櫛那が来て、何日か経った。
朝は烏の声で起きる。
昼は山に行く。
夜は囲炉裏を囲む。
やること自体は、前と大きく変わらない。
水を汲む。
薪を割る。
山道を歩く。
飯を食べる。
足を揉んで、眠る。
ただ、同じ道をもう一人が歩いているだけで、山の音の聞こえ方が少し違った。
後ろから、草を踏む音がする。
息を吸い込む音がする。
石に足を取られて、短く息が詰まる音がする。
それがあるだけで、いつもの道が少し広くなる。
その日も、朝からみっちりだった。
夜明け前に烏が鳴く。
沢まで一往復する。
そのまま裏手の斜面を登らされ、転びそうな道を何度も歩かされる。
櫛那は途中で三度、膝から崩れそうになった。
そのたびに、鱗滝さんが淡々と直す。
「骨で立て」
「顎を引け」
「足を置く前に、次の足を探せ」
言葉は短い。
でも、どれもが逃げを許さない強い響きがある。
俺はその横で、薪を担ぎ、水を運び、ついでに櫛那を引き上げる役だった。
雑用と言えば、雑用だ。
けれど、自分がもうそれなりに知っている側として動けていることが、少しだけ誇らしかった。
前は全部、鱗滝さんに言われる側だった。
今は、少しだけ先に見て、少しだけ先に動ける。
それだけで、足の疲れ方が違う気がした。
日が傾き始めた頃、ようやく鱗滝さんが言った。
「今日の分は終いだ」
櫛那の肩が、目に見えて落ちる。
けれど、鱗滝さんはすぐに続けた。
「櫛那、もう一息だ。足を止めるな。家につくまでが稽古だ」
「……はい」
返事は掠れていた。
それでも、出ている。
膝も笑っているはずだ。
足の裏も痛いだろう。
それでも、櫛那は歩く。
山の向こうの空は、夕焼けで赤くなり始めていた。
けれど頭上にはもう紫が混じっている。
日暮れの手前の、昼でも夜でもない色だった。
帰り道は朝と同じはずなのに、光が違うと別の山のように見える。
木々の影が長く伸び、斜面の凹凸が増えたように感じる。
俺は先に立って、足場を選びながら下った。
後ろからは、荒い息と、草を踏む音。
「……宗右衛さん」
突然名前を呼ばれて、振り返る。
櫛那は、汗で張りついた前髪を片手で押さえながら、少しだけ顔を上げていた。
息は上がっている。
でも、目ははっきりしていた。
「どうした。足、つった?」
「いえ……あの」
言い淀んでから、櫛那はぽつりと言った。
「宗右衛さんは、どうして……ここにいるんですか」
予想していなかった問いだった。
ここにいる理由。
一言で言うなら、町で桃を盗ろうとして、天狗に捕まったからだ。
でも、それを夕焼けの山道で、そのまま言うのはどうなのだろう。
少し考えた。
結局、ほとんどそのまま言うことにした。
「昔、町で悪いことをしてたら、天狗に掴まれて、そのまま山まで連れてこられました」
櫛那は一瞬、目を丸くした。
それから、困ったように眉を下げる。
「悪いこと、ですか」
「八百屋の桃を、袖に入れようとした」
「それは、悪いことです」
きっぱり言われた。
俺は肩をすくめるしかない。
「うん。悪いことだった」
今なら、そう言える。
でも、あの時の俺は、腹の音の方が大きかった。
悪いことだと分かっていても、手を伸ばした。
そのことは、なくならない。
櫛那の周りの色が、少しだけ変わった。
足元には、くたびれた苔のような色がまだ貼りついている。
けれど、そこに薄い白が混じった。
笑いながら言う「悪いことです」は、本気で怒っているわけではないらしい。
「櫛那は?」
俺は、少しだけ間を置いて聞いた。
「どうしてここに?」
櫛那の足が、一瞬止まりかける。
「止まらないで」
慌てて声をかけると、櫛那は「あっ」と小さく言って、また歩き出した。
けれど、歩幅はさっきより小さい。
慎重になっている。
「……すみません。自分が聞かれると思っていませんでした」
「無理に話さなくていいよ」
本当にそう思って言った。
櫛那が来た時の、桔梗の色を思い出す。
疲れている時に昔の話を思い返すのは、しんどいだろう。
自分なら、たぶん嫌だ。
けれど櫛那は、小さく首を振った。
「宗右衛さんには、話しておきたいです」
その横顔の縁に、赤と青が混ざって、薄い紫が立つ。
町の葬式で見る喪服の袖の周りで揺れていた色に似ていた。
「私の家は、山のふもとの村にありました」
櫛那は前を見たまま話し始めた。
「父と母と、弟がひとり。弟はまだ、小さかったです」
「……うん」
夕焼けの朱。
空の紫。
櫛那の周りに揺れる色。
それらが少しずつ重なって、山の空気に溶けていく。
「あの晩、戸を叩く音がして。父が、戸口を開けました。
最初は、ただの人だと思ったんです。声も、姿も」
そこまで言って、櫛那は唇を噛んだ。
指先が、着物の襟元をぎゅっと握る。
「でも、すぐに変な匂いがして」
櫛那の声が、少し細くなる。
「鉄みたいな、ぬるい匂いで。床を、何かが引きずる音がして……母が、私を押し入れに押し込んで」
話しながら、櫛那の色が変わっていく。
紫の下から沈んだ赤が滲む。
喉元には、濁った紫が絡みつく。
「押し入れの隙間から、少しだけ外が見えて……人の形をした何かが、母と弟を……」
言葉がそこで千切れた。
それが何だったのか、俺にはまだ分からない。
けれど、それが櫛那の家族を奪ったのだということだけは分かった。
沢の音が遠くなる。
鳥の声も、葉擦れも、少し離れたところへ行ってしまったように感じた。
「声が、聞こえなくなって。頭の中が真っ白になって、そこから先は、ただ泣いていたことしか覚えていません」
「……」
何か言わなければいけない気がした。
でも、言葉が出ない。
つらかったな。
怖かったな。
たぶん、そういうことを言う場面なのだろう。
けれど、口に出した途端、全部薄くなりそうだった。
俺は、ただ歩幅を少しだけ落とした。
櫛那が話しながらでも歩けるように。
「どれくらい泣いていたのか分かりません。急に押し入れが開いて、鬼みたいな顔の人がいて……」
「鬼みたいな顔?」
思わず聞き返す。
櫛那は、ほんの少し目を丸くした。
「はい。額に大きな傷があって、目つきが鋭くて。
でも、後ろに立っていた人の方が怖かったです。天狗の面を着けてらしたので」
「ああ……」
額に傷のある目つきの悪い人は分からないが、赤い天狗面の方は嫌でも分かる。
血の匂いが残る家で、押し入れを開けた先にあの面があったなら。
それは、怖かっただろう。
「その人たちが、外に倒れていた黒い何かを見ていました。
あれが何だったのかは、その時は分かりませんでした。ただ、父も母も弟も、動かないのだけは分かって」
また、言葉が途切れる。
日が山の端へ近づく。
影が伸びて、櫛那の影と、俺の影と、木の影が道の上で重なった。
「それから、どこかの屋敷に連れて行かれました。畳の上に座らされて、たくさんの人がいて、いろんなことを聞かれました」
櫛那の声は、そこだけ少し平らだった。
疲れすぎると、人は感情の上に布をかぶせる。
そういう声だった。
「その時は、ただ泣いて、震えて、分かりませんとしか言えませんでした。
でも、一人だけ、面をした男の人が……黙って、私の前に座ってくれて」
「……鱗滝さん?」
「はい」
その瞬間、櫛那の色がほんの少し和らいだ。
紫の縁が薄くなり、目元のあたりに柔らかい青が差す。
「帰るところはあるか、とか、何度か同じようなことを聞かれたあとで、これからどうしたいかとだけ聞かれました」
櫛那は、一つ息を呑んだ。
「その時、頭の中がぐちゃぐちゃで……それでも、ひとつだけ、はっきりしていたことがあって」
「はっきりしてたこと?」
「強くなりたい、って」
その言葉の縁に、紅が混じった。
さっきまでの錆びたような赤とは違う。
真っ直ぐ前へ伸びていく色だった。
「父と母と弟を殺した鬼を、殺せるくらい。もう二度と、目の前でああいうことをされないくらい。そうなりたい、って言いました」
「……」
「そうしたら、その面の人が、ここへ来いって。それで、気づいたらこの山にいて、ここで強くなれと言われたんです」
そこまで話し終えると、櫛那は小さく頭を下げた。
「すみません。長くなりました。歩きながらする話ではないのに」
「いや」
俺は、すぐには続けられなかった。
言葉を選んで、結局、これだけ言った。
「聞かせてくれて、ありがとな」
それしか言えなかった。
本当は、もっと言うべきことがあるのかもしれない。
でも、櫛那の話は、俺がすぐに何かを置いていいものではなかった。
「強くなりたいって言ってここに来たのに、こんな、全然歩けなくて。情けないですよね」
「情けなくはないだろ」
それだけは、すぐに出た。
「最初から山を走れる方がおかしいよ」
櫛那は、少しだけ笑った。
夕暮れの光が、その笑いの端だけを照らす。
笑顔の縁に、金がちょんと灯った。
すぐにまた紫の下へ沈んだけれど、それでも見えた。
家が見えてくる頃には、空はほとんど紫だった。
赤は、山の端に細く残っているだけだった。
―――
その夜。
櫛那は湯から上がるなり、ほとんど転がるように布団へ潜り込んだ。
ひと息つく間もなく、寝息が聞こえ始める。
相当疲れていたのだろう。
囲炉裏の火は、丸く小さくなっていた。
木の爆ぜる音と、外の沢の音だけが、細く流れている。
足の裏には、まだ山の感触が残っていた。
板の間に胡座をかき、親指の付け根を揉みながら、さっきの話を何度も頭の中で繰り返す。
父と母と弟。
押し入れの隙間から見えた、人の形をした何か。
強くなりたいと言った櫛那。
それから、鬼。
櫛那には、奪われたものがある。
殺した相手がいて、向かう先がある。
では、俺はどうなのだろう。
裏長屋で、俺は何をしていた。
冬を越せなかった子。
殴られて動けなくなった子。
腹を空かせて泣いていた子。
俺は、その横にいた。
見ていた。
けれど、何もできなかった。
鬼がいたわけじゃない。
爪も牙もない。
夜に現れて人を喰ったわけでもない。
それでも、いなくなる子はいた。
壊れていく人もいた。
何度考えても、答えは一つに寄っていく。
俺は、弱かった。
弱かったから、見ていることしかできなかった。
「……鬼って」
自分でも驚くほど小さな声が、喉から漏れた。
櫛那の家族を奪ったもの。
鱗滝さんが剣を教える理由。
この山が、ただの山小屋ではない理由。
それを知らないままでいることは、もうできない気がした。
俺は、もう一度口を開いた。
「鬼って、本当にいるんですか」
今度は、はっきりと言えた。
火の上に乗っていた空気が、一瞬だけ重くなる。
「……誰に聞いた」
低い声が、囲炉裏の向こうから返ってきた。
顔を上げると、鱗滝さんが座っていた。
いつからそこにいたのか分からない。
面の下の口元だけが、火の赤で浮かんでいる。
「櫛那です」
隠しても仕方がないので、そのまま答えた。
鱗滝さんは、短く息を吸い、それからゆっくり吐いた。
「そうか」
それだけ言って、しばらく火を見ていた。
灰色だった周りの色に、青が少し混ざる。
その縁の金と、静かにせめぎ合っているように見えた。
「鬼はいる」
鱗滝さんは、改めて答えるように言った。
「夜に現れ、人を喰らう。首を斬られても、心臓を刺されても死なん。
日の光と、日輪刀。それだけが、奴らを殺す」
「……日輪刀?」
聞いたことのない言葉だった。
「特別な鋼で作った刀だ。鬼の首を落とせば、灰になる」
火床の赤が揺れる。
「じゃあ、櫛那の家を襲ったのも」
「鬼だ」
その一言には、長い時間が貼りついていた。
櫛那の家のことだけではない。
もっと前から、ずっと積み重なってきたものを含んだ言葉だった。
「鬼を斬るために剣を学ぶ者たちがいる。
鬼殺隊と呼ぶ。儂は、その者たちに剣を教える役目を負っている」
「育手、ってやつですか」
「そうだ」
天狗面の奥の視線が、ほんの少しだけこちらへ向いた。
「ここは、そのための場所だ。山で足を鍛え、息を鍛え、心を鍛える。それでも、多くは途中で折れる。折れずに進んだ者だけが、試験に向かう」
試験。
その言葉で、いつか聞いた言葉が戻ってきた。
先の子は、戻らなんだ。
戻らなかった。
どこから。
何をしに行って。
聞かなくても、もう少し分かってしまった気がした。
「……櫛那も、そこへ行くんですか」
「望み続けるならばな」
喉の奥が、きゅっと狭くなった。
櫛那が、今日の山道で言った声を思い出す。
強くなりたい、と言った声。
歩くのもやっとなのに、それでも前を向こうとしていた顔。
あの子は、行くのだろう。
父と母と弟を奪ったものの方へ。
鬼の方へ。
「俺は」
声が勝手に出た。
鱗滝さんがこちらを見る。
「俺は、何も知らないままでいいんですか」
言ってから、自分でも少し驚いた。
責めたいわけではなかった。
怒っているのとも違う。
ただ、櫛那があんな話をして、あんな顔で山を歩いているのに。
俺だけが、明日もただ水を汲んで、飯を食って、眠るのだと思うと、胸の奥がざらついた。
「お前には……。
知らずにいてほしかった」
鱗滝さんの声は低かった。
「鬼に家を壊されたのは櫛那だ。お前ではない」
「……はい」
「お前をここへ連れてきたのは、鬼ではない。人だ」
政吉の顔が浮かぶ。
怒鳴り声。
酒の匂い。
帳面を睨む目。
俺を見る時の、あの濁った桔梗の色。
あれは鬼ではない。
牙も爪もなかった。
夜に来て人を喰ったわけでもない。
でも。
「でも、俺も弱かったんです」
言葉が、ぽろりと落ちた。
「裏長屋で、俺はずっと弱かった」
冬を越せなかった子がいた。
殴られて動けなくなった子がいた。
泣いているのに、飯を分けられなかった子がいた。
俺は、その横にいた。
見ていた。
「何もできなかった」
そこまで言うと、喉が熱くなった。
「鬼じゃなくても、いなくなる子はいました。壊れていく人もいました。俺は、それを見てるだけで」
言葉がうまく続かない。
何を言いたいのか、自分でも全部は分からなかった。
ただ、櫛那が一人で鬼の方へ歩いていくのを、何も知らない顔で見送るのは嫌だった。
「櫛那が行くなら」
膝の上で、指を握る。
「俺も、櫛那の隣を歩けるようになりたいです」
鱗滝さんは、しばらく何も言わなかった。
囲炉裏の中で、炭がぱちりと弾ける。
その音が消えてから、ようやく鱗滝さんが口を開いた。
「それは、鬼と戦う道だ」
静かな声だった。
「分かっているか」
そう問われて、俺もすぐには答えられなかった。
「……分かりません」
正直に言う。
それでも櫛那の言葉が、胸の中で回っている。
『強くなりたい』
空に溶けてしまいそうな櫛那の紅が、まだ目の奥に残っていた。
「でも、戦えないままなのは嫌なんです」
櫛那の話を聞いた。
鬼のことを知った。
この家が、ただ子どもを寝かせるための家ではないことも知った。
知ってしまったのに、知らないふりをする方が、もっと怖かった。
「鱗滝さん」
声が震えた。
「俺にも、教えてください」
ようやく、そこまで言えた。
「鬼殺隊になりたいと、今すぐはっきり言えるかは分かりません。でも」
息を吸う。
「そこへ行けるくらいには、強くなりたいです」
櫛那が、一人で鬼の方へ歩いていかなくていいくらいには。
俺も、隣を歩けるくらいには。
言った瞬間、胸の奥で何かが、こつんと音を立てた。
裏長屋を出た夜よりも。
桃に手を伸ばした朝よりも。
ずっとはっきりした音だった。
鱗滝さんは、しばらく何も言わなかった。
火のはぜる音だけが、大きく聞こえる。
色を見ると、灰と青と赤が混ざっている。
その外側を、細い金が必死に縫い止めていた。
「……軽いことを言ったわけでは、ないな」
「軽くはないです」
自分でも驚くほど、すっと声が出た。
「怖いですし」
正直に付け足すと、鱗滝さんの口元が、ほんの少しだけ動いた。
「怖いと言えるうちは、まだましだ」
低く漏れたその一言に、少しだけ笑いそうになる。
「宗右衛」
「はい」
「今ここで言ったことを、明日も言えるか」
「……はい」
「一年後もか」
「言います」
息を一つ飲み込んでから、はっきり答えた。
「足が折れ、指が割れ、血を吐いてもなお言えるか」
想像すると、背筋が冷たくなる。
山で転んだだけでも痛い。
足の裏が割れただけでも、歩くのが嫌になる。
それ以上のことが、この先にある。
すぐに「言えます」とは出てこなかった。
嘘はつくな。
自分に。
鱗滝さんの言葉が、胸の中で沈む。
「……言いたいです」
俺は、ようやくそう言った。
「言えるように、なりたいです」
本当のところ、今の自分でそこまで言い切れるとは思えなかった。
でも、そこへ行きたい。
そのことだけは、ちゃんと口にしたかった。
鱗滝さんは、ゆっくりと俺に手を伸ばした。
肩に触れる寸前で、その手は空中に止まる。
「……よかろう」
その言葉は、火の音よりも静かだった。
それなのに、胸の奥にはやけに大きく響いた。
「だが、今すぐ剣は握らせん。まずは足と息だ。山を歩き、体を作れ。それからだ。鬼殺隊を目指すのは」
「……はい!」
返事が、囲炉裏の火に弾かれるように出た。
梁の上で、烏が一声だけ鳴いた。
それが返事に聞こえて、少し笑いそうになった。
「識彩の目も、置き場所を覚えさせろ」
鱗滝さんの声が続く。
「そうでなければ、その目はお前自身を削る」
「……はい」
足元。
自分の胸。
それから、人。
順番を間違えないこと。
その言葉を、胸の中でもう一度なぞる。
「今日はもう寝ろ。頭が熱い時に考えても、ろくなことにならん」
「はい」
立ち上がると、足の裏に残っていた山のざらつきが、少しだけ軽くなった気がした。
寝所に戻って布団へ入る。
隣から、櫛那の寝息が聞こえる。
規則正しい。
少し疲れた音だ。
目を閉じても、色は少しだけ残っていた。
櫛那の周りに揺れていた紫と紅。
鱗滝さんの灰と金。
どれもが、何かに向かって揺れている。
鬼殺隊。
胸の中で、その言葉をそっとなぞる。
怖くないと言ったら、嘘になる。
けれど明日の朝も、きっと烏が鳴く。