メタルギア転生   作:影後

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再会2

「……」

 

それは牢獄と言える場所だった。

ヴェノム・スネークはダクトを下り基地の内部に潜入する。

かつてはピッキングで開けた扉も、

今ではカードキーとアップグレードされている。

だが、カードキーを探す必要などない。

そこらに居る兵士達は侵入者に対応する為、

マスターキーに等しい物を所持している。

それを奪ってしまえば簡単だった。

 

「何をしている……彼奴は」

 

潜入において、事喋るだけでなく周囲に聞かれている。

この基地を占拠しているのは、

FOXHOUNDのメンバーと言うだけでは無い。

ゲノム兵と呼ばれる特殊な遺伝子治療をされた者達。

だが、よりにもよって看守のいる状態で話す事ではない。

 

「新兵か……まったく……」

 

あの時の新兵が今度は新兵に語っている風景に笑いが

込み上げてくる。

だが、ヴェノム・スネークとしてもここで

ソリッド・スネークが万が一にも殺られることになるのは

非常に避けたい事である。

 

「何をしている!敵が来るぞ、構えろ!」

 

ヴェノム・スネークの低いバリトンボイスが響く。

ソリッド・スネークはその声を知っている。

自分の声に瓜二つだからと言う訳じゃない。

その声の張り方、叫び方を受けた事があるのだ。

 

「撃て!」

 

扉が開いた瞬間にヴェノム・スネークの指示が飛ぶ。

ソリッド・スネークはSOCOMピストルを。

新兵はFA-MASの引き金を引く。

新兵はフルオートで撃った為か、

残弾を考えずにマガジンを撃ち尽くす。

経験が足りていない、ヴェノム・スネークが指揮官であれば

まだ前線に出せるほどじゃない。

ダイアモンド・ドッグスであれば、

オセロットに厳しく躾けられていただろう。

 

「撃ちすぎだ、効果的に撃て!殺すことを考えるな!」

 

「……何処だ!何処に居る!」

 

ソリッド・スネークは確信した。

これは幻聴なんかではない。始まりで見たあの男。

BIGBOSSがこの場にいるのだ。

 

「……まだお前と会うつもりはない。

ソリッド・スネーク」

 

エレベーターが付いた音と激しい叫び声。

銃声は一切なっていない。

 

「待て、BIGBOSS!!」

 

エレベーターが閉じる。

そこにあるのはダイアモンド・ドッグス製の

スニーキングスーツを身に纏う一人の歴戦の兵士だ。

コスタリカ、アフガニスタン、アンゴラ/ザイール、

数多の戦場を駆け抜け、より良い未来の為に戦う兵士。

今でも知っている、ソリッド・スネークにとってその背中は

果てしなく大きく、そして苦しいものである。

 

「くそッ……」

 

『大佐、奴は…奴が居た!BIGBOSSだ!

本当に死んでいるのか!?BIGBOSSは!!』 

 

『死んでいるはずだ!君が殺したんだぞ!

ザンジバーランドで…』

 

『じゃあ奴はなんだ!今の声は!

俺は彼奴に、BIGBOSSに鍛えられたんだ!

俺が聞き違える筈がない!』

 

『う…うむ……』

 

「ねぇ、ねぇったら!」

 

ソリッド・スネークが血相を変えた状態で通信していると、

声をかけられる。

それは共に戦っていた新兵からだった。

 

「貴方は?」

 

「…雇われだ」

 

「名前は?」

 

「名乗れる名前はない」

 

「……ソリッド・スネーク」

 

「かつてはそう呼ばれた事もある」

 

BIGBOSSいや、

ヴェノム・スネークの介入が一つの運命を捻じ曲げた。

これがここからどうなるかは、誰にも判らない。

そして、エレベーターを登りきったヴェノム・スネークは

武器弾薬が保管されている場所を歩いていた。

落とし穴、赤外線センサー、地雷まで、

だがNVGにかかれば、ダイアモンド・ドッグスの科学力に

比べれば些細なものなのだ。

 

「この壁は……」

 

見るからに最近補強されたような壁、

C4も先程拾っていた為、慣れた手付きで設置し、

爆発させる。どうやら、通路を塞いでいたようだが、

やり方は雑すぎる。

余程、急いで隠す必要があるものだったのだろう。

 

「……誰だ?」

 

ヴェノム・スネークは此処に送り込まれたが、

ブリーフィングも何も一切がない。

あったのはオセロットからの簡単な説明のみ。

嫌がらせの様に張り巡らされたトラップロープ。

全てがC4に繋がっており、触れれば信管が起爆する仕掛けだ。

 

「……使えるか?」

 

ヴェノム・スネークは時にクレイモア地雷を拾い上げ、

使用するほどにトラップに対する知識もある。

少し知識のある程度の存在が作ったトラップだろう。

BIGBOSSたるヴェノム・スネークには

解除も比較的容易い部類に入る。

 

「それはよして貰おうか…ヴェノム・スネーク」

 

「……オセロット」

 

「まさか、ソリッド・スネークよりも先にボスが来るとは…

想定外だったぞ。10年のブランクがあるとは思えん」

 

「10年じゃない、それ以上だった。

だが、ここの兵士達は随分と間抜けが多いようだな。

MSFやダイアモンド・ドッグスの兵士達とは大違いだ」

 

「当たり前だ、ダイアモンド・ドッグスは

俺とお前とミラーが。MSFはジョンとミラーが育てた部隊だ。

此処に居るゲノム兵は所詮、ジーンセラピーを受けた

存在でしかない。BIGBOSSから直接指導され、

全てを受け継いだアンタに比べればな」

 

「……オセロット」

 

「お前の相手は俺ではない。まったく……」

 

オセロットは老いてなお、

ダイアモンド・ドッグスに所属していた時と、

まったく同じ表情を向ける。

オセロットにしてみれば、ヴェノム・スネークは後輩だ。

BIGBOSSに、ネイキッド・スネークに見出された後輩。

本当のボスではない、彼にとってボスとは、スネークとは、

ネイキッド・スネークただ一人。

 

「行け」

 

「……わかった」

 

オセロットにしても、

ヴェノム・スネークと戦うのは得策ではない。

ヴェノム・スネークはファントムにして、

ジョンの、BIGBOSS、彼女、ザ・ボスらの遺伝子を

持たないにも関わらず、

ファントムと慣れた逸材なのだ。

 

「……オセロット、お前とも早撃ちをしてみたかった」

 

「俺もだ、BIGBOSS」

 

オセロットと恐らく、最後の邂逅になるだろう。

ヴェノム・スネークも、オセロットも共に戦った戦友だった。

人質の事など頭にはなく、ただ懐かしさを醸しながら

ヴェノム・スネークはその先に向かう。

 

「…おかしい、」

 

ヴェノム・スネークの前には何もない通路があった。

だが、長年の兵士としての直感が叫んでいる。

此処には《罠》があると。自分ならそうすると。

 

「こいつだな」

 

NVGを装着し、確認する。

そこには動く赤外線センサーが張られていた。

それだけではない、当たりを見渡すと排気口が黄色く

表示されている。

 

「…ガスか?」

 

自分が行うとすればどんな罠になるか。

相手を殺す事を考えれば確実なのは出入り口を塞ぎ、

毒ガスを注入する事だろう。

 

「ありきたりだな」

 

幸い、上下に動く程度の簡単な赤外線センサーだ。

ヴェノム・スネークは得意の身体能力で一息で駆け抜ける。

 

「しかし、相変わらずか」

 

ダイヤモンド・ドッグズ特製のNVGは真昼でも扱える優れもの。

頭が多少重い事を我慢すれば付けていない理由がない。

 

『また会ったな、BIGBOSS!』

 

「レイヴン?!」

 

NVGを外し、AM-MAS-4ライフルを構える。

するとどうだろうか、何処か懐かしい形を取りながら、

フロアの奥が開きM1エイブラムスが現れた。

 

『征け!』

 

ぞろぞろと歩兵達が現れる。

最悪なのは辺りが広けており、隠れる場所が無いことだろう。

 

「発射!」

 

ボンッ!と激しい音と共に放たれた砲弾が

ヴェノム・スネークに襲い掛かる。

それをギリギリのタイミング(リフレックスモード)で

回避する。

 

『ほぉ、流石だな!BIGBOSS!

この戦車の一撃を避けるとは!』

 

「くそ!」

 

「コンタクト!」

「4時の方向!」

 

「ぐぁぁ」

 

随伴歩兵の練度はそれほど高くない。

ヴェノム・スネークは戦争のエリートだ。

殺すのではなく、足や腕を撃ち戦闘能力を削ぎ、

相手の邪魔をする戦術を取る。

 

『容赦がないな、殺さずか!』

 

「戦車が相手だからな!」

 

ボンッ!と再装填が終わったのか再び砲弾が飛んでくる。

優れた命中精度だ。

恐らく、これを避けられるのはイシュメールか自分位だと

M1エイブラムスの砲撃手を称賛する。

 

『どうした、ジリ貧だぞ?』

 

「くそ…」

 

随伴歩兵達もM1エイブラムスを盾にし始め、

ヴェノム・スネークが思うように撃てなくなっている。

今持っているのはグレネードとC4だ。

これで戦車に勝つためには、C4を直接貼り付けるしかない。

 

『くそ…排熱が…』

 

すると何故か戦車の上部ハッチが開いた。

あり得ない、戦場でそもそも戦車のハッチを

開けるのは自殺行為だ。

上部機銃というが、スナイパーもいる状態で銃座に付く兵士は

格好の的である。

だが、何故か銃座に付く様子は見えない。

 

〘ボス、聞こえるか!

そのM1エイブラムスは旧型で砲弾の排熱が完璧

ではないようだ!〙

 

「…カズ?カズなのか!」

 

その時、通信から懐かしい声が聞こえてきた。

かつては共に戦った仲間であり、袂を分かってしまった仲間。

マクドネル・ミラーと名を変えた彼、BIGBOSSの相棒。

カズヒラ・ミラー。

 

《懐かしいな、だが話は後だ。

せっかくの隠居をイーライとあの女に邪魔されたんだ。

仕返し程度なら良いだろう》

 

「…カズ」

 

軽口を叩くのもカズの良い所だ。

ダイヤモンド・ドッグズに居た頃は中々無かったが、

MSF時代のカズを感じさせる物言いに

ヴェノム・スネークは懐かしさのあまり、

感歎の声を漏らした。

 

《ボス、

あのエイブラムスは赤外線レーザーの電子ロックだ。

本当に何で避けれんだ?アンタは》

 

「電子ロック…チャフだな」

 

《そうだ、後は履帯を破壊するんだ!

そうすれば動けなくなる!》

 

「わかった」

 

《良いな、ボス。

俺はアンタを…アンタももう二度と裏切らない。

俺にとって、俺にとってのボスはアンタだ!

ヴェノム・スネーク!俺はアンタと共に往く》

 

「…あぁ……カズ。

俺達は銃を取る、より良い未来を残す為に。

より良い明日を生きる為に」

 

ヴェノム・スネークは不敵に笑う。

相棒がいる、仲間の声がする。

 

「行くぞ、バルカン!」

 

『フハハハ!良いぞぉ!こぉい!!』

 

《ボス!チャフだ!》

 

ヴェノム・スネークはチャフグレネードのピンを抜き、

M1エイブラムスに向けて投げる。

 

『歩兵、戦車を守れ!』

 

「無駄だ!」

 

ここにいるのは、恐るべき子供達すら超えたタダの1兵士。

元衛生兵にして、BIGBOSSとザ・ボスの血脈を受け継いだ、

もう一人のBIGBOSS。

 

「連続ッ」「ぐばっ…」

「C」「アハッ…」

「Q」「ぬがぁ…

「C」「あぁぁぁ?!!!」

 

最後の一人は仲間の方へと勢い置く吹き飛ばす。

60キロの重りが勢いよく跳んできたせいで、

残りの兵士たちは気絶する。

 

『なに?!』

 

バルカンはまともな兵士だ。

仲間を轢き殺すという指示はしないだろう。

 

『くっ、このままでは……』

 

逃げる方向は一方だけ、

既にヴェノム・スネークはM1エイブラムスの懐まで侵入していた。

 

『何処だ…何処に』

 

「俺はここだ!」

 

履帯だけではない、エンジンと砲身にもいつの間にかC4が設置され、

ハッチの上にはヴェノム・スネークがグレネードを構えて立っている。

 

「……流石だな、BIGBOSS」

 

「終わりだ、バルカン!!」

 

ヴェノム・スネークはハッチのなかにグレネードを投げ込むと、

そのまま飛び降りる。

それだけでなく、貼り付けたC4も同時に爆発させる。

履帯、砲身、エンジンが破壊されたM1エイブラムスは動けない。

そして最後には内部のグレネードが砲弾に引火したのだろう。

激しい火の手を上げながら爆発した。

 

《ボス、アンタ流石だ!

対戦車兵器もなくたった一人で主力戦車を破壊した!

アンタ、本当になんなんだ!》

 

あの時のように嬉しそうに話すカズ。

ヴェノム・スネークはその声にゆっくりと応える。

 

「カズ、俺は俺だ。それに」

 

《なんだ、ボス?》

 

「アフガンで俺に言わせたのに、

お前は無いのか?」

 

《……そうだな。待たせたな、ボス。いやスネーク》

 

「あぁ、カズ」

 

通信後したが、変わらない。

カズヒラ・ミラーにとって、

BIGBOSSとはもうヴェノム・スネークのみ。

ヴェノム・スネークにとっても、大切な仲間であり、

相棒の一人だ。

 

 

 

 

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