クラフトゲーマーは王国をクラフトする!   作:おんせんみかん

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3話 最初の採取が一番楽しい時間まである?

 

「よし、二人とも。リファの体調が一番大事だが、水を確保できた今、次は安全の確保だ。一刻も早くシェルターを建てる。リファ、案内を頼む」

 

 とりあえずは作った焚き火台と作業台と乳鉢を回収してインベントリに収納する。

 物が一瞬で目の前から消えたことにギョッとした表情になった。

 

「ええ……。少し時間はかかるけど」

 

 リファは警戒しながらも、そのそぶりを見せないようにしていた。彼女はゆっくりと立ち上がり、妹のルイがそっとその体を支える。

 

(リファのやつ、完全に警戒心を解いたわけじゃないが、ルイちゃんを守るためなら、どんなリスクも取るってわけか。タフな姉貴だぜ)

 

「ハルカ、こっちよ。水の匂いが濃い方へ」

 

 元いた場所を背に、俺たち三人は森の奥へと足を踏み入れた。リファは隻腕でありながら、道なき道を迷わず進んでいく。その足取りはまだ覚束ないが、彼女の瞳には強い決意が宿っていた。ルイは、俺のインベントリから取り出した最後の「焼いたワンプのキノコ」をかじりながら、姉を懸命にサポートする。

 

 道中、俺は周囲を警戒しつつ、素材になりそうなものを片っ端から触れてインベントリへと収納していく。まるで空気中の酸素を取り込むかのような手軽さで、素材が補充されていく光景に、リファは時折、驚きで目を見開いた。

 

「ハルカ、本当に、それは魔法なのね……」

 

「魔法がどういうものか知らないから正確にはそうと言えないけど、そんなもんだよ。ゲームのチート能力ってとこかな」

 

「……そ、そう、私にはよくわからないけど、そういうものだと納得するわ。」

 

 約二十分ほど歩いただろうか。森の音が水音に変わり、目の前の木々が途切れた。

 

「ここよ。川の源流になっている小さな岩場」

 

 そこは、苔むした大岩がいくつも転がり、清らかな水がチョロチョロと湧き出している、鬱蒼とした森の中の小さなオアシスだった。水は透明度が高く、昨日見つけた「濁った水」の出どころとは比べ物にならない。

 

「なるほど、これなら煮沸しなくても飲めそうだ」

 

 清水を手に取ってインベントリへと収納すると、インベントリに情報が表示される。

 

• [真水を獲得しました。]

 

 真水 クラフトに使用可能。

 飲料に適した水。

 

 俺は周囲の岩を見渡す。シェルターを作るためには、大量の「石材」が必要だ。

 

「よし、まずはツルハシを作ろう」

 

 俺はインベントリを開き、頭の中でクラフトメニューを操作する。

 

 木のツルハシ

 木材✖️5

 

「クラフト!」

 

 数秒後、俺の手には、焚き火の熱でわずかに水分が抜けた木材が組み合わさった、粗雑だが確かな木のツルハシが握られていた。

 

「これじゃ硬い岩場は無理だな。まずはツルハシ用の石探しだ」

 

 俺は木のツルハシを地面の土に突き刺し、石の周りの土を掻き出す。数回の作業で、拳大の灰色の石が二つ転がり出てきた。

 

• [石(小) を獲得しました。]

• [石(小) を獲得しました。]

 

(よし、もう一個石を拾えば)

 

 ルイがすぐに駆け寄り、岩場の影からもう一つ同じサイズの石を見つけて差し出した。

 

「ハルカ、あったよ!」

 

「ありがとう、ルイちゃん!」

 

 俺はすぐに作業台とついでに焚き火台を設置した。ここは川の近くということもあり、森の中より寒く感じる。

 すぐに材木を焚き火のインベントリ内に入れて、点火を選ぶと燃え始めた。

そうしてから作業台のクラフトメニューを開いた。

 

 石のツルハシ

 木材(小) ✖️2 石✖️2

 

「クラフト! 石のツルハシ!」

 

 インベントリにあった素材が消費されて一瞬にして、石の先端を木製の柄に取り付けた、本格的な石のツルハシに生まれ変わる。

 

「よっしゃー! これでいけるぜ!」

 

 俺は岩場に向かい、勢いよくツルハシを振り下ろした。

 

 ガツン!

 

 硬質な音と共に、岩の表面に火花が散る。三度、四度と振り下ろすと、ヒビが入った岩の塊がボロッと剥がれ落ちた。

 

• [石材(大) を獲得しました。]

• [石材(大) を獲得しました。]

 

(これだ。この確かな手ごたえ。これが、俺のサバイバルだ!)

 

 リファは、俺の超人的な作業効率と、目の前で道具が忽然と変化する様子に、ただ唖然としていた。

 

「ハルカ……その……あなたなら、本当に……」

 

「ああ。任せてくれ。まずはこの岩場にある石を全部持っていく勢いで集める。リファは、ここで座って。周囲の警戒してほしい」

 

 俺の力強い言葉に、リファは迷いを捨て、深く頷いた。少し申し訳なさそう表情を浮かべながらも、近くの岩に腰掛けて、周辺を油断なく監視する。

 石のツルハシを構えた俺は、異世界で最初となる本格的な素材集めを開始した。ガツン、ガツンと響くツルハシの音は、森の静寂を破り、俺たちがこの魔の森を生き抜くという決意の狼煙となった。

 

(まずは石材を50個。それから木材を集めて、斧とシェルターを建てるぞ!)

 

 俺は石のツルハシを構え、本格的な素材集めを開始した。

 

 ガツン、ガツン、ガツン!

 

 石のツルハシの威力は木のそれとは比べ物にならない。岩の塊が効率よく砕かれ、そのたびに「石(大)」がインベントリに吸い込まれていく。岩を砕くたびに、頭の中に表示される経験値の通知が、ゲーム的な達成感を煽ってくる。

 

(やっぱり、この作業効率は最高だ。ゲームならこの繰り返しでレベルが上がるんだが……)

 

 そう思って、ステータスを開いてみる。

 

 体力:25/100

 スタミナ:30/100

 

(体力とスタミナを考えると、そろそろ休憩が必要か)

 夢中になって作業していたが、ステータスは正直だ。ツルハシを振るう腕に、かすかな疲労感が蓄積しているのがわかる。だが、目標の半分、石材25個を確保したところで、いったん手を止めた。

 

「リファ、一旦休憩する。具合はどうだ?」

 

 俺は湧き水が流れる岩場に戻った。リファは岩に腰かけ、周囲の警戒を怠らずに静かに座っている。ルイはさっさと手頃な石を集めては、一箇所に纏めて回収しやすいようにしてくれている。

 

「ごめんね、ハルカ。私、何もできなくて……」

 

 リファは申し訳なさそうに俯いた。その隻腕が、彼女の無力感をさらに際立たせているように見える。

 

「何を言う。警戒は立派な仕事だ。そして、君の案内のおかげで、最高の採掘場所に来れた。ありがとう」

 

 俺はそう行って、インベントリから水を取り出して飲もうとした。しかし、蒸留した水と違って、瓶でなく、そのまま手の上に現れてこぼれ落ちてしまった。     

 手の火照りを湧き水の冷たさが冷やす。

 

(マジかー。これじゃ少し手間がかっても一度濾過した方が瓶も作れてお得か?)

 とりあえずは最初に濾過した時に出来た瓶に改めて水を入れてから飲む。

 

「リファ、この森のことについて、もう少し詳しく聞かせてもらえないか? 特に、君たちが逃げてきた道筋とか、危ない場所とか」

 

 飲み終えた瓶にもう一度水を注ぎ入れて、リファに渡した。そして、まだ瓶に慣れていないのか、恐る恐るゆっくりと喉を潤すと、真剣な表情に戻った。

 

「私たちが入ってきたのは、森の南側……村から一番近い場所よ。そこには、背の高い針葉樹が多くて、昼間でも暗いの。そして、私たちが倒れていたあたり……あそこは、森の東側の入り口から少し入った場所だったはず」

 

 リファは指で地面に図を描き始めた。

 

「父が言っていたのは、この魔の森を西へ抜ければ、街があるということ。でも、西側は森が最も深く、大型の獣や……巨人の目撃情報が集中している」

 

「巨人か……昨日のアレだな」

 

 俺は最初に見た、巨人を思い出す、あれは夢でも幻でもなかった。

 夢で欲しかった。

 

「ええ。巨人は森の中を徘徊していて、時々、村の近くまで来るの。ただ、彼らは光や火を嫌うから、焚き火は安全のためには必須。でも、一番危険なのは、夜行性の魔物よ」

 

「夜行性の魔物?」

 

「夜になると、時々、人の唸り声のような不気味な声が聞こえる。ゴブリンや夜オオカミといった、人を襲う小柄な魔物が出没するのよ」

 

(ゴブリンにオオカミ……ますますゲームっぽくなってきたな。だが、奴隷制度がある時点で、命の重さは全然違う)

 

 うーんと唸り声をあげる。今までの話を統合すると、俺的には人の方が危険に感じられた。

 ゴブリンやオオカミ、いや、もし朝方見えたあの巨人が相手でも避ける手も、撃退──殺す手段はゲームの知識とこの能力があればいくらでも思いつくのだ。

 ゲーム脳的にいうと、友好的に接してきて、裏で何かを企まれるよりかは、余程組みしやすい。

 

「わかった。夜行性の魔物がいるなら、夜までにシェルターを完成させるのは絶対条件だ。リファ、シェルターを建てる場所は、ここからすぐの場所にしよう。水にも近くて、背後の岩壁が防御になってくれる場所がいい」

 

「それなら、あそこの大岩の根元はどうかしら。少し平らになっているし、水の流れに一番近いの」

 

 リファが指さしたのは、湧き水が流れ出す、最も大きな岩の真横だった。

 

「完璧だ。ルイちゃん、リファと一緒に、ここにある乾いた葉っぱや枝を集めてくれるか? シェルターの床材と、焚き火の燃料に使う。リファも警戒はもういいから、ルイちゃんを見守……手伝ってあげて欲しい」

 

「うん、わかった!」

「ふふ……危険がないように手伝うわ」

 

 ルイは元気よく返事をし、リファも立ち上がってルイを手伝い始める。

 

 俺は再びツルハシを手に取った。石材を目標の50個まで集めきり、湧き水でスタミナを回復させた後、次は斧のクラフトだ。

 

(斧ができれば、シェルターの土台となる木材(大)を一気に集められる。サバイバル・クラフトの効率が、ここから格段に上がるぞ!)

 

 新たな決意と共に、俺は再びツルハシを岩場に振り下ろした。ガツン!と、森に響く音が、次のステップへの力強い合図となった。

 

俺は石のツルハシを振り続け、目標の石材50個をインベントリに確保した。体力の消耗は激しいが、湧き水の冷たさで喉を潤し、何とかスタミナを維持している。

 

「よし、石材収集、完了!」

 最後の岩を砕き終えたとき、体中の疲労がドッと押し寄せてきた。しかし、俺のインベントリは今、石材で満たされている。

 

 石(大):52

 

 目標より少し多め。これで十分だ。

 

 リファとルイの方を見ると、彼女たちも協力して大量の枯葉と小枝を集めていた。ルイが作った葉っぱの水筒が、意外と水を漏らさないことに感心する。

 

「ルイちゃん、リファ、ありがとう。これで今晩の寝床の準備はできる。次は木材の確保だ」

 

 俺は湧き水のそばに置いていた作業台に駆け寄った。ツルハシはもう必要ない。いよいよ本格的な伐採ツール、斧の出番だ。

 

 作業台に触れ、クラフトメニューを開く。

 

 石の斧

 木材(小)✖️5 石(小)✖️3

 

(よし、石材は大量にある。このインベントリのチート能力、本当に助かるぜ!)

 

 クラフトメニューを見ながら念じる。

 

「クラフト! 石の斧!」

 

 一瞬の光と共に、俺の手には、鋭く研磨された石の刃がしっかりと木製の柄に取り付けられた、頑丈な石の斧が出現した。

 

• [石の斧 を獲得しました。]

 

「完璧だ! これで大木もいける!」

 

 俺は斧を肩に担ぎ、シェルターを建設する予定地である大岩の根元へと向かった。リファとルイも、その頼もしい姿に安堵の表情を見せる。

 

「リファ、建設予定地から少し離れた、太くて真っ直ぐな木を教えてくれ。シェルターの柱と壁に使う」

 

「わかったわ。あの、少し枯れかかっているブナの木がいいと思う。硬くて丈夫よ」

 

 リファの指示に従い、俺はブナの木の前で斧を構えた。幹は太く、俺の体ほどもある。

 

(ゲーム内の感覚なら、このクラスの木は10回くらいで倒せるはずだ。スタミナとの相談になるが、やってやる!)

 

 俺は大きく息を吸い込み、全身の力を斧に込めて振り下ろした。

 

「オラァン!」

 

 ドゴォン!

 

 鈍く、しかし力強い音が森に響き渡る。木肌に深く斧が食い込み、白い木屑が飛び散った。

 

• [木材(大) を獲得しました。]

(一発で「木材(大)」が手に入った!これはデカいぞ!)

 

 斧を振るうたびに、インベントリに太い柱となる「木材(大)」が補充されていく。しかし、体の疲労も凄まじい、斧を振るうごとに、俺のスタミナが減るのがわかる

 

「ハルカ、無理しないで!」

 

 ルイの心配そうな声が飛んできた。

 

(くそ、このままだとすぐにスタミナがゼロになる。効率が悪い……!)

 

 七回斧を振るったところで、スタミナが10を切った。すると、途端に体が重く感じて、斧を持ち上げることすら難しくなる

 

 体力:50/100

 スタミナ:8/100 (極限)

 

 俺は斧を地面に下ろして、荒い息を整えた。木材(大)は七本。シェルターの柱には足りるが、壁材としては不十分だ。

 

「リファ、ルイちゃん。悪い、少し休ませてくれ。スタミナが尽きた」

 

 リファが、俺の作業台の横にあった焚き火の場所を指さした。

 

「ハルカ、あなた顔色がひどいわよ!何か食べるか、休むかしなきゃ。私が、何かできることはないかしら?」

 

「ある!」

 

 俺は閃いた。クラフト能力は、素材の加工だけでなく、道具や建物のレシピにも適用されるはずだ。特に、この世界に来てからずっと、焚き火と作業台に頼ってきた。

 

(そうだ、ベッドだ! 休憩効率を上げれば、この疲労を短時間で回復できる!)

 

 俺は作業台に触れ、新しいレシピを探す。

 

 原始的なベッド(new)

 木材(小) x8

 繊維x10

 

(繊維は葉っぱと蔦を加工すればいくらでもできるはず!)

 

「ルイちゃん、ごめん、さっき集めてもらった葉っぱとツタを、作業台の近くに持ってきてくれるか? すぐに最高のベッドを作って、スタミナを全回復させる!」

 

 ルイはすぐに頷き、リファと集めた枯葉とツタを抱えて戻ってきた。

 

「ハルカ、これよ!」

 

• [葉っぱを獲得しました。]

• [丈夫なツタ を獲得しました。]

 

 俺はすぐに作業台で素材を繊維に加工し、新しいクラフトメニューを開いた。

 

「クラフト! 簡易ベッド!」

 

 かなりの量が溜まっていた木材と、ルイが集めた素材が消え、製作中に[原始的なベッド]が追加された。

 製作時間も一分と割と短い。

 

 

「これで一安心だ。リファ、ルイちゃん、二人も休憩してくれ。俺はここで少し寝て、すぐに作業に戻る」

 

 俺はベッドに倒れ込むように横たわった。硬い地面よりは遥かにマシだ。

 

 意識が急速に遠のき、目を閉じる寸前、頭の中に回復ゲージが表示されたのが見えた。

 

 体力:25/100 → 回復中

 スタミナ:8/100 → 回復中

 

(回復がある限り、何度でも立て直せる。必ず、この子たちを街まで連れて行く……!)

 

 俺は安堵と共に、短い休息へと意識を手放した。シェルターの完成と、魔の森での最初の夜は、もうすぐそこまで迫っていた。

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