに対応し避けることが出来ているのだ。
「今度はこっちの番だ」
その言葉と同時に俺もまた同じようにパンチを繰り出していく。その攻撃によって彼の髪をかすめ、数本の髪の毛が宙を舞う。
「――!?」
『みんな!』
『分かってる』
『大丈夫、急ごうユーノ君』
意識が深い所に居たからか、ジュエルシードの発動により沈んでいた意識が無理やり表に引っ張ってこられたからか少しばかり気分が悪い。
だが、それを現状が許してくれる訳でもなく俺はなのは達と一緒に部屋から静かに飛び出してジュエルシードのある場所へと走って向かうことした。
「うっはー、凄いねこりゃ。これがロストロギアのパワーってやつ?」
「随分不完全で不安定な状態だけどね」
「あんた達のお母さんはなんであんなもの欲しがるんだろうね」
「研究者だからいろいろと調べたり、使ったりするんじゃね?」
「理由は関係ないよ…母さんが欲しがってるんだから手に入れないと。バルディッシュ、起きて」
【Yes, sir. Sealing form Set up】
「封印するよ、アルフサポートして」
「へいへい」
「2つ目……」
発動したジュエルシードの場所に辿り着くことが出来たが時既に遅く、ジュエルシードは既に黒い魔法少女が封印していた。
「あーら、あらあらあら」
「あっ!?」
「子供は良い子でって言わなかったけか? それにさあたし親切に言ったよね……良い子でないとガブっといくよって」
その言葉を終えると同時に彼女の姿は大きく様変わりする。
「やっぱり、あいつあの娘の“使い魔”だ」
「使い魔?」
「そうさ、わたしはこの娘につくってもらった魔法生命。製作者の魔力で生きる代わりに命と力のすべてを掛けて守ってあげるんだ」
「魔法生命か……やはり魔法関係者だったんだな」
「あんたは!?」
その俺の言葉にアルフは驚くと同時に合点がいったのか此方を強く睨んでくる。
「ジュエルシードをどうする気だ。それは危険なモノなんだ」
「それがどうした? 答える理由は無いし、言うつもりもないぜフェレットさんよ」
彼女の、フェイトの横にいる少年は此方を挑発するかのように俺達を見下げながら言葉を放つ。
「――この前の奴じゃねえか…凝りもせずまた俺にやられに来たのか?」
「くっ」
その言葉に雄介は動揺したじろぐ。
「へえ、そいつの事だったのかい。わたしはてっきりアイツの事かと思ってたよ」
「俺に任せてくれれば全て簡単に解決して」
「いや、此処は俺に任せてくれ雄介」
志蓮の言葉を遮り俺は雄介の、なのは達の前に立つ。
「お前が俺の相手を? やめとけ、魔力も禄に無いじゃないか…恥をかくのが関の山だぞ」
「そうかな? やってみなきゃ分かんねぇぞ」
「それじゃ、俺達はあの使い魔と戯れ合うってことか」
「なのは、あの娘をお願い」
「させるとでも思ってんの?」
「させてみせるさ!!」
「移動魔法? マズイッ!!!」
なのはの肩から飛び降りてアルフと雄介、志蓮を連れてユーノは離れた別の場所へと移動する。
そこに残されたのは俺となのはとフェイト、そして不遜な態度を取る少年の4人だけだった。
「結界に“強制転移魔法”……。良い使い魔を持っている」
「ユーノ君は使い魔ってやつじゃないよ。わたしの大切な友達……話し合いでどうにか出来るってことない?」
「私はロストロギアの欠片を、ジュエルシードを集めないといけない。そして貴女も同じ目的なら私達はジュエルシードを懸けて戦う敵同士ってことになる」
「だからそんなことを簡単に決め付けないために」
「言葉だけじゃきっと何も変わらない……伝わらない」
「――!?」
その瞬間目の前の彼女の姿は消え失せ、なのはの後ろに移動していた。
「それじゃ、俺達も始めようぜ」
「良いのかよ? そうか、無様な姿を見せたくないってことか。負けてからでも見せることになるけどなぁ」
「魔法だけが全てじゃない。魔法の強さが、レアスキルの強さが戦力の決定的戦力差でないことを教えてやる」
その言葉と共に足を踏み出す。大地を強く蹴り、彼の懐に飛び込む。
強く握りしめたその拳で彼の顎を殴りつけた。
「がッ!?」
彼は何が起きたのか分からない、信じられないといった表情で足元に居る俺を見下ろす。
「お前……一体何を?」
「ただ移動して殴っただけだ」
「クソッ」
彼のその振り上げた拳を軽く避けてみせる。
その攻撃は空を斬り、俺は既に最初の場所へと戻っていた。
「……ハハッ……ハハハハハハハハハハハハハハ――良いぜ、お前は彼奴より強い。俺が力を解放するだけの相手だってことを認めてやるよ」
その瞬間俺の身体は動かなくなった。ウントもスントも動かすことが出来ないのだ。
「何だ、これは!?」
「“サイコキネシス”さ。この力はな、自分の何十倍もの大きさのビルを、高層ビルを持ち上げることが出来るんだぜ。いくら筋力が強かろうと、どれほど魔力が多くて身体能力を強化したところで無駄なあがきなんだよ……オラッ!」
身体を足で強く蹴り飛ばされる。かなりの距離を跳び、木々を薙ぎ倒し地面を削っていく。
「痛つつつっ」
ある程度飛ばされ、落ち着いた所で立ち上がる。
蹴られた腹部が地味に痛みを発している。
「この力、“パワー”のフラグメントで強化してるな」
「御名答……さ~て、お次はこれだ」
「オゴッ!!」
再び強烈な痛みを感じる。今度は腹部だけでなく身体中を、顔から肩、手や足にだ。目で追うことの出来ないその攻撃にただなされるがままである。
「(スピードのフラグメント……この速さはブラックバードか)」
――“ディーンドライブ
「次にこれだ。“雷竜の
電撃を両手に纏わせて拳を合わせ、叩きつけてくる。その攻撃は威力ではなく、電撃により俺の身体は痺れて上手く動かすことが出来ない。
「ハハッ、手も足も出ないってか?」
「フッ」
その彼の言葉に俺は思わず笑ってしまう。
「何が可笑しんだよ」
「別に。相手の魔法やレアスキルを修得する。なるほど……それはとても厄介だ。とてもとても厄介で、また強烈な能力だ」
「……………」
「だが、それだけだ。お前、格上相手に戦ったことないだろ?」
「……今、そんなの関係ないじゃねえか」
「あるんだよな…… 」
「あ? 何つった?」
「サイヤ人の恐ろしさを教えてやろうかと言ったんだ」
その瞬間、その場は真昼のような明るさを取り戻す。その光は局所的に周囲を照らしながら辺りに存在している動物の本能に強く訴えかけていた。
逃げろと。
「お、お前……その姿」
「…………」
姿事態はそれほど変貌してはいない。だが、髪の毛が逆立ち、金色になっている。
この変わり様、変身を知らない転生者はどれほど居るのだろうか。
「す、ス……
「そうだ」
俺はただ静かに頷き、それに答えるだけ。
その放たれる威圧感は自然と幻覚などではなく、実際に目の前に存在している、現実のことだと彼の心に語りかける。
「だ、だが……動きを封じてしまえば」
その彼の言葉と同時に俺の身体に違和感が生じた。サイコキネシスで動けなくしたのだろう。
「無駄なんだよ、無駄無駄。そもそもの戦闘力に差があるんだ…そういった能力は強いが格下にしか通用しない」
そう言いながら体内の気を外へと開放し、爆発させる。
そうして、目の前の彼を吹き飛ばし、俺は身体を動かしてみせる。軽く飛び跳ねてジャンプをしたり、シャドーボクシングをしてみせる。
「それは身体を動かせないようにするだけだろ? そんなんじゃ駄目なんだよ」
「(か、勝てない……今の俺じゃあ。今の俺どころでは無い。逆立ちしたとしても勝つことは出来ない。もうだめだぁ…おしまいだぁ)」
そんな様子に目の前の彼は両膝と両手を地面につき、頭を項垂れる。
そんな彼を前にして俺はスッと何時ものように、修行後の何時もの様に変身を解く。
「お前は凄いよ。俺が転生してから
「ドゥーム……“ドゥーム・テスタロッサ”」
「ならばドゥーム、顔を上げろ。誇れよ、お前は凄いんだ………そうだ」
「懸けて……それぞれのジュエルシードを1つずつ」
【Photon Lancer Get set. “Thunder Smasher”】
フェイトのデバイスによる攻撃を避けたなのはに対して直線的な魔力攻撃を放つ。
【Diving Buster】
レイジングハートから放たれた魔力砲撃はThunder Smasherとぶつかり合う。
「レイジングハート、お願い」
【All right】
その言葉と共にDiving Busterの威力は増し、フェイトの攻撃を押し返していく。
【“Scythe Slash”】
なのはの砲撃を避け、フェイトは上空から近づき魔力刃をなのはの首元に持っていく。
寸止めだ。
ギリギリの所で攻撃を止めて、様子を見ている。
魔力に宿っている電撃がビリビリとしており少しでも動けばなのはの首が切れてしまうだろう。
【Put out】
その瞬間、レイジングハートから封印されたジュエルシードが放出される。
「レイジングハート、何を?」
「きっと、主人思いの良い子なんだ」
出されたジュエルシードはフェイトの手に握られる。
この戦いはフェイトの勝利に終わった。
「ちょろちょろちょろちょろ逃げんじゃ無いよ」
林の中をユーノとアルフは走っている。そのアルフの様子はまるで小動物を狩ろうとしている大型の肉食動物のようだ。
「使い魔をつくれるほどの魔導師だ…なんでこんな世界に来ている? それにジュルシードについて、ロストロギアについて何を知っている?」
「ごちゃごちゃ煩い」
「遠くから見るとトムとジェリーみたいだな」
「俺達、要らない子じゃね?」
「言うな」
アルフに無視をされて離れた場所から見えるその光景はまるで弱肉強食の世界を表しているかのようだ。
だけど、そんな光景に対して原作という名の預言書を持つ彼等にはどうしてもおもしろい光景にしか映らなかった。
追いかけるアルフに対して必死に逃げながら時折繰り出される攻撃を避けていくユーノ。
そこに空の方で大きな魔力光が光るのが目に入る。
「なのは、強い」
「――でも、甘いね」
「帰ろう……アルフ、お兄ちゃん」
「さっすがあたしの御主人様。じゃあね、おチビちゃん」
「フンッ」
「待って」
立ち去ろうとする彼女に対してなのはは呼び止める。
「出来るならもうわたし達の前に現れないで…もし次があったら今度は止められないかもしれない」
「名前、貴女の名前は?」
「フェイト……“フェイト・テスタロッサ”」
「私は――」
なのはの言葉を聞き終えること無くその場を離れていくテスタロッサ兄妹とその使い魔。
その場に残されているのは戦いに負けた1人の少女と一匹の小さな男の子、そして3人の転生者だけだった。
クロスオーバーさせるというのはそれぞれの作品にそれぞれの作品のキャラクターなどの要素が行き来することが出来るように橋を架けるようなことだと思う。