幻想に仕えた二人の話 作:せぷ
ある人は言った
―自分の故郷を殺さないと、人は一人立ちできない―
今日、この旅で私たちは現世と言う故郷を殺す。
何十座という山を越えてきた、何十本という川を越えてきた。
旅を続ける中で幾度も願った。 二人で夢見た幻想を求めて。
現世の旅の終焉。 幻想の旅の始まり。
これは幻想に恋した二人の話。
?「お前の死に顔を見るのはごめんだな。」
息も絶え絶えのなか、男は言う。
男の容姿は20代前半、身長は日本人の平均身長とピッタリだが、筋肉質なその体のせいで少し身長が高く見える。登山用の赤いレインウェアとリュック姿で、顔はイケメンな日本男児の良い例になる、髪はバッサリと男らしい刈り上げの短髪の青年である。
いま、私たちがいる場所はどこなのだろうか? 山であることは間違いないが、どの県あるどの山なのだろうか?
いまは何日なのだろうか? 最後にろくに寝たのはいつだっただろうか?
正常な状況の人間が考えることのないはずであろう疑問を打ち消すように女は言葉を紡ぐ。
?「先に逝くのはお前の方かもな」
見た目は男と同じく20代前半、身長は男より2センチ小さいだけで女性よりは逞しく、男性よりは華奢な体躯でる。女性にしては男勝りな話し方で、顔も中性的、髪も男よりは短くないがツーブロックで女性にしては短く整えられている。いわゆるボーイッシュだ。
男は満面の笑みを女に返す。男の笑顔を見た女は、背負っていた登山用のリュックから手帳とペンとを取り出し、頭が正常なうちに二人の基本的な情報と現状とを書き込む。
(以下 手帳にて)
2000年 9月
私の名前は 吉樹 優 (よしき ゆう) 性別は女性だ
ともに旅をしている者の名前は 覇道 浩志 (はどう こうじ) 性別は男だ
私たちは大学の3回生であり、お互い民俗学と心理学専攻である。
私と浩志は小学校1年生からの仲である、いわゆる親友である。
時間の感覚はすでに無くなっているが覚えている限り5日は山を歩いている。
方向感覚はすでに無い。食料もとうに尽きた。度々降る雨は私たちの体温を奪う。
私たちは遭難して、死ぬ寸前だ。
自殺目的で山に入ったわけではない、私たちは幻想郷を求めて旅をしていた。
この手記を誰かが読んでいるのであれば、私たちは夢を追い求めながら幸せな死を享受していると考えてほしい。
(以下 優 視点)
手帳をまとめると私たちが腰かけている岩の隅にそれを放る、それと同時に浩志が口を開いた。
浩「最期くらいは可愛い女の子に見守られながら死にたかったな」
優「同感だ、最期くらい美人なお姉さんが隣にいてほしかった。」
今の会話を他人が聞いたら1つ不自然な点があるのだろう。そう、私の恋愛対象は女性だ。だからこそ、浩志と親友という間柄で今までやってこられているのだと思う。それだけではなく、浩志の誰にも偏見を持たず接する性格も大きいと思う。 浩志には感謝してもしきれない。ぼやけた視界と頭でくだらないことを考える。
浩「行きたかったな、幻想郷。 ずっと俺たちの夢だったもんな。」
優「夢を追いながら死ぬって幸せじゃないか。」
浩志の声が掠れて、聞こうとしなければ聞けないほどの声量になってきた。かく言う私も同じだろう。何も見えなくなってきた。 私はもう死ぬだろう、覚悟はできている。
優「あぁ、視界がもうだめだ。浩志、あっちでまた会おう」
浩「またな、親友」
静寂が私たちを支配する。 次に目を覚ました時には地獄で閻魔様の説教を食らっているだろう。そんなバカげた考えを最後に私、優は意識を失った。
なぜだ? 私はなぜ生きている? そしてなぜ縛られている? 浩志はどこだ?
もう覚ます出なかっただろう意識を覚ました私は困惑していた。なぜなら、いま私は四肢を縄で結ばれており、足を天に向けまるでこれから解体される家畜のような恰好で土間らしき場所に吊るされているからである。隣には浩志が同様の恰好で吊るされており、生きてはいるようだが未だ意識は取り戻していない。土間ということは古い民家でそこの住民が私たちを連れてきたのだと推測できるが、なぜこの状態で私たちを連れてきたのか? 状態的には殺される可能性が高い。だが、現状何もできのも事実である。口は自由に動かせるため、私は細心の注意を払いながら小声で浩志を起こそうと試みる。
優「浩志、起きろ。 こう ?「あら、ごきげんよう。起きたのね。」
突然のことで声が出ない、土間からつながる居間の方から女性が歩いてきた。女性の容姿は美しい金色の長髪で
紫色のドレス、頭にはいわゆるZUN帽をかぶり体の所々には赤色のリボンがついている。そう、幻想郷を夢見て旅
を続けた私が知らないわけがない。私の目の前に現れたのは
八雲 紫
最期まで見てくださった方本当にありがとうございます。できるだけ週に1回は投稿しようと考えているので、これからもご愛読ください。