宇宙戦艦ヤマト世界の元からヒャッハー宇宙で地球がこの先生き残るには…… 作:親と兄姉の姿を見て立派に育った未子
時は少し遡る。
滅びの方舟が真に目覚め、土星宙域から地球艦隊が撤退し、火星宙域に最終防衛ラインが構築されつつあった頃。
テレザートから太陽系に向かうガミラス艦隊の姿があった。
デスラー派の艦隊だ。
その旗艦ノイ・デウスーラ。
デスラーがガトランティスに拾われた際、ズォーダーが恩寵として与えた戦闘艦。
その艦内で、ガトランティス人のミルは一人頭を抱えていた。
ミルは、ズォーダーのクローン幼生体だ。
いずれ成長し、ズォーダーの記憶を継承し、次代の大帝となるために生み出された存在。
高度に設計された頭脳。精神感応波による、ズォーダーとの常時接続。
そのため、ミルはズォーダーの意思から逸脱する存在を本能的に軽蔑する思想を持っていた。
——感情など……愛など不要だ。
それが、ガトランティスという種の正しさであり、だからこそ自分たちは個に溺れることなく、これほどの力を手に入れることができたのだ。ゆえに、愛や感情に惑わされるヒューマノイドと深く関わることは危険だ。
ミル自身、そう信じて疑わなかった。
だからこそ、ズォーダーの命令とはいえ、人間であるデスラーの監視役として行動を共にすることに、当初は強い嫌悪を覚えていた。
ところが。
「……嘘だ……」
ミルの喉から、掠れた声が漏れる。
「我々が……ガトランティスが……人間だと……?」
ズォーダー自身が、あの絶対者たる大帝が、自らの口で「ガトランティスもまた人間である」と認めてしまったのだ。
さらに、ゼムリアが用意した安全装置、ゴレム。
人造兵士ガトランティスを、宇宙から完全に消し去るための最終手段。
ズォーダーはそれを起動した。
だが。
ミルは、生きていた。
自分の身体を構成する人造細胞は、何一つ異常を起こさなかった。滅びも、死も、訪れなかった。
そして滅びの方舟は、ズォーダーを“人間”として認めた瞬間、真に覚醒した。
それは、否定しようのない事実だった。
ガトランティスは、既に古代アケーリアス文明が定義した「人間」に成り果てていた。
「そんな、はずは……」
ミルは、頭を掻きむしる。
自分たちが。
秩序と闘争だけを宿した、純化された存在であるはずの自分たちが。
——ガトランティスが……あんな、愚かで、矛盾に満ちた生命体と同じだなど……
さらに追い打ちをかけるように、ズォーダーとの精神接続も、完全に途絶してしまった。
滅びの方舟の真の覚醒。
その影響によるものか、今現在精神感応波が遮断されている。
そのせいでズォーダーに問いただすことも、確かめることもミルはできずにいた。
一方、ノイ・デウスーラの主であるデスラーは、精神が不安定になる前のミルと約束していた。
ヤマトを消し去れば、滅びに瀕しているガミラス星と寸分違わぬ移住先の星をガトランティスの力で用意してやると。
新天地を手に入れるため、滅びに瀕しているガミラス民族を救うため、デスラーはヤマトの襲撃を決断した。
ミルは約束を違えない。
約束を違える……嘘をつくなどという人間のようなことをすれば、人間ではない存在であるはずの自らのすべてを否定することに繋がるからだ。
デスラーはそれをよく理解していた。
ヤマトは地球艦隊に合流するため、火星宙域を目指していた。
しかし、突如としてデスラーが乗るノイ・デウスーラが航路上に割り込んできた。
警告も、通信もない。
次の瞬間——ノイ・デウスーラの艦首が禍々しく輝き、デスラー砲が解き放たれた。
「ワープ準備ッ!!」
ヤマトは即座にワープする。
ただ逃げたのではない。
ヤマトはノイ・デウスーラの至近距離にワープアウトし、そのまま突撃を敢行した。
まさに常識外れの戦法。だが、それはヤマトの理不尽な装備にボコられ続けたデスラーの予測の範囲内だった。
「コアシップ、緊急分離」
次の瞬間、ノイ・デウスーラの中核からコアシップが分離。その空いた領域で突入してくるヤマトを咥え込んだ。
ヤマトはノイ・デウスーラの巨体に拘束され、逃げ場を失う。
その隙を突くように、ガトランティスの自律兵器——ニードルスレイブが波動防壁をこじ開け、真田志郎が秘策を用意して待ち構えているヤマト艦内へと、侵入を開始した。
一方、ノイ・デウスーラ艦内にもヤマトに乗っていたランハルトと古代進が突入。
それぞれ別ルートでデスラーのいる艦橋を目指していた。
先に辿り着いたのは、ランハルトだった。
艦橋の奥。玉座の前に立つ叔父、アベルト・デスラーの姿。
「叔父上……」
ランハルトは、言葉を探しながら、必死に説得を試みようとした。
だが——その瞬間だった。
乾いた銃声が響く。
ランハルトの視界の端で、デスラーの身体が揺れ、血が散った。
撃ったのは、ミルだった。
ズォーダーのクローン幼生体。次代の大帝となる存在。
デスラーは膝をつき、それでもなお、ミルを睨み返す。
そして、ミルは冷たい声で告げた。
「クラウス・キーマン……いや、ランハルト・デスラー」
銃口が、再び持ち上がる。
「叔父のデスラーを殺せ。そうすれば——地球とガミラスを救ってやる」
ミルは淡々と条件を述べた。
デスラーを殺せば、全知的生命抹殺の裁定において、地球とガミラスの抹殺を“一万年”先送りにする、と。
「さあ……撃て」
そして、冷酷に言い放つ。
「お前の“愛”を、殺せ」
ランハルトの指が、震える。
引き金にかけられた力が、どうしても強まらない。
それを見つめながら、ミルは内心で確信しようとしていた。
――やはり、人の思いなど脆い。
目先の利害一つで、どうとでも変わるものだ。
ズォーダーから聞いていた通り。
人の思いなど、所詮は脳内を飛び交う電気信号にすぎない。
それを心だ、魂だと崇めるのは、己の虚しさを誤魔化すための行為でしかない。
その“証明”を、今、目の前でしてみせろ——と。
ミルは人間の愚かさを直で見て、改めて己が——そしてガトランティスが、人間とは違うと証明したかった。
だが、そのとき。
デスラーが、血を吐きながらも、ランハルトに視線を向けた。
「……撃て」
低く、だがはっきりと。
「デスラー家の男なら、躊躇うな」
苦悶の中で、なお言い切る。
「どんな犠牲を払おうと……必要なものは、手に入れろ」
ランハルトは、唇を噛み締めた。
覚悟を、決めかけた。
その時。
「やめろ!」
声が、割り込む。
艦橋に辿り着いた古代進のものだった。
古代はランハルトを止め、そのままミルへと銃口を向ける。
だが――古代は、引き金を引かなかった。
沈黙が、艦橋を支配する。
やがて古代が、銃を下ろした。
そして、まっすぐにミルを見据え、はっきりと言葉を選んで告げる。
「和平を申し入れたい」
それはこの戦争を終わらせる——和平の申し入れだった。
「そのために必要なら、俺は……あなたたちに投降する」
古代の言葉に、ミルの表情が歪む。
怒り。
理解できないという感情。
ミルは古代に銃口を向ける。
引き金を引かない選択などありえない、と。
それでも——古代は、引き金を引かない。
逃げもしない。
ただ、真っ直ぐな瞳でミルを見つめ続ける。
「……何故だ……」
ミルの声が、掠れる。
引き金にかけた指に、力が入らない。
ありえない。
感情に支配されないはずの、ガトランティスとして。
人間ではないはずの自分が――人間の言葉に、心を揺らされている。
その事実が、ミルの価値観を静かに変え始めた。
リメイク版2202においても、ミルは人間に心を動かされ、和平を受け入れる道を選ぼうとした。
それは、神が与えた奇跡とも表現されるほどの、ガトランティスとの戦争を終わらせる千載一遇のチャンスだった。
だが、原作の時間軸ではその奇跡は、成就しなかった。
「ご無事ですか! 総統!」
デスラーの身を案じた部下、ガデル・タランが派遣したガミラス兵。彼らが艦橋へ雪崩れ込むと同時に、躊躇なく銃を発砲した。
その銃弾がようやく和平の道を選んだミルの身体を貫いたのだ。この悲劇によって、ミルが示した未来は、そこで閉じられてしまった。
そして、この世界線でも。
「よせっ!」
ノイ・デウスーラの艦橋に、武装したガミラス兵が雪崩れ込む。その銃口が、一斉にミルへと向けられた。
原作と、まったく同じ構図。
同じ悲劇が待つ未来の入口。
だが。
その銃撃の前に、二つの影が躍り出た。
一人は、森雪。
古代進の彼女であり、原作では色々あって記憶を失ってもなお、ミルが古代に向けて引き金を引き、放った銃弾から古代を庇い、ミルに愛というものの存在を教えた存在。
この世界線では記憶を失っていない彼女だが、それでも古代の身を心配して、単身ノイ・デウスーラの艦内へと足を踏み入れていた。まるで運命に導かれるように。
そして考えるよりも先に、身体が動いていた。古代が勝ち取った未来を守るために……銃撃からミルを庇うように立ち塞がった。
そして、もう一人——桂木透子。
だが、その正体は——地球人に化けた「白銀の御巫」。
シファル・サーベラー。
かつてズォーダーと家族のような関係を築き、深い愛で結ばれていた存在。ズォーダーの妻、ゼムリア人のシファル・サーベラーのクローン純正体。
ガトランティスは、子を成さない。だが――自らの幼生体を、まるで我が子のように慈しみ、愛する。
だからこそ。
サーベラーにとって、ズォーダーの幼生体であるミルは……息子も同然の存在だった。
ミルの精神が乱れた瞬間、彼女はそれを感じ取っていた。
正体がバレてヤマト艦内で拘束されていた彼女は、ニードルスレイブによる襲撃の混乱に乗じて脱出し、ノイ・デウスーラの艦内にいるミルのもとへと向かった。まるで運命に導かれるように。
そしてミルのもとに辿り着いたまさにその時――銃弾が放たれようとする、その刹那。
親が、子を庇うように。
桂木透子——否、サーベラーは、迷いなくミルの前にその身を投げ出した。
未来が収束する。
人間とガトランティス、どちらかが滅びるまで争わなければならない未来。
ようやく示された、可能性が閉ざされた未来へと。
愛する女性を撃たれて古代進が曇らされる未来へ、再び妻子を殺されてズォーダーが絶望する未来へ……
そして、テレサが見た未来の通りに。
その悲しい結末は、原作には存在しなかった少女の手で阻まれた。
メンタルモデル。
明井里愛朱が創った、波動砲艦を動かすための人の形をした道具。ガトランティスと殆ど同じ役目を与えられた、人間に限りなく近い人工人体と思考能力を有している、美少女アンドロイド型自律管制制御AI。
当然、ヤマトにもメンタルモデルが搭載されている。
ノイ・デウスーラの艦内にヤマトから足を踏み入れた者は……計五人。
一人目にランハルト・デスラー。
二人目に古代進。
三人目に森雪。
四人目に桂木透子。
そして――最後の一人が、彼女だった。
メンタルモデル——ヤマト。
真田志郎が密かに用意していた、ガミロイドにもニードルスレイブにも有効な新型ウイルスプログラムのおかげで、ヤマト艦内の敵戦力は即座に無力化された。
あとは、ノイ・デウスーラに突入した古代たちを回収するだけ。
そこで、沖田艦長は人間より遥かに強靭な身体能力と、創造主である明井里愛朱から与えられた特別な力を持つ彼女をノイ・デウスーラへと向かわせた。
そして、間に合った。
森雪と桂木透子が、銃撃を覚悟して目を閉じる。
だが。
いつまで経っても痛みは訪れない。
おそるおそる二人が目を開くと、そこには薄い光の膜が展開していた。
クラインフィールド。
明井里愛朱の手によって、メンタルモデルに搭載された防御システム。
それが、二人とミルを銃弾から守っていた。
次の瞬間、メンタルモデル――ヤマトが銃を構えた兵士たちの前に出る。
人間離れした身体能力で、流れるような動きで、銃を構えた兵士たちを次々と制圧していく。
躊躇はない。だが、怒りもない。
彼女は、ただ——守りたかった。
古代進を。
森雪を。
ランハルト・デスラーを。
桂木透子を。
なぜなら。
彼女は、ヤマトに乗ってくれた人たちのことを——愛しているから。
彼女は、ずっと見てきた。
過酷な航海の中で、共に戦い、共に悩み、共に笑いあったヤマトクルーたちの姿を。
異なる星で生まれ、異なる価値観を持ちながら、それでも同じ艦に乗り、同じ未来を目指した姿を。
精神感応波を使ってメンタルモデル越しに乗り込んできて、騒動ばかり起こしていた創造主と、姉――アースの姿も。
そして、長い旅の中で、愛を紡いだクルーたちの姿を。
それらすべてが、彼女にとって、かけがえのない記憶であり——宝物だった。
創造主である明井里愛朱から授かった力を使って、彼女はそのかけがえのないものを、全力を賭して守り抜いてみせたのだ。
その後、制圧された兵士たちはデスラーの命で銃を下ろした。
そして、守られたミルは選択する。
古代と同じ選択を。
——これ以上、引き金を引かないという選択を。
ミルはようやく受け入れた。
自分もまた、人間なのだと。
それを聞いてデスラー総統も、ランハルトも、静かに銃を下ろした。
そして、皆が理解した。
この戦争を終わらせるには――ズォーダーに直接会わなければならない。
ミルという“ズォーダーの未来”が示した、この戦争の終わらせ方を伝えるために。
だが。
その頃既に戦場では。
滅びの方舟とパラドックス級による地獄のような殲滅戦が始まっていた。
ヤマト艦内のブリーフィングルーム。
古代進がヤマトに戻ると、沖田艦長と真田志郎が複数のホログラムを展開して待っていた。
映像はどれも火星宙域で行われている決戦の模様。その中心に表示されているのは、
「……真田さん、これは一体……」
「見ての通りだ、古代。明井博士は、ついに神のような文明の遺した兵器に匹敵する兵器まで作ってしまったようだ」
指し示されるのは、滅びの方舟とパラドックス級超巨大戦艦。
「滅びの方舟とパラドックス級超巨大戦艦……まさに超兵器同士の、頂上決戦。性能差は殆どない。攻撃力、防御力、再生能力……どれも拮抗している」
真田の説明に、古代は、無意識に拳を握っていた。
「じゃあ……この戦いは」
「おそらく最終的に勝つのは……パラドックス級超巨大戦艦だろう」
真田は即答した。
「理由は単純だ。あちらは一隻だが、こちらは“増える”」
真田が映像の一つを拡大すると、金星時間断層の映像が拡大される。
「パラドックス級超巨大戦艦は、現在も建造が続いている。いずれ、滅びの方舟一隻では対処できない物量と火力に到達するはずだ」
ただし、と真田が静かに付け加えた。
そしてすぐさま次の映像を表示する。
映し出されたのは——火星。
「問題は、滅びの方舟が対処不能になる物量と火力に到達するまで、もう暫く時間がかかることだ」
古代がハッとするように顔を上げる。
「このままでは——パラドックス級超巨大戦艦が決定打を放つ前に、滅びの方舟に火星が喰われる」
その発言によって、室内に重い沈黙が落ちた。
「……火星が、か」
沖田艦長が、ゆっくりと口を開く。
真田はその問いに頷いた。
「はい。勝ちは見えています。ですが、その“勝利”の前に、取り返しのつかない犠牲が出る可能性が非常に高いかと」
沖田艦長は目を閉じ、数秒だけ考えた。
そして、決断を下した。
「これより、ヤマトは火星宙域へ向かう」
その力強い声に、迷いはない。
「この戦争を終わらせるために」
真田は何も言わない。
その沈黙こそが肯定の意を示していた。
古代も、強く頷いた。
そしてヤマトの後方には、ノイ・デウスーラ。
デスラーとミルを乗せたその艦と、デスラー派のガミラス艦隊が、静かに追随していた。
ヤマト宇宙「よっしゃ、今度こそ古代くんの前で雪ちゃん殺して曇らせたろ! ついでにミルとサーベラーもう一回殺して、屈強なズォーダーをさらに絶望させてやるぜ!」
ヤマトちゃん「させません!」
天災オリ主「こんなこともあろうかと、メンタルモデル発明してバリア機能付けておきました!」
真田さん「こんなこともあろうかと、あらかじめ用意していたウイルスプログラムで敵を瞬殺しました」
生存していた沖田艦長「真田くんのおかげで敵の対処しなくてよくなったから、すぐにメンタルモデルに古代たちを助けに行かせたぞ!」
ヤマト宇宙「や、やめろ……また曇らせ展開が……」
テレサ「凄い……強い思いの力と圧倒的科学チートの力で未来が変わった……」
次回『ヤマトに続け』
ガトランティス人は人間じゃないクローンのまま? それともバグって蛮族化?
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愛など不要! クローンのまま
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愛……愛愛愛愛ぃー ヒャッハー蛮族化