宇宙戦艦ヤマト世界の元からヒャッハー宇宙で地球がこの先生き残るには……   作:親と兄姉の姿を見て立派に育った未子

14 / 40
イスカンダルからの使者が来ました

 

 

 

 西暦2198年。

 

 地球連邦大マゼラン方面軍の哨戒艦隊が、ガミラスとは異なる黄金色の巨大な宇宙船と接触。

 

 その宇宙船の中から出てきたのは、美しい姿をした金髪の美女だった。

 

 彼女は、ユリーシャ・イスカンダルと名乗り、イスカンダルから来た使者だと告げた。

 

 地球連邦軍は、ガミラス捕虜から情報を得ていた。

 

 イスカンダルはガミラスが信仰の対象にしている存在である、と。

 

 哨戒艦隊の艦長はすぐにイスカンダルの使者との接触を地球の総司令部へと報告した。

 

 

 

 イスカンダルからの使者、ユリーシャ・イスカンダルが降り立った西暦2198年の地球。

 

 原作とは異なり、地球は青いままだった。

 

 遊星爆弾の被害は一切なく、空は澄み、海は青く、森は豊かに植物の緑が生い茂っている。

 

 ガミラスとの戦争は続くものの、地球側は波動砲艦隊のおかげで連戦連勝。

 

 天の川銀河の領宙をガミラスから奪い取り、太陽系外への進出を急速に拡大させていた。

 

 戦争と時間断層に支えられた軍需産業は好景気を極め、地球連邦は“宇宙でも勝利する星間文明”として自信と誇りを抱きつつあった。

 

 しかしその一方で——戦争は七年を超え、人々の心に薄暗い影も落としていた。

 

 ガミラスとの終わりの見えない戦争への倦怠。

 徴兵による残された家族の不安。

 戦死者遺族が抱くガミラスへの憎悪。

 戦時経済に依存しすぎた不安定さ……

 

 勝っているはずなのに、少しずつ地球連邦市民たちは疲弊しつつあった。

 

 そんなとき、ガミラスとは異なる友好的な文明との接触という明るいニュースに、地球連邦市民は大きく沸いた。

 

 そして、一目イスカンダルからの使者を見ようと、彼女が降り立つ宇宙港には人が殺到した。

 

「綺麗……」

「まるで天使だ……」

 

 ユリーシャがタラップを降りると。

 宇宙港に集まった観衆は息を呑み、歓声をあげた。

 

 ユリーシャの容姿は息を吞むほどに美しく、まるで地球に降り立った天使のようだった。  

 

 各メディアは連日トップニュースで報道。

 

 イスカンダルから“金髪の天使”がやって来たと報じはじめた。

 

 そして、地球連邦大統領や高官たちとイスカンダルの使者ユリーシャ・イスカンダルがどのような会談を行うのか。その内容への非常に強い関心が向けられた。

 

 ここまでは、ユリーシャも地球連邦市民から非常に好意的に迎えられていた。

 

 

 

 

 

 会談の場には地球連邦大統領。さらに芹沢ら大軍拡、徹底抗戦派の議員、軍高官や軍産複合体の代表らと。ガミラスとの停戦や他の星間文明との穏便な関係を望む藤堂や沖田など慎重派の議員、軍人たちが出席した。

 

 会談の場でユリーシャは姉であり、イスカンダルの女王スターシャからのメッセージを見せた。

 

 ——私は、イスカンダルのスターシャ……

 

 会議室に光が満ち、女性の立体映像が浮かび上がる。

 その姿はまるで神話の中の女神のようだった。

 

 スターシャはメッセージで、地球側に波動砲の乱用、星のエレメントを扱う装置の軍事利用を止めてほしいと懇願した。

 

 そして、波動砲が宇宙を引き裂きかねないこと。かつて自分たちが波動砲とコスモリバースシステム(CRS)を使い愚行を犯したことを告白し、どうか自分たちのように愚行を犯さないでほしいというメッセージだった。

 

 最後に、イスカンダルの仲介でガミラスと停戦してほしいとも。

 

 メッセージが終わるまで、誰もが息を呑んでいた。

 

 しかし——

 

 その沈黙を破ったのは、予想通り芹沢だった。

 

「……あなた方イスカンダルは、七年前にガミラスを止めなかった」

 

 その一言で空気が変わる。

 

「だから我々は武装せざるを得なかった。あの侵略に対抗するためには、波動砲が必要だった!」

 

 芹沢の声は厳しく、怒りと正当性に満ちていた。

 

 波動砲信奉者の議員や軍人たちが芹沢の発言に一斉に頷く。

 

「……芹沢くん、それは——」

 

「これは事実だ! 波動砲は地球を救った。そして、地球を守るためには波動砲が必要不可欠だ!」

 

 それは、確かな事実だった。

 これには、藤堂も沖田も反論の言葉を絞り出せずにいた。

 

「忠告は感謝する。だがあなた方の内政干渉を受けるつもりはない。地球は今後も適切に波動砲を使用し安全保障を維持する!」

 

 芹沢の口から出た言葉は、実質的な拒否の言葉だった。

 

 それに対し、藤堂が静かに声を上げる。

 

「芹沢くん。我々は確かに力を得た。しかし、その力をどう使うべきかは学び、考えねばならない」

 

 沖田も続く。

 

「イスカンダルという超技術文明が“危険だ”と警告しているのを無視するのは、あまりにも軽率だ」

 

 会議室に、理念と現実の衝突が渦巻いた。

 

 結局、話は平行線のまま終わり、「波動砲の濫用は避ける」と宣言するが、実質対ガミラス戦においては今まで通り。ガミラスとの停戦交渉を“検討する”とだけ告げて保留。

 

 双方にとって何の進展もない会談だった。

 

 この結果にユリーシャは、静かに悲しげに目を伏せた。

 

 会談後、ユリーシャは素直に報道陣のインタビューに答えた。

 

「波動砲は宇宙を引き裂きかねない危険があります」

「地球には、かつての私たちが犯した過ちを避けてほしいのです」

 

 それは、この宇宙と地球の未来を案じた誠実な言葉だったが——

 

 地球世論を大炎上させてしまった。

 

「あいつはガミラスのスパイだ!」

「地球を弱体化させる陰謀!」

「イスカンダル? 偽善者の集まりか?」

「波動砲バンジャーイ!」

 

 “金髪の天使”と持て囃されていたユリーシャの評価は、一気に急落してしまった。

 

 この事態に芹沢や軍産複合体の関係者はほくそ笑んだ。

 

 さっそく、波動砲に関して国民投票を行い、地球連邦市民の信を得て、堂々とさらなる波動砲艦隊の整備を進める計画を推し進め始めた。

 

 その増産建造目標は、およそ十三万隻。

 

 完全に暴走する一歩手前だった。

 

 ところが。

 事態はさらに一変した。

 

 事件が起きたのは、ユリーシャが地球で宿泊予定のホテルへ向かう途中だった。

 

「青き清浄なる地球のためにっ! 悪魔に死をっ!!」

 

 波動砲狂信者が、ユリーシャの乗っていた車列を襲ったのだ。

 

 爆炎が車列を呑み込み、破片が空中に舞った。

 悲鳴。混乱。倒れた市民。煙の匂い。

 

「伏せろ!!」

「救護班!! 急げ!!」

 

 ユリーシャ・イスカンダル。爆破テロによって意識不明の重体。

 

 そして、巻き込まれた森雪も生死の境をさまよい、奇跡的に命は繋がったが——記憶を失ってしまった。

 

 地球を揺るがす大事件だった。

 

 

 

 

 翌日、地球世論は地獄のように荒れた。

 

 中には波動砲を否定した罰だという人間もいたが。

 

「……あれ? これ、もしかしてガミラスと同じじゃね?」

 

 という違和感が、まずSNSから生まれた。

 

「対話しに来た平和の使者を襲撃……?」

 

「いやこれ、野蛮な青猿が地球にやったことと変わらないじゃん」

 

 その呟きを見て初めて、多くの人間は気づいてしまった。

 

 ——地球人が、あれほど怒り、蔑んでいたガミラスと同じ“蛮行”をやってしまったのだ、と。

 

 確かに、ユリーシャは波動砲について苦言を呈した。

 

 ただし、それはあくまでも波動砲の危険性を伝えるための忠告であって、ガミラスとは違い、武力による脅しも脅迫も決して行いはしなかった。

 

 また、ユリーシャはガミラスとの講和の仲介という終わり見えない戦争への落としどころを示してくれた平和の使者でもある。

 

 異星人の基準が野蛮なガミラスである地球人にとって、ユリーシャはとても平和的でまともな異星人に見えて仕方なかった。

 

 その美しく可憐な平和の使者への暗殺未遂事件によって、

 

「対話の使者を殺しかけるなんて……このままだと俺たちはガミラスと同じじゃないか」

 

「暗殺犯は地球の面汚し」

 

「青猿以下」

 

「宇宙に地球の恥を晒した元凶」

 

 波動砲のことを一旦棚に置いて、世論は一斉に掌返しを始めた。

 

 そして、一気に波動砲狂信者へのヘイトが高まり、逆にユリーシャへの謝罪と少しはユリーシャの言葉に耳を傾けるべきだという世論の意見が急速に増え始めた。

 

 炎上してガミラスのスパイ扱いされていたユリーシャ。

 

 しかし、この事件によって彼女は瞬く間に——地球の恥さらしによって襲われた、平和を望んでいた悲劇のヒロインになってしまった。

 

 地球人はガミラスとの接触で波動砲を過信し、初接触で帰順か殲滅の二択を突き付けてきたガミラスに対しては、野蛮な侵略者と罵り、蔑み、怒っていた。

 

 ただ、戦争では一方的に波動砲でぶん殴り続けていたおかげで犠牲が少なく、最近は太陽系を一万隻を超える波動砲艦隊が守っているため、人類の危機という切迫していた恐怖感も次第に薄れつつあった。

 

 そのせいで、大多数の世論はこの件に関しては悲劇のヒロインへの同情に流されてしまった。

 

 皮肉にも、波動砲艦隊の大量建造と波動砲の乱射によって手に入れた平和のおかげで、人類は波動砲について一度考え直すために立ち止まる理性と余裕があったのだ。

 

「どうか死なないで……」

「ごめんなさい。愚かな地球人があなたを傷つけてしまって……」

「あなたが言っていたことを、ちゃんと考えます! だからどうか……」

 

 ユリーシャが運ばれた病院前には、花束と謝罪と祈りのメッセージが山のように積み上がった。

 

 一方、このユリーシャ暗殺未遂は軍関係者や軍産複合体が裏で糸を引いていたのではないかという陰謀論が出始めていた。

 

 結果、軍や軍産複合体への地球連邦市民の目が一気に厳しくなった。

 

 たった一人の狂信者の行動が、世論の“流れ”を完全に変えてしまった。

 

 これには、世論を味方につけて波動砲の正当性を主張できると思っていた芹沢ら大軍拡派も頭を抱え、戦争と時間断層で利益を得ていた軍産複合体代表も末端が余計なことをしやがってと完全にブチぎれた。

 

 ちなみに陰謀説は完全にデマである。

 何せ、狂信者が余計なテロなんて起こさなければ、例え国民投票をしても波動砲艦隊建造推進派が圧勝するほど優位な立場にいたのだから。

 

 こうして、国民投票で信を得て、波動砲艦隊を十万隻以上まで増産拡大する気だった大軍拡派の計画は一旦保留となってしまった。

 

 ただし、既に対ガミラス用波動砲艦隊は五万隻以上建造済みである。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの明井博士……こんなこと勝手にしちゃって本当にいいんですか!?」

 

「いいのいいの。ほら、ユリーシャちゃんが寝ている間に、とっとと解析し終えた連絡船のイスカンダル製次元波動エンジンを改修して波動実験艦に移植しないと!」

 

「で、ですが、超文明の技術で作られた宇宙船ですし取り扱いは……」

 

「大丈夫大丈夫! ほら、こんなこともあろうかと、ビーメラや他の滅びてた星間文明からいくつか回収しておいた予備パーツがあるから!」

 

 

 





次回『イスカンダル人とお話ししました』

ガトランティス人は人間じゃないクローンのまま? それともバグって蛮族化?

  • 愛など不要! クローンのまま
  • 愛……愛愛愛愛ぃー ヒャッハー蛮族化
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。