Skybound ace ―   作:心ここにあらず

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色々試行錯誤しながら書いていきます!


エピソード1

神凪リオ(かんなぎ リオ)が生まれた日の午後、

東京の産院には冬とは思えない、柔らかくて暖かい陽射しが窓から差し込んでいた。

 

父・レオナルド・アバニシアはイタリアの名門リーグ「セリエA」で活躍した元アタッカー。

母・神凪 美羽(みう)は東京生まれの元スポーツトレーナー。

 

そんな2人から生まれたリオは、

生まれた瞬間から――まるで胸いっぱいに世界を受け入れるように、大きく息を吸った。

 

看護師が驚いて言った。

 

「泣き声が……ここまで穏やかに生まれるなんて珍しいですね!」

 

レオナルドは笑いながら、太陽みたいな金色を帯びた金髪の息子を抱きあげ、

 

「はは、この子は大物になるかも知れないな」

 

と言った。

 

その言葉は、冗談でもなんでもなかった。

 

生後数ヶ月のリオは、父譲りの体格なのか生後にして体重が5000グラムあり、この産婦人科の中でも特に体格に秀でた幼児として誕生していた。

 

 

「顔もあなたに似てかっこいいわよ」

 

「よしてくれよ。君に似てとてもcuteさ」

 

 

こうして両親に祝福されこの世界に神凪リオの人生はスタートしたのだった

 

 

【3歳──】

 

リオの3歳の誕生日。

父・レオナルドは現役を引退し、東京でバレーコーチの仕事につくことを決めた。

その年から、家のリビングにはミニネットが張られ、

柔らかいボールがいくつも転がっていた。

 

父が軽くトスをすると、リオは本能だけで手を伸ばし、ぽん、と正面へ押し返した。

 

3歳の子どもの動きとは思えない、しっかりと力強い動き。

驚いた母が言った。

 

「レオ……見た? もうこんな動きができる様になってるわ!」

 

父は息をのんでから、ゆっくり笑った。

 

「うん。リオはきっとオレを超える才能を宿してるかも知れないな」

 

その言葉は、ただの父親の自惚れだけでなくバレー選手として生きてきたコレまでの経験がそれを予感させていた。

 

その日から父は、

“練習”というより“遊びの延長”のような10分だけのトレーニングをリオに与えた。

 

・風船アタック

・簡単なボールキャッチ

・ソファを使ったジャンプ遊び

・ボールを追いかけながらのステップ

 

リオは疲れを知らなかった。むしろ今時のこの世代の子達がアニメやら絵本やらにハマるようにリオは体を動かすことの沼にどんどんハマっていった。

跳ぶ、跳ぶ、跳ぶ。

まるで身体が浮く感覚そのものが大好きだった。

 

母が食事の準備をしているとき、

ふと目を離した数秒で、リオは椅子→テーブルの上に登ってしまい、

 

「危ないってば!!」

 

と怒られるようなこともあったのはご愛嬌だ

 

 

さらに2年後5歳になり幼稚園に上がったリオは、周囲の子たちより明らかに身体能力が頭抜けていた。

 

・身長はクラス平均より頭ひとつ分高く

・身体能力はすでに小学生低学年レベル

・バランス感覚が異常に良い

 

 

運動会では常にトップ。

遊びの父とのバレーボールでは、初心者では取れない角度にボールを落として父を驚かせた

 

 

 

 

そしてリオが6歳の春

父が週末に連れて行ってくれたのは、区の混合バレーボール体験会だった。

 

「リオ。今日は見学だけな。まだ難しいから」

 

「えー! ぼく、できるよ!」

 

父は笑いながらリオの頭をくしゃっとした。

 

体育館は熱気で満ちていた。

子どもも大人も入り混じり、ボールがあちこちで跳ねている。

 

 

 

「こんにちはー! 今日は体験で来てくれたんだよね?」

 

 明るい女性コーチが声をかけてくれる。

 その体育館は、子どもたちの笑い声とボールの弾む音でにぎやかだった。

 

 リオの胸が、ドクンと高鳴る

 

 

「あ、この子はまだ小学校に上がったばかりなんですよ。だから」

 

「あら、ウチはそういう世代な子たちもいっぱいいるんで大丈夫ですよ!」

 

「いや、でも…」

 

父の溺愛っぷりが半端なかった

 

 

「パパ!俺バレーやってみたい!」

 

「ん〜しょうがないなぁ。すいません。ならお願いしていいですか?」

 

「ええ!じゃあコチラに来てもらっていいですか?レオナルド選手!」

 

「あ、私のこと知ってるんですか?」

 

「当たり前じゃないですか!バレーやってて知らない人なんていないですよ!」

 

パパはこの世代でバレーをやってる人たちからすれば英雄のような人物だった。かの名門セリエAにて10年間エースを勤め華のある実力だけでなくその容姿も相まってアイドル的人気を誇った選手だったのだ

 

 

まぁ、当の息子はそんな事情など全く気にしておらず意識はバレーの方に向いているのだが…

 

(パパとママ以外の人と……ボールやるの、初めてだ)

 

 緊張しながらも列に加わると、レシーブ練習が始まった。

 

「リオくん、ナイス反応!」

 

 コーチの声が飛ぶたびに、リオの体が軽くなる。

 他の子たちに「すげー!」と声をかけられ、照れながらも腹の底が熱くなる。

そして、初めてのチーム形式のゲームが始まると——

 

「リオ! 打ってみなよ!」

 

「い、いいの!?」

 

「いけー!」

 

 コーチが上げてくれたふんわりしたトス。

 リオは駆け込み、跳んだ。

 

 世界が反転するような浮遊感。

 足元の景色が小さくなる。

 

 ドンッ!

 

小学生とは思えない威力でボールが床に突き刺さった。

 

「え、やば……!」

 

「すげええええ!!」

 

 人生で初めて「仲間の歓声」を浴びた瞬間だった。

 自分の腕が、みんなの笑顔につながっている。その感覚が、胸を強く揺らした。

 

(俺…もっと……みんなと打ちたい)

 

 リオはその日、体育館を出る頃には完全に心を決めていた。

 

——バレーやりたい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして小学2年の春。

 リオの人生を大きく変える少年が、突然体育館に現れる。

 

「きょーりゅーみたいな背のヤツが来たぞ!」

 

 騒ぎだす子どもたち。入り口を見ると、

 異様に背が高い、銀髪の少年が母親と一緒に立っていた。

 

「……でかっ」

 

 リオのつぶやきは、誰にも届かないほど小さかった。

 だが心臓だけは、強く跳ねた。

 

(……初めてだ。俺くらい“背が高い”やつ)

 

少年はぎこちなく体育館に入ってくると、コーチに挨拶した。

 

「は、初めまして。灰羽リエーフです……」

 

 どこか緊張していて、あどけない姿の子供がコチラにやってきた

コーチは笑顔で彼の背中を押す。

 

「リオくんー! リオくんと同じハーフの子来たよ! 一緒にやってあげて!」

 

「えっ俺!……う、うん!」

 

 リオは近づいて、思い切って声をかけた。

 

「ねぇ!……俺はリオ! 神凪リオ! よろしく!」

 

「……リエーフ。よろしく……」

 

 その瞬間、ふたりはどこか思うところがあった

 

——互いに日本以外の血が入ってると目に見えてわかる容姿

——お互いが同年代では突出している背丈

 

 人より背が高いことを、少し戸惑っている。

 でも、バレーボールのボールを見た瞬間、目が輝くようにリエーフの心が躍り出した

 

「リエーフ、行くぞ!」

 

 リオがトスを上げる。

 リエーフは大きく跳び、まだぎこちないフォームでボールを叩く。

 

 だが——

 

「……うわッ!」

 

 その一撃は、小学生とは思えないほどの高さと角度だった。

 

「リエーフ、すげえ!!」

 

周りの子供たちがが素直に声を上げる。

 リエーフは照れ臭そうに浮かべた笑顔で笑った

 

 ——それが俺とリエーフの出会いだった。

 

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