だから、ソリッド・スネークに殺られる筈がない。
死ぬ筈がないと書き殴ったものです。
男にチートというチートは無かった。
いや、早熟であったと事がチートと言えばチートだろう。
男は傭兵として活躍していた。
時に部隊員として、時にメディックとして、時に、ボスとして。
男の名前は、パニッシュド・ヴェノム・スネーク。
ネイキッド・スネークいや、かつてBIGBOSSと呼ばれた男の
ファントムにしてもう一人のBIGBOSS。
彼は、死んだ筈だった。ネイキッド・スネークの息子。
ヴェノムにとっては部下だったソリッド・スネーク。
同じ、蛇を冠する男によって倒された。
武装要塞アウターヘブン、その最奥で要塞の自爆に
巻き込まれて確かに生命を落とした筈だった。
「スニーキングスーツ」
ヴェノムはアウターヘブンで着ていた戦闘服ではなく、
DD、ダイヤモンド・ドッグスのエムブレムの入った
スニーキングスーツを着用している。
「おかしな兵士が居るという話を聞いては居たが
まさか……生きていたとはな親父」
「……イーライ」
ヴェノムはそれが誰なのか理解できた。
いや、知っていた。BIGBOSSのクローンの一人。
そして、ホワイトマンバと呼ばれたかつての少年兵の隊長。
「黙れ!俺をその名で呼ぶな!」
イーライはヴェノムにM1911を向ける。
その目には確かな怒りと殺意が滲み出ている。
「仲間にはナイフと銃を向けるな。
俺はそう教えた筈だ」
「貴様っ………」
ヴェノムに銃口が向けられようとした瞬間、
感覚が鋭く変化した。イーライが引金を引こうとした瞬間、
手慣れたCQCによってM1911のスライドが消えている。
「よせ、イーライ」
「貴様は……何処までも俺を!!」
「一つ聞かせろ、お前は〘知っている〙のか」
「お前が俺の親父のファントムということか!
そうだ…お前に惨めにも全てを奪われたあの時から!」
「…サヘラントロプス」
CQCの腕は誰よりも上手い。当たり前だ。
BIGBOSSのファントムなのだから。
CQCで勝とうとするのは不可能だ。
ザ・ボスとBIGBOSSの血脈、それがもう一人のBIGBOSS。
ファントム、パニッシュド・ヴェノム・スネークなのだ。
「……」
イーライを捕まえようとした瞬間、一発の弾丸が邪魔をする。
ヴェノムはそれを理解し、闇の中に消えた。
「ウルフ、どういうつもりだ!何故逃がしたッ!」
「自分で決着をつけろ、私の相手ではない。
それに、もうすぐ吹雪だ。並の人間は助からん」
並の人間なら吹雪で死ぬだろう、だが相手はBIGBOSSだ。
スナイパーウルフにとっても、BIGBOSSとは大切な存在だ。
だからこそ、敢えて見逃した。決着を付けるのは、
自分ではないのだから。
ヴェノムは雪の中を進んでいた。
イーライからの追手はなく、ただ吹雪の中を進んでいる。
「まさかこの吹雪で生きていたとはな、ボス」
「オセロット?」
老いては居るが、その声。
その立ち姿はヴェノムの記憶にある
リボルバー・シャラシャーシカ・オセロット。
「オセロット、ここは何処だ。何故俺は此処にいる!
俺は、俺はデイビッドに…ソリッド・スネークに殺された!
あの日、あの時、あの場所、アウターヘブンで!」
オセロットは戸惑うヴェノムを落ち着かせる。
「この先に小屋がある、そこで話す」
小屋に着くと、オセロットはダイヤモンド・ドッグズの時の
様に話し始めた。
「コード・トーカーを覚えているか」
「当たり前だ。
俺達はコード・トーカーのボルバキアの
お陰で声帯虫を」
「良かった。
コード・トーカーは3年前に亡くなった。
寿命でな。だが、その研究資料は残されていた。
それは此方で処分したが、アンタの方は」
「ゼロ…いや、サイファーには渡っていないはずだ。
アウターヘブンでパラサイトスーツに、
声帯虫やスカルズに関するものは全て
確かに処分した。俺の指示だ。
俺が監督していた。ボスにも、イシュメールにも
それは渡らなかった筈だ」
「あぁ、ジョンの方にもそれは届いて居なかった。
だが、アンタには一人だけ居るはずだ」
「まさか……クワイエットか」
「そうだ、クワイエットはアンタへの
報復心を捨てきれなかった。だが、それは違う。
クワイエットを焼いたのはアンタじゃない。
ジョン、いや…スネークだ。
クワイエットはそれを独自に知った。
だからこそアンタを救う為に単身、
崩壊寸前のアウターヘブンへ乗込み、
死人同然のアンタを救い出したんだ」
「それを何故今話す」
ヴェノムはオセロットの言葉に疑問を持つ。
だとはしたら、なぜ此処に居るのか。
少なくともアウターヘブンでもザンジバーランドでもない。
「優しくしてやるのはコレで最後だ。
ボス、アンタは10年眠り続けていた。今回は10年だ。
クワイエットはアンタを殺したく無かった。
だからこそ、」
「……寄生虫か」
「そうだ、今のアンタは虫に寄生されている。
ゆっくりと老いが進み、何時かは死ぬ。今のアンタは、
コード・トーカー、クワイエット、ジ・エンドと同じだ」
ヴェノムは頭を抱えながら静かにオセロットを睨む。
それは何故止めなかったという気持ちだ。
「ここは何処かだったな。
ここはフォックス諸島沖の〘シャドーモセス島〙。
その核兵器施設だ。今、俺達FOXHOUNDが占拠している」
「……お前がFOXHOUNDに?」
「スネークの為だ、アンタがアウターヘブンで自爆した
5年後、ザンジバーランドでスネークは世界を敵にした。
その時、デイビッド、ソリッド・スネークとミラー、
ロイ・キャンベルのチームに倒された」
「…カズに…キャンベルか」
「知り合いか?」
「…俺は知らんが、イシュメールの記憶だ。
サン・ヒエロニモ半島。
あの時、ボスとキャンベルは共に
FOXと戦いソ連兵を救った」
「…あの事件か、それで。ボス、アンタはスネークと」
「さぁな、俺の任務はもう終わった。
後の世界を見るのも良いかも知れん」
「……判った、俺はもう戻る。
敵対するなら俺も容赦はしないぞ」
「イーライは俺を殺すつもりだろう。
そう安安と殺されてやるつもりはない」
「……わかった、俺は部隊に戻る。アンタとはこれが最後だ」
オセロットはそう告げると小屋を後にした。
スネークは武器を確認する。
ハンドガンAMD114サプレッサー装備
アサルトライフルAM MAS- 4サプレッサー装備
スナイパーライフルAM MAS-71 サプレッサー装備
それぞれの弾薬は45口径、5.56mm、7.62mmと当時の
PF御用達だった旧式装備達だが、
弾薬の規格は簡単に変わらない為、
ひかくてき簡単に手に入るだろう。
「……雪か」
吹雪の中の戦闘は慣れていない。
DDのスニーキングスーツは局地戦闘にも対応しているが、
肌をひしひしと伝わる冷気が刺してくる。
これから自分は世界を見る。
それが生きてしまった自分への罪となる筈だと信じ。
「お前は変わらずあるのか」
それはダイヤモンド・ドッグズで使っていた
INT-SCOPEとNVG、情報端末iDROID。
仕事には必需品だった。
INT-SCOPEは指向性マイク内蔵で音も聞こえる。
NVGは昼夜問わない上に、SCOPEとの併用も可能。
iDROIDは情報端末として類を見ない性能だ。
「……オセロットの奴め」
iDROIDにはシャドーモセスの情報がインプットされていた。
ヴェノムはそこから偵察のポイントを選び、配置を見る。
「アレは」
偵察をしていたヴェノムは昇降機が動くのを見た。
下に居た兵士が戻ってきたのかと思いSCOPEを向ける。
「……お前か」
それはスニーキングスーツ、
見覚えのあるバンダナと確かな顔。
自分と、いやBIGBOSSと瓜二つの顔を持つ兵士。
「…ソリッド・スネーク」
ヴェノムはその顔を見つけると不思議と笑みが溢れる。
それは自分が自分の部隊FOXHOUNDが鍛え上げた兵士が、
BIGBOSSのファントムとオリジナルを下した。
それが何処まで成長しているのか、興味があった。
「見つけたか、俺を」
ヴェノムはSCOPEを覗くソリッドを見る。
自身のSCOPEを外し、ゆっくりと立ち上がる。
「見ているぞ、ソリッド・スネーク」
ヴェノムはそのまま吹雪の中に消えた。
ヴェノムSideout
ソリッドSide
ソリッド・スネークの心拍数は一気に上昇していた。
昇降機から上がり、施設潜入地点を確認していると
偶然何かの反射光を見つけたのだ。
その反射地点を自身のSCOPEで確認し、
スネークは亡霊を見たのだ。
「大佐、奴だ。奴が居る」
『スネーク、どうしたんだ』
対内通信で即座にキャンベル大佐に通信する。
それは自分の過去を知っているからこその共有だった、
「大佐、ナオミに確認してくれ。
不凍液の副作用で幻覚はあるか」
『無いはずよ、スネークどうしたの』
「……いや、良い。悪かったな、大佐。ナオミ。
通信終了」
冷や汗が止まらなかったが、もう一度確認すれば人影は無い。
アウターヘブンから生き延びたとしても、
ザンジバーランドで確実に死んでいる筈の男。
FOXHOUNDという遺恨がスネークにその幻影を
見せたのだろう。
ソリッド・スネークはそう思い、
シャドーモセスへと潜入を開始した。
ソリッド・スネークSideout
「コンタク」
言葉を発する前に、兵士はヴェノムによるCQCで
地面に叩きつけられる。当たりどころが悪かったのか、
白の覆面から血が出ている。
「…随分と、練度が低いな」
MSF、DD、かつての仲間たちは簡単な格闘程度なら
CQCで返すことが出来ていただろう。
だが、CQCをまともに使える兵士が居ない。
「ザ・ボス、そして…ボス」
2人のボスの血脈が途絶えたかの様に思えてしまい、
ヴェノムは苦しい。
「……随分と蛇が多いようだな」
「お前は……バルカンか」
「まさか……BIGBOSSか」
それはアウターヘブンに所属していた傭兵の一人、
そして現在の名はバルカン・レイブン。
「生きていたとはな、ザンジバーランドで死んだ筈だ。
今のコードはレイヴンだ、BIGBOSS」
「……レイヴン、お前が居るという事はあの狙撃は」
「ウルフだ」
ウルフ、それは狼と共に戦場を駆けた少女。
かつてBIGBOSSだった自分がとある戦場で保護し、
DDRを行った一人だ。
ダイヤモンド・ドッグズでも行っていたこと。
ボスからの指示は無いが、己の意思で行っていた事。
そのDDRで戦争の無い世界、
アメリカへ送り出した一人の筈だった。
「……BIGBOSS、いくらアンタでも見つけたからには」
「くっ…」
バルカン・レイブンの装備M61バルカン砲が
ヴェノム・スネークに向けて放たれる。
しかし、ヴェノム・スネークの超感覚が発射までの
一瞬で回避をさせる。
「流石だな、BIGBOSS!」
隠れた場所に向かい、激しい弾幕が放たれたが
ヴェノム・スネークは既にそこには居なかった。
「ぬっ…」
「フン」
赤い義手による全力のパンチ。
通常の兵士であれば一瞬にして気絶する激しい一撃。
しかし、バルカン・レイブンはそれを受けても気絶しない。
それどころか、逆にM61バルカン砲をヴェノム・スネークに
向けて振り回す。
「くっ…」
M61機関砲の銃身に殴られたヴェノム・スネークは
地面を転がりながら、AM-MASライフルの引き金を引く。
バルカン・レイブンはその銃弾をM61バルカン砲で弾く。
「流石だな、BIGBOSS!
とても歳上とは思えん!だが、それでも衰えているか!」
「コンタクト!敵を発見!!」
「くっ…五月蝿くし過ぎたか」
バルカンもヴェノム・スネークとの戦いは心地よい物だ。
ヴェノム・スネークはもう蛇ではない。
ヴェノム・スネークの任務は既に終わっている。
だが……こうして戦うのは、一重にイーライを止め、
デイビッドの成長を見るため。
「……楽しかったぞ」
「そうか、生きて会えたら二度目をしてやる」
ヴェノム・スネークはそのまま
慣れたように闇の中に消えていく。
シャーマンであるレイヴンでも、
その影を追うことはできない。
一度死に、蘇ったアンデット。
「……面白くなりそうだ」